主演・坂口健太郎が回を追うごとに俳優として覚醒中のドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)の第9話が5日に放送され、平均視聴率7.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から0.4ポイントアップとなりました。
(前回までのレビューはこちらから)
その前回、大山剛志(北村一輝)の白骨死体を発見した三枝健人(坂口)刑事は、大山の遺品の中から、焼き鳥屋『ふじよし』の名刺を見つけます。その店はかつて、兄・亮太(神尾楓珠)が井口奈々(山田愛奈)の暴行事件の濡れ衣を着せられ、少年院に収容された時、世間の目から逃れるため親戚の家へ引き取られた健人が、毎晩のように通った店だったのです。
久しぶりに『ふじよし』を訪れた健人は、店のおかみ(濱田マリ)から、1999年当時、加害者遺族として肩身の狭い思いをしていた健人を、大山がこっそり陰から見守っていたことを聞かされ、胸を熱くさせます。
そんな折、“過去とつながる無線機”によって、99年の世界を生きる大山と交信した健人は、暴行事件の捜査から手を引くよう懇願。兄の無実を証明して欲しいという気持ちはあるものの、大山がいずれ警視庁内部の陰謀によって殺されることがわかっているため、その未来を変えたいと思ったのです。
しかし、正義感の強い大山は捜査を続行。やがて月日が経ち、少年院から退院した亮太から、暴行事件の真犯人を示す証拠が見つかったとの連絡を受けます。すぐに会いに行こうとするのですが、捜査会議が始まってしまったため、やむなく後回しにすることに。
一方、上司の桜井美咲(吉瀬美智子)とともに暴行事件の再捜査を続ける健人は、今は結婚し母親になった井口奈々(映美くらら)のもとを訪問。すると奈々から、真犯人は都市開発会社社長の御曹司・小川であったことが明かされるのです。
そして、さらに健人を驚かせたのは、少年院から退院した日に自殺したと思われていた亮太に、他殺の疑いが浮上したこと。まだ亮太が少年院にいた当時、手紙をもらった奈々の印象では、決して自殺するような文面ではなかったというのです。
その証言を受けた健人は病院へ向かい、亮太が死んだ時の検死データを入手。そこには、明らかに他殺を示すような記録(意識を失うほどの精神安定剤&血液を固まりにくくする抗凝固剤の投与)が残っていたのです。
実は暴行事件の裏側では、小川の父親が衆議院議員の野沢義男(西岡徳馬)に相談し、野沢と癒着関係にあった警視庁捜査一課の刑事部長・中本慎之助(渡部篤郎)が、亮太をスケープゴートに仕立て上げた、という工作があったのでした。
そのことを健人はまだはっきりつかんでいませんが、警視庁内部に陰謀がうごめいていることは気づき始めているため、兄も警視庁の誰かに殺されたのでは? と疑い始めます。
ちょうどその時、大山と無線機がつながるのですが、大山は今まさに亮太から証拠品を受け取りに行こうとしている時。つまり、亮太が殺される直前なのです。「兄を助けてください!」と、健人が懇願したところで今回は終了となりました。
さて感想ですが、金持ちの息子を守るため、貧しい家庭の息子を犠牲にするという展開は、少し単純すぎる気がしないではないのですが、善悪それぞれのサイドの役者たちの演技が熱を帯びてきたため、クライマックスへ向けて盛り上がってきた印象です。
まず、主人公・健人を演じる坂口ですが、これは前回のレビューでも書いた通り、回を追うごとに着実に表現力がアップしています。
特に、狂気をはらんだ演技が秀逸。今回、高校時代の回想シーンで、兄がレイプ犯だということを同級生に馬鹿にされ、殴り掛かるシーンがあったのですが、目を見開き暴れる姿には脅威を感じました。色白なために感情が爆発した時に顔が紅潮して、リアルさが増す。今後は、冷徹な殺人犯みたいな役も見てみたいです。
その健人の、時空を超えた相方である大山は、いわゆる人情派の刑事。これまでの事件でも、前科者たちに肩入れする姿を見せていましたが、その人間味のある人柄を北村が熱演しています。今回は、自分の死を予知しつつも、捜査に命を燃やす悲壮感みたいなものも感じられ、さらにキャラ立ちした印象でした。
一方、ダークサイドの中本は、大山が自身の裏工作に気づき始めたことを知り、「こちら側にくるチャンスをやろう」と勧誘するなど、もはや本性を隠さないようになってきましたが、これを演じる渡部が見るからに悪どい。昨年放送されたドラマ『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)で、ダジャレ好きな警部補役を演じていた時とは大違い。名優の振れ幅の広さというものを感じさせてくれます。
残念ながら視聴率は振るいませんが、役者たちの熱のこもった演技は見ごたえあり。最終回を楽しみに待ちたいと思います。
(文=大羽鴨乃)