"ゲーム化"する夏フェスで、Perfumeはいかにして勝ち上がったか

【リアルサウンドより】  国内最大級の夏フェス『ROCK IN JAPAN FES. 2013』(以下RIJ)が、8月2日〜4日の3日間、茨城県ひたちなか市・国営ひたち海浜公園にて開催された。昨年は3日間で過去最多となるのべ17万4000人を動員した同フェスだが、今年はさらにそれを上回るのべ17万7000人の動員を記録する大盛況。名実ともに日本最大級の野外フェスとして巨大な成功をおさめている。  なかでも今年、大きな注目を集めたのが、3日間の大トリをPerfumeがつとめたこと。他にもBABYMETALやでんぱ組.inc、9nine、BiSなど多くの女性アイドルグループが出演を果たし、話題を呼んだ。一部では「アイドルブームに媚びた」などというアンチの意見もあったようだが、実際に足を運んでそこにある熱気を体感した人は、そういう表層的な批判が全くの的外れだったことがわかるだろう。  何よりPerfumeは圧倒的なステージを見せてくれた。国内最大級の夏のロックフェスのヘッドライナーを引き受け、数万人の観客を魅了した彼女たち。その「偉業」の本当の意味を知るためには、まずはRIJがフジやサマソニなど他のフェスとは全く違う力学で動いている特殊な夏フェスであることから語らなければならない。  RIJの特殊性とは何か? いろんな側面があるが、まず大きな特徴はブッキングがもたらす物語性にある。計6つのステージはそれぞれ大きさが異なり、なかでも6万人収容可能のメインステージのステータス性が非常に高い。そして、多くのアーティストは複数年出場を果たしている。そうするとどうなるか? 出演者に「次はもっと大きな場所で出たい」「来年はもっといい時間帯でステージに立ちたい」という欲求が生じるのだ。実際にMCやインタビューでそういう発言をするミュージシャンも少なくない。例えば、デビューしたばかりの新人バンドはまずキャパの小さなテントに出演し、そこで喝采を浴びて客を集めれば、次はより大きなステージにステップアップする。さらにその次はメインステージに立つ。そうやってバンドが「フェスの場で勝ち上がっていく」風景が可視化される。つまり、RIJは約150組の出演陣がメインステージのヘッドライナーを目指す一種の「ゲーム」として設計されているわけである。  もちろん、そのゲーミフィケーション的な構造が完成したのはここ数年のこと。2010年代に入ってからの新しい傾向だ。00年代中盤はまだサザンやミスチルや矢沢永吉のような国民的な人気を持つアーティストがヘッドライナーをつとめていた。しかし昨年の2012年に3日間の大トリをつとめたのは、それに比べて世間的な知名度では遥かに下回る3ピースバンドのACIDMAN。それでもチケットはソールドアウト。このことが証明したのは、もはやRIJはヘッドライナーが誰かによって動員が左右される他フェスとは違う盤石の動員体制を築き上げたフェスであるということ。そして、そこのトリをつとめるのは、RIJのお客さんを熱狂させ、主催者側に評価され、「フェスを勝ち上がった」アクトなのである。
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本日8月6日(火)より、「チョコラBBスパークリング」(エーザイ)の新イメージキャラクターとしてテレビCMに出演中のPerfume。CMには、ニューアルバム『LEVEL3』に収録される新曲「Party Maker」がCMソングとして起用されている。『LEVEL3』の発売は10月2日(水)。

 ちなみに、『Mステ』を観ていると若手ロックバンドの紹介に「夏フェスで入場規制!」みたいな煽り文句がつけられることが多い。そのことも、上に書いた構造の一つのあらわれになっている。普通に考えれば「入場規制」という言葉はお客さんがステージを観れないマイナスの意味合いになってもおかしくないが、RIJというゲームにおいては、その言葉は出演者が次の機会にもっと大きいステージに立つことを意味する。だから基本的にポジティブな意味合いで捉えられる。「入場規制」と「人気沸騰」という二つの言葉が、ほぼ同義になっているわけだ。  さて、そういう独自の構造を築き上げたRIJにおいて、Perfumeはどんな存在だったのだろうか? 実は彼女たちはRIJに5年連続出演を果たしている。初出場は2008年。2番目の大きさのステージへの朝イチの出演である。その時点では、本人たちも、オフィシャルサイトのレポートも、アイドルグループのロックフェスへの出演を「アウェー」と表現していた。しかしそこで入場規制の盛況を記録し、翌年からはメインステージに昇格。2010年と2011年は昼、2012年はトリ前と、順調に時間帯を夜に近づけていく。5年間をかけて彼女たちはアウェーの場をホームグラウンドにしたわけである。  そうして大トリをつとめた2013年。この日のPerfumeは、そういう「ロックフェスで勝っていったアイドルの物語」を強く意識させるセットリストだった。2013年発表の新曲「だいじょばない」に続けてブレイク前の2006年にリリースした「エレクトロ・ワールド」を披露した流れが象徴的。さらに、アンコール最後の曲「Dream Fighter」の前に、あ〜ちゃん(西脇綾香)はこんなことを語った。  「今のマネージャーは、私たちが売れなくてクビになって広島に帰る寸前に信じて繋ぎとめてくれた人で、そのマネージャーと一緒にここに来れて嬉しいです。誰よりもイモっ子だった私たちがこんなところまで来れるという曲をやります」  その言葉はとても感動的だった。Perfumeのステージは「こんなところまで来れた」3人の物語を数万人が共に体験するもので、その一体感が強力な物語性をもたらしていた。彼女たちにとっても、RIJというフェスにとっても、いろいろな意味で記念碑的なステージになったと思う。  そして、話は冒頭に戻る。今回のRIJに多くの女性アイドルグループが出演した意味もここにある。この日出演したBABYMETAL(Perfumeの事務所の後輩)や9nine(西脇綾香の実妹がメンバー)をはじめ、今回のフェスに出演したアイドルグループにはPerfumeをロールモデルにRIJのメインステージを目指す物語のイメージが強くインプットされたはず。ロックバンドだけでなく、アイドルグループもまた「フェスを勝ち抜く」ゲームに参戦するようになった。そのことが、2013年のRIJのブッキングが持つ大きな意味だったわけである。また、今年初めて声優・坂本真綾が出演し好演を見せたことも、同じように数年後への伏線となる可能性がある。  RIJのメインステージの収容動員は6万人(公式発表)。東京ドームのキャパが5万5000人なので、フィールドを埋め尽くす群衆をステージの上から見渡した光景としては、すでにRIJのメインステージはあらゆるフェスやコンサートを含めても日本最大級のものになっている。Perfumeがそのヘッドライナーを引き受け、公演を成功させたことは、3人やファンだけでなく、アイドルシーンの未来にとっても大きな意味を持つ「偉業」だったと言えるのではないだろうか。 ■柴 那典 1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

モーニング娘。の逆襲が始まった ハロプロ勢が再評価される理由

【リアルサウンドより】  モーニング娘。唯一の成功例とも謳われた矢口真里が不倫騒動を起こし、初期モー娘。メンバーのパブリックイメージは、とうとう地に落ちたかのように思える昨今。  しかし、ここにきて現役のモーニング娘。が再び注目を集め始めている。スキャンダルや奇をてらった演出ではなく、正統派のアイドルグループとして、だ。  AKB48とももいろクローバーZの躍進に、元メンバーのマイナスイメージが重なり、かつてのナンバーワンアイドルグループの影もなかったモーニング娘。が、なぜ今、再評価され始めたのか。  『グループアイドル進化論』(マイコミ新書)の共同著者であり、アイドル専門ライターとして活躍する岡島紳士氏が、アイドルカルチャーの"今"を語る集中連載。中編ではモーニング娘。に代表されるハロープロジェクト系グループが再評価され始めた理由を尋ねた。 前編:「アイドル戦国時代はすでに終了 BABYMETALら次世代の新たな戦略とは?」 ――モーニング娘。が完全に復活した、と言われています。なぜ再評価されたのでしょう?  売れている、売れていないの感覚って、世間一般の感覚で言えばテレビに出ているか、出ていないかだと思うんですね。でも、実はテレビに出ていなくてもアイドルグループとしてちゃんと機能しているケースがあるんです。  モーニング娘。の場合は、人気がピークの時はアリーナクラスでのコンサートも多かったですよね。その後人気が落ち着いて来て以降も、1000人、2000人規模のコンサートをずっと続けてきたんです。このくらいの規模でコンスタントに活動を続けられるアイドルグループって、実は数えるほどしかありません。そしてハロプロは、Berryz工房、℃-uteと、このクラスの実力派アイドルグループが何組もあります。だから例え世間で消えたと思われても、アイドル業界という視点から見れば、全然消えていなかったんですよ。そして、曲が良いとか、パフォーマンスが優れているとか、そういうハロプロの根幹に関わる要素って、一朝一夕に真似できるものではないんですよね。つんくプロデュースの楽曲もエレクトロサウンドなど流行を取り入れ、現代的に進化しています。今はアイドルブームでたくさんのグループが乱立し、「アイドル」というジャンルの市場が拡大しました。それが大きな1つの要因ではありますが、モーニング娘。が再評価され始めたのは、ブレないことをずっと続けてきたハロプロの凄さが浮き彫りになり、そこに世間があらためて気づいただけ、ということなんだと思います。
 モーニング娘。の場合は、世代を超えてファンがいるという強みもあります。ジャニーズやK-POP(韓流)などにも顕著なんですが、アイドルグループは長く続けると二世代、三世代に渡ったファン層を獲得していきます。2000年前後にモーニング娘。にハマっていた10代後半、20代前半のファンは、今や30代半ばに差し掛かっています。10年過ぎても現役のグループは、10代から30代まで、幅広い層に刺さるようになっていくんです。ジャニーズなんか、上はお年寄りから下は子供まで、家族ぐるみでファンになっていたりします。  繰り返しになりますが、ハロプロはハロプロとして、やるべきことをちゃんとやってきました。モーニング娘。が再評価されるのは当たり前かと思います。 ――ハロプロ以外で、ハロプロ好きにおすすめのグループはありますか?  ハロプロが好きなひとには、avexのSUPERGiRLSがおすすめですね。
 SUPERGiRLSのプロデューサーはもともとハロプロオタクで、先日ご結婚を発表した松浦亜弥さんの、巨大なファンサイトを運営していたひとなんですよ。だから、ハロプロ好きにはしっくりくる部分が多いんじゃないかと思います。avexだからメディアにも強くて、イトーヨーカドーのCMにも出ていたりします。そういうところも親しみやすいんじゃないでしょうか?   第一回の時もお話しましたが、今はアイドル戦国時代からアイドル多様性時代へと移行している時期だと思います。ハロプロだから、avexだからといった固定観念にとらわれずに、いろんなグループを楽しむことができます。モーニング娘。だけじゃなく、もっとちゃんと評価すべきグループは、まだたくさんあるのではないでしょうか。 (取材・文=マツタヒロノリ)

X JAPAN、Janne Da Arc…ヴィジュアル系大物の"秘めた青春"と、現シーンへの提言

【リアルサウンドより】  20年以上の歴史を持ち、今や海外でも認知されてる文化である「ヴィジュアル系」。シーンを彩った名盤500枚の音源を通して音楽面から語ったのが『ヴィジュアル・ロック パーフェクト・ディスク・ガイド 500』(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)だ。シーンの黎明期からライターとして活躍し、本書の監修も務めている大島暁美さんに話を伺った。 前編:ブラジルやロシアにも...世界で増え続けるヴィジュアル系バンド ――大島さんはシーン黎明期から活躍されていることもあって、人気ヴィジュアル系バンドのメンバーたちとも親交が深いと伺っています。何か思い出深いエピソードがあれば教えてください。 大島:ありすぎて思い出せないな...(笑)。X JAPAN絡みの話はたくさんありますね。LAまでインタビューしに行ったりとか...。当時は携帯もネットもなかったから、連絡をとるのも大変でしたね。YOSHIKIの取材が何時になるかわからないというので、待ってる間にHIDEの家で遊んでたりもしてましたけど。

「紅」X JAPAN『BLUE BLOOD』収録

 あと、yasu(Acid Black Cherry・Janne Da Arc)に私の家の配線工事を手伝ってもらったこともあります(笑)。その時家にSHUSE(La'cryma Christi・Acid Black Cherryサポート)も遊びに来てて、yasuが一生懸命作業してくれてる後ろで2人で「まだー? お腹すいたんだけどー?」とか言ってたらyasuがムッとしたり...(笑)。 ――そんな風にメンバーと公私とも交流がある大島さんから見て、90年代のヴィジュアル系バンドと現在のヴィジュアル系バンドの違いを感じたことはありますか? 大島:今はPCでも音楽を作れますし、オーディションも無くライブハウスに出演できてしまうから、いろいろな才能が出てきやすくなっている一面、簡単に始めて簡単に辞めちゃうっていうこともありますね。  昔はホラ、長髪にしたりバンドをやっているだけで家族から勘当される...みたいなところもあったじゃない? 髪の毛を染めることひとつとっても、一番発色の良いカラー剤が国内には売ってなくて、ロンドンから高いヘアカラー剤を買ってきたりしないといけなかったんですよ(苦笑)。  そういう意味では昔のバンドマンの方が苦労した分、腰が据わっていたというのはあるかも。もちろん一概には言えませんけどね。 ――最後に、ヴィジュアル系って今後どうなっていくと思いますか? 大島:LUNA SEAやX JAPANみたいに世間一般の誰でも知ってるっていうヴィジュアル系バンドが減ってるので、ゴールデンボンバーに続いてメガヒットを飛ばすバンドが現れてほしいですね。

大島暁美のオススメバンド4選

時代を問わずにセレクトすると膨大な量になるので、今、応援してるバンドということにしました。(大島) ●その1:NINJAMAN JAPAN

「雷神-raijin-」NINJAMAN JAPAN『雷神/餞』収録

 2009年、劇団☆新感線の役者、吉田メタルが、Psycho le CemuのLIDAと結成したヴィジュアル系ロック・バンド。日本らしさが海外でも受けている。 オフィシャルサイト ●その2:Jupiter  Versaillesのメンバーとして5年間活動を共にしてきたHI­ZAKI(G)、TERU(G)、MASASHI(B)、YUKI(Dr)に、ヴォー­カリストZINを加えた5人が、2013年4月に結成した新バンド。メタルでありながら神秘的なサウンドが特徴。 オフィシャルサイト ●その3:AliceNine  2004年、元FatimaのNaoと元Delta Arkの沙我が元ギブスの将と虎に声を掛け、後にヒロトが加わり結成。枠にとらわれない幅広いジャンルの楽曲や、ファンと共に「楽しむ」ことを最大限に考えたライブを行っている。 オフィシャルサイト ●その4:Moran  元Fatimaのメンバーを中心に2007年12月結成。「トータル・アート」をコンセプトに、外見、楽曲に於いて様々な「色」を出している。 オフィシャルサイト

アイドル戦国時代はすでに終了 BABYMETALら次世代の新たな戦略とは?

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『「メギツネ」 キ盤<初回生産限定盤CD+DVD> [Single, CD+DVD, Limited Edition]』(トイズファクトリー)ジャケット画像

【リアルサウンドより】  空前のアイドルブームが訪れ、市場はすでに飽和状態にあると言われる昨今だが、従来の常識を打ち破るような"次世代アイドル"が次々と生まれ、これまでとは異なる未来予想図が描かれ始めている。  次世代アイドルとして有名なのは、私立恵比寿中学やSUPERGiRLS、でんぱ組.incやBABYMETALなどが挙げられる。これらのグループはコンセプトに趣向を凝らし、これまでアイドルに興味を持たなかったファン層も取り込んでいるのが特徴だ。  アイドルグループは今、どのような進化を遂げつつあるのか。今後のアイドル業界はどうなっていくのか?  『グループアイドル進化論』(マイコミ新書)の共同著者であり、アイドル専門ライターとしてアイドルカルチャーの最前線を追っている岡島紳士氏が、アイドル業界の"今"について語った。 ――飽和化したとも言われるアイドル界ですが、今の動きをどう捉えていますか。 岡島紳士(以下、岡島) モーニング娘。以降の代表的なアイドルグループといえば、まずはAKB48が挙げられると思うのですが、AKBのような王道アイドルグループが台頭したところへのカウンターとして、ももいろクローバーZが出てきました。ももいろクローバーZはAKBが決してやらないようなパフォーマンスをやったり展開をとることによって、ファン層を拡大しました。たとえば、汗だくでの全力ライブパフォーマンスなどは、普段ロックなどを聴く層やアイドルに興味がない層にまで刺さったのです。  そしてももクロが"非王道系"のアイドルグループのロールモデルになったことで、メタルをやったり、ラップをやったりといった、"非王道系"のアイドルのスタイルも受け入れられる下地が、アイドルファンの間にできました。アイドル産業は飽和状態にあるとは大分前から言われていますが、ももクロが成功したことによって、アイドルグループはアイドルオタク以外にも商売ができるようになったんです。 ――次世代アイドルの中で岡島さんが特に注目しているグループは? 岡島 まずはBABYMETAL。彼女たちはメタルとアイドルを融合しているんですけど、大御所アーティストが多数在籍しているアミューズに所属しているので、スキームがしっかりとできていて、ものすごく本格的。しっかりお金をかけて作りこんでいるんですね。たとえばあるCDには昔、すこし流行ったCDエキストラが入っているんですよ。パソコンに入れるとちょっとした動画が観れたりするヤツですね。そういうところまで抜け目なく作っているんです。また、メタルとは言っても、X JAPANのような、すでに世間に浸透しているバンドの潮流までを含めた意味でのメタルだから、実は多くのひとに刺さることをやっているんです。NHKホールや幕張メッセでのライブも決まっていて、どんどん規模が拡大していっています。

「- メギツネ - MEGITSUNE」BABYMETAL『メギツネ』収録

 あとはライムベリー。彼女たちはアイドルラップユニットなんですけど、歌唱法としてラップを取り入れているので、あえてヒップホップとは言っていません。ヒップホップというと少しマニアックなイメージもありますが、ラップ自体はJ-POPではすでに十分浸透しています。しかし、実は彼女たちがルーツにしているのは90年代の伝説的なヒップホップイベントである「さんピンCAMP」。日本語ラップを作り上げた先人たちへリスペクトを感じさせます。「mass 対 core」にオマージュを捧げた「まず太鼓」という曲をやっていたり、ジャケットアートワークにファミコンやフィギュアの写真が散りばめられていたりと、ヒップホップ好きの層だけでなく、他のカルチャーが好きな層も思わずニヤリとするような小技が効いています。トラックもポップに洗練されていて、すごくいいんですよね。

「SUPERMCZTOKYO」ライムベリー『SUPERMCZTOKYO』収録

 戦略という観点で面白いのは、おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!。テレビ東京がやっている「おはスタ」のアイドルグループなんですけど、彼女たちはメディア発のアイドルでありながら、最近主流であるボトムアップ型アイドルの手法も取り入れているんです。つまり、ももクロやPerfumeのようにライブの現場から徐々にのし上がってメディアに取り上げられるのではなく、すでにメディアに出ているにも関わらず、ライブもがんがんやってファンを獲得しているんです。上と下から同時に攻めていくイメージですね。また「おーはー」って今や誰もが知っているフレーズですが、あれの正統な後継者って彼女たちだけなんですよね。今本物の「おはガール」って彼女たちだけなんで。そういったキャッチ―な"武器"を持っている点においても強い。さくら学院みたいに、期限付きの活動であることを感じさせるのも、刹那的で良いです。

「夏サンキュ!!!」おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!『夏サンキュ!!!』収録

――なるほど、グループそれぞれに強い特色がありますね。まさに"アイドル戦国時代"といった印象を受けますが......。 岡島 メディアをやっているひとは"アイドル戦国時代"ってフレーズを乱発しがちですが、既に終わっていると思っています。『グループアイドル進化論』の中でTOKYO IDOL FESTIVALとアイドリング!!!の(元)プロデューサーの門澤さんにインタビューをしているんですが、門澤さんはそこでアイドルについて「多様性の時代」という言葉を使われています。僕も「メディア/アイドル ミュージアム」の年表で使わせて頂きましたが、今は「アイドル多様性時代」に突入していると感じています。誰も必要以上に負けなくていい、いろんなアイドルがそれぞれ活躍してればいいんじゃないかと。個性的なグループがたくさんあって、それらが共栄共存できるのが一番理想的ですよね。 (取材・文=マツタヒロノリ)

20年ぶりの大ヒット曲「潮騒のメモリー」に隠された、小泉今日子の歴史とは?

【リアルサウンドより】  天野春子(小泉今日子)「潮騒のメモリー」。7月20日に着うたなどで先行配信が開始され、現在(8月1日)のところ週間チャートで2週連続1位、7月の月間チャートでも1位。7月31日にリリースされたCDは、フラゲ日デイリー3位、発売日デイリー2位と上昇中。ここまでの爆発的ヒットは予測できなかったのだろう、CDショップの店頭では軒並み売り切れという報告もされている。小泉今日子、約20年ぶりの大ヒット曲の誕生である。  言うまでもなく、「潮騒のメモリー」は朝ドラ『あまちゃん』の中で物語上の重要な仕掛けとなってきた、鈴鹿ひろ美による1986年のデビュー曲。劇中で春子がスナックのカラオケで歌い、アキとユイがお座敷列車やアマーソニックで歌い、物語が東京編に入ってからレコーディング時における秘密が明かされた。2013年、それが天野春子の名義でアナログEP盤風のパッケージとしてリリースされること自体が、ドラマのファンに大きなカタルシスを与えるという、とても入り込んだメタ構造を持った作品だ。  小泉今日子がドラマでの役名で楽曲をリリースするのは、実はこれが初めてではない。1984年、ドラマ『あんみつ姫』の主題歌「クライマックス御一緒に」を"あんみつ姫"名義でリリース。小泉今日子はそれに続く9枚目のシングル「渚のはいから人魚」で初のオリコン1位を獲得、その年の紅白歌合戦に初出場することになる。彼女のキャリアにおいて"あんみつ姫"名義の企画物シングルは、当時の健康的でチャキチャキしたキャラクターのイメージを世間に浸透させる上で、非常に重要なステップとなったのだ。

『KYON3』(ビクターエンタテインメント)収録

 「9枚目のシングルでオリコン1位」。そう、今では聖子や明菜と並ぶ80年代トップアイドルの1人と紹介されることの多い小泉今日子だが、その人気が爆発するまでにはデビューから2年という、シングルリリースの間隔が短い当時の基準で言うと決して短くない年月を要した。デビュー曲「私の16才」は森まどかのカバー。セカンドシングル「素敵なラブリーボーイ」は林寛子のカバー。"花の82年組"と呼ばれる同期のアイドルたちが本人のキャラクターを的確に反映させたオリジナル曲でスマッシュヒットを飛ばす中、小泉今日子はオリジナル曲をもらえるまでデビューから半年もかかった。結局デビューができなかった『あまちゃん』の天野春子ほどではないにせよ、ある時期まで「おざなり」にされてきたアイドルだった。「元トップアイドルが、結局日の目を見なかったアイドルの卵のその後を演じる」という視点で『あまちゃん』を楽しんでいる人も多いと思うが、あの天野春子には「もしかしたらそうなっていた姿」としてそれなりのリアリティがあるのだ。  同様に、ショートカットにしてイメチェンを図った後のアイドル小泉今日子の記憶しかない人の間では、『あまちゃん』で若き日の天野春子を演じる有村架純を見て「キョンキョンなのに聖子ちゃんカット!」といったリアクションも見受けられるが、デビュー当時の小泉今日子こそは、聖子ちゃんカットで雨後のタケノコのように次々と出てきた聖子ワナビー・アイドルの代表格だった。  そうした歴史を踏まえると、今回の「潮騒のメモリー」はより味わい深いものとなる。歌詞のキーワードとなる"マーメイド"は、小泉今日子のブレイク曲「渚のはいから人魚」を連想させる以上に、松本隆×呉田軽穂(松任谷由実)の黄金コンビによる松田聖子「小麦色のマーメイド」をダイレクトに想起させるもの。何よりも決定的なのは、歌詞の最後の《好きよ 嫌いよ》という「小麦色のマーメイド」からそのままいただいた必殺フレーズだ。作詞・宮藤官九郎、作曲・大友良英、Sachiko Mの念頭にあったのは、キョンキョンではなく聖子だったのだ。  感動的なのは、現在47歳の小泉今日子は、そんな聖子オマージュに溢れたこの楽曲を、安易に聖子風に歌うのではなく、プライドを持ってあのキョンキョン声で、それでいて当時のキョンキョンは決してしなかったブリッコ風のアクセントまでつけるというサービス精神まで発揮して、見事に歌いきっていることだ。  29年前、"あんみつ姫"による「クライマックス御一緒に」は、企画物であるという理由から、テレビの歌番組では一度も歌われることがなかった。注目されるのは、果たして小泉今日子がいつ、どこで、今回の大ヒット曲「潮騒のメモリー」を初めて歌うのかということ。圧倒的に有利なシード権を持っているのが、『あまちゃん』のお膝元NHKの、今年大晦日の紅白歌合戦であることは間違いのないところだが......さて。 ■宇野維正 音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

フジロック好きは、なぜ大金を払って「泥んこプレイ」に興じるのか?

【リアルサウンド】  結局は大盛況に終わるのだろうが、最終ラインナップ発表時は「アイドルブームに媚びた!」と叩かれたロック・イン・ジャパン2013。もっとも動員力のある夏フェス代表格は、そのぶん余計にアンチも多いのだ。  しかし現在のフェスは大同小異。ももクロやPerfumeなどで集客するのはごく普通で、有名どころを寄せ集めただけの、まるでコンセプトがないイベントも多数ある。それが堂々と「◯◯ロックフェス」を名乗ることも珍しくないが、何をもってロックというのか、と議論を吹っ掛けても徒労に終わるだけ。要するにただのブーム、しかもピークは過ぎた感じ、なのである。  これほど「ロックフェス」を名乗るイベントが多いのは、最初の成功例がフジロック・フェスティバルだったから、くらいの理由だと思う。それほどフジの登場は大きかった。多くの音楽ファンがどよめき、音楽業界の夏にも新しい流れが起きた。全国のイベンターがこぞって真似を始めるほど、それは前例がなく魅力的な、当時もっともオルタナティブな音楽の楽しみ方だったのだ。
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Photo:Yasuyuki Kasagi

 オルタナが主流となり猫も杓子ものブームになり、安定期から停滞期に入るとアイドルというカンフル剤が必要になった。それがフェスブームの現在だが、しかし、パイオニアたるフジロックは昔と同じくオルタナティブなままである。グリーンのトリだけを並べれば確かに「ロックフェス」だが、その隣でフライング・ロータスと夏木マリとDJみそしるとMCごはんが並ぶというのは、どうしたってオルタナとしか言いようがない。そして、有名無名を問わずどんなステージでも盛り上がる観客のあけっぴろげな開放感も、毎回メンツがどうのと騒ぎ立てる音楽ファンの気分とは一線を画すものだろう。  フジロッカーズ、という言い方が象徴している。純粋な音楽ファンと純粋なフェス好きはイコールではないし、音楽に賭ける情熱でいえばフジに集まる30〜50代よりも若者のほうが遥かに真剣だろう。毎年参加が基本のフジロッカーズは、音楽というよりフジが好き。スマッシュ日高氏が立ち上げたコンセプトが好きなのだ。それは不便という贅沢。もっといえばクソ高いカネを払って雨に打たれ泥だらけになって笑いあう、はたから見ればバカみたいな高級プレイである。ファッショナブルでも何でもないことが「逆に、ラグジュアリー」というか。  夏の休暇は沖縄かハワイかバリ、そんなふうに『じゃらん』や『CREA』が特集を組むなかで、あえて「電車とバスで4時間、最後は一時間歩いて辿り着く秘境温泉」とか「テレビも電気もない、ただ静寂を楽しむ古民家の宿」みたいな旅行を好む人間は一定数いるものだ。雑誌でいうなら『一個人』みたいな。ものすごく雑な例え方をしているのは承知だが、現在のフジロックと他のフェスにはそれくらいの距離がある。同じ音楽イベントでも、贅沢、の意味がまるで違うのだ。  フジロックは今年も平然とフジロックだった。主催者も参加者も、もはや喧嘩すらしない老夫婦のごとくに満面の笑顔を見せ、豪雨になれば皆「よし来た!」とばかりに自慢のゴアテックスを装着する。すばらしき阿吽の呼吸を前にすると、昨今のフェスブーム、フェス批判をわざわざ持ち出す意味はどこにも見当たらない。堅苦しい規制はなく、守られすぎた平和ボケもないが、しかし、この特殊性はなんだろうとあらためて思わされた三日間だった。
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自慢のゴアテックス!/Photo:Go Okuda 

■石井恵梨子 1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

"ちょいダサ"の魅力でトップへ いきものがかり・吉岡聖恵のピュアネスに感嘆

【リアルサウンドより】  第一線の音楽ライター/評論家が、最新アルバム・シングルチャートを斬る!  今回のレビュアーは石井恵梨子さんです。
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『I(通常版)』(エピックレコードジャパン)ジャケット画像

2013年07月22日~28日のCDアルバム週間ランキング

1位:I(いきものがかり) 2位:Hero(SUPER JUNIOR) 3位:キミの声(JUNHO(From 2PM)) 4位:イン・ア・ワールド・ライク・ディス(バックストリート・ボーイズ) 5位:FEEL(安室奈美恵) 6位:吹き零れる程のI、哀、愛(クリープハイプ) 7位:中人(私立恵比寿中学) 8位:Inside of Me(U-KISS) 9位:天晴~オールタイム・ベスト~(さだまさし) 10位:TOWN AGE(相対性理論)  バックストリート・ボーイズと安室奈美恵の名前が並ぶと、一瞬「90年代か?」と錯覚しそうになるが、ロック雑誌が激押しする新人クリープハイプ、サブカル人間の大好物である相対性理論、そして隙間を埋めるようにせっせと韓流アーティストたちの登場するところが2013年なう、の今週。  前回「ジャケでアジカンと間違えないで!」と書いたさだまさしは、驚くことなかれ、初登場から一ヶ月以上ずっとトップ10圏内に居座り続けている。B'zやバンプやGACKT以上に強い、さだのベスト。もはや「さだ」と二文字を打つだけで「時流とか、流行とか、僕のファンには何も関係がないのですよ...」とにっこり笑う彼の悟り顔が浮かぶようになってきた次第。  結局は固定ファンを持つアーティストが強い。そんな当たり前のことを痛感するが、だからこそ面白いのは初登場1位のいきもりがかりだ。14曲中5曲がタイアップ・ソングとしてすでにお茶の間に浸透。NHKロンドン五輪の主題歌「風が吹いている」などは、田舎のお婆ちゃんまでが「いきものがかりって名前は知らないけど、この曲は知ってるわぁ」と眼を細めるナンバーだろう。コアな固定ファンがいるというより、とにかく老若男女に好かれている。強烈なキャラや演出で一定層を惹きつけるのではなく、毎回のシングルで毎回まんべんなく受け入れられている。なんたる健全さ。カラクリ使ってCD売ってナンボの時代、この1位の意味は大きいはずだ。  かといって、熱心な音楽ファンには響かないのだろう。いきものがかりはコアな音楽ファンが当然のようにスルーするタイプの音楽を積極的に鳴らし、そのことに強い自信を持っているバンドである。刺激や実験性よりも大衆性と普遍性を。赤裸々な私小説ではなく誰かの勇気になる応援歌を。本人もインタビューで認めているが、等身大というかちょいダサというか、まぁオーラのない恰好でテレビに出て、のびのびと唄っている吉岡聖恵がいる。
 その笑顔は「中学の合唱コンクールでソロパートを任された感じの子」を思い出させるものだ。たとえばMISIAやSuperflyの声量。椎名林檎のアクの強さ。安室奈美恵のセクシャリティ。それらが見事にゼロである吉岡は、自我や女性性に目覚める前の「歌が大好きで、音楽の先生にほめられて嬉しい!」みたいな無邪気さで歌っている。歌っているように見える。実際は30歳目前。うーん、すごい。このピュアネスは絶対に狙って出せるものじゃない。 ■石井恵梨子 1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

FUKUSHIMAから『あまちゃん』へ  大友良英が生み出した「希望の音楽」

【リアルサウンドより】  今年もフジロックの夢のような3日間が終わり、帰宅した自分が最初に何をやったかと言えば、不在の間の『あまちゃん』の録画を見ることだった。あのオープニング・テーマを聞き、天野春子と鈴鹿ひろ美の壮絶な丁々発止に悶絶しながら、自分が「日常」に戻ってきたことを実感したのである。そりゃそうだ。毎日毎朝、あのドラマを見ることで一日が始まるんだから。
 そんな個人的感慨はともかく、もはや社会現象とも言える『あまちゃん』。その魅力はさまざまに語られるが、ぼくにとってはまず大友良英の作る音楽である。オープニング・テーマに象徴される、自由奔放に、不揃いに、あちこち飛び跳ね、乱反射して、いつまでも遊ぶことをやめない子どものような躍動感に満ちた音楽の数々、生きることの活力とエモーションをまっすぐに伝えてくる。それはあらかじめ定まったサイズのTV画面に押し込められているのではなく、そこから飛び出して四方八方に拡散していくイメージであり、「希望」そのものである。先日、行われたFREEDOMMUNE 0 <ZERO> 』における大友良英&あまちゃんビッグバンドによる素晴らしい演奏と、観客の熱狂は、それを雄弁に語っていた。  『あまちゃん』音楽の成功について、大友はNHK制作という環境を要因のひとつとして挙げている。NHKの広いスタジオを自由に使えるため、高価な有料貸しスタジオを使うしかない民放のドラマに対して、豊富な予算と時間がかけられる。優秀な音楽家たちを惜しげもなく使っての贅沢な作りは、音楽に厚みと奥行きを与え、お手軽な打ち込みではなく(一部で意図的に使われているが)、あくまでも人力の演奏にこだわった生々しく温かみのある音色と、身体性を重視した即興とアンサンブルを可能にしている。その音楽は快活で高揚感があり、演奏する人間の顔や感情までが見えるのだ。  もともと雄弁家であり優れた文章家でもある大友は『あまちゃん』に関しても、大量のテキストや発言を残している。ぼくの知る限り、ドラマの音楽家がここまで自作に関して頻繁に言及する例は見たことがない。『あまちゃん』は音楽ドラマでもあるから、そのあまりに膨大な情報と注釈を副読本に、宮藤官九郎得意の迷路のような伏線を読み解いていく過程もまた、『あまちゃん』の魅力でもあるだろう。  そしてそうした大友の発言の中でもっとも印象的だったのは、『あまちゃん』のオープニング・テーマを都議選の候補者が選挙カーから流したことに強い抗議の意を表したことだった(大友良英のJAMJAM日記「あまちゃんの音楽を選挙公報に使っている政治家の方へ」)。選挙カーでの既存楽曲の使用についての著作権的な解釈は見解が分かれるようだが、大友の反発はそうした権利関係のクレームではなく、公的な空間に無自覚・無神経に音楽が垂れ流されることへの嫌悪であり、すべての人びとに共有されるべき(そういう目的で作った)音楽を、特定の政治的立場に利用されることへの拒絶だろう。その考え方は、福島の原発問題を反原発の立場から声高に糾弾するよりも、被災地から文化を発信していくことでポジティブな福島の未来図を描き、そのイメージを高めていきたいとする大友や遠藤ミチロウらによる「プロジェクトFUKUSHIMA」のコンセプトにも通じるものだ(参照:「文化の役目について:震災と福島の人災を受けて」

大友良英オーケストラFUKUSHIMA! 2012 - FINALE

 もちろんそれは『あまちゃん』が、3.11の震災以降をも描く(予定の)作品であるからだ。前出のリンクで大友は「今この過酷な現実をどう解釈し、どう未来を切り開いてくか。文化の役目はそこにあると思ってます」と語っているが、大友にとって『あまちゃん』の音楽には、そういう思いも込められているはずだ。  一方で<『あまちゃん』が岩手県、『八重の桜』が会津と、原発震災の中心地を微妙に外して東北への復興を支援するNHKへの懐疑><アイドルが要となった明るい地域一丸が、今も続く原発災害の破局の広がりを見えなくしてしまう『絶望』だって、ありうるのでは>という声もある(東京新聞『大波小波』、7月22日付夕刊)。だが、ドラマの中で震災が描かれるのはこれからである。どんな物語が語られ、そこで大友の音楽がどのように鳴らされるのか。アキやユイはそこでどんな歌を歌うのか。楽しみに待ちたい。 ■小野島大 音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebookTwitter

AKB、ももクロ、乃木坂も…アイドルの"アニメコスプレ"は炎上マーケティングの一環か

【リアルサウンドより】  空前のアイドルブームと言われる昨今だが、同じくオタクカルチャーの代表格である"コスプレ"とは、あまり相性がよくないようだ。  AKB48の島崎遥香は、7月7日に放送された「AKB映像センター」でアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の人気キャラクター、惣流・アスカ・ラングレーのアニメイク(コスプレ)を披露。ネット上では「ひど過ぎてワロタwww」「想像以上にやばかった」と物議を醸した。ももいろクローバーZが「セーラームーン20周年記念」でコスプレを披露したときも、ネット上では「等身がおかしい」「中途半端なコスプレは不快」などと、炎上気味のコメントが殺到。ほかにも、AKB48の「銀魂」コスプレや、SKE48松井玲奈と乃木坂46生駒里奈による「魔法少女まどか☆マギカ」など、ネット上で物議を醸した事例は、枚挙にいとまがない。  これらの炎上のコメントを観察していると、否定的なコメントにはある一定のパターンがあることがわかる。 ●その1:原作者のファンがクレームを付けている。 ●その2:非現実的なメイクが、明らかに似合っていない。 ●その3:アイドル自体がその作品・キャラクターのファンではなく、コアなコスプレイヤーの怒りを買っている。  細かいことを指摘するとキリがないが、ほとんどのクレームはこの三つのパターンに集約される。実際にこれらの条件をクリアしている場合、炎上を免れる場合も多い。最近では、乃木坂46生駒里奈による鹿目まどかコスプレは、生駒が原作のファンであったうえ、コスプレのクオリティも高かったことから、否定的なコメントは比較的少なかった。  ミドル級アイドルグループとして注目されるでんぱ組.incは、全員がコアなオタクを公言しているが、これは見方によってはある種の炎上対策と言えるだろう。中川翔子のコスプレも最近はあまり叩かれなくなったが、これも彼女自身がズブのオタクだからではないだろうか。大切なのは、アイドルオタクとアニメオタクが求めているものが、そもそも異なっているということを自覚した上で、真摯に作品と向き合うことなのかもしれない。  とはいえ、秋元康氏が「アンチが多いほど、エンターテイメントは広がる」と公言しているとおり、アイドル産業には"炎上マーケティング"がつきもの。コスプレは炎上しがちな演出だからこそ、注目を集めるチャンスにもなっているのが実情だろう。  音楽業界の中でも特にブランディングが重視されるアイドル界において、諸刃の剣になりうる"コスプレ炎上マーケティング"。その成否は、コスプレとなる対象キャラクターへの理解度次第という面もありそうだ。 (文=マツタヒロノリ)

嵐やAKBの歌は、なぜユニゾンばかり? ハーモニーを忘れたJ-POPに必要なモノ

【リアルサウンドより】  ソニーがJ-POPを殺した――そんな過激な見出しで、音楽業界のタブーに切り込んで話題を呼んだ『誰がJ-POPを救えるか? マスコミが語れない業界盛衰期』(朝日新聞出版)の著者・麻生香太郎氏が、音楽業界の抱える問題点を語る集中連載第3回。 【第1回目】「大手マスコミと芸能界を結ぶ「太い利権」が、ジャーナリズムを殺した」 【第2回目】「『レコ大』審査員は利権まみれ! 日本の音楽評論家が信用できないワケ」

雑誌の売れ行きが低迷する一方で、テレビ離れも進んでいます。

 かつて人気を博した音楽番組も、次々に終わってしまいましたね。今やっている番組も、どうにも惜しいと感じます。フジテレビの音楽番組プロデューサー・きくち伸さんが生演奏にこだわる『僕らの音楽』(フジテレビ)はとってもいい番組だと思うけれど、ヒット曲のない新人は出られないでしょう。やはり、新人がどんどん出演できる番組がないと、音楽シーンの活性化にはつながらない。今、若者は誰もテレビの歌番組を見ていないと思いますよ。逆に定年層は毎日、テレビ浸りの生活だそうです。カネを使わずに楽しめる娯楽はテレビしかない。「こんな曲、あったね」と懐かしがって観てくれるほうがいいので、作り手もそれに合わせる形態を志向するようにどんどん悪循環してしまっている。中途半端にトシとった昔のアイドルを若い世代は見ても意味がわからない。こうやってどんどん負のスパイラルに陥っている。
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Illustration:やべねこ

 新人の場合、必ずタイアップを何か付けてプロモーションをするのですが、CDの売上はたいして見込めない現実があります。だからもう、著作権(録音使用料)はフリーにしてしまって、無料でダウンロードできるようにしたほうがいいと思います。そして、カラオケなどの演奏使用料(二次使用料)や、ライブ、グッズ販売で回収すればいい。というか、そうするしかないし、既にそうなっている。

CDが売れなくなっていること自体には、ネットの普及やユーザーの視聴パターンの変化などの要因も大きいと思われますが、アーティスト側にも何か要因はあるのでしょうか?

 今、MTVで日本の新人を見ていても、"突き刺さらない"じゃないですか。歌詞にしてもなんにしても。先日、男女2人が主演を務める韓国のミュージカルを観て、彼らの歌のうまさに驚いたのですが、韓流のファンに聞くと、人気のあるアーティストではないのだそうです。「知名度が低くても、これだけうまいのか」と、つい考えこんでしまいました。日本は1945年終戦のときから60何年もずっと、道を間違えていたのか――と。  アイドル歌謡がスタートしたのは、CBSソニーが1968年にできて、作家がフリーランス制になった70年代。自由な彼らは、当時のアメリカン・ポップスに、口語の現代的な歌詞をくっつけてアイドル歌謡というジャンルを成立させました。この辺は『誰がJ-POPを救えるか?』に書いた通りです。ただ、そのエポックメイキングな音楽潮流が変化する大事なときに、われわれは、日本には演歌歌手という「歌のうまい人の文化」があったがために、アイドル歌謡に関して「かわいければ、いいんじゃない?」という国民的な了承をしてしまった。あそこが運命の分かれ目で、歌のうまさには目をつぶってルックスを優先させる戦後J-POP史が延々と続いてきたわけですね。韓国なんかはシビアですよね。歌が下手だったら、"歌手"にはなれません。ブーイングが飛んできます。だが、日本でブーイングを聴いたことがない。  この状況を打破するには、ちゃんとした耳の肥えたファン(ユーザー)を今からでも育てなければいけない。例えば、小学校の音楽の授業において、声楽の先生とカラオケ店のお姉さんと、並んで歌ってもらい、プロと一般人の歌唱とのレベルの違いを耳で知る。プロの声量を機械で測り、数値で差を分からせる、というのもいい。このようにして、「腹式呼吸をマスターし、全身をアンプリファイアにして震わせて伸びやかな声を出す人がプロの歌手なのだ。そうじゃない人の歌は鼻歌にすぎない」と、きちんと教えたほうがいい。しかし実際の義務教育において、そんなことを教える先生は皆無です。リコーダーやピアニカを捨てろ。背筋を伸ばし、肺を広げて、腹から声を出せ! 若者よ! です(笑)。だからいまだに、声量がない、音程がとれない、音域がない、歌唱の基礎がない"歌手"がプロという名のもとに大勢いるんです。  また、ハーモニーができるグループも少ない。これも、外国から見たら大笑いの事態です。音楽の歴史を振り返ると、中世音楽よりも昔、教会音楽に、"1つのメロディにあわせてもう1つの音をつける"というハーモニーの前身がありました。そこから対位法や和声が生まれてくる。通奏低音とかね。一方、日本は雅楽で、単音ですよね。向こうはレンガ造りの礼拝堂があったから、神の厳かさを出すための響きとしてハーモニーが適していたのでしょう。日本は、風の音やせせらぎなど自然の音がバックグラウンドにあり、「f分の1のゆらぎ」の中で生きてきたので、ハーモニーはさほど必要とされず、単音で成立してきたのでしょう。  この単音文化が、江戸時代から明治を経て、レコードの輸入はありましたが、ともかく1945年まで続きます。戦後初めて、イタリア歌劇団とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が来日し、「生」で本物のハーモニーを聞いた日本人は、「音楽とはこういうものなのだ」と圧倒されるわけです。ハーモニーが本格的に重んじられるのはそこから。流行歌のジャンルでもダークダックス、ボニー・ジャックスなどの歌唱グループや、女性デュオのザ・ピーナッツが一応ハーモニーを取り入れます。しかし、冒頭で言った肝心の1970年にすっかり抜け落ち、忘れ去られます。70年代になってアイドル歌謡が広まった際に、ハーモニーの要素がなぜか見事に欠落してしまった。そのまま60年......。だから現代のアイドルは、AKB48にしても嵐にしても、みんなユニゾンですよね。外国から見れば「それは歌じゃない」んです。  ある番組のドキュメンタリーで、当時人気絶頂のアイドルが、NYの有名ボイストレーナーのところへ行きました。2~3小節歌ったところで、ボイトレの先生に「あなた、日本のトップシンガーって、ほんと? 発声の基本すらできていませんよ」と大笑いされたのですが、やはり、そうなんだろうなあ、と思います。対位法と和声、とまでは言わないまでも、ハーモニーとはこういうものだ、声楽の基礎とはこういうものだと、小学1年のときに学校で教えないと間に合わないところまで来てしまいました。  上記で申し上げたような形で、今からファン(ユーザー)を育てるとしましょう。今の小学生たちが20歳前後になるころ、すなわち2020年代、そういう教育を受けてきた世代が初めてアーティストとして楽曲を制作するようになります。彼らは発声ができて、音程も確かで、声量も豊かで、和音も大切にして曲作りをするでしょう。平成10年代生まれがJ-POPを救う、と『誰がJ-POPを救えるか』で書いたのは、そういう意味です。かなりその部分だけ、曲解されてネットでは叩かれましたが(笑)。 そのときこそ、初めて、J-POPは再生するのではないでしょうか。 (第4回目に続く) ■麻生香太郎 大阪市生まれ。評論家、作詞家。『日経エンタテインメント!』スーパーバイザー。東大文学部在学中から、森進一や小林ルミ子、野口五郎、小林幸子、TM NETWORKなどに作品を提供。『日経エンタテインメント!』創刊メンバーとなり、以降はエンタテインメントジャーナリストに転身し、音楽・映画・演劇・テレビを横断的にウオッチしている。著書に『誰がJ-POPを救えるか マスコミが語れない業界盛衰期』(朝日新聞出版)など。Twitter