8月16日に放送された『Iターン』(テレビ東京系)の第6話。主役の狛江光雄(ムロツヨシ)は、岩切組組長・岩切猛(古田新太)に振り回され続けている。しかし岩切からの影響が、次第に狛江の言動にいい形で表れ始めた。
第6話あらすじ ぼられたムロツヨシを助けに来た古田新太
狛江が帰宅すると、妻・敦子(渡辺真紀子)は若い男と不倫していた。敦子は狛江が女性部下に手を出し、ヤクザと付き合っていることも知っており、離婚を切り出してきた。……という悪夢から目が覚める狛江。
会社に出社すると、キックバックの金を渡しに来た土沼印刷社長・土沼庄吉(笹野高史)から、岩切組と竜崎組の戦争が始まることを狛江は聞かされた。土沼から受け取ったお金を持参してきた狛江に、岩切はBB弾の銃を撃ちながら「(戦争のために)チャカ、山ほど買う金がいるんや。早よ、ゼニ持ってこい!」と発破をかける。
そんな中、竜崎剣司(田中圭)は刑事の城島豊(河原雅彦)と企み、岩切組がケツ持ちする風俗店を次々に摘発していく。連行される「ヌキヌキ万次郎」の店長(矢部太郎)から文句を言われ、岩切は黙って頭を下げた。
失恋した部下の柳直樹(渡辺大知)と吉村美月(鈴木愛理)を見かね、お金もないのに狛江は「僕が奢るから」と2人を飲みに誘う。しかし、この日行った店は竜崎組の傘下になっており、狛江は法外な金額を請求されてしまう。切羽詰まった狛江は岩切に電話したが、岩切は「つまらんことで電話してくんな!」と一喝。無銭飲食の嫌疑で警察から城島がやって来て、狛江はそのまま竜崎の元へ連行された。竜崎は狛江に”岩切組の情報を流すスパイになれ”と要求。そのとき、狛江の携帯に岩切から連絡が入る。狛江が引っかかったぼったくり店の前に岩切が来ているというのだ。狛江が駆けつけると岩切は店の店員に話をつけており、従業員は岩切に土下座していた。岩切は狛江が請求された以上の金額を店に置いていき、狛江は岩切にお礼を言う。すると、岩切は「何か隠していることはないか?」と狛江に質問。「いえ、何も」と答える狛江に「ほな、ええわ」と返答し帰っていく岩切の後ろ姿を、狛江は申し訳なさそうに見つめた。
第1話から一貫してムロが転落し続けている。あまりに希望が感じられない現状だ。
このドラマのオープニングはムロが必ずひどい目に遭う……からの夢オチという流れが常なのだが、悪夢の内容もだんだんハードになってきた。現実がつらいので、夢さえも真に受けて疑心暗鬼になるムロ。単身赴任先のアパートの一室に飾る家族写真が泣ける。
古田と田中の板挟みに遭い、窮地に陥るムロはドツボだ。しかし、それよりも、妻や娘からATM扱いされ、窮地の原因である土沼と仲良さげに付き合わなければならない姿に世の不条理を感じてしまう。今回はチワワの昌三さんの出番がなく、笑いどころは古田がムロにBB弾のエアガンを撃ったくだりくらい。この6話は特に暗かったのだ。確かに撃たれるムロの姿は、岩切組の牧歌的な雰囲気を強調する大事な場面でもあったのだが。
ちなみに『Iターン』の監督・内田英治は、今話題の問題作『全裸監督』(Netflix)のほうでもメガホンを握っている。同作で黒木香役を務めた森田望智は、今作でスナック「来夢来都」のホステス・めぐみ役を演じている。スナックのママを演じる黒木瞳と2人が並ぶシーンを見ると、「黒木瞳と黒木香が共演してる!」と今さらながらテンションが上がってしまった。
古田の親分肌に影響を受け、いい上司になるムロ
第6話のテーマは、義理と人情を重んじる岩切組と、「世の中、金」と言わんばかりに冷酷な竜崎組のコントラストだ。警察と癒着する竜崎組の策略で、岩切組がケツ持ちする風俗店は次々に摘発された。「こげんことなら岩切組に頼むんじゃなかった!」と吐き捨てる風俗店店長に、頭を下げて侘びる古田。
「風俗店言うて城島のガキどもが目の敵にするけどな、女の子も従業員もこれでメシ食うとるんじゃ。ワシらは、守ってやれんかったんじゃ」(古田)
前々クールに同じ枠で放送されていたデリヘルのドラマ『フルーツ宅配便』と関連付けて古田のセリフを聞くと、彼の言葉はより重く響いてくる。風俗店店員の生活まで気に掛けるヤクザの組長というのもなかなかいないはずだ。仁義を重んじる古田の性分が伝わってくる。
ムロは竜崎組の息がかかった居酒屋で、絵に描いたようにぼったくられた。ムロは岩切組に電話し、助けを求めた。
ムロ「お金が足らなくなりまして、ちょっと、どなたかにお願いできませんか……?」
古田「やかましい! つまらんことで電話してくんなっ!」
いや、なんだかんだで古田は優しいのだ。口では冷たいことを言っておきながら、数分後に自ら店にやって来ているのだから。
「ワシの舎弟からぼったくるとは……ええ根性しとんな、コラ!」(古田)
義理堅く、舎弟の面倒見はいい。古田の親分肌は、明らかにムロに響いた。田中に「岩切組のスパイになれ」と脅されたムロは、自分を助けてくれた古田の後ろ姿を申し訳なさそうに見つめていた。
第5話にて激しく失恋した渡辺と愛理。金欠も顧みず、ムロは奢るつもりで2人を飲みに誘う。部下の恋と奮起をムロなりに応援する心意気だ。実は、ムロは少しずついい上司になってきている。コワモテの割に子分から慕われる古田の人間性が、ムロに影響を与えている気がしてならない。
古田と田中の板挟みに遭い、どちらの組に付くべきか岐路に立たされたムロ。しかし、最近のムロを見ていると、もう答えは出ている気がする。
(文=寺西ジャジューカ)