宮藤官九郎が脚本を担当する『いだてん ~東京オリムピック噺~』(以下、『いだてん』)が早くも正念場を迎えている。
2月10日に放送された『いだてん』第6話の平均視聴率は9.9%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)を記録。大河ドラマ史上最速で1桁台まで落ち込んでしまった。
そんななか、宮藤官九郎はいかなる思いで『いだてん』の放送を迎えているのだろうか。「週刊文春」(文藝春秋)2019年2月21日号に掲載された連載コラム「いまなんつった?」で宮藤官九郎はこのように綴っている。
<家族が『いだてん』を見る日曜8時、どう過ごせば良いか分かりません。(中略)「静かに見れるならいてもいい」と言われ、1回だけ一緒に見たのですが、やはり反応も気になるし、黙ってても作者というのは気配が“うるさい”ようです>
それからというもの、宮藤官九郎は日曜8時に必ず外出することにしているようだ。第2話はサウナのテレビで鑑賞した。また、第3話が放送している間はファミレスで仕事をしており、<ここにいるファミリーは『いだてん』を見ていないんだなという安心感と寂しさに包まれながら、第32話を書いていました>と、コラムで告白している。
嵐の活動休止発表と4話の放送が被り、『いだてん』スタッフはパニック
そして、4話の放送日は1月27日だった。そう。嵐の活動休止が発表された日である。
この日の17時に嵐の活動休止が発表され、ネットニュースなどはその話題1色に染まった。そして同日20時から記者会見が行われたのだが、この時NHKのスタッフルームで会議をしていた宮藤官九郎のもとには、「20時からの会見がNHKで生中継される」との情報が飛び交い、「いだてんは!?」「飛ぶの!?」「4話めっちゃ面白いのにぃ!」という悲鳴が巻き起こったという。その日の出来事を宮藤官九郎はこのように綴っている。
<もちろん嵐には大変お世話になっている、5人とも本当に好青年。でも、なんでまた8時からNHKで!? すぐにガセネタと分かり会議は再開されました。冷静に考えたら、そんな情報まっ先にこのスタッフルームに来るはずですもん>
NHK上層部は『いだてん』の視聴率を「気にしない」と言っていたが…
宮藤官九郎の書くドラマは、評価が高かったり、後々まで残っていくような作品であっても、放送時の視聴率は振るわないことが多い。
なので、リアルタイムでの視聴者の反応などはさほど気にしていないのかと思えば、現実はまったくそんなことはなく、ソワソワしっ放しであったようだ。
『いだてん』の視聴率は初回こそ良かったものの、それからはずっと苦戦を強いられてきた。とはいえ、NHK側も宮藤官九郎という作家の特性については十分理解しており、『いだてん』に関しては数字ばかりを求めない旨を表明してきた。
たとえば、1月23日に開かれた定例会見で木田幸紀放送総局長は、<宮藤官九郎さんの脚本の世界は凄く面白かったという人と、わかりにくかったという人の意見が交錯する。思い出せば『あまちゃん』の初めの方もそんな感じだったなと>と、過去の宮藤官九郎脚本作品のデータを参照したうえで、<宮藤脚本はすでにいろいろな仕掛けが張り巡らされているんです。先にいくと、これはあの時はあれがこうなってたのかとなる。おそらく今回もそうなっていると思う。1回見てすべてが分かるものではない。あとで戻ってみてもらうという、そういう楽しみ方になるのかなと>と、『いだてん』を分析。そのうえで、<1回1回のリアルタイム(視聴率)はそんなに気にはしていません>と語った。
ただ、ここに来て、さすがにNHK側もテコ入れ策を考え始めたようだ。
『いだてん』序盤の主人公・金栗四三(中村勘九郎)は日本人で初めてオリンピックに参加したマラソン選手だが、これまでの大河ドラマの主人公に比べて知名度が低い。
視聴者に物語を理解するための前提となる知識があまりないため、普段の大河ドラマ以上に丁寧な説明を入れたうえでストーリーを進行させなければならないのに、『いだてん』はテンポが早いうえに情報量も多く、さらに、時系列まで複雑(1910年代を舞台にしたストーリーのメインラインと、1960年代の東京オリンピック前夜の日本を舞台にした場面との2つの時系列を往復する)。視聴率が振るわない理由として、そういった面を指摘する声は多い。
2月13日に開かれた定例会見で木田放送総局長は、改めて<1回1回のリアルタイムの視聴率はあまり気にしない>としながらも、<ついていけないとか、分かりにくいという意見も確かにいろんな所で聞いている>と語り、大河ドラマ前半の山場を迎える3月に向けて補強策を打ち出す方針を語っている。
また、「テコ入れ」ということでいえば、正式な発表がなかなか出ないため、いまだに噂の域を出ないが、第2部の1936年ベルリンオリンピック編では、金メダルを獲得した水泳の前畑秀子選手の役として、『あまちゃん』でもタッグを組んだのんがサプライズ起用されるのではないかという可能性もまことしやかに囁かれ続けている。
『いだてん』は、『いのち』(1986年)以来の近現代を扱った大河ドラマで、作劇や演出においても、これまでの大河ドラマの慣習を打ち破る面が多く見られる。その効果もあり、これまで大河ドラマとは縁のなかった若い視聴者からの支持が多い一方、主要な大河ドラマの視聴者層からはそっぽを向かれてしまっている傾向もある。
これから打ち出される補強策で挽回してくれると良いのだが……。