元・天井桟敷舞台監督が、寺山修司没後30周年にラディカルな提言「脱・寺山のすすめ」

terayamashuji.jpg
『寺山修司:天才か怪物か』(平凡社)
 今年、没後30年を迎える寺山修司が、再び脚光を浴びている。忌野清志郎らとともにタワーレコードのポスターに起用されたのを皮切りに、世田谷美術館、ワタリウム美術館では大規模な回顧展を開催。パルコ劇場をはじめ、全国各地で30作品以上の演劇が再演される。さらには、スピードワゴン・小沢一敬やサカナクション・山口一郎らもファンであることを公言するなど、若い世代にもその存在が広く知られつつある。  学生の頃から俳句・短歌で天才的な才能を発揮していた寺山は、31歳の時に劇団「天井桟敷」を結成。折しも数々のカウンターカルチャーが花開いた60年代。唐十郎の「状況劇場」や鈴木忠志の「早稲田小劇場」らとともに、「アングラ演劇」と呼ばれる新しいジャンルを切り開いた。『市街劇』『暗闇演劇』『訪問劇』といった、それまでの“演劇”の枠にとどまらない数々のスキャンダラスな作品を上演し、それらの作品は30年以上を経た現代にまで語り継がれている。  さらに、エッセイストとしても『書を捨てよ、町へ出よう』『家出のすすめ』(角川文庫)といった作品でロマンティックな文才を見せ、青少年の煽動者と目された。そのほか、「映画監督」「放送作家」「作詞家」「競馬評論家」など実にさまざまな肩書を持ち、「職業・寺山修司」と自称していたのはよく知られた話だ。47歳の若さで死去したということもあり、寺山をカリスマ視する者は後を絶たない。  そんな寺山の仕事ぶりを間近で見てきた人物の一人が、映画配給会社アップリンク代表の浅井隆氏だ。10年間にわたって天井桟敷の舞台監督を務め、「伝説」と語り継がれる作品群を、内側から見続けてきた人物だ。高校生の頃に初めて天井桟敷の作品を目撃した浅井氏は、その衝撃を次のように振り返る。 「大阪のサンケイホールで、天井桟敷が『邪宗門』を上演したんです。煙がもうもうとした中でJ・A・シーザー(天井桟敷に所属した音楽家)の音楽がおどろおどろしく鳴る。大仕掛けのスペクタクルがあり、エンディングは『劇は劇場の外にあるんだ』というメッセージでした。そんな空間に飛び込んだのは高校生で初めて。これはかっこいいと思いました。それから、紅テントや黒テントなどが来るたびにいろいろ見に行ったけれど、それらが「芝居」だったのに対し、天井桟敷は「ショー」だったんです。当時、ブロードウェイミュージカルの『ヘアー』が、元祖ロックミュージカルとして話題になっていましたが、天井桟敷はあたかも日本版ロックミュージカルのようでした」  「演劇を通して、社会転覆を目指す」という天井桟敷のスローガンに魅せられた浅井氏は、上京後、天井桟敷に入団。それから10年間、浅井氏にとっては20代の青春の日々を、裏方として天井桟敷に捧げてきた。しかし、浅井氏の視点に立つと、その「伝説」の形は、世間一般に語り継がれているものとはやや異なるようだ。今でこそ「アングラ」は一つのジャンルとして確立されているものの、当時を知る浅井氏は「ほとんど蔑称のようなものだった」と証言する。 「僕たちは、自分で『アングラ』と言うことはありませんでしたね。普通に演劇をしていると思っていたから、『前衛劇団』であっても、アングラではなかった。当時、劇団員にはチケットノルマが課されており、30〜50枚のチケットを友人や知人に手売りしていました。有名だったわけでもなく、評価が高いわけでもなかったから、チケットを売るのも大変だったんです……。アングラ劇団員なんて名乗ったところで、家も借りることができない。みんなバイトをしながら必死で食いつないでいました」  そう笑いながら往時を振り返る浅井氏。だが、毎回苦戦を強いられる国内公演の一方で、ヨーロッパを中心とする各国の演劇祭に呼ばれ、『人力飛行機ソロモン』や『毛皮のマリー』『邪宗門』といった作品を上演。世界の最先端の劇団としての名声を獲得していったのだった。
IMG_4048.jpg
アップリンク代表・浅井隆氏
 この経験は、天井桟敷解散後に浅井氏が設立したアップリンクの映画配給の場にも表れている。 「日本で評価されていなくても、海外の演劇プロデューサーは天井桟敷を評価してフェスティバルに招待してくれました。アップリンクでも評価の定まった映画監督の作品を配給するばかりではなく、僕が映画祭で見て、いいと思った作品を日本に持ってくることをいつも心がけています」  数々のアヴァンギャルドな作品や、シリアスなドキュメンタリーを送り出すアップリンクも、寺山の存在なくしては生まれていなかっただろう。そんな浅井氏のこと。30周年という節目の年になされる寺山再評価のムードをさぞ喜んでいるのだろうと思いきや、「あまり加担したくない」と、そこには微妙な思いがあるようだ。 「本当に天井桟敷がすごかったのなら、当時もっとお客さんが入ってもよかっただろうし、もっと日本でも評価されてよかった。これは裏返せば、誰も自分の目で評価していないということですよね、昔も今も。当時の演劇は映像として残されていないし、あるのは台本と著書だけ。そこで、どんどん伝説が肥大化している。30周年で再び注目を集めることは、悪いことではないと思います。けれども、30年前に死んだおっさんの話よりも、いま面白い人を追いかけるべきではないでしょうか。かつて、寺山さんが亡くなった後の世間の様子を見て、彼を懐かしんだり、過去を見続けることはやめようと思ったんです。過去を振り返るのではなく、自分の感性で何か面白いと思ったら、演劇でも音楽でも映画でもなんでもいいから、正当に評価して、人に勧めたり、応援したりすることが大事だと思いますね」  すでに、浅井氏は寺山の本のページを繰ることもなければ、演劇作品の再演に足を運ぶこともないという。 「あえてラディカルに言うなら、寺山作品を読む必要もない。それよりも、自分で街の中の面白いものを見つけて探し出すべきだと思います。30年を経て、寺山さんの作品もすでに古典となりました。もしかしたら、本人も読まれることを望んでいないかもしれないですね」  寺山自身「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」と著書の中で語っている。寺山の仕事を10年間にわたって見てきたからこそ、浅井氏は寺山を振り返ることなく“今”を見て仕事を続けているのだろう。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●あさい・たかし 寺山修司の天井桟敷舞台監督を経て、87年、有限会社アップリンクを設立。映画の制作・配給・プロデュースを行い、映画上映やイベントができる「UPLINK FACTORY」、「UPLINK X」や「UPLINK Gallery」などを運営する。 <http://www.uplink.co.jp/

「『けいおん!』で人生が変わった」将棋界の重鎮“みっち”高橋道雄九段の、ほとばしるアニメ愛

IMG_4447_.jpg
 金髪パンチパーマや決めゼリフ「まじやべぇ!」など強烈なキャラで業界内外から注目を浴びる橋本崇載八段、軽妙な語り口やスイーツ大好きという個性的なキャラで将棋ファンに愛される加藤一二三九段といった個性的な棋士が話題になる一方、コンピューターとプロ棋士がガチンコで将棋の強さを競う「電王戦」をニコニコ動画で生放送するなど、最近何かとアグレッシブな動きを見せる将棋界。  そんな中で、いま特に注目を集めている棋士が「みっち」こと高橋道雄九段だ。御年53歳にして、先日開催された第5回AKB48選抜総選挙の上位3位の予想を見事に的中させ、ニコ動で放送された将棋の生中継では解説そっちのけでアニメ『けいおん!』に対する思いを熱く語るなど、将棋のお堅いイメージとは真反対のキャラクターを発揮する氏は、3月より個人ブログを開設。そこでもやはり、アニメやアイドルに対する、ほとばしるパッションを炸裂させている。  こうなったら、思う存分大好きなアニメやアイドルについて語ってもらおう! ということで、本人を直撃した! ──4月にニコニコ生放送で配信された第71期名人戦第2局2日目の解説で、「『けいおん!』で人生が変わった」と発言され、多くの将棋ファン、アニメファンに衝撃を与えた高橋九段ですが、この発言は事実なんですか? 高橋 はい。まさしくそうです。ブログを始めたのも、それが言いたかったからです。昔からずっと漫画──特に少年誌が好きで、「サンデー」「マガジン」「ジャンプ」といった雑誌やコミックスを買っていました。ただアニメとなると、娘が小さい頃は「娘と一緒に『セーラームーン』とかを見ている」という理由付けが世間に対してできていたんですが、この年になって男一人でアニメを見ているというのは、ちょっと恥ずかしくて……(苦笑)。それに最近はアニメがあまりにも多すぎて、どれを見たらいいのか分からなくて少し疎遠になっていたんです。 ──その中でも、特に『けいおん!』がよかった理由はなんだったのでしょうか? 高橋 説明しろと言われて、言えるようなものではないですね。パッと見て「これはいいな」と思ったから、そのままハマっちゃった感じでした。キャラクターの存在もありましたが、何より音楽が絡んでいるのが大きかったです。 ──『けいおん!』のキャラの中では、誰がお気に入りですか? 高橋 (ちょっとはにかみつつ)私はムギちゃん(キーボード担当の琴吹紬)。ホワホワしたところが大好きです。 ──分かります(笑)。しかし、ハマる最大のポイントは音楽だったんですね。 高橋 私の基本は音楽です。アニメも音楽が絡んでくるかどうかですごく違ってきて、今ハマっている『ラブライブ!』もそうなんですが、歌を一緒に歌って楽しめる部分があるかどうかは重要ですね。私にとって音楽は聴くためではなく、歌うためのものです。ほぼ毎日、寝る前に口パクで歌う練習もしています。 ──ちなみに、最近のヒットチューンはなんですか? 高橋 『ラブライブ!』の曲と、『とある科学の超電磁砲』シリーズのオープニングテーマです。 ──『ラブライブ!』といえば先日、「6thシングルセンター争奪第5回総選挙」が行われましたね。 高橋 そうなんですよ。終わってから選挙の存在を知って「あ~、しまったな」と思いましたね。次は絶対に参加したい! ……でも、誰が一番とか選べないですよ(ため息交じりに)。本当は全員に投票したいです。それじゃ、選挙にならないけど(笑)。 ──声優だと、三森すずこさんがお気に入りだそうですね。 高橋 まだあまり声優さんについては詳しくないんですが、とある作品で三森さんの声を聞いて「いい声優さんだな」と思いましたね。彼女以外にもPileさんは歌もダンスもうまいし、飯田里穂さんも明るい感じでいいですね。でも、私にとってアニメの基本は『けいおん!』なので、声優さんも「あ、『けいおん!』に出ていたあの人は、次はこのアニメに出るんだ」っていうふうに見ちゃいますね。 IMG_4429_.jpg ──もし誰か一人、声優さんにお会いすることができるとしたら、どなたと会ってみたいですか? 高橋 もしできることならば、豊崎愛生さんと一緒に歌いたい! やっぱり『けいおん!』の曲を歌いたいです。「GO! GO! MANIAC」「Utauyo!!MIRACLE」とかかなり速くて大変な曲をあんなに楽しく歌っているのを聴いていると、自分も一緒に歌いたくなります。 ──そろそろ4月スタートの春クールアニメもクライマックスに突入していますが、高橋九段が今ハマっているアニメはなんですか? 高橋 一概にどれが一番とかは言えないのですが、やっぱり『とある科学の超電磁砲S』かなあ。あとは『翠星のガルガンティア』がすごくいいですね。ほかには、世間的に注目されている『進撃の巨人』を、個人的にはどう判断すべきか悩ましいところですねえ。面白いんだけど、あのストーリーはどうだろう、とか(笑)。ただ画面の作りが素晴らしいので、見ていて面白いですよね。 ──アイドルにも精通されている高橋九段ですが、最近はAKB48関連でメディアに出ることも多いですね。 高橋 アイドルも好きで、アニメに行く前はそっちに傾いてました。基本的に、それぞれの時代に注目されている人たちは見てきました。最初は恐らく桜田淳子、山口百恵、森昌子の三人娘で、それからキャンディーズ、ピンク・レディー、おニャン子クラブ、モーニング娘。とハマって、必然的にAKB48に行きました。要するに、テレビが好きだったんです。テレビを見ていて面白いなと思ったのが、アニメやアイドル、音楽だったわけです。昔は音楽番組も花盛りでしたから、ずっとテレビを見ていました。 ──ちなみに、高橋九段の推しメンは誰ですか? 高橋 ゆきりん(柏木由紀)です。 ──でも今回の総選挙では、NMB48の山田菜々さんに投票されたそうですね。 高橋 彼女のことが好きというか、評価しているんです。チームのため、仲間のためにすごく努力していて、もう少しみんなに知られてもいいんじゃないかなという人って何人もいて、山田さんもその一人です。NMBの中でも、トップ2の陰にちょっと隠れがちなので、もっと前に出てほしいなと思って入れさせていただきました。そんな山田さんは今回28位。大躍進しましたね(第4回では46位)。ちゃんと評価してくれる人が、ほかにもいてくれるのはありがたいです。 ──最近では、ももいろクローバーZなんかが人気ですが、そちらはいかがですか? 高橋 (ももクロは)佐々木彩夏さんはかわいいと思うんですが、歌があまりピンとこなくて……。 ──やっぱり、音楽が重要な判断基準になっているんですね。 高橋 はい。結局、自分が歌いたいかどうかなんですよね。AKBは、だいたい30曲くらいは歌えますよ。ただ、確かにアニメとかアイドルを見るのも好きなんですけど、週に2回くらい、かなり向上心に燃えつつ30年くらいテニスをやってるんです。だから私の趣味は、アニメ、アイドル、テニスの三本柱ですね。 ──こうやってお話を伺っていると、娯楽に対する感度がすごく高いことに驚かされます。一方、高橋九段の本業である将棋界は、既存のイメージだと非常に堅い印象もあったのですが、ここ最近は「電王戦」やネットでの実況中継など新たなメディアを活用した展開や、個性的な棋士がメディア露出する機会が増えて話題を呼んでいます。 高橋 対局している姿だけ見ると、将棋の世界って難しそうなイメージがあると思いますが、実のところは比較的伸び伸びとしています。拘束時間は少ないし、完全に実力主義なので、年齢に関係なく尊敬される方も、そうでない方もいますし、上下関係もあまりない。意外と「こうしなきゃいけない」というルールがないので、自分なりの個性を出せる方が多いのではないかなと思います。そうは言いつつも、恐らく今までの将棋界だと何かと堅い意見も出てきたと思うんですけど、時代も世代も変わっていく中で、今の時代に合わせていこうという人たちが増えてきていることは確かですし、当然そうせねばいけないと思います。 ──一時は人気が低迷した時期もありましたが、最近では、子どもたちの間で将棋人口が増えていると聞きます。 高橋 はい。子ども大会みたいな催しをやると、どの会場にも何百人と子どもたちが集まります。人間同士でゲームを楽しむことで、考える力や人とのコミュニケーション能力もつくと思いますし、テレビゲームに負けず劣らず、子どもたちに娯楽として受け入れられている現状はうれしい限りです。現在、ネットの世界でも将棋が受け入れられているのも、やはり将棋という存在そのものに魅力があるということだと思います。 IMG_4439_.jpg ──ネット時代になって、新たな魅力を発信している将棋界ですが、「まじやべぇ!」で有名な橋本八段など、若くて個性的な新世代の棋士が出てきていますし、人気の若手声優・岡本信彦さんはかなりの実力者だという話も聞きます。 高橋 私としてはAKB48のグループの中で、将棋を指す子が出てこないかなという希望があるんです。将棋のプロや達人の中からアイドルが出てくるのではなく、アイドルの中から将棋の強い子が出てきてもいいんじゃないかなと思います。 ──そういう子たちを集めて、高橋九段プロデュースの将棋ユニットとか作ってみたり……。 高橋 やれるものならやってみたい(笑)。それはたぶん、その人自身のためになると思います。あれだけ多くのアイドルがいたら、かわいいだけだと個性が埋没してしまいますし、「アニメが好き」とか言っても、そこまで注目されないですしね。そこで「将棋をやっている」ってなったら、注目されると思いますよ。まあ将棋界だと、私みたいにアニメが好きとかいうと、異端ということで注目されるんですけど。……本当にプロデュースさせてくれないかなあ。 ──ところで、『けいおん!』好きをカミングアウトしたニコ動での解説に関して、将棋連盟から何か言われましたか? 高橋 たぶん将棋連盟の人たちは、なんの話をしているか分かっていないと思います。だから特に何も言われていません。ただ従来の将棋番組だと将棋の話しかできなかったし、そうであるべきだったんですけど、今回のニコ動での実況を含めて、ネットのおかげで自分の本当の姿を出せるようになりました。 ──ネットというメディアは、今までテレビでは出せなかった個性を出せる自由なメディアだと思いますか? 高橋 それは思いますね。以前より世間には将棋に対する固定観念があって、ごく一面しか見てもらえていない。素の自分が出せていないと、ずっとじれったく思っていたんです。今回ブログを始めたのも、本当の自分、素の部分を出したかったというのが最大の理由ですね。 ──いい大人がアニメを見るなんて、という風潮はまだ世の中にあると思いますが、そんな中で高らかにアニメ愛、アイドル愛を掲げる高橋九段に勇気づけられる同世代も多いと思います。 高橋 それが一番言いたいことなんです! 私も、この年代でアニメを見るなんて恥ずかしい、って思っていたことが恥ずかしいです。何歳になっても、好きなことは好きって言っていいんじゃないか。それが一番大事なことだと思います。「みんな好きなことは、好きなようにやっていこうよ」って、同年代の人たちに言ってあげたいですね。もちろん、やるべきことはちゃんとやりながらですよ(笑)。でも、「人生は一回しかないから、しっかりやりたいことはやっていこうよ」というメッセージに共感していただけたらうれしいです。 (取材・文=有田シュン) ●たかはし・みちお 1960年4月23日生まれ。将棋棋士。タイトルを5期獲得、順位戦A級を13期に渡って在籍。重厚・沈着な棋風と無口な印象から「地道高道」と呼ばれる、棋界の重鎮。また、AKB48の大のファンであり、漫画・アニメや特撮などのサブカルチャーから英会話、テニスまで幅広い趣味を持つ。 ブログ「みっち・ザ・わーるど」 <http://ameblo.jp/t-mitch142/>

「堤真一は本当にダメなオッサン」大注目のクリエイター・福田雄一が明かす、豪華出演陣の素顔

378A7611.jpg
撮影=尾藤能暢 
 テレビドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズや、『コドモ警察』『HK/変態仮面』など次々とヒット作、話題作を手掛け、今、最もエッジなクリエイターとして注目を浴びる福田雄一監督。そんな彼の最新作『俺はまだ本気出してないだけ』が、堤真一、橋本愛、生瀬勝久、山田孝之という魅力的なキャスティングで6月15日に全国松竹系で封切られる。  40歳で会社を辞め、「俺は漫画家になる」と夢を追いかけ始めた大黒シズオ(演:堤真一)と、彼に振り回される周囲の人々による哀愁のドラマが描かれる本作を、福田監督はどう実写映像化したのか。また、バラエティ番組の放送作家としても活躍する福田監督は、現在のテレビ業界に対してどんな思いを抱いているのかを聞いてみた! ──どういう経緯で『俺はまだ本気出してないだけ』が実写映画化することになったのでしょうか。 福田雄一監督(以下、福田) 4年くらい前に、まったく関係のない5人のプロデューサーから、原作をほぼ同じタイミングで勧められるという珍事件があったんです。最初に勧めてくれたのがNHKのプロデューサーで、「すごく好きな原作なんですけど、うちじゃできないんで、ほかのところでやってみてはいかがですか?」って話をいただいたんですが、そこでは笑い話に終わったんです。そんなわけで、特に原作をちゃんと読もうという気にはならずにいたんですが、その後2~3カ月くらいの間にいろいろな方からほぼ同時期に勧められて、「気持ち悪いくらいに勧められるな」と思っていた時に、すごく仲のいいプロデューサーに会う機会があって「また話が出てくるんじゃないかな」と思ってたら、「福田さんにぜひやってもらいたい原作があるんだ」って、ドンってコミックスを出されたんです(笑)。 ここまで多くの人に勧められるってことは何かあるんだろうなと思って、そこで初めて原作を読んだんですが、勧められる意味がよく分かりましたね。これはまさに僕がやるのにふさわしいなと思ったので、『大洗にも星はふるなり』を一緒にやったプロデューサーに、「原作を押さえてもらえないですか」って相談したんですが、その時点ですでに「堤真一さんでやりたい」と答えた覚えがあります。 ──原作を読んでいた人ほど、大黒シズオ役に堤真一さんという人選には驚かれたのではないでしょうか? 福田 でしょうね。ただ以前『THE3名様』をやった時に、原作の持つカッコ悪いイメージが、役者さんの力でさらに強くジャンプするという経験をしているんですよ。カッコいい3人の役者さんがファミレスに並んでカッコ悪い演技をすると、本当にカッコ悪い3人に見える。わざとらしい感じではなく、カッコいい人にちゃんとダメな人間を演じてもらう面白さが映像化の醍醐味である、というなんとなくの成功体験があったので、いわゆるダメな男を描く原作をそれっぽい役者さんで描くことは面白くないと思っていたんです。それで、このタイトルの実写化をやるんだったら意外性のある人で、でもちゃんと原作の味を損なわなくて面白い作品、というものを目指すべきと考えていました。ちょうどその頃、堤さんと舞台をご一緒する機会があったのですが、当時ハードなイメージしかなかった堤さんの素の顔を見るにあたり、「本当にダメなオッサンだな」と感じるに至りまして……。 ――一同笑 福田 ご一緒する時間が増えれば増えるほど、堤さんを見損なっていってる自分がいたんです(笑)。僕、本当にダメな人が大好きだから、堤さんのダメなところを見れば見るほど、好きになっていったんです。男として、人としていい意味で見損なっていったので、そこのタイミングにがっちり合ったんです。堤さんって人前に出るときちんとできますけど、普段は割とこんな(劇中のシズオのままな)人なので、ファンの人には残念だと思うのですが「普段はこんなに残念な人なんだよ」というところを、映画を通じて受け止めていただきたいと思いますね。 ──堤さんみたいなルックスのいい中年男性が、朝から横になってゲームやってるっていうビジュアルが、すごく生々しかったですね(笑)。 福田 生々しいですよ(笑)。あれは狙った通りです。彼の普段の体たらくを見せてもらっていたからこその自信はあったんです。だって、普段そうなんだもん。ありていに言うと、酒が入るとダメな人なんですよ。まず空気が読めなくなる。下ネタが増える。自分のダメな過去をさらけ出す。いいところが全然なくなるんですよ(笑)。普段はすごく紳士な方なんですけどね。 378A7577.jpg ──共演者も、アクの強いメンツがそろっていますよね。福田監督というと山田孝之さんのイメージもある視聴者もいると思うのですが、今回もメインキャラの一人・市野沢秀一役として物語を引っ張っていきますね。福田監督にとって、山田孝之さんはどういう役者ですか? 福田 今回思ったのが、揺るがないアプローチの方法を持ってくる役者だなということです。今回は、山田君に一言もダメ出ししていないんですよね。ぶっちゃけ、この(シリアスな)山田孝之を演出させてもらったのって今回が初めてなんです。基本的にずっとコメディを一緒にやってきて、これまでは「笑いを獲得してください」という発注しかしていないんですけど、今回は一切笑いの要素がない。その中で山田君が言っていたのが、「声が聴こえないくらいのボリュームでしゃべってもいいですか」っていうことで、それが彼の市野沢に対するアプローチだったんですが、そこを徹頭徹尾貫く姿を見て、「この役者さんはすごいな」と思いましたね。  市野沢って一番シズオに惹かれていて、彼を大切に思っている人じゃないですか? でも絶対に「惹かれてます」って言わないし、かといって、市野沢がシズオに惹かれていくさまを、いわゆる演技で見せているわけじゃない。それを山田君が完璧に演じたっていうのが驚きで。いつもは面白セリフしか言わせてないから(笑)、今まで自分がいかに山田孝之を無駄遣いしていたか痛感しましたね。日本の宝に対して、「勃起してくれないか」「チンコ入れていい?」とか、今までよく言っていたなと(笑)。 ──演技そのものではなく、雰囲気や佇まいで演じた、という感じですか? 福田 そうですね。彼の中で「これ」っていう落としどころがあったんでしょうね。それに対して僕も違うとも思わなかったし、ちゃんと市野沢の生きざまを見せてくれたのですごいと思いましたね。宮田役の生瀬(勝久)さんとも初めて仕事をしたんですけど、「そりゃ生瀬さんも仕事が来るわ」と思いましたね。一番最初の生瀬さんのシーンを撮った時、僕が思い描いていたのとはちょっと違うキャラクターを(生瀬が)思い描いてらっしゃったんですよ。比較的テンションの高い、なれなれしいおじさんの役作りで来てらっしゃって、ちょっと宮田と違うって思ったんですけど、生瀬さんのアプローチの仕方が分からなかったので「違うんです」「こうなんです」って指示するのはやめて、カメリハの前に「セリフをもうちょっとゆっくり言ってもらえますか」っていうお願いだけをしたんですよ。そしたら、カメリハであの劇中のキャラになっていたんです。長々と説明は全然していないんですが、口調の話をしただけで、役のアプローチを変えてきたんです。これができたら、そりゃ演出家は使うわと思いましたね。 ──出演者たちの演技力が遺憾なく発揮された作品になったと。 福田 ええ。あとは濱田岳君も良かった。岳君は最初、ノリのいい若者編集者を演じてくれていたんですけど、それはどうなんだろうなって思って、「この編集さんにとって、いかに“省エネ”でこの打ち合わせをやり過ごすかっていうのがテクニックだと思うんだよね。その中ですごく褒めるとか、すごく丁寧な物言いのほうが、シズオをすごく下に見ているとか、全然熱がないということが伝わるんじゃないか」的なことだけを相談したんですよ。そしたら生瀬さんと同じでカメリハの時でガラッと変わって、かつ岳君は変えたキャラクターにアドリブを足してきたんですよね。「と言うことで」ってシズオが原稿をしまっている時にドアを開けてあげるっていう(笑)。あのシーンは岳君のアドリブなんですよ。 ──確かにあのシーンの演技は、すごくいい味が出ていました(笑)。そんな映画版『俺はまだ本気出してないだけ』ですが、終盤が原作とはちょっとばかり違うテイストになっていますね。ここも原作を知っていた人は驚くポイントだと思うのですが、監督としては映像化の際に原作を改変していくことに対してどう思われていますか? 378A7585.jpg 福田 原作を振られる時に、自分のチャンネルにない作品を振られるとあたふたしちゃって、逆にいじれなくなっちゃうんですよ。基本的に僕は自分の身の丈を分かっているつもりなので、原作を見た時に自分の手に負えないと思った作品は必ずお断りするようにしています。それでいうと、『俺はまだ本気出してないだけ』に関してはけっこう自信があったんですよ。この作品は自分のチャンネルでいけると思った時に、この顛末は原作のファンにも絶対に納得してもらえるということに自信が持てたので、思いきって変えました。この映画をやるにあたって意識したのが『無能の人』と『釣りバカ日誌』なんですけど、『釣りバカ』ってファンタジーだと思うんですよ。あんないい奥さんなんていないし、出世しなくても釣りがやれればいいやって夢物語だと思うんですけど、それじゃいけないと思うんです。ハマちゃんってこんな人だから、お前もこういうふうに生きろよっていうのは、映画を見てくれる人に対してはひどすぎるメッセージだと思ったんですよ。見た人の奥さんが超鬼嫁だったら、現実を振り返った時に、げんなりしかしないじゃないですか。そういうふうにはしたくないなって思ったんです。だから「お前も会社を辞めちゃえよ」じゃなくて、「こんなことになっちゃうから辞めない方がいいぞ」というメッセージにしたかったんです。 シズオは救われなくてシズオ以外には救いがあるっていう終わりが、見ている側には救いになるんじゃないかなって。その点は、原作ファンには悪いようには伝わらないと思います。 ──2013年は『コドモ警察』『HK/変態仮面』そして本作と、毎月のように新作が公開されますが、今、なぜご自身の作品が受けていると思いますか? 福田 受け入れられているかどうかは別として、僕は若干、不満言いなんですよ。「あのドラマ面白くねえから、もっとああしたらいいのに」とか、人にはあまり言わないんですけど、沸々といっつも思ってるんです。『勇者ヨシヒコ』にしても『コドモ警察』にしても、深夜番組を普段から見てて、「こうしたらいいのにな」っていうのを具現化しただけなんですよ。だから、単純に僕の思い込みがみんなと同じだと思ってやっているので、たまたま応援してくれる人がいるだけなのかなって思ってますね。自分のやっていることはカウンターだってよく言われるんですけど、テレビ業界に一石を投じるみたいな大それたこととかは全然考えてなくて、まったく天然でやっているんです。 ──ちなみに、福田監督が今、テレビ業界に対して不満があるとするならば、どんなことですか? 福田 う~ん……。基本的にバラエティ番組の構成作家という肩書も持っているので、なかなか言いづらい部分もあるんですけど(苦笑)、そこまで視聴者に媚びなくてもいいのにな、と思うことはありますね。やっぱり僕らが小学生や中学生の時に見ていたテレビ番組って、「ほら面白いだろう」って上から視聴者に投げかけていたと思うんですよ。ドリフターズや『笑っていいとも!』やとんねるずさんの番組に、視聴率を取るための仕掛けはなかった。とにかく面白いことをやっていたら視聴者がついてくるっていう時代だったと思うんです。その時代を知っているから、やっぱりテレビって夢や面白いものを見させてくれるというイメージがあるし、なおかつ制作者側が「面白いやろ!どや!」って上から投げかけてくれるメディアじゃないといけないと思っています。  だから、いわゆる視聴者のためのお役立ち情報がメインになっている現状ってどうなのかなとは思います。もちろん今そういう番組が数字を取っているというのも事実なのですが、あんまり視聴者にへりくだってやると、バカにされるだけだと思うんですよね。CMを入れるタイミングも視聴者が一番気持ちいいタイミングで入れるべきだし、裏番組のことなんかも全然考える必要もない。もともとバラエティ番組の現場でもお仕事をさせてもらっている自分としては、視聴率を取る以上に、面白いものを提供するというスピリットを忘れちゃいけないと思っています。 (取材・文=有田シュン) ●『俺はまだ本気出してないだけ』 配給:松竹 監督・脚本:福田雄一 原作:青野春秋『俺はまだ本気出してないだけ』(小学館 IKKI COMIX刊) 出演:堤真一、橋本愛、生瀬勝久、山田孝之、濱田岳、指原莉乃、水野美紀、石橋蓮司ほか 6月15日より全国ロードショー <http://www.oremada.jp/>

“ビッグダディの元妻”林下美奈子さんを直撃!「巨額印税の使い道は?」「復縁の可能性は?」

IMG_2300.jpg
 テレビ朝日系『痛快! ビッグダディ』で一躍有名人となった“ビッグダディの元妻”こと林下美奈子さん。放送終了後に書き下ろした自叙伝『ハダカの美奈子』(講談社)は30万部を超える勢いで売れまくり、先月31日には宮崎移住後の一家を追ったフォトムック『完全読本 その後の美奈子ファミリー』(同)も刊行された。  テレビでは怒ったり泣いたりコロコロと忙しく表情を変え、自叙伝ではシンナーやDV被害経験、ダディとのセックスなどを赤裸々に明かした美奈子さん。取材場所に指定されたTBSを訪ねると、こんがり小麦色に日焼けした顔の小さいお姉さんが、深々とおじぎをして迎えてくれました。 ──今日は『ビッグダディ』のテレビ朝日ではなくTBSに呼ばれたので、少し意外でした。 美奈子 はい。あの、『金スマ』に……。 ──なるほど! ご自分がSMAPに会う日が来るなんて、想像してましたか? 美奈子 いえいえ、まさか。びっくりしますよね。全然考えてなかったです。明日、お会いできるということで、緊張してます。 ──『ハダカの美奈子』も好調だと聞きました。ダディも同じタイミングで『ビッグダディの流儀』(主婦と生活社)を出版していますが、美奈子さんのほうが圧倒的に売れているとか。 美奈子 うふふふ。あまり自分では、そこらへんはよく分かってなくて。ぜんぜん疎いんですよ。どうして売れているのか分からないです。 ──『ハダカ~』では、シンナーやDV被害の経験など、“衝撃的”ともいえる過去が赤裸々に綴られています。ここまでご自身をさらけ出したのは、どういうお気持ちから? 美奈子 過去がないと今の私はいないですし、いろんなことを経験してきたので、今もし、私と同じような状況だったり、同じことで悩んでいる人がいたとしたら、大丈夫なんだよ、って思ってほしいなと。私も、誰にも相談できなくて、一人でつらい思いをしたので。 IMG_2187.jpg ──「自分のことしか知らない相手に父のDVのことを相談したら、父のことを悪く言うばかりなので、誰にも相談しない子になった」という記述がありました。 美奈子 自分の中で結論っていうのは決まってるから、だったら人に話さなくてもいいかなって思うんです。お父さんのことにしろ、そのときの旦那のことにしろ、誰かに愚痴を言って、もし「あんたの旦那サイテーだね」って言われたら、私ムカついちゃうんですよ。悪口を言っていいのは、私だけでしょって、うふふ。 ──すごくお金にも苦労してきたとありましたが、この本でまとまったお金が入ってくることになります。使い道、考えてますか? 美奈子 うーん、一番上は中学2年生なんですけど、高校に進学するときにはお金がいりますし、なにしろ6人もいるので、これからずーっとお金が必要なことばっかりなんで、今は何かを買おうというのではなく、子どもたちを学校に行かせるためにですね、育児に使いたいです。 ──お金には、あんまりこだわりがない? 美奈子 ないんですよ。欲しいものって聞かれても何も出てこないですし。暮らしていけるだけあればいいというか、なければないで、それなりの生活をすればいいかなって。あ、洗濯機が欲しいくらいかな(笑)。 ──『その後の美奈子ファミリー』に子どもたちの写真もたくさん載っていますが、本当に楽しそうに写っています。 美奈子 ねえ、すごいきれいに撮っていただいて、ありがたいです。 ──宮崎は合いますか? 美奈子 気候もいいですし、人も温かいですね。 ──週刊誌には、ダディが暮らす岩手に行くんじゃないかって話も出ていました。 美奈子 あははは、それはないですね。 ──林下という名字はそのままで? _MG_9400.jpg 美奈子 あんまり考えてないんですけど、まあ家族というか、子どもたち同士がきょうだいという気持ちがあるし、清志さんが「しばらく使ってていいよー」って言ってくれたので。 ──ダディやダディのお子さんたちとも、今でも家族という感覚ですか? 美奈子 そうですね。子ども同士もきょうだいという気持ちですし、私も、ちゃんと学校行ってるかなーとか、彼氏とかいるのかなーとか、やっぱり気になるので、親として見てるんだと思います。 ──ずばり、復縁の可能性は? 今現在のお気持ちとして。 美奈子 今現在ですか、今現在は、ない! うふふふ。 ──会いに行ったりすることはあっても、もう一度、旦那さんと奥さんという形にはならない? 美奈子 今のところ、そうですね。ないです。 ──『ハダカ~』には、ダディと会う前には二度と結婚しないと決めていた、と書かれていました。 美奈子 そうなんです、そう言ってたんですよ。だから、何があるか分からないですよね。明日、私が何を言ってるか、ぜんぜん分からないです。あはははは。 (取材・文=編集部/写真=名鹿祥史)

パク・チャヌク監督、ハリウッド進出作を語る!「狭い世界を脱したい。人間の原始的欲求だよ」

ParkChanwoo01.jpg
巨匠ながら物腰の柔らかいパク・チャヌク監督。
「ハリウッド進出第1作ということで気兼ねした?」という無礼な質問にも笑顔で回答した。
 肌と肌が触れ合うほどの息苦しい空間から、ひとりの“オールド・ボーイ”が広い世界へと飛び出していった。そのオールド・ボーイの名前はパク・チャヌク。現在49歳。『JSA』(00)の大ヒットで韓流映画ブームを呼び、15年間にわたって監禁され続けた男の復讐談『オールド・ボーイ』(03)でカンヌ映画祭審査員特別グランプリを受賞した、韓国映画界が誇る国際派監督だ。妥協なきバイオレンス描写と人間の本能を目覚めさせるような官能美を描くことを得意とするパク・チャヌク監督は、最新作『イノセント・ガーデン』でハリウッド進出を果たした。『アリス・イン・ワンダーランド』(10)『永遠の僕たち』(11)のミア・ワシコウスカが少女から大人の女へと変貌していく様子を、チャヌク監督らしい独自の肉体言語で謳い上げている。日本での公開を直前に控え、チャヌク監督が日刊サイゾーの単独インタビューに応えた。  『イノセント・ガーデン』は鋭敏な感覚を持つ少女インディア・ストーカー(ミア・ワシコウスカ)が主人公。毎年謎の人物からの誕生プレゼントを受け取っていたインディアだが、18歳の誕生日に最愛の父親を交通事故で亡くしてしまう。美人すぎる母親エヴィ(ニコール・キッドマン)とはウマが合わず、広い屋敷の中でインディアはひとりぼっち。そして父親と入れ替わるように現れたのが叔父のチャーリー(マシュー・グード)だった。ミステリアスで博学なチャーリーにエヴィもインディアも魅了されていく。だが、チャーリーの出現と同時に、なぜかインディアの周囲からは次々と人が消えていく……。人気ドラマ『プリズン・ブレイク』の主演俳優ウェントワース・ミラーが匿名で書いたオリジナル脚本をベースに、チャヌク監督がこれまでの作品とはまるで異なる洗練された色彩美の世界を構築したことに驚かされる。 ──パク・チャヌク作品というと、ソン・ガンホ、チェ・ミンシクといった体臭がぷんぷん漂うような男優たちがひしめく汗まみれな世界という印象が強かったのですが、今回の撮影現場ではミア・ワシコウスカとニコール・キッドマンという美女たちが待ち構えていたわけですよね。これまでになく新鮮な気分で演出できたんじゃないでしょうか? パク・チャヌク 確かに、その通りだね(笑)。韓国と米国では撮影スタイルに幾つかの違いがあったけれども、撮影スタイルの違いよりも普段の顔ぶれとまるで違うことが僕にとってはとても刺激的だった。しかも、ミアとニコールという演技のタイプも年齢も異なる2人の美人女優を演出できたんだからね(笑)。韓国ではどうしても、いつも同じようなキャストとスタッフの顔ぶれにならざるを得ない。韓国がいい、米国がいい、ということではなく、新しい顔ぶれと仕事ができたということが僕にとっては特別な体験だったんだ。
innocentgarden01.jpg
広い屋敷を舞台にしたサイコミステリー『イノセント・ガーデン』。
18歳になるインディア(ミア・ワシコウスカ)は母エヴィ(ニコール・キッドマン)に
愛情を感じることができない。
──これまでのパク・チャヌク作品は、軍事境界線を題材にした『JSA』、監禁そのものを描いた『オールド・ボーイ』、家庭の中に押し込められた若妻が吸血鬼に変身する『渇き』(09)など、結界や壁によって閉じ込められた人々が主人公になってきました。『イノセント・ガーデン』も生まれ育った屋敷から出ていくことができない少女の物語。狭い世界に閉じ込められた主人公が自由を求める―これはパク・チャヌク作品のメインテーマと受け取っていいでしょうか? チャヌク (うなずきながら)僕が閉じ込められた人々を描き続けているのには、2つの理由があるんです。ひとつは、狭い空間を脱して広い世界を目指すという行為は人間の原始的欲求だということです。社会で暮らしている人間は誰しも社会から拘束され、束縛を受けている存在です。束縛を嫌って自由を求めることは、肉体が発するとても自然な欲求なんです。もうひとつの理由は、閉じた狭い世界を舞台にすることで、それをひとつの宇宙として描くことができるということです。映画において、ひとつの宇宙を設定することはとても効果的。空間を限定することで、人間の本質により迫ることができる。また空間を狭めることで、空気の密度を濃くすることもでき、より凝縮した形でシンボリックに事象を描くこともできるんです。観客のみなさんは僕の作品を「あっ、これは小さな宇宙なんだな。この世界に人生が凝縮して詰まっているんだな」と鑑賞することができるんじゃないでしょうか。 ──そんなチャヌク監督のハリウッド進出第1作の脚本を、脱獄ドラマ『プリズン・ブレイク』の主演俳優ウェントワース・ミラーが書いたというのも面白い合致ですね。 チャヌク ミラーが書いた脚本を渡されたとき、赤の他人が書いたストーリーだとは感じられなかった(笑)。米国で撮った作品なんだけど、まったく新しいテーマに挑戦した、という気にはならなかったね。 ■脚フェチは必見。ミア・ワシコウスカの官能的な戴冠シーン ──韓国ではチャヌク監督が脚本から手掛けていたわけですが、ウェントワース・ミラーの脚本には今回かなりアレンジを加えたんですか? チャヌク 僕の作品はオリジナル性が高いように思われているけど、実はそうでもないんです。それこそ『オールド・ボーイ』は日本のコミックが原作でした。『JSA』も原作小説があり、『渇き』はエミール・ゾラの不倫小説『テレーズ・ラカン』を下敷きにしています。まぁ、完成した作品は、原作からずいぶん違ったものになってますけどね。今回の『イノセント・ガーデン』も同じようなスタンス。ウェントワース・ミラーのオリジナル脚本を原作として位置づけ、そこから自分で脚本に手を加えていった。かなり僕のアイデアも盛り込んだけど、完成した作品を観たら、思っていたよりもミラーの書いた世界から大きく逸脱したものにはならなかった。ミラーが植えた根っこや幹の部分をしっかり残して、そこから伸びてきた枝や葉っぱを僕が自由に刈り込んで作ったのが今回の『イノセント・ガーデン』だと言えるだろうね。
ParkChanwoo02.jpg
「劇中で何度か卵が登場します。ヒロインはまだ孵化する前のひな鳥の状態で
あることを示したものです」とチャヌク監督は自作を語った。
──ミア・ワシコウスカの脚をフェティッシュに捉えているカメラワークが実に印象的です。サドルシューズを脱ぎ捨て、ハイヒールに履き替えるシーンは脚フェチにはたまらないものがあります(笑)。少女の成熟を足元から描こうとした狙いについて教えてください。 チャヌク 足元へのこだわりは、ミラーのオリジナル脚本の段階からあったんだよ(笑)。主人公のインディアは風変わりな女の子で、いつもサドルシューズばかり履いていて、母親のエヴィがうんざりしているというシーンがあったんだ。それで「インディアは、なぜサドルシューズにこだわるんだろう?」と考えて、大事な人からのプレゼントという設定を思い付いたんだ。逢ったことのない人物から、毎年必ず誕生日に彼女の足のサイズにぴったりなサドルシューズが贈られてくる。少女の足のサイズって年々変わるものだから、ぴったりのサイズのシューズを用意できる贈り主はかなりミステリアスな存在。靴を使って少女の成長過程が描ければ面白いと思ったんだ。さらにインディアは18歳の誕生日を迎え、サドルシューズを脱いでハイヒールを履くことで完璧な大人の女へと変身する。ハイヒールを履くシーンは、王女が王妃になる戴冠式のイメージで撮影したんだよ。 ──叔父チャーリーと出会ったことで、インディアの中に潜む特殊な才能が覚醒していく。インディアは特別な女の子なんでしょうか、それとも18歳の女の子は誰もが特別な存在なのでしょうか? チャヌク 実は僕には、18歳になる娘がいるんです(笑)。やっぱり女性にとって18歳という年齢は特別なもの。インディアは映画の中では特別な女の子のように映っているけれど、他の18歳の女の子と変わらない部分も持っている。あの年齢の女の子は、みんな特別な存在なんじゃないかな。美しいものに惹かれながらも、それと同時に怖いもの、邪悪なものにも惹かれてしまう。思春期の女の子の中に潜んでいる様々なものが、インディアには投影されている。独特な存在であり、かつ普遍的な存在。それがインディアなんです。 ■パク・チャヌク作品史上、最高に残酷なシーンとは……? ──ファンというのはとても身勝手です。チャヌク監督が初めてのハリウッドでこんなにも美しい作品を撮り上げたことに驚く一方、「チャヌク監督なら、もっと流血ドロドロな過激シーンも撮れたはず。ハリウッドに対して気兼ねしたんじゃないのか」なんてことも思ってしまいます。 チャヌク 今回、そのことは僕もよく耳にします(笑)。米国作品だったから暴力描写が控えめになったんだろうとね。でも実際は、その逆だったんです。今回の作品は物語の世界観に合わせて静かな抑えたものを考えていたんですが、製作サイドからは「もっとやってくれ!」と煽られたんです(笑)。具体的なシーンで言うと、最初に描かれる殺人シーンでは、殺人犯がベルトを外すショットでシーンが切り替わるというのが僕の考えた最初のイメージでした。脚本がそうでしたし、イメージボードもそうしていたんです。ですが製作サイドから「それじゃ生ぬるい。首を絞めるシーンまで見せよう」と強く言われ、「じゃあ、とりあえずそのシーンも撮っておきます。編集の段階でどっちがいいか決めましょう」ということになったんです。それで、製作陣がみんな「やっぱり殺人シーンがあったほうがいい」と言うので、このような形になったんです(苦笑)。
innocentgarden02.jpg
脚フェチには堪らないシーンがいろいろ。
ミア・ワシコウスカのシャワーシーンも見逃せませんよ!
──やっぱり、人間の残酷な部分、おぞましい部分もきっちり描いてこそ、パク・チャヌク作品ですからねぇ。 チャヌク 米国の製作サイドもそのように思っていたみたいですね(笑)。今回、僕が暴力描写をなるべく抑えたいと思ったのは、米国作品だからということではなかったんです。作品の世界観に合わせようと思ったことが大きかった。『イノセント・ガーデン』は18歳の女の子から見た世界なんです。だから、インディアと同世代の10代の女の子たちがこの作品を観たときに顔を背けてしまうようなグロい描写は、なるべく避けたかった。やっぱり、あの頃の年齢の女の子は基本的に美しいもの、優雅なものが大好きですからね。そのため「今回のパク・チャヌクは残酷描写が控えめだ」と思われているようですが、でも僕自身は必ずしもそうは思わないんです。後半のインディアがシャワーを浴びるシーンでは、その日に目撃した事件の様子を思い出しながら彼女はエクスタシーを感じるんです。僕の作品の中で、こんなにも女性の残酷さ、恐ろしさを描いたシーンは今までになったはずですよ(笑)。 ──確かにそうですね。『イノセント・ガーデン』は、チャヌク監督の18歳になる娘さんへの最高のプレゼントになったようですね。 チャヌク えぇ、僕の娘も喜んでくれています。「お父さんが撮った作品の中で、今回のがいちばん好き」と言ってくれました(笑)。  * * *  子煩悩なところも、どこか『オールド・ボーイ』の主人公と重なるパク・チャヌク監督だった。パク・チャヌク作品の主人公たちは自由を求めて広い世界へと解放されていくのが常だが、彼らは思いがけない事態へと巻き込まれていき、やがて衝撃的な真実に触れることになる。韓国映画界を飛び出した鬼才を、これから待ち構えているのは一体何だろうか。 (取材・文=長野辰次/撮影=名鹿祥史) innocentgardenmain.jpg 『イノセント・ガーデン』 監督/パク・チャヌク 脚本/ウェントワース・ミラー 撮影監督/チョン・ジョンフン 出演/ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グード PG12 配給/20世紀フォックス映画 5月31日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー <http://www.foxmovies.jp/innocent-garden●パク・チャヌク 1963年韓国ソウル生まれ。映画製作と映画評論を並行して活動した後、『JSA』(00)が記録的大ヒットに。続いて『復讐者に憐れみを』(02)『オールド・ボーイ』(03)『親切なクムジャさん』(05)を“復讐三部作”として発表し、世界の注目を集めた。その他にカンヌ映画祭審査員賞を受賞した『渇き』(09)、精神病院を舞台にしたラブコメ『サイボーグでも大丈夫』(06)、iPhoneで撮影した短編『Night Fishing』(11)などがある。

今田耕司も太鼓判! “かわいすぎる”「ゼクシィ」CMガール・松井愛莉を直撃!

IMG_7718.jpg
か、かわいい……。
 結婚情報誌「ゼクシィ」(リクルート)の6代目CMガールを務める、“かわいすぎる”女の子をご存じだろうか? 同誌が初めて行った「CMガールオーディション」で約400名の応募者から選ばれた、福島県出身のモデル・松井愛莉ちゃんだ。  アイドルグループ「さくら学院」の元メンバーで、かつて鈴木ちなみや大屋夏南のブレイクを予見した“美女フリーク”今田耕司も注目しているとあって、今にわかにメディアを騒がせ始めている。身長170cm、股下87.2cmという文句なしのスタイルに、まだあどけなさが残る笑顔がまぶしい。若干16歳にして“花嫁”を演じた愛莉ちゃんを、都内の撮影スタジオに訪ねた。 ──やっぱり背、高いですね! 松井愛莉(以下、愛莉) あ、はい。今、170cmちょっとくらいです。モデルさんとしては、もう少し伸びてほしいんですけど、プライベートでは本当にもう……。私、背が高いのがすごくコンプレックスなんです。 ──いやいや、すごく素敵ですよ! 先日、今田耕司さんが『しゃべくり007』(日本テレビ系)で“注目の美女”として愛莉ちゃんを紹介して以降、一気に注目度が高まりましたね。 愛莉 すごく驚きました。前日に事務所の方に(名前が出るよと)教えていただいたんですけど、本当にびっくりして(照)。 ──「週刊プレイボーイ」(集英社)などでも、「今年ブレイク間違いなし」と大きく取り上げられていましたね。愛莉ちゃんとしても、今年は勝負を賭けようとか、そういう意気込みはありますか? IMG_7484.jpg 愛莉 勝負というか、いや、でも、いろいろ頑張っていきたいとは思います……はい。 ──えーと、しゃべるのはあまり得意じゃない? 愛莉 あはは、すみません、すごい苦手で……(笑)。 ──この3月で「ニコラ」(新潮社)の専属モデルを卒業して、これからは松井愛莉という名前だけでお仕事をしていくわけですが、メインの活動はやはりモデル業ですか? 愛莉 はい、モデルさんメインでやりたいという気持ちもありますが、機会があれば、いろいろ挑戦してみたいです。 ──「さくら学院」では歌も歌っていましたよね。 愛莉 歌って踊ってました。歌も踊りも好きなことは好きなんですけど、苦手といえば苦手……(笑)、ダンスが特に。 ──「MODEL’S DANCE PROJECT」(http://kc-modelsdanceproject.com/)のレッスン動画を拝見しましたけど、キビキビ動いているように見えましたよ。 愛莉 本当ですか!? うそだ~(笑)。 IMG_7447.jpg ──アイドルとして1年半活動したわけですが、その中で得たものはありますか? 愛莉 すっごいいっぱいあります。まず、すごい人見知りで、本当に初対面の人としゃべれなかったんですけど、「さくら」に入っていろんな方とお会いするようになって、これでもだいぶ鍛えられたんです。本当に、とても実になってます。 ──同じ「さくら」出身の三吉彩花さんも大活躍中ですね。すごく仲がいいとか。やはり刺激になりますか? 愛莉 はい、こないだ2人でディズニーランドに行きました! 目指しているものはお互い違うんですけど、すごく刺激になりますね。 ──お仕事も忙しくなって、学校もあるし、プライベートの時間もなくなってきたと思いますが、オフの日は何してるんですか? 愛莉 いえ、意外とありますよ。友だちと遊ぶか、ゴロゴロしてるか。あとはジム行って運動したり買い物行ったり……。私すっごい甘いものが大好きで、一時期パンケーキにハマってました。ブ厚くて、生クリームとかアイスとかチーズケーキも乗ってるんですよ。 ──ぜんぜん太りませんか? 愛莉 いえいえ、すぐ太っちゃって……。太ると、顔と太ももにつくので、あとから調節します(笑)。 ──現在の愛莉ちゃんの目標は? 愛莉 ファッションショーで歩くことが、今の一番の夢ですね。カッコよく歩けるようになりたいなと思います。この間、初めて出させていただいたんですけど、もっと、もっとカッコよく歩けるようになりたいです。 IMG_7925.jpg (撮影=名鹿祥史/構成=編集部) ●まつい・あいり 1996年12月26日生まれ、福島県出身。身長170cm。2009年に「第13回ニコラモデルオーディション」に応募し、約1万4000人の中からグランプリに選ばれる。今年3月に「ニコラ」を卒業し、現在は「25ans」(ハースト婦人画報社)などのファッション誌で活躍中。 ブログ<http://ameblo.jp/airi-matsui/>

「生涯わくわくさん!」久保田雅人が『つくってあそぼ』裏話をぶっちゃけた、本当のワケ

IMG_4147_.jpg
トレードマークの赤い帽子と丸メガネは現在、3代目だそう。
「初代のメガネは棺桶に入てくれって、カミさんに頼んでるんだよ」とわくわくさん。
 今年3月、23年の歴史に幕を閉じたNHK・Eテレ(教育テレビ)の工作番組『つくってあそぼ』。“わくわくさん”こと久保田雅人と熊の男の子“ゴロリ”が、身近な材料を使って工作を作る楽しさを子どもたちに伝えてきた同番組だが、放送終了が発表されるや否や、ネット民は騒然。放送終了を惜しむ声だけでなく、最終回の視聴率を上げて「わくわくさんとゴロリに有終の美を飾らせてあげよう」と呼びかける動きもあった。  それから約1カ月半、満を持してわくわくさんが民放に降臨。『有吉反省会』(日本テレビ系)にて、自身のブログでゴロリを着ぐるみ扱いしたり、実は工作はすべて造形作家が考えていたことなどを暴露してしまった件について反省したのだが、『つくってあそぼう』出演時とは異なる意外な素顔が大きな話題となっている。一体、わくわくさんはどうしちゃったのか、本人を直撃した。 ――『有吉反省会』出演後、反響がすごかったですね。 久保田雅人(以下、久保田) 「わくわくさん、ぶっちゃけすぎ」って盛り上がっちゃったみたいですが、自分的にはそんなにぶっちゃけた感じはしないんですけどね~。あれが普通ですから。でも、番組でお話ししたことにウソはございません! NHKからも苦情は一本も来ていないので、たぶん大丈夫です。 ――なんでも、22年ぶりの民放出演だったとか。 久保田 かれこれ芸能生活30年になりますが、スタジオで人間としゃべったのは10回もないんです(笑)。ゴロリくんや『おかあさんといっしょ』のキャラクターとはしゃべりますが、相手が人間だと、やっぱり緊張しますね~。実は、収録では顔が真っ赤になっちゃって。緊張すると早口でペラペラしゃべっちゃうんで、余計に意外だと思われちゃったみたいですね。 ――有吉さんから付けられた「ウザウザさん」というあだ名は気に入っていますか?  久保田 あまりウザくないと思うけどな~(笑)。まぁ、凝り性なところはありますね。 ――これまで番組内で数百もの工作を作られたそうですが、一番大変だった工作ってなんですか? 久保田 一円玉を落とす貯金箱ですかね。500mlのペットボトルの口の部分にボール紙で作ったワッカを載せて、その上に1円玉を置きます。このワッカを割り箸ではじき飛ばして、1円玉を中に入れる。ゴロリくんは3回目で成功したのに、私は2時間もかかってしまいました……。 ――やっぱりゴロリのほうが、手先が器用だったんですね。 久保田 はい……。着ぐるみのまま、粘土でもなんでも作っちゃうんだもん。もともと器用じゃなきゃ、できませんよね。よく「わくわくさん、わざとゲームに負けているんですか?」って聞かれたんですが、本気でやってましたよ! でも、4年に一度くらいしか勝てなかったですね~。音感と運動神経は、お袋の腹ん中に忘れてきちゃったみたいで。最初の頃は番組の挿入歌を歌っていたんですが、3回目くらいでスタッフから「もういいですよ」って言われちゃって(笑)。 ――わくわくさんとして、一番大事にしていたことはどんなことですか? 久保田 子どもたちに作る楽しさを教える、ということですね。何が難しいかというと、テレビの中でいくら頑張っても、子どもたちの目の前で作ってあげるインパクトには絶対かなわないんです。ですから、できるだけ幼稚園などに足を運んで、工作教室を行ってきました。楽しさを学んでもらうには、やっぱり楽しそうに見せなきゃいけない。それから「わぁ、面白かった」で終わらせてはいけない。「よし、やってみよう」っていうところまで持っていかなければならないんです。そこが一番大変でしたね。
IMG_4053_.jpg
最近一番わくわくしたのは、やはり民放出演だったそう。
――番組終了を惜しむ人は多く、特に最終回は「視聴率50%を目指そう」とネット上で盛り上がっていましたね。 久保田 実はまだ、最終回は見てないんです。カミさんは録画してると思いますけど。基本的に、自分の番組ってあんまり見ないんです。自分で納得した放送って、20年間で3本くらいしかないんです。凝り性だから、“ここが違うんだよな~”って放送ばっかりですよ。  でも放送終了後、メールや手紙で感想が何百って来て、うれしかったですね~。「子どもの頃から見てました」「子どもが泣いてました」とかね。泣きながら手紙書きましたって子もいて。「わくわくさん、どうしてテレビやめちゃうの?」って。それ聞かれるのが一番困るんだよね。「NHKの強い要望により……」って説明したいけど、そういうわけにはいかないし。ごめんなさい、としか言いようがないよね。 ――やっぱり、寂しいですか? 久保田 「あぁ、終わっちゃったんだな」という感じですね。視聴者の反応を見てゴロリくんとも話してたんですが、「俺たち、すごいことやっちゃったんだね」って。ただ、ありがたいことに、番組終了後もゴロリくんと一緒に全国各地を回って工作ショーをやらせていただいているので、感傷に浸る余裕もないというか。 ――講演会は延べ4000回を数えるそうですね。全国各地、行ったことがない都道府県はないとか。 久保田 番組がスタートする前に子どもたちの前で工作するのに慣れなきゃいけないなと、NHKにお願いして幼稚園を紹介してもらい、自分で電話して行き始めたのが始まりです。ショーでは紹介する工作はもちろん、構成まで全部自分で考えています。番組で紹介したものをステージ向けにアレンジして、お父さん・お母さん向けの説明やNHK的に話せなかったお話もしています。テレビとはまた違った面白さがありますよ。体が動く最後の最後まで、わくわくさんとゴロリくんとしてショーをやろうと思っています。ゴロリくんにも言ってるんですよ、「俺の腹の黒いうちは休ませねぇよ」って(笑)。 ――そもそも久保田さんは、声優としてデビューされたそうですね。 久保田 はい。『タッチ』の上杉達也役の三ツ矢雄二さんと『ワンピース』のルフィー役の田中真弓さんが作られた劇団の第一期生に応募したんです。本当は舞台がやりたかったんですが、お2人の口添えでアニメ声優として出させてもらえることになって。その後、NHKの子ども番組に出演していた田中さんの勧めで、『できるかな』に続く工作番組のオーディションを受けたんです。 ――その後、わくわくさん一本で活動されてきたわけですが、今後、久保田雅人として声優や俳優として活躍していきたいなという思いはありますか? 久保田 う~ん、どうですかね~。今はわくわくさんとしての講演会活動、工作教室やショーがメインで、毎日舞台をやっているようなもんですから。ただ、難しいですよね。昔、渥美清さんが、「渥美清が寅さんに食われちゃった」って言ったんですよ。何をやっても寅さんに見られてしまうと。それと同じですよね。何をやっても、わくわくさんに見られてしまう。久保田雅人が、わくわくさんに食われちゃったんですよ。あるいは、自ら食われたのかもしれません。それが役者としてよかったのか悪かったのか、これは死ぬまでわからない。ただ、誰にでも胸を張って言える主演作を1本持っているというのは、俳優としてものすごく幸せなことです。それから、自分の幼い子どもに胸を張れる番組を1本持っているというのも、父親として、男として最高です。“役者・久保田雅人”がなくなっちゃったというのは、やっぱり役者として寂しいですけどね。 ――でも、ぜひバラエティには、また出ていただきたいです! 久保田 はい、機会があればぜひ。私がお話ししている裏話っていうのは全部、番組を作るに当たってのわれわれの本当の思いなので、それをみなさんに伝えたいんですよ。出演者、スタッフが一丸となって22年やってきましたから。‟本当はこういうふうに作っていたんですよ“というのを、番組が終わった今だからこそ、ちゃんと伝えていきたいんです。 (取材・文=編集部) ●くぼたまさと・どっとこむ <http://www.kubota-masato.com/>

「趣味はネットと悩み事……」実はネガキャラ!? “マーサ”高橋真麻の今

masatakahashi10_.jpg
撮影=名鹿祥史
 2004年にアナウンサーとしてフジテレビに入社した、高橋真麻。俳優・高橋英樹の一人娘が女子アナになったと注目を浴びた、通称「マーサ」である。報道番組での聞きとりやすいアナウンスが評判を呼ぶ一方、バラエティ番組でタレントから積極的に絡まれるような愛らしさも持ち合わせ、お茶の間の人気を高めていった。  入社10年目となった2013年3月に、フジテレビを退社。フリーのアナウンサーとして活動を始めた。会社という鎧を捨て、たったひとり世間にさらされる立場を選んだ理由は? 「高橋英樹の娘だから」と言われ続けたことへの素直な気持ちとは? そしてウワサの彼氏との仲は……? こちらから聞いていないことまで語ってくれたマーサさん、いい人すぎませんか? ――3月でフジテレビを退職しフリーになりましたが、現在のところいかがですか? 高橋真麻(以下、真麻) まだ気持ちとしては、あまり変わらないですね。お仕事もフジテレビの方と関わることがほとんどですし、遊ぶのもフジテレビの女子アナばかり。芸能人の友達はいないんですよ。フジテレビ時代、自分はスタッフ側の人間だという意識があったので、芸能人の方とは一線を引いていましたから。 ――そもそも真麻さんは、高橋英樹さんの娘さんがフジテレビに入社したということで話題になりましたけど、その後の活躍で、バラエティにも向いているというイメージが強くなったと思うんです。だから退社してフリーになったことも多くの人が納得できたように思いますが、実のところなぜフリーに? 真麻 私は小さい頃からアナウンサーになるのが夢で、学生時代に自分ができる120%の努力をして、やっとなれたんです。それなのに、「コネじゃないの?」とか「かわいくない」とか、ネットや雑誌に悪口ばかり書かれてしまった。入社直後は、そこまで人から批判を受けるなんて初めてでしたから、余計ショックを受けてしまって……。実際、自分がさえないっていう思いもあって、なかなか仕事で開花しませんでしたし。私って何をやっても嫌われるんじゃないか、ブサイクって言われてるんだって、ずっと思ってました。 ――ネガティブな思考になっていたんですね。 真麻 しかし5年目ぐらいから、だんだん「バラエティで体張ってて面白いね」とか、「ニュース読みもけっこううまいよね」なんていう意見が少し聞こえ始めて。ありがたいな、うれしいなって思うようになったんです。そして7年目の“お台場合衆国”で「マーサの朝唄」という47日間連続で歌わせてもらうという企画があって、初めてお客さまの前で仕事をしたんです。そこでお客さまの生の反応を見て、視聴者の方たちってこんなに温かいんだ、笑ってくださるんだって、ちょっと自信になったんです。 masatakahashi11_.jpg ――入社7年目で、ようやく自信に。 真麻 はい。それを機に、少しずつ前向きに考えられるようになってきたんです。こんなに視聴者の方たちが温かいなら、新しいことをやってみたい、いろんな方とお話ししたいとも思うようになって。10年目というのをきっかけに、フリーになることを決意しました。でも「朝唄」をやったときは、辞めようなんてまったく思ってなかったですけどね。 ――明るいイメージがあるので、悩んでいたとは知りませんでした。 真麻 すごくネガティブですよ。番組でもこういう取材でも、最終的に視聴者や読者の方が面白いって言ってくださることが目標。だからオンエアがあると、リアルタイムで自分の名前をTwitterで検索しちゃうんです。もともと人の意見を気にする上に、悪いことを書かれているとさらに傷つくタイプだったんです。でもたまにいいこと書かれるとすごくうれしくなって、返事しちゃおうかなって思うときありますよ。 ――趣味がネットというだけあって、いろいろ見ているんですね。 真麻 最近ブログを始めたんですけど、コメントをつけてもらえるようになったので、それが楽しくて。 ――ブログには、すごく庶民的なことを書いていて、意外でした。 真麻 ちょっとダサイ感じでしょ? まずタイトルが「マーサ!マーサ!タカハシマーサ!」って、こんなダサイのないですよね。自分でつけたんですけど(笑)。みなさんによく使っている化粧品や私物のことを聞かれるんですけど、普通すぎて申し訳ないです。昨日も枕カバーの写真にコメントいただいたんですが、楽天で超安く買ったとか言えない……。実は、ポイント10倍デーでまとめて買うみたいな生活してるんです(笑)。家にいるときは、ほとんどパソコンの前にいます。ネットしながらご飯食べてるので、姿勢が悪くなっちゃって。テレビもつけてるので、テレビから入ってきた情報はすぐにネットで調べますし。Facebookを見て、「みんな楽しそうだなぁ。私は、ひとり家でなにやってんだろう」って思うときもありますよ。だから私ブログを始めたとき、「リア充ぶりたい」って書いたんです。ひとりだと映画もあまり見ないので、「映画見ました」って書くために見に行ったり。あまり積極的じゃないし、インドアだし。 ――寂しがり屋な性格ですか? 真麻 寂しがり屋ですね。両親が仕事をしていて、ひとりのことが多かったので。お父さんは“みんなの英樹さん”。母は父のマネジャーをやっていたので、みんなが母に話しかける。私だけのパパとママじゃないんだって思いが、幼少期からすごくあったんですよ。だからちょっと具合が悪くなるだけで「すごく具合が悪い」って言ったり。心配させて気を引こうとしていましたね ――フリーになったことで悩みすぎて激痩せした、という報道がありましたが。 真麻 そうなんです。寝られなくて痩せちゃって。趣味がネットと悩みですから(笑)。彼のこともひとりで悩んで、空回りですよ。メールの返事が来ないって一晩中悩んでいても、向こうは寝ちゃって返せなかっただけだったり。初めてお付き合いしている人なので、高校生みたいな感覚なんです。でもそれって、周りから見たら痛い31歳ですよね(笑)。 ――あ、恋愛の悩みでもあったんですね……。彼にも考えすぎって言われません? 真麻 返事がなくて一晩中悩んでるなんて、彼に言ってないですよ。だって、重いって思われたら嫌じゃないですか!?(笑) ひとりで一喜一憂して、体がいくつあっても足りない。たまに胃酸過多になりますし、クマとかひどいですし。先輩たちやマネジャーさんにも毎日同じ悩み相談してます。恋愛相談だけじゃなく、こういう取材が終わった後も「大丈夫だったかなぁ」「大丈夫です、面白かったですよ」ってやりとりを20回ぐらい繰り返してますから。 masatakahashi03_.jpg ――彼とのことに関しては、そんなに深刻ではなさそうですが。 真麻 そうかもしれないですね。私は趣味があまりないし、彼は多趣味な人なので、「私、趣味に負けてる」みたいなことで悩んでますから。でも、直接は言えないんですよ……こういう媒体を通して私の想いを伝えてる、みたいなところはちょっとありますね。 ――じゃあ、せっかくなので、この場で言っちゃいましょうか! 真麻 もうちょっと私のこと構ってくれたらうれしいです(笑)。彼も立場がある人だし、こんなペラペラしゃべっていいのかなって思うけど、私はウソをつけないし、聞かれなくても言ってるし(笑)。よくだまされずに生きてこられたなって思います。 ――でも、ご両親からは厳しく育てられたんですよね。 真麻 厳しかったですね。高橋英樹の娘ということでチヤホヤされるかもしれないと、両親はちゃんとしつけをするという考え方でした。仲がいいからこそ、ケンカするときも怒られるときも全力だから、戦いのようでした。でも、愛情を持って育ててもらいましたね。二世とか七光りって言われる方たちって、そう言われることを受け入れるまで葛藤したと思うし、いろんなことを乗り越えてきてると思います。私も振り切れるまで時間がかかりましたし、今でもTwitterとかで「どうせコネでしょ」って書かれると傷つきます。でも、しょうがないかって。賛否両論いろんな意見があるんだなって思えるようになったので、受け入れられるようになりました。 ――逆に強くなれたんですね。 真麻 そうですね。いまだネガティブなところもありますけど、お仕事は本当に楽しいですし、いろいろやらせてもらってありがたいなって思っています。先輩からも「真麻、今のほうがイキイキしてるよ」って言われました。いろんな方とお会いできて本当に楽しいんですよ。進行をやらせていただいている『人生の正解TV~これがテッパン!~』も、本当にためになる情報が得られる番組。素晴らしい番組でお仕事ができて幸せです。 (取材・文=大曲智子) masatakahashi14.jpg ●たかはし・まあさ 1981年、東京都生まれ。東京女子大学卒業後、2004年にアナウンサーとしてフジテレビジョンに入社。『FNNスーパーニュース』『BSフジNEWS』などの報道番組や、『笑っていいとも!』『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてるッ!』といったバラエティ番組など、幅広いジャンルで活躍。2013年3月、同社を退社。フリーアナウンサーとして活動をスタート。現在、『人生の正解TV~これがテッパン!~』(フジテレビ)に出演中。 <http://ameblo.jp/takahashi-maasa/●『人生の正解TV~これがテッパン!~』 毎週金曜日19:57~20:54 「突然地震がきたら?」「竜巻に襲われたら?」「火災が発生したら?」といった生死を分ける選択から、「最新健康法は?」「得する年金術とは?」といった身近なものまで、どんな答えを選べば正解なのか!? 実際に同じ状況を作り出した上で、芸能人たちがその答えを導き出していく人生応援バラエティ。

「酷使しすぎて、今じゃすっかりユルユル……」江頭2:50がアナル芸を伝授!?

378A2783.jpg
撮影=尾藤能暢
 2006年の開始以降、コアなファンが増殖しているインターネット番組『江頭2:50のピーピーピーするぞ!』(インターネットテレビ局「Mopal」にて毎月第1金曜配信/以下、『PPP』)。  5月22日には、過去2年の配信から名場面を選り抜いたDVD第8弾『江頭2:50のピーピーピーするぞ! 8 逆修正バージョン~お台場人民狂和国~』(アミューズソフトエンタテインメント)が発売されるという。  ピー音満載の危ないフリートークをはじめ、専門家も唸らす渾身の映画評、ゲストを招いたお悩み相談など、時に芸人らしく身体を張り、時に真面目な顔で語り、かと思えば突然、下半身を振り回す。そんな濃縮されたエガちゃんワールドは、テレビの刺激では物足りない視聴者をトリコにしてしまうらしい。  同番組でやりたい放題の江頭2:50に、話を聞いた。 ――『PPP』は、江頭さんのロングトークが聞ける貴重な番組ですね。 江頭2:50(以下、江頭) テレビでは、俺がトークするとこなんて絶対見られないからねえ。ネット番組は、テレビと違って制限がないし! 番組スタッフ 一応、あるんですけど……。 江頭 え、あるの? ――現在、1,000人以上いるサポーター(番組のファン)たちの会費で運営しているそうですね。 江頭 ノンスポンサーでファンがお金出してくれるなんて、こんな番組ないぜ。全国にキ●ガイっていっぱいいるんだねえ(笑)。 ――江頭さんが暴走する回も多いですが、収録後にお蔵入りになった企画はありますか? 江頭 ああ、結構あるねえ。ほとんど話せないけど(笑)。前に、「江頭さんのファンです! 好きです!」っていうアイドルがゲストで来たんだけど、俺は人から「嫌い」って言われて初めて力を発揮できるんだよ。だから「どうしようかなあ……」って感じになっちゃって、とりあえずそいつにむりやりキスしたんだよ。そしたら泣いちゃって……。それはカットになったねえ(笑)。 ――テレビでもよく、女性芸能人にむりやりキスしてますよね。あれにはどんな意味が? 江頭 “キス芸”といえば俺じゃなーい! ――“キス芸”という芸だったんですね(笑)。11年前に、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)で橋田壽賀子さんにキスをした「橋田壽賀子キス事件」は衝撃的でした。 江頭 あの後、『いいとも』出入り禁止になっちゃったんだけど、こないだ11年ぶりに『いいとも』のスペシャル(27時間テレビ)に出られたんだよ。でも、そこでもローラにキスしたから、また出禁になるかもしれないぜ。 ――あらら(笑)。DVDには、ロンドンオリンピックにレスリングの吉田沙保里選手の応援に行った際の話も収録されてますね。 江頭 あの時、新聞とかで話題にはなったけど、そもそもなんで俺が“エガソック”の格好して北京とロンドンに行ったのか、みんな知らないと思うんだよね。 ――目立つためじゃないんですか?
378A2766.jpg
378A2774.jpg 江頭 ちゃんと理由があるんだよ! 北京オリンピックの時、聖火リレーのスタート地点に予定されてた長野の善光寺が燃やされるかもっていう騒動があったじゃない? それで「俺が善光寺を守らなきゃいけない」って思って行ったのよ。そしたらちょうど、吉田が乗ったバスがそこを通って「エガちゃーん!」って手を振ってきたから、「吉田は俺に気があるな」と思ったのがきっかけなんだよ。それからいろいろあって、北京オリンピックの応援につながってくんだよ。 ――理由があったんですね。吉田選手は昨年、国民栄誉賞を受賞されましたが、お祝いメッセージなどは贈りましたか? 江頭 そんなことよりレスリングは今、大変なんだよ! 吉田には「俺をロビー活動に連れていけ!」って言いたいよ! IOCがオリンピックにレスリングを入れるって言うまで、全力で「でんでん太鼓」(肛門にでんでん太鼓を挿して、逆立ちで鳴らす芸)するからさあ! ――レスリングが除外されたら、江頭さんも困りますか? 江頭 当たり前だよ! 俺にとって4年に一度のレギュラー番組なんだから。しかも、NHKに出られるのはこの時くらいだよ。貴重なんだよ! ――レギュラー番組だったんですか(笑)。ところで、『PPP』の映画評コーナー「エィガ一刀両断」では、作品を酷評することも多いですが、はっきり「面白くない」と言うことに躊躇はないですか? 江頭 まったくない! スポンサーもいないし、しがらみもないから。つまらない映画には「つまらない」って言う。つまらなければ「見に行くな」って言う。ただその映画会社は、もう予告編の映像を貸してくれなくなるけどね(笑)。 ――紹介できる映画が、どんどん狭まってきますね。 江頭 そうなんだよ! ひどい映画会社になると、「褒めてくれないと映像貸さない」って言うんだよ。(急に立ち上がって)ふざけんじゃねえよー! こっちの感性は自由じゃん! 俺に「面白い」って言わせるなんて、そっちのほうが気持ち悪いよ! それに、俺がけなせばけなすほど、『PPP』のファンはなぜかその映画を見に行く不思議な現象が起きてんだよ。だから映画会社の宣伝マンも、俺に「どうか0点でありますように」って願うべきだよ! ――(笑)。昨年は、東京・多摩の映画祭で、監督デビューを果たしたそうですが。 江頭 3分くらいの作品で、映画ってほどのものじゃないよ。俺が主演の映像が流れて、上映が終わったあとに映画館に本物の俺が出てきて、観客席に向けて、お尻から白い粉をブッて吹くんだよ。で、観客が「うわー!」ってパニック(笑)。 ――肛門に入れた小麦粉を吹き出す芸ですね。あのアナル芸を初めて見た時はびっくりしました(笑)。 江頭 あれは「白い妖精」っていう芸でね。ああいう芸は、ここ(大川興業の地下稽古場)でいつも考えてるんだけど、大変な苦労があるんだよおー。『プロジェクトX』(NHK)の世界だぜえ~。捨てネタだっていっぱいあるんだから。 ――どんな捨てネタがありましたか?
378A2917.jpg
江頭 「人間リサイクル」っていって、お尻にオレンジジュースをいっぱい入れて、長ーいストローで口までつなげて飲もうと思ったの。でも、うまくいかなかったねえ。 ――人前で披露できる芸と、できない芸は、どこで見極めるんですか? 江頭 やっぱり「笑えるか、笑えないか」だよね。「白い妖精」も粉がパーッとキレイに飛び散るから、ファンタジーで笑えるんだよね。 ――水を出す「マーライオン」という芸もありましたよね。 江頭 あれも、水をピューッて出した時に、透明な水が出て、ライトに当たってキラキラ光って虹が見えるから笑えるの。実はああいう芸をやる時は、7時間前から何も食わないの。そこから浣腸で洗浄して、空気を入れて、水や粉を入れるわけ。黄色い水吹いてたら笑えないじゃん(笑)。 ――熱いアナル芸論をありがとうございます。ちなみに、そんなにお尻を酷使して大丈夫でしょうか? 江頭 最近ユルユルになってきて、まずいんだよ~。昔、たまごっちがはやった時に、「たまごっちを産む男」っていう芸をやろうと思ったんだけど、まだアナルがちっちゃかったから入らなかったの。やっぱり一緒に血が出たら笑えないじゃない。でも、今だとツルッて入るんだよ。 ――それはユルいですね。 江頭 でも、入るようになった頃には、たまごっちがはやってなかったんだよ! 悲しかったぜー! 今度、お尻の穴の芸、教えてやろうか? ――え! 一応、私、女なんですが。 江頭 (無視して)初心者は何がいいかなあ。あ! おならがいいよ! 空気を入れて、「タタッタタラララッタラ♪」(伊勢佐木町ブルースのメロディー)「ブッ! ブッ!」って。教えてやるよ! すっげえウケるから、サイゾー編集部でやってくれよ。ただ昔、一回だけ失敗したことがあって……(エピソードが汚いため割愛)。この時は「俺、プロとして失格じゃねえか」って、ヘコんだぜー。 ――ひえ~。ちなみに、これまで世界中で伝説を残していらっしゃいますが、今年はどんな伝説を狙ってますか? 江頭 そんなこと言えるわけないだろ!! ――では最後に、サイゾー読者へメッセージをお願いします。 江頭 『PPP』って番組は、まさに「サイゾー」だよ! いろんな危ないもんが詰まってるからねえ。もちろんDVDも見てほしいけど、公開収録にも来たほうがいいよ。そしたら、ピー音なしのトークが聞けたり、モザイクなしの俺のちん●んが見れたりするから。生が一番だよ~。来てくれたらアナル芸も教えちゃうから! (取材・文=林タモツ) ●えがしらにじごじゅっぷん 1965年7月1日生まれ、佐賀県出身。88年に大川興業に入社し、ライブや、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)などのバラエティ番組で活躍。「1クールのレギュラーより、1回の伝説」をモットーに、97年にトルコで全裸パフォーマンスをして逮捕された「トルコ全裸事件」をはじめ、数々の伝説を残している。 『江頭2:50のピーピーピーするぞ!』 <http://www.mopal.jp/mopal-new/index.php/ppp/index.php> ●江頭2:50&早川亜希 DVD発売記念トーク&握手会 開催決定! 日時:5月25日(土)18時~ 場所:タワーレコード新宿店 DVD『江頭2:50のピーピーピーするぞ!8逆修正バージョン~お台場人民狂和国~』の発売を記念し、エガちゃんと早川さんによるDVD発売記念握手会が開催されます。 ※この握手会の参加券(整理番号付握手券)はタワーレコード新宿店でのDVD予約・購入者に、先着で配布されます。 お問い合わせ先:タワーレコード新宿店 03-5360-7811

「前向きな言葉に隠されたつらさ」震災をきっかけに“AV女優”という仕事を選んだ女たち

IMG_3113.jpg
 東日本大震災は、多くの人々の人生を変えた。津波によって家が流された者、家族や友人を失った者、ボランティア活動に目覚めた者……。また、自分の生き方を見直した人も多いことだろう。  震災をきっかけに「AV女優」という職業を選択した女性たちに迫った本が、ルポライター・山川徹による『それでも彼女は生きていく』(双葉社)だ。震災を経てAV復帰した椎名ひかる、AVの現場で処女を喪失した女性、就職が決まっていた貿易会社から内定を破棄された女性……。震災を契機に彼女たちがAV女優という仕事を選ぶまでには、数多くのドラマがあった。  AV女優たちを追うことによって見えてきた震災の現実とは、一体どのようなものだったのだろうか? ――本書では震災をきっかけにAV女優となった宮城・岩手・福島出身の7人に話を聞いています。どうして彼女たちの声を記録しようと思ったのでしょうか? 山川徹(以下、山川) きっかけとなったのは、被災地の取材中に聞いた「AV女優や風俗嬢になる女性がいる」というウワサ話でした。僕自身、20代の頃に東南アジアや東欧の貧しい地域を旅して売春婦たちと接した経験があり、そういった女性たちに共感することがありました。震災を経て、お金のために裸にならざるを得ない女性たちの存在にリアリティを感じられたんです。 ――実際にインタビューを行った際の様子はいかがでしたか? 山川 1人あたり2~3時間にわたってじっくり話を聞かせてもらいました。初めはぎこちなかったのですが、彼女たちをネタにしたり茶化したりする気持ちがないのが伝わったのか、記憶をたどりながらしっかりと当時を振り返ってくれましたね。彼女たちにとっても、こんなに時間を割いて震災を振り返るという経験はなかったようで、終わってからとても感謝されることもありました。 ――AV女優があまり人前で震災の経験を語ることはないでしょうね。 山川 震災をしっかりと対象化できている子もいますが、特に10代の若い子たちには、まだつかみきれてない部分も多い。ある仙台出身の女優は、震災から2年が過ぎても「絶対に見に行きたくない」と、車で30分もかからない沿岸部を訪れようともしませんでした。本書では「AV女優」という枠組みを設定しましたが、その中にいる女優たちも震災に対するスタンスは一様ではありません。 ――本書の中で、彼女たちが「私は被災者じゃない」「被災していない」と語っていたのが印象的でした。いくら沿岸部の出身でないとはいえ、AVに出演するという選択肢を選ばなければならなかった彼女たちもまた、被災者なのではないかと感じてしまいます。 山川 その通りですね。彼女たちは高校、大学を卒業し、自分がこれからどう生きるかを選択するターニングポイントで震災に遭遇しました。まだ若すぎて、自分の人生を歩む前の彼女たちには、選択肢の中から適切なものを選び取るだけの社会的な経験がない。そういった状況で、彼女たちはAV女優という職業を選択しています。  そもそも、「被災者」は、何かを失ったから被災者になるというわけではないと思います。知人の地元新聞記者は、主戦場にしていた三陸沿岸が破壊され、住民が苦しんでいる様子を見てPTSDのような症状になってしまったそうです。行政的なくくりでは、彼は被災者ではありませんが、震災の影響を強く受けていることは確かでしょう。 ――AV女優を選択した彼女たちの言葉からは、後ろめたさや悲壮感のようなものはあまり感じられませんね。 山川 「稼ぎたい」「お金を貯めたい」と、将来の夢を語る彼女たちの言葉はとても前向きでした。彼女たちには頑張ってほしいと思いますが、家族に隠し、バレたら結婚するのも困難、それにインターネットで全世界にセックスが配信されます。彼女たちの前向きさの裏に隠されたリスクを考えると、どこかもどかしい思いがあります。 ――本書あとがきにも「前向きな言葉に隠されたつらさ」と書かれていますね。 山川 彼女たちに限らず、被災者と呼ばれる人たちは、東京発の「絆」「頑張ろう」といったスローガンのせいか、「前向きに生きなければ」と思わされてしまう。しかし、本音の部分では「絆ってなんなの?」「誰が言っているの?」という疑問を持っている人は多いんです。生きる上で前向きなほうがいいのはもちろんですが、ずっと前向きに生きなければならないというのも、つらいのではないでしょうか。 ――東京で生活していると、震災はどことなく“終わったこと”に感じてしまいます。今でも気仙沼や石巻に足を運んでいる山川さんは、この状況に違和感がありますか? 山川 東北に行くたびに感じますね。震災直後はほとんど震災絡みの仕事ばかりでしたが、最近では震災のことを書く機会も少なくなっています。日常の仕事としては、震災とは関係のないものが多いのが現状です。  今年も多くのメディアでは3月11日に向けて特集を組み、それが終わったらぱったりと報道がやんでしまった。被災者から不信感を持たれても、やむを得ないのではないでしょうか。僕も震災から1年目は毎月足を運んでいたのが、だんだん2カ月に1回くらいのスパンになってきています。冗談半分ですが、被災地に住む大学時代の先輩からは「被災者を食い物にしたのか」と言われました。 ――冗談半分とはいえ、重い言葉ですね。 山川 本音も半分だったと思います。 ――では、被災地・被災者が求めていることは、なんなのでしょうか? 山川 取り残されないことだと思います。震災直後の2011年4月に、大船渡と陸前高田の集落に行ったんです。まだ震災から1カ月しかたっていないのに「福島のことばかりで私たちのことは忘れられている。忘れないでほしい」と泣きつかれました。小さい集落だったから、物資もボランティアも来ない。取り残された感覚だったんです。それから2年を経ても、そんな感覚が被災地には残っています。 ――本書を通じて、山川さんが描きたかったことはなんでしょうか? 山川 親や友人に言えないようなことをしていても、人間は、自分の生き方を肯定していかなければ生きていけません。僕は、彼女たちの生き方を応援したいと思いながら書きました。ある女性読者からは「AVに出るという選択以外は共感できる」という感想をもらったんです。これはAV女優の物語ですが、同時に東北の普通の女の子の物語でもあります。20歳そこそこの若い女の子が、震災で何を感じて、AVに出るまでに何があったのかを読んでほしいですね。東京では震災についての報道が沈静化していますが、彼女たちはまだ、震災の延長線上で生きているんです。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) やまかわ・とおる 1977年、山形県生まれ。ルポライター。東北学院大学法学部卒業後、國學院大學二部文学部に編入。在学中より『別冊東北学』(作品社)の編集に携わる。著書に、東日本大震災を一年間取材した『東北魂 ぼくの震災救援取材日記』(東海教育研究所)、調査捕鯨に関する『捕るか護るか? クジラの問題』(技術評論社)、『離れて思う故郷』(荒蝦夷)など。