2月22日、今月中旬から行方不明になっていた兵庫県三田市の20代女性を、大阪市東成区の民泊として使われていたマンションの一室に監禁した疑いで、アメリカ人男性が逮捕された。その後、男性が宿泊した同市西成区の民泊施設で女性とみられる人の頭部、大阪府島本町の山中と京都市山科区の竹林で、人の胴体と両腕、両足が見つかったことが明らかとなり、世間に衝撃が走っている。そんな中、各新聞社が、事件の現場となった民泊施設について「“ヤミ民泊”だったのではないか」と報じているのだが、果たして、この凄惨な事件が起こってしまった背景に、この“ヤミ民泊”は関係するのだろうか。
そもそも民泊とは、「旅行者などが一般の民家に宿泊する」という宿泊スタイルであり、2008年、アメリカで民泊仲介サイト「Airbnb」が誕生してから一気に世界中に広まった。「宿泊費を抑えられる」「旅行先の文化をより身近に知ることができる」といった利点があり、日本でも近年ブームとなっているが、実はそのほとんどが“違法民泊=ヤミ民泊”だという。
民泊に関する苦情や迷惑情報を集め、監視・巡回する民泊パトロールサービスを提供している「民泊ポリス」の運営会社(株)オスカー代表取締役・中込元伸氏は、ヤミ民泊について「基本的に民泊というのは、今までの日本の法律上でいうと、“旅館業法”に抵触します」と語る。
厚生労働省の「旅館業法概要」によると、旅館業は「宿泊料を受けて人を宿泊させる」と定義されており、この中でいう宿泊とは「寝具を使用して施設を利用すること」だという。旅行者を民泊させるためには、従来の旅館業法に則って旅館業申請を行う(もしくは地域の条例に定められた基準を満たして民泊申請を行う)必要があるものの、「許可を取らずに営業しているのが、“ヤミ民泊”といわれます」。
なぜ“ヤミ民泊”と呼ばれるようになった理由については、「恐らくですが、今日本で、“誰がどこで民泊をやっているのか”、その実態を誰も把握していないからなのではないでしょうか」とのこと。大手民泊仲介サイトを見ても、民泊の宿泊施設の場所さえ、あいまいにしか表示されていない状況なのだ。
「地図にピンが刺してあるのですが、これが機械的に全てズラされているんです。そのため、旅館業法を指導していく保健所の方も取り締まりがなかなかできていない現状もあります。施設によっては、多数のサイトに情報を掲載している場合もあるので実数さえわかりませんが、あくまで感覚値でいうと、日本の民泊の“9割はヤミ民泊”だと言っても過言ではないでしょう」
そんな“ヤミ民泊”に監視の目を向けている「民泊ポリス」だが、大阪で起こった女性監禁事件の舞台が“ヤミ民泊”である可能性が高まっていることを、どのように見ているのだろうか。事実これまでにも、暴行事件や盗撮被害、また覚せい剤の受け渡し場所となるなど、ヤミ民泊が「犯罪の温床になっているのではないか」といった意見も出ているが……。
「私個人の意見となりますが、実際には、ホテルで起こってもおかしくない事件だとは思います。ただし、ヤミ民泊は、カギの受け渡しでオーナーさんに会わないといったケースもあるんです。ホテルのように、チェックインの際に必ず“人の目”があるというわけではなく、例えば、『郵便受けにカギが入っていて、暗証番号を聞いて受け取る』、またオートロックのないマンションに限りますが、『チェックインの際にカギがまったくかかっていない』『カギが内ノブにかかっている、テーブルの上に置いてある』『カギはかけずにチェックアウトする』なんてこともあります。泊める側は誰が泊まるかちゃんとわかっておらず、一方で泊まる側も怖いと思います。民泊には、こういった状況が根底にあるのは確かです」
そんなヤミ民泊事情が問題視され、今年6月には、民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行と旅館業法が改正される。昨年12月には、観光庁が民泊仲介サイト運営事業者へ向け、サイト上に掲載している違法民泊物件を全て削除するよう通知もしている。
「ただし、それも観光庁が把握しているサイトのみですし、全ての民泊仲介サイトが従うかどうか……。民泊ポリスも、もし行政の方からお声がけいただいた場合は、ご協力させていただければと思っています」
6月以降、ヤミ民泊はどうなっていくのか。いたましい事件が起こってしまった中、あらためて注視していきたい。


