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神戸山口組組長が逮捕された「知人名義で携帯電話の契約」は何が問題?
6月6日、指定暴力団神戸山口組の井上邦雄組長が、詐欺容疑で逮捕された。井上容疑者の逮捕容疑は4年前、神戸市灘区の携帯電話販売店で、自分で使うことを隠して知人女性の名義でスマートフォンの機種変更契約をしたというもので、「知人が契約した携帯電話を使っていた」と容疑を認めていると報じられた。では、他人名義での契約で、何をだまし取ったことになるのか? アディーレ法律事務所の時光祥大弁護士に聞いた。
時光弁護士によると、この場合だまし取ったものは、「携帯電話本体」ということになるという。
「詐欺罪が成立するには、(1)だます行為(欺罔<ぎもう>行為)、(2)勘違いすること(錯誤)、(3)財産の交付、(4)財産的損害の発生という流れが必要です。
まず、本当は、携帯電話を神戸山口組の組長が使用するつもりなのに、それを伏せて、あたかも知人女性が使用するかのように申し込んだことが欺罔行為(1)です。神戸山口組の組長が使用するつもりだと申告する義務があったということになります。そして、電話販売店の従業員は、知人女性が利用するものと錯誤(2)し、携帯電話本体という財産を交付(3)してしまいました。そして、携帯電話会社は、その携帯電話本体を販売した、つまり失ったことで、財産的損害が発生(4)しました。なお、詐欺罪では、仮に正規の料金を払ったとしても、携帯電話本体を失ったこと自体で財産的損害が発生したと考えます」
では、親や子、配偶者などの名義で携帯を契約して使用している場合も罪になるのだろうか?
「購入の際に、子どもや配偶者が使用すると申告して購入していれば、そもそも欺罔行為はありません。また、仮にそういった申告をしていなくても、一般人の家族が使うのであれば、携帯電話販売店もおよそ拒否しないでしょうから、申告する義務はなかったとして、やはり欺罔行為はなかったと考えられるのではと思います」
家族ではなく、友人や知人の名義で携帯電話を契約して使用することはセーフなのだろうか?
「ひとつの線引きとしては、本当の目的(誰が使用するのかなど)を販売店が知っていれば、販売を拒否するかどうかだと思います。例えば、本当の目的がヤミ金に転売する目的だった場合、当然販売店は拒否するでしょう。この場合は詐欺罪が成立しそうです。では、友人に使用させる目的だった場合はどうでしょうか。正直なところ、ケースバイケース(友人との親密度、販売店の約款などを考慮して)というしかないでしょう。ただ詐欺罪になる可能性も十分ありますので、やめておくほうが無難です。
なお、携帯電話不正利用防止法という法律もあります。通信事業者に無断で、通話可能な携帯電話を、『業として(簡単に言うと、何度も行うつもりで)』『有償で』譲渡・売買した場合は、犯罪になる可能性があります。この法律は振り込め詐欺などの対策のために制定されたものであり、友人1人に無料で貸してあげただけでは刑罰は科されません」
ただし今回は、指定暴力団である神戸山口組の組長であったことが大きな問題だったと、時光弁護士は指摘する。
「暴力団追放条例にもとづく暴力団排除のため、電話販売店は、指定暴力団の組長に携帯電話を販売することはないでしょうから、仮に神戸山口組の組長が使用するつもりだとわかっていれば当然拒否しています。だからこそ、神戸山口組の組長が使用するつもりだと申告する義務があったと考えることができます」
ところで、組長に名義を貸した知人女性は罪に問われないのだろうか?
「知人女性が、組長と一緒になって電話販売店に機種変更の申し込みをしていた場合、共同して詐欺をしたとして、詐欺罪(組長と共犯)が成立する可能性があります。勝手に名前を使われただけの場合は、詐欺罪にはならないでしょう」
つまり、家族の名義で携帯電話を契約することは基本的に問題ないが、友人や知人名義の場合は、転売したり、貸す時にお金のやりとりが発生することも考えられるため、詐欺罪や携帯電話不正利用防止法になる可能性もあるということだ。むやみに名義貸しなどしないのが賢明だろう。
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