中国農村で生水を飲んで育った中年女性、乳房から30cmの寄生虫が摘出される

 中国ではたびたび、体内から驚くほどのサイズに成長した寄生虫が摘出される事件が起きているが、今度は乳房だ。

「南方都市報」(6月19日付)によると、湖北省の農村に住む女性・王さん(53)は、3年前から右の脇の下あたりにシコリがあるのを感じていた。シコリは時々なくなることもあったが、次第に乳房へと移ってきたのだという。

 乳房の皮膚が赤く腫れ上がり、痛みやかゆみもひどくなってきたことから、病院で除去するために手術を受けたところ、切開部から現れたのは、なんと3匹の寄生虫! 1匹は15cmほどの長さで、もう2匹は30cmもあったという。

 取り出された寄生虫はマンソン裂頭条虫の幼虫で、人や動物の皮膚や腹腔、筋肉内に寄生し、人の場合は皮膚の下でコブを作るとされている。

 それにしても、いったいどうやって乳房の中に、こんな寄生虫が入り込んだのか? 王さんは小さいころから生水を飲むのが好きで、その習慣は大人になっても変わらず、喉が渇いたら桶にくんでおいた生水を飲んでいたという。

 中国では水道の水をそのまま飲むのは病気の原因になることから、都市部においても普通は湯冷ましを飲むか、ペットボトルの水を飲む。ところが王さんは家族に何度も止められたにもかかわらず、子どものころから生水を飲む習慣をやめなかった。

 このマンソン裂頭条虫、寄生されても通常は大きな問題は起こらないが、場合によっては内臓や脳内に入り込んだりすることもあり、失明や命の危険もあるとされている。

 筆者は上海の古いアパートに住んでいた時、水道の蛇口から小さなミミズのような生き物が出てきたのを見て、しばらくシャワーでさえ浴びるのが怖くなったことがある。中国で生水を飲むのは厳禁である。

(文=佐久間賢三)

『幸色のワンルーム』放送中止に批判の嵐……弁護士・太田啓子氏が「誘拐肯定」の意味を語る

 「表現の自由はどうなるんだ」「現実とフィクションの違いもわからないなんて」「じゃあサスペンスドラマも全部放送中止だね」――テレビ朝日が6月18日、7月開始予定の連続ドラマ『幸色のワンルーム』の放送を取りやめることを発表した途端、ネット上には、こんな激しい言葉が飛び交うこことなった。

 同ドラマの原作は、もともと2016年9月より『世の中いろんな人がいると言う話』というタイトルでTwitterに投稿された作品で、翌17年2月からは漫画サイト「ガンガンpixivコミック」にて連載が始まり、コミックスは重版含め累計75万部を突破している。

 両親から虐待、同級生からイジメ、教師から性的暴行を受け、行き場を失った14歳の少女が、ある日、マスク姿の“お兄さん”に誘拐され、“幸”という名をもらい、同居生活を送る――というストーリーだ。原作漫画が公開されているサイトでは、「その日、少女は誘拐された。しかし、それは少女にとって一縷の希望にかけた生活の始まりだった。 少女は誘拐犯に結婚を誓い、誘拐犯は少女にたくさんの“幸せ”を捧ぐ。誘拐犯と被害者の関係なのに―――どうしてこんなに温かいの?」といったあらすじ紹介が確認できる。

 今回、テレビ朝日が放送を取りやめた背景には、同作が、「実際の誘拐事件をモチーフにしているのではないか」「被害者を傷つける」「誘拐を肯定している」などと批判されたことが関係するとみられる。ネット上では以前から、埼玉県朝霞市で誘拐された少女が2年の監禁生活を経て、16年3月に保護された事件を想起させるといわれ、原作のはくり氏は事件と作品は無関係だとしつつも、物議を醸していたのだ。

 しかし、ひとたび放送取りやめのニュースが流れると、一転してネット上には異論が噴出することに。あくまでフィクションの作品であり、これまでも犯罪を扱った作品は多数あるにもかかわらず、なぜ『幸色のワンルーム』だけ……といった論調で、『ルパン三世』『名探偵コナン』といったアニメ作品、また実際に起こった犯罪をモチーフにしたドラマや映画作品などの例を出し、「これらも放送してはいけないことになる」と声を上げたのだ。

 そこで今回、『幸色のワンルーム』の実写ドラマ化が発表された際、Twitter上で、“反対”を表明した弁護士・太田啓子氏に取材を行った。なぜ、同作を実写ドラマ化すべきではないのか、「あくまでフィクション」と主張している人が見落としている“視点”を詳しく解説してもらった。

 太田氏は、同作のキャラクター・幸について、「誘拐された方も喜んでる」という描かれ方をされていることに対して、疑問を抱いているようだ。

「『誘拐ドラマがダメなら、殺人ドラマも強盗ドラマもダメってこと?』と言う人がいますが、ここには決定的な違いがあると思います。殺人や強盗は『悪いこと』という共通認識、不動の前提がある一方、誘拐に関しては『悪いこと』と認識しない人がいるのです。例えば、現実で殺人事件が起きたときに、『殺害された方も喜んでる』なんて言う人はいませんが、女の子が誘拐されたとき、『誘拐された方も喜んでる』『家出した女子を家にかくまっただけ』『女子も男の心につけこんで、いい思いをしていた』などと言う人が出てきます。『誘拐は、被害者の意思に反している』『被害者は、怖くて誘拐犯から離れられなかった』という当たり前のことを、当たり前だと思えない人がいるのです」

 『幸色のワンルーム』のモチーフになったのではないかとされる朝霞市の事件でも、同様のことを口にする人はいた。少女が閉じ込められていたアパートの周辺は住宅街で、コンビニや交番などもあり、少女が1人でスーパーに買い物に行くこともあったなどと報じられると、「少女は逃げたくないから逃げなかった」といった声も出てきたのだ。しかし実際、「怖くて逃げ出せなかった」と少女は供述している。

 また太田氏は、「殺人犯」「強盗犯」と「誘拐犯」では、その行為自体への認知に違いがあると指摘する。

「現実の殺人事件、強盗事件の犯人は『これは人を殺す行為だ』『これは強盗だ』ということを通常は認識しているでしょう。その上で『こんなひどいやつは殺されて当然なんだ』『金に困っていたんだから仕方なかったんだ』『あいつは金持ちなんだから、これくらいとられてもどうってことないはずだ』などと、その行為を正当化したり軽く考えようとするようなことはあるかもしれませんが、行為そのものが『人を殺す行為だ』とか『無理矢理財産を奪う行為だ』という認識は普通はしているはずです」

 しかし一方で、誘拐犯はというと、「例えば、朝霞市での事件や新潟で女児を9年監禁していた事件などでは、犯人は『仲の良い友達として暮らしていた』『自分と一緒にいることを嫌がっていたはずはない』などという趣旨の供述をします。罪を軽くしたくて嘘を強弁しているというより、行為自体への認知が歪んでおり、本気でそのように思い込んでいるのではないでしょうか。強盗や殺人と違い、そもそも自分の行為が、被害者の意思に反する誘拐であること自体、認識していないことが往々にあります。行為自体への認知に歪みがあることが、よく見られるという点……それが、『殺人や強盗』と『誘拐』の重要な違いです」。

 例えば『名探偵コナン』や『ルパン三世』の中で描かれる殺人や強盗は、「殺人、強盗として描かれており『人を殺したけれど実は殺人じゃない』というような歪んだ認知に基づく描写はされません。ところが『幸色のワンルーム』では、幸が『お兄さんがしたことは誘拐だ』と言いつつも、それが幸の意思に反することだとは描かれていないのです。幸は、お兄さんと一緒にいることを喜び、肯定しているという描写になっています。これは、実際の女児誘拐犯が『こうであってほしい』と勝手に思い込んでいる歪んだ認知そのものの描写です」と、太田氏は述べる。

 太田氏いわく、『幸色のワンルーム』は、加害者や一部の人が事件に抱いたであろう妄想を作品にしたものであり、「実在の被害者に対する中傷そのものだと思う」という。作者が「事件とは関係ない」といった発言をしている点についても、「本人が言えばいいっていう問題ではないですよね」と、太田氏は疑問を投げかける。

 実際、作品を発表したタイミング的に、同作と朝霞市の事件を重ね合わせる人は少なくなかった。作者としては、作品が“世間にどう受け取られるか”を熟考することも重要なのかもしれない。

 太田氏は、ドラマ制作サイドの姿勢にも違和感を覚えたそうだ。ドラマの公式SNSが、女優・山田杏奈の写真に「#背景はお兄さんが撮った盗撮写真」「#1000枚近くあります」というハッシュタグをつけて宣伝活動を行っていたという。

「盗撮やストーキングは、人権を脅かすということが、現代日本では“共通認識になっていない”からこそ、ああいうことをすると思うんです。フィクションも世の中の社会規範を作っていくものなわけで、『好きな女の子を盗撮する、それも純愛の1つの形なんだ』という考えを肯定的に描くのはどうなのかと。社会規範を作るうえで、そういった影響を持ってしまう作品を“公共の電波に乗せる”のはよくないと思います」

 太田氏は、この“公共の”という点を強調し、「例えば、一部の人が楽しむ同人誌とは訳が違う。公共の電波に乗せるのは、表現者の社会的責任を伴い、おかしな社会規範を作ることに寄与することは、やはりやってはいけないと考えます」と語る。

 表現者が考えることが重要

 同じ犯罪でも、「殺人」「強盗」といった確固とした社会規範があるものと、「誘拐」といった確固たる社会規範がないもので、その扱いを変えなければいけない――。太田氏の話からは、そんな公共の電波に乗せる作品についての指標が見えてくる。

「なぜ、誘拐における、歪んだ認知の肯定的な描写を問題にすべきなのかですが、どのような状況下であっても歪んだ認知を肯定的に描いてはいけない、とは思いません。現状の社会でその描写をすることの意味を、表現者が考えることが重要です。現実の事件の被害者への揶揄、中傷にあたるような表現は、同人誌のような閉じた空間であればともかく、公共空間で行うことは社会的に許されるものではないでしょう。例えば、すでに『性的な目的がある誘拐は悪い』『誘拐された側は、第三者と接触する機会があっても、怖くて助けを求められないのが当然。助けを求めなかったからといって、誘拐犯と一緒にいることを望んでいたということではあり得ない』ということが、誰も疑わないような常識だ、というような社会であれば、また話は、違うかもしれないと思います」

 しかし、今の日本社会ではそうした“誰も疑わないような常識がない”のが実情だろう。

「現に朝霞の事件でそうであったように、『女子中学生も逃げなかったんだから一緒にいられてよかったんだろう』というようなことを誰でも見られるSNSなどで公言し、そう信じたい人たちが少なからず存在する社会です。例えば性的被害を訴えた場合もそうで、『本当は合意があったのにはめたんだな』などと、女性が被害を訴える声を歪曲して捉える空気が強すぎる。このような空気の社会の中で、『女児を誘拐したが実はその女児はその「誘拐」を喜んでいた』という言説を肯定的に描くことは、女児誘拐についてのそのような歪んだ認知を肯定し強化することにならないでしょうか」

 『幸色のワンルーム』放送取りやめに異議を唱える人は、「同作に反対する人がどの点を問題視しているのか、把握できていないのではないかな、と思ってしまいます」と語る太田氏。

「表現の自由って批判をされない権利ではないし、公共の空間で何をやってもいい権利でもありません。また、重要なこととして、表現物発信における社会的責任意識を問うことは、公権力による表現の自由の弾圧とは違います。東日本大震災後、サザンオールスターズの桑田佳祐さんは、ライブ『TSUNAMI』を自粛していたそうですが、それは『自分の意図と関わりなく、大津波で家族を失うなど、つらい思いをしたファンに、自分の言葉がどう感じられるかを思いやった上での判断』だったのだと思います。これにも是非の論争はあるようですが、社会の中で生きる表現者としての1つの見識だと感じます。永遠に公の場で歌わないと決めていらっしゃるわけでもないでしょうし、社会の中で自分の言葉がどう受け止められるかが変われば、また違う判断をされてもおかしくないですよね」

 太田氏は、『幸色のワンルーム』放映に関しても「そういう、今の社会の中で自分が発信する表現物がどういう意味を持つか、どういう影響を与えるかという“社会の中で表現する者としての責任意識の有無を問うという範疇の問題”」であると考えているという。

「私も含め、放映を批判した人たちは、例えば法律をつくって、女児誘拐を肯定的に描くことを禁止しましょうなどということは言っていないのに、『表現の自由への弾圧』などというのは、議論の次元を誤解した的はずれな反応です。表現物や表現者のスタンスへの批判や論評も、表現の自由の行使ですしね。そうではなく、公共空間のあり方や、社会規範の作り方の話をしているのですが」

 『幸色のワンルーム』は、テレビ朝日での放送は取りやめとなったものの、制作した朝日放送では予定通り放送が決定している。こうした判断が下った背景について、「被害者少女が関東に住んでいるから、関西だけの放送になったのでは」と見る向きもあるが、「被害者の少女が見なければいいという問題ではない」と太田氏は指摘する。ドラマ開始後、再びこの問題は議論を呼びそうだが、果たして、どんな意見が飛び交うことになるのだろうか。

太田啓子(おおた・けいこ)
弁護士、湘南合同法律事務所。国際基督教大学を卒業後、2002年に弁護士登録(神奈川県弁護士会)。明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)メンバー。13年4月より憲法カフェを開始するほか、14年11月より「怒れる女子会」呼びかけ人。

『幸色のワンルーム』放送中止に批判の嵐……弁護士・太田啓子氏が「誘拐肯定」の意味を語る

 「表現の自由はどうなるんだ」「現実とフィクションの違いもわからないなんて」「じゃあサスペンスドラマも全部放送中止だね」――テレビ朝日が6月18日、7月開始予定の連続ドラマ『幸色のワンルーム』の放送を取りやめることを発表した途端、ネット上には、こんな激しい言葉が飛び交うこことなった。

 同ドラマの原作は、もともと2016年9月より『世の中いろんな人がいると言う話』というタイトルでTwitterに投稿された作品で、翌17年2月からは漫画サイト「ガンガンpixivコミック」にて連載が始まり、コミックスは重版含め累計75万部を突破している。

 両親から虐待、同級生からイジメ、教師から性的暴行を受け、行き場を失った14歳の少女が、ある日、マスク姿の“お兄さん”に誘拐され、“幸”という名をもらい、同居生活を送る――というストーリーだ。原作漫画が公開されているサイトでは、「その日、少女は誘拐された。しかし、それは少女にとって一縷の希望にかけた生活の始まりだった。 少女は誘拐犯に結婚を誓い、誘拐犯は少女にたくさんの“幸せ”を捧ぐ。誘拐犯と被害者の関係なのに―――どうしてこんなに温かいの?」といったあらすじ紹介が確認できる。

 今回、テレビ朝日が放送を取りやめた背景には、同作が、「実際の誘拐事件をモチーフにしているのではないか」「被害者を傷つける」「誘拐を肯定している」などと批判されたことが関係するとみられる。ネット上では以前から、埼玉県朝霞市で誘拐された少女が2年の監禁生活を経て、16年3月に保護された事件を想起させるといわれ、原作のはくり氏は事件と作品は無関係だとしつつも、物議を醸していたのだ。

 しかし、ひとたび放送取りやめのニュースが流れると、一転してネット上には異論が噴出することに。あくまでフィクションの作品であり、これまでも犯罪を扱った作品は多数あるにもかかわらず、なぜ『幸色のワンルーム』だけ……といった論調で、『ルパン三世』『名探偵コナン』といったアニメ作品、また実際に起こった犯罪をモチーフにしたドラマや映画作品などの例を出し、「これらも放送してはいけないことになる」と声を上げたのだ。

 そこで今回、『幸色のワンルーム』の実写ドラマ化が発表された際、Twitter上で、“反対”を表明した弁護士・太田啓子氏に取材を行った。なぜ、同作を実写ドラマ化すべきではないのか、「あくまでフィクション」と主張している人が見落としている“視点”を詳しく解説してもらった。

 太田氏は、同作のキャラクター・幸について、「誘拐された方も喜んでる」という描かれ方をされていることに対して、疑問を抱いているようだ。

「『誘拐ドラマがダメなら、殺人ドラマも強盗ドラマもダメってこと?』と言う人がいますが、ここには決定的な違いがあると思います。殺人や強盗は『悪いこと』という共通認識、不動の前提がある一方、誘拐に関しては『悪いこと』と認識しない人がいるのです。例えば、現実で殺人事件が起きたときに、『殺害された方も喜んでる』なんて言う人はいませんが、女の子が誘拐されたとき、『誘拐された方も喜んでる』『家出した女子を家にかくまっただけ』『女子も男の心につけこんで、いい思いをしていた』などと言う人が出てきます。『誘拐は、被害者の意思に反している』『被害者は、怖くて誘拐犯から離れられなかった』という当たり前のことを、当たり前だと思えない人がいるのです」

 『幸色のワンルーム』のモチーフになったのではないかとされる朝霞市の事件でも、同様のことを口にする人はいた。少女が閉じ込められていたアパートの周辺は住宅街で、コンビニや交番などもあり、少女が1人でスーパーに買い物に行くこともあったなどと報じられると、「少女は逃げたくないから逃げなかった」といった声も出てきたのだ。しかし実際、「怖くて逃げ出せなかった」と少女は供述している。

 また太田氏は、「殺人犯」「強盗犯」と「誘拐犯」では、その行為自体への認知に違いがあると指摘する。

「現実の殺人事件、強盗事件の犯人は『これは人を殺す行為だ』『これは強盗だ』ということを通常は認識しているでしょう。その上で『こんなひどいやつは殺されて当然なんだ』『金に困っていたんだから仕方なかったんだ』『あいつは金持ちなんだから、これくらいとられてもどうってことないはずだ』などと、その行為を正当化したり軽く考えようとするようなことはあるかもしれませんが、行為そのものが『人を殺す行為だ』とか『無理矢理財産を奪う行為だ』という認識は普通はしているはずです」

 しかし一方で、誘拐犯はというと、「例えば、朝霞市での事件や新潟で女児を9年監禁していた事件などでは、犯人は『仲の良い友達として暮らしていた』『自分と一緒にいることを嫌がっていたはずはない』などという趣旨の供述をします。罪を軽くしたくて嘘を強弁しているというより、行為自体への認知が歪んでおり、本気でそのように思い込んでいるのではないでしょうか。強盗や殺人と違い、そもそも自分の行為が、被害者の意思に反する誘拐であること自体、認識していないことが往々にあります。行為自体への認知に歪みがあることが、よく見られるという点……それが、『殺人や強盗』と『誘拐』の重要な違いです」。

 例えば『名探偵コナン』や『ルパン三世』の中で描かれる殺人や強盗は、「殺人、強盗として描かれており『人を殺したけれど実は殺人じゃない』というような歪んだ認知に基づく描写はされません。ところが『幸色のワンルーム』では、幸が『お兄さんがしたことは誘拐だ』と言いつつも、それが幸の意思に反することだとは描かれていないのです。幸は、お兄さんと一緒にいることを喜び、肯定しているという描写になっています。これは、実際の女児誘拐犯が『こうであってほしい』と勝手に思い込んでいる歪んだ認知そのものの描写です」と、太田氏は述べる。

 太田氏いわく、『幸色のワンルーム』は、加害者や一部の人が事件に抱いたであろう妄想を作品にしたものであり、「実在の被害者に対する中傷そのものだと思う」という。作者が「事件とは関係ない」といった発言をしている点についても、「本人が言えばいいっていう問題ではないですよね」と、太田氏は疑問を投げかける。

 実際、作品を発表したタイミング的に、同作と朝霞市の事件を重ね合わせる人は少なくなかった。作者としては、作品が“世間にどう受け取られるか”を熟考することも重要なのかもしれない。

 太田氏は、ドラマ制作サイドの姿勢にも違和感を覚えたそうだ。ドラマの公式SNSが、女優・山田杏奈の写真に「#背景はお兄さんが撮った盗撮写真」「#1000枚近くあります」というハッシュタグをつけて宣伝活動を行っていたという。

「盗撮やストーキングは、人権を脅かすということが、現代日本では“共通認識になっていない”からこそ、ああいうことをすると思うんです。フィクションも世の中の社会規範を作っていくものなわけで、『好きな女の子を盗撮する、それも純愛の1つの形なんだ』という考えを肯定的に描くのはどうなのかと。社会規範を作るうえで、そういった影響を持ってしまう作品を“公共の電波に乗せる”のはよくないと思います」

 太田氏は、この“公共の”という点を強調し、「例えば、一部の人が楽しむ同人誌とは訳が違う。公共の電波に乗せるのは、表現者の社会的責任を伴い、おかしな社会規範を作ることに寄与することは、やはりやってはいけないと考えます」と語る。

 表現者が考えることが重要

 同じ犯罪でも、「殺人」「強盗」といった確固とした社会規範があるものと、「誘拐」といった確固たる社会規範がないもので、その扱いを変えなければいけない――。太田氏の話からは、そんな公共の電波に乗せる作品についての指標が見えてくる。

「なぜ、誘拐における、歪んだ認知の肯定的な描写を問題にすべきなのかですが、どのような状況下であっても歪んだ認知を肯定的に描いてはいけない、とは思いません。現状の社会でその描写をすることの意味を、表現者が考えることが重要です。現実の事件の被害者への揶揄、中傷にあたるような表現は、同人誌のような閉じた空間であればともかく、公共空間で行うことは社会的に許されるものではないでしょう。例えば、すでに『性的な目的がある誘拐は悪い』『誘拐された側は、第三者と接触する機会があっても、怖くて助けを求められないのが当然。助けを求めなかったからといって、誘拐犯と一緒にいることを望んでいたということではあり得ない』ということが、誰も疑わないような常識だ、というような社会であれば、また話は、違うかもしれないと思います」

 しかし、今の日本社会ではそうした“誰も疑わないような常識がない”のが実情だろう。

「現に朝霞の事件でそうであったように、『女子中学生も逃げなかったんだから一緒にいられてよかったんだろう』というようなことを誰でも見られるSNSなどで公言し、そう信じたい人たちが少なからず存在する社会です。例えば性的被害を訴えた場合もそうで、『本当は合意があったのにはめたんだな』などと、女性が被害を訴える声を歪曲して捉える空気が強すぎる。このような空気の社会の中で、『女児を誘拐したが実はその女児はその「誘拐」を喜んでいた』という言説を肯定的に描くことは、女児誘拐についてのそのような歪んだ認知を肯定し強化することにならないでしょうか」

 『幸色のワンルーム』放送取りやめに異議を唱える人は、「同作に反対する人がどの点を問題視しているのか、把握できていないのではないかな、と思ってしまいます」と語る太田氏。

「表現の自由って批判をされない権利ではないし、公共の空間で何をやってもいい権利でもありません。また、重要なこととして、表現物発信における社会的責任意識を問うことは、公権力による表現の自由の弾圧とは違います。東日本大震災後、サザンオールスターズの桑田佳祐さんは、ライブ『TSUNAMI』を自粛していたそうですが、それは『自分の意図と関わりなく、大津波で家族を失うなど、つらい思いをしたファンに、自分の言葉がどう感じられるかを思いやった上での判断』だったのだと思います。これにも是非の論争はあるようですが、社会の中で生きる表現者としての1つの見識だと感じます。永遠に公の場で歌わないと決めていらっしゃるわけでもないでしょうし、社会の中で自分の言葉がどう受け止められるかが変われば、また違う判断をされてもおかしくないですよね」

 太田氏は、『幸色のワンルーム』放映に関しても「そういう、今の社会の中で自分が発信する表現物がどういう意味を持つか、どういう影響を与えるかという“社会の中で表現する者としての責任意識の有無を問うという範疇の問題”」であると考えているという。

「私も含め、放映を批判した人たちは、例えば法律をつくって、女児誘拐を肯定的に描くことを禁止しましょうなどということは言っていないのに、『表現の自由への弾圧』などというのは、議論の次元を誤解した的はずれな反応です。表現物や表現者のスタンスへの批判や論評も、表現の自由の行使ですしね。そうではなく、公共空間のあり方や、社会規範の作り方の話をしているのですが」

 『幸色のワンルーム』は、テレビ朝日での放送は取りやめとなったものの、制作した朝日放送では予定通り放送が決定している。こうした判断が下った背景について、「被害者少女が関東に住んでいるから、関西だけの放送になったのでは」と見る向きもあるが、「被害者の少女が見なければいいという問題ではない」と太田氏は指摘する。ドラマ開始後、再びこの問題は議論を呼びそうだが、果たして、どんな意見が飛び交うことになるのだろうか。

太田啓子(おおた・けいこ)
弁護士、湘南合同法律事務所。国際基督教大学を卒業後、2002年に弁護士登録(神奈川県弁護士会)。明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)メンバー。13年4月より憲法カフェを開始するほか、14年11月より「怒れる女子会」呼びかけ人。

「握手会で求婚」から5年――元AKB48・岩田華怜、ストーカー逮捕に時間要したワケを弁護士が解説

 元AKB48・岩田華怜につきまとい行為を繰り返したとして、警視庁は6月19日、ストーカー規制法違反容疑で、42歳の男を逮捕した。2012年頃から岩田のファンになったというこの男は、AKBファンの間では有名な人物で、13年、握手会の会場で当時中学生だった岩田にプロポーズをして、運営から“出禁”を食らったほか、その後も、ブログで岩田の家族を脅迫するような文章を書き連ね、岩田の仕事先などにつきまとうなどしたという。警視庁は、口頭や書面での警告を複数回行い、また昨年4月には、ストーカー規制法に基づく警告を発出したが、男は今年4月に岩田出演の舞台会場に押しかけるなどした容疑で、今回逮捕に至った。

 岩田は公式Twitterにて19日、「お騒がせしています。そして今までご迷惑をおかけした全ての人に心からの謝罪申し上げます。一緒に闘ってくれたファンのみんな、苦しい思いをさせたね。それでも一緒にいてくれてありがとう」などとツイート。長年悩まされていたストーカー被害が「終わりになることを切に祈ります」と述べた。

 そんな岩田には、ファンを中心に「本当によかった」「長い闘いだったね」「これで落ち着くといいですね」などと励ましのコメントが寄せられているが、一方で、「なぜこんなに逮捕まで時間がかかったのか?」「華怜ちゃんがどれだけ悩んできたと思ってるんだろう」などと、長期化したことに疑問や怒りの声も散見される。

 岩田サイドが、どのタイミングで警視庁に相談をしたのか、詳細は明かされていないものの、最初に握手会でトラブルが発生してから、実に5年もの歳月がたっていると考えると、やはり「なぜ?」と感じてしまうのは当然ではないだろうか。今回、弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に、ストーカー規制法について話を聞いた。

 ストーカー規制法は、00年11月24日に施行された法律で、同法によって逮捕されるのは、「1.ストーカー行為をした場合(1年以下の懲役、または100万円以下の罰金)、2.ストーカー行為を行わないように禁止命令が出されたにもかかわらずストーカー行為をした場合(2年以下の懲役、または200万円以下の罰金)などが挙げられます」とのこと。今回、ストーカー規制法違反としか報道されていないため、どのような罪名で逮捕されたかは不明だが、「いずれにせよ、この法律で逮捕されるには相当の時間を要する」そうだ。

「理由はいくつかあります。法律は、『押しかける』『待ち伏せ』『面会の強要』『乱暴な言葉をかける』『性的な言葉をかける』などを、“つきまとい等”と定めるのですが、これらの行為を1回行っただけでは、“つきまとい等”と判断してくれません。これらが複数回行われて初めて“つきまとい等”と判断されます。しかし、この“つきまとい等”が1回でも行われれば、ただちに逮捕できるというわけではありません。法律は、さらにこの“つきまとい等”を繰り返し行うことを“ストーカー行為”と定めており、この“ストーカー行為”が行われた場合に、初めてストーカー行為法違反として逮捕することができるのです。だから時間がかかってしまいます」

 一度や二度「待ち伏せ」が行われただけでも、当人は大きな恐怖を感じることだろうが、それだけでは逮捕にはほど遠いという現実があるようだ。

「また、こういう行為は、証拠として残りにくいという点があります。警察は、証拠がなければ動きませんので、押しかけてきた、待ち伏せされた、面会を求められた、脅迫文が届いた、といった証拠を一つひとつ集めないと、“繰り返し行われた”と判断してくれないわけです。“刑罰”を科す以上、慎重さが求められるのはわかりますが、警察がろくに仕事をしないで発生した桶川ストーカー殺人事件もあったことですし、なかなか難しいところです」

 現状こうしたつきまとい行為に悩んでいる当人にとって、“逮捕までに時間がかかる”という現実は受け入れがたいものだろう。何かが起こってからでは遅いだけに、山岸氏は証拠集めに関して、次のようなアドバイスをする。

「“証拠”というと、監視カメラなどの映像や脅迫文そのものが挙げられますが、“つきまとい等”に対しては、そういうことがあったことを日記に記す、というのも立派な証拠となります。警察に証言する時には、時間もたっており、忘れてしまっていることもあるでしょう。その日にあったことを日記にまとめて、これが繰り返されていることを警察に伝えるということが大切です」

 岩田にストーキング行為をしていた男は逮捕されたが、どのような刑が下るのだろうか。岩田との示談成立、不起訴という可能性もあるが、山岸氏は「被害者は一般人ではないので、なかなか示談は難しいでしょう」と見解を述べる。

「この場合、これまでの例からすれば、程度にもよりますが、6カ月程度の懲役刑が宣告されることと思います。同種前科がなければ執行猶予も3年ほどつくでしょう」

 最後に、近年アイドルの刃傷沙汰を含むストーカー事件が起こっている件について、「本来、“遠くに輝いていて、近づきがたいアイドル”を、あえて“身近なアイドル”として売り出しているのであれば、近さと反比例するぐらい警護は厳重にすべきと思います」と、運営に対する意見を述べた山岸氏。二度とこのような事件が起こらないよう、アイドル業界全体の意識改革も必要となるのかもしれない。

もはや京大も“Fラン”なのか……「京大百万遍コタツ事件」上田雅子が語った一部始終

「逮捕される可能性は、考えていないわけではありませんでした。しかし、このタイミングで来るとは……」

 昼下がりのカフェで、京都大学大学院生の上田雅子は笑みを浮かべながら話し始めた。

 今、京都大学に大手新聞やテレビまでもが注目している。立て看の撤去問題。そして、学生寮のひとつ吉田寮の取り壊し問題。さまざま、新しさのある言葉を並べて学内での学生の自主活動を規制。学生が自治管理する空間をなきものにしようとする大学当局と学生とのせめぎ合いは、日を追う毎に盛り上がっている。とりわけ、大学当局が立て看の撤去を開始した5月以降、緊張感は緩むことがない。

 そんな状況下で、上田が京都府警下鴨署に逮捕されたのは5月22日のこと。道路交通法違反が、彼女にかけられた容疑である。

 今年の2月25日。上田は数人の仲間と共に京都大学近くの百万遍交差点にコタツを置き、鍋を囲んだ。そして仲間たちと共に、こう呼びかけた(この日は入試当日でもあった)。

「よかったら、こちらの方に来て、一緒に鍋を囲みませんか~」

 こんな学生たちの「運動」が行われるのは、これが初めてではない。道路や施設の前にコタツを置き拡声器で情宣をするスタイルは、1990年代に「法政大学の貧乏くささを守る会」を嚆矢とし、連綿と受け継がれてきたもの。それが、逮捕へ至る苛烈な弾圧を受けたケースは、これまでに聞いたことはない。

 2003年。この年に開業した六本木ヒルズの、最初のクリスマスの日。前日に某大学でバラ撒いたビラから警察当局の知るところとなった「六本木ヒルズ粉砕闘争(首謀者とか経緯は、ここでは省略)」の時のこと。鍋を出せば、早くもバスを連ねてやってきた多数の機動隊に囲まれるという異様な光景が、そこにはあった。だが、緊張感はあれども、逮捕される物はなかった。

 どこで知ったか、その「伝統」を受け継ぐ京大生らのコタツ闘争も、これまで苛烈な弾圧に晒されたことはなかった。

「過去にも、さまざまな学生が百万遍交差点にコタツを出して情宣することは行われてきました。通報を受けた警察官がやってきて、やめるよう注意されることはありましたが、これまで逮捕されたケースはなかったのです」

 好意的に受け止める者。迷惑がる者。あるいは「バカな学生がいるな」と思いつつ、自分も参加する者や、批判をする者。コタツ闘争への評価はさまざまあれども、警察当局も逮捕するまでの行為は躊躇していた。

 

■当初は警察への協力を拒んでいた大学当局

 上田は、メモも見ずに日付なども正確に逮捕までの経緯を語った。

 事態が急変したのは3月に入ってからだった。突然、警察が現場検証を実施したのだ。3月29日には、文学部教務課に家宅捜索が入り名簿に掲載されていた何人かの学生の写真を撮影して帰って行ったのである。

「誰の写真を撮影したのかはわかりませんが、自分たちのことじゃないかなとは思っていました……ただ、その後は音沙汰もなかったので……」

 それから2カ月以上が経った5月22日の朝。バイトに出かけようとした上田の携帯電話に、見知らぬ番号から着信があった。

「下鴨署です、もうすべてわかっていますから」

 午前10時に出頭するように要求する相手に対し、上田は拒否。弁護士と相談の上、午後になって出頭した。さっそく始まった取り調べの中で、幾度も聞かれたのは今回一緒に逮捕されたもう1人を除く、あとの2人の名前だ。

「とにかく『ほかの人間の名前を言え』と、言うんです。それを拒否していたら、逮捕されてしまいました」

 留置所の独房に泊まることになってしまった上田。ところが、裁判所は拘留申請を却下。わずか数日で、晴れて釈放となったのである。

 いったい、たかが「また京大生がバカなことやっているな」程度のコタツ闘争で、逮捕にいたってしまった理由はなんなのか。

 筆者の想像に過ぎないが、その背後には、大学の方針に逆らう中心メンバーの名前を捕捉したい大学当局と公安警察の意図が見え隠れする。

 持久戦から実力行動まで、さまざまな方針が入り乱れてはいる。立て看問題や吉田寮問題の双方に取り組む者。それぞれは別個の問題と捉える者など立場はさまざまだ。京大当局の弾圧体制に対し違和感を抱く学生は増えている。思想の左右や有無にかかわらず、である。その中でも、より活動的なメンバーの首根っこを押さえることで運動を収束に向かわせるのは、あちこちで繰り返されてきた弾圧の常道だ。

 いずれにしても、上田のような学内で大学当局への反抗の台風の目になっている目障りな学生を、一刻も早く排除したいという点で、大学当局と公安警察の一致した結果が、今回の逮捕へと至ったのであろう。

■京大はもはやFラン

 では、ここからは上田も暮らす吉田寮の問題について記していこう。

 吉田寮というのは、事情を知らなければ「意味がわからない」と思われる場だ。ここは学生寮ではあるのだけれど、管理運営するのは大学当局ではない。寮に住む学生が自治組織をつくって運営にあたる、今や日本でも数少ない空間である。

 そんな、大学でありながら大学が手出しをできない「治外法権」の場。それは21世紀の大学には相応しくはないと、大学当局は考えているのである。そんな空間を一刻も破壊するためには、上田のような「活動家」の学生の氏名を捕捉し、排除することが目論まれているのであろう。

「取り壊しに反対する寮生が少数派になれば『ヤツらはオカシイ人たちだ』『過激派だ』とレッテル貼りして、機動隊を招き入れればよいと考えているのではないでしょうか」

 そんな陰謀に立ち向かう吉田寮の寮生たち……と、思いきや意外に雲行きは怪しい。というのも上田が逮捕された直後、吉田寮の自治会は声明を作成し、ホームページ上に公開している。

 * * *

2018年5月23日付報道に関する吉田寮自治会の見解

5月23日、本寮の寮生が道路交通法違反の容疑で逮捕されたという報道があった。本件について、吉田寮自治会は一切関与していない。また当該行為を吉田寮自治会として是認・推奨するものではない。

にもかかわらず、本件に関する一部の報道において、実名ならびに住所が公開されることによって、吉田寮に居住していることが恣意的に言及されている。この点について、京都府警および各報道機関に対して抗議する。

https://sites.google.com/site/yoshidadormitory/seimei/2018nian5yue23ri-fu-bao-daoni-guansuru-ji-tian-liao-zi-zhi-huino-jian-jie

 * * *

 コタツの是非はともかく「弾圧に対しては救援」が大前提……かと思いきや、どこか日和見で無関係を装うような声明。ここに現在の吉田寮の空気感が見え隠れしている。

 かつて、吉田寮に住むことを選ぶ学生には「学生の自主管理空間を守る」という意識のある者が多かった。だが、そんな気風も、もはや失われつつあるのだ。

「寮生の中に留学生の割合も増えています。お金のために住んでいる学生のほうが多数派なんです」

 そんな中でも、とりわけタチの悪いのが「意識高い系」ともいうべき学生たち。すなわち、何十年にもわたる学生運動によって寮が存続されてきた歴史をわかっていない者たちの存在だ。

「そうした学生たちは『学生運動をやっているから寮が攻撃される』と考えています。そして、大学当局が代替宿舎を斡旋するのは、寮生の退去(註:大学当局はあくまで表向きは<退去>としかいわず<建て替え>には言及していない)を円滑に進めるための分断工作であることを見抜けずに、代替宿舎に行くのは<賢明な判断>だと思っています。大学当局が本気で攻撃してきたら、ひとたまりもないのに対等なワケがありません」

 先日、吉田寮祭で講演会&弾き語りライブを開催した外山恒一は「京大はもはやFラン大学」と看破したというが、それはあながち間違いではないようだ。

 

■まずは千坂恭二の本を読め

 すでに大学当局による立て看撤去から1カ月以上を過ぎ繰り返される攻防。この問題が複雑なのは、明確な「黒幕」が存在しているわけではないからだ。総長の山極壽一、副学長の川添信介など、外向きには「リベラル」な発言で知られる教授陣が弾圧を指示しているのは確かだ。だが、彼らを潰したとて、新たに同様の思考を持った人物は次々と補充されてくるだろう。企業などとも協力して、手早く実利を得られる研究をやる大学こそ最先端。そんな意識が尽きない限り、状況は変わらない。

「弾圧に積極的な教授陣は僅か。ほとんどの教員は無関心なのです。楠木正成の千早城のごとく、粘り強く持久戦を展開していくしかないでしょう」

 上田に取材したのは6月2日に獨協大学で開かれた「日本フランス語フランス文学会 春季大会」で、彼女が発表を終えた後であった。

 全国の研究者の前で上田の発表した題目は「『ジュリエット物語又は悪徳の栄え』研究ーサン・フォンの「悪の至高存在」」というもの。門外漢の筆者は、理解するのに必死だったが、マルキ・ド・サドの作品をもとに、そこに込められた思想を分析するというもの。ここで上田が提示したのは、サドの作品においてキリスト教が否定されるのは、キリスト教が「反自然」の思想だからという見方。つまり、サドの作品は単にエログロを描いたのではなく、自然な人間の生き方を否定するキリスト教への反発があるというものであった。

 発表後の質疑応答も筆者には難解だったが、大学で教鞭を執る研究者からは、より建設的な提案も出た。つまり、発表は大成功だったのである。

 つい10日前まで、大学に反逆し獄に堕ちた学生が全国から名うての研究者が集まる学会での発表に成功し、京大の名も高める。なんとも、搦め手からの大学当局への痛烈な一撃ではあるまいか(おまけに活動と研究とが一致しているのに注目)。

 逮捕直後、一部報道で上田は「逮捕された上田雅子容疑者は『見た目』と『名前』は女だが、性別はれっきとした男だ」と書かれ、SNSでのどうでもいい発言を拾われるなどの攻撃も受けた。だが、弾圧から10日余りでの痛烈な逆転劇は、すべての愚劣な攻撃を跳ね返している。

 最後に、そうした報道に触れた時、上田はこう話した。

「ツイートを拾うなら、もっといいツイートがあるじゃないですか。とりわけ、千坂恭二の研究会に関するツイートを拾って欲しいものです」

 千坂恭二といえば、長年の隠遁生活から復活した著書『思想としてのファシズム「大東亜戦争」と1968』(彩流社)により、世界を震えさせている台風の目。その思想の根幹たる「神武革命論」に関する一書も、まもなく上梓されるという。

 ともあれ、スキャンダリズムとテロリズムの騒動が京大のみならず、あちこちで始まる乱世は近い。
(文=昼間たかし)

眞子さま、小室圭さんの報道に、美智子さまの思いは? 宮内庁の“抗議文”を皇室ウォッチャーが読む

 秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚延期騒動が勃発して、早4カ月が経過したが、5月下旬、宮内庁が「眞子内親王殿下に関する最近の週刊誌報道について」という文書を公式サイト上に公表した。

 「眞子内親王殿下の納采の儀を始めとするご結婚関係儀式等の延期が発表されて以来,このことに関する両陛下,取り分け皇后さまのお考え,ご対応について様々な憶測がなされ,記事にされてきましたが,このことに関し,両陛下は当初より一貫して変わらぬ対応をしてこられました」「これまで両陛下は共に首尾一貫このことに関し一切発言を慎まれてこられました。事実,宮内庁長官,次長を始めとする宮内庁幹部,側近である侍従長,女官長や侍従職の誰一人として,このことに関して両陛下のご感想を伺ったり,状況についてお尋ねを受けたことはありません」と、一部週刊誌で報じられている“結婚延期”に関する美智子さまのご発言に関し、暗に「全てウソである」と表明したのだ。宮内庁がこの文書を公表した意図とは、そして美智子さまの思いとは――皇室ウォッチャーX氏に、見解を聞いた。

――宮内庁が発表された文書を、どのように読みましたか? 宮内庁がこの文書を発表した意図に関してもご意見をお聞きしたいです。

皇室ウォッチャーX氏(以下、X) 宮内庁のホームページに掲載されている「皇室関連報道について」のページでは、主に美智子さまに関する週刊誌記事などで、事実と異なる記述があった場合の“訂正”がなされます。今回も「眞子内親王殿下に関する最近の週刊誌報道について」というタイトルがつけられていますが、内容としては、「美智子さまが眞子さまの結婚延期に関して発言されたことはない」というものでした。週刊誌による“臆測”が入り混じった記事を目にした美智子さまが、「訂正をしたい」というお気持ちがあり、宮内庁が発表したものだと思います。

――なるほど、主に美智子さまに関する報道に対して、宮内庁は訂正を出しているんですね。

X そうなんです。「皇室関連報道について」というカテゴリーになってはいますが、実質上は美智子さまに関する事実と異なる報道を、美智子さまが訂正をされるためのページになっています。その証拠に、このページにおいて、美智子さまが関わっていない報道を訂正されたことは今までに一度もありません。過去に、皇太子ご一家や秋篠宮ご一家に関連した報道はいくらでもあるものの、訂正が入ったことはないのです。今回も今までと同じように、眞子さまに重きを置いている文書ではありますが、実質上は「皇后さまのご発言はなかった」ということを世間に報せたいという意味合いが強かったと思います。

――なぜ美智子さまは週刊誌報道に敏感なのでしょうか?

X 美智子さまは1993年、誤報によって世間からバッシングを受け、「失声症」になった経験もあり、週刊誌記事にトラウマがおありです。眞子さまの結婚延期が発表されて以降、週刊誌は眞子さまと小室さんに関する報道をこれでもかというほど記事にしていて、その中には事実と異なる記述もあるのだと思います。それを読んでしまった眞子さまが、体調を崩されてしまう可能性を危惧されたのではないでしょうか。

――美智子さまの失声症に関しては、今回の文書内でも触れられています。

X 「皇居内のゴルフ場であった場所に両陛下の御所建設が計画された際,昭和天皇が愛された自然林を皇后さまが丸坊主にした等の報道がなされ,前後数ヶ月に及ぶ謂われない批判記事の連続により,皇后さまは何ヶ月も声を失われる事態に陥られました」の箇所ですね。このように20年以上前の事実を引っ張ってくるほど、「眞子に関する報道をいい加減にやめてほしい」と、暗に要請したかったのだと推測できます。やはり可愛い初孫のためにとの思いがあったのだと思います。

――両陛下が結婚延期に関して「一切発言を慎まれてこられました」というのも、眞子さまを思ってのことでしょうか。

X 両陛下は、初孫である眞子さまをとても可愛がられてきました。特に美智子さまは、養蚕について教えてあげたり、戦後60年の節目の那須ご静養中、満州からの引揚者が切り開いた千振開拓地に眞子さまを同行させていました。そんな溺愛している初孫が、前代未聞の結婚延期という状態になり、さぞご心配のことと思います。発表された文書の中では、「(結婚延期に関して)沈黙に徹している」とありますが、眞子さまは金銭トラブルがあった後もたびたび皇居を訪れているようですし、何かしらのアドバイスをされているとは思いますが……。

――宮内庁がこの文書を出したことで、週刊誌報道が変わることはあると思いますか?

X 基本的にはあまり変わらないのではないかと思います。この文書が発表される前に、一通り小室さんやご家族についての報道は終わったという印象です。報道する“ネタ”が、一旦なくなったということでしょうか、週刊誌も最近は落ちついてきています。ただ、例えば小室家が借金を返済したり、秋篠宮邸を訪れたり、破談になるなどの新しい動きを見せれば、また週刊誌は事あるごとに記事にするでしょうね。変わることがあるとすれば、週刊誌記者たちもこの文書を読んでいるだろうし、「美智子さまが○○をした」「○○とおっしゃった」など、推測の域を出ない記述は少しは減るかもしれません。

眞子さま、小室圭さんの報道に、美智子さまの思いは? 宮内庁の“抗議文”を皇室ウォッチャーが読む

 秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚延期騒動が勃発して、早4カ月が経過したが、5月下旬、宮内庁が「眞子内親王殿下に関する最近の週刊誌報道について」という文書を公式サイト上に公表した。

 「眞子内親王殿下の納采の儀を始めとするご結婚関係儀式等の延期が発表されて以来,このことに関する両陛下,取り分け皇后さまのお考え,ご対応について様々な憶測がなされ,記事にされてきましたが,このことに関し,両陛下は当初より一貫して変わらぬ対応をしてこられました」「これまで両陛下は共に首尾一貫このことに関し一切発言を慎まれてこられました。事実,宮内庁長官,次長を始めとする宮内庁幹部,側近である侍従長,女官長や侍従職の誰一人として,このことに関して両陛下のご感想を伺ったり,状況についてお尋ねを受けたことはありません」と、一部週刊誌で報じられている“結婚延期”に関する美智子さまのご発言に関し、暗に「全てウソである」と表明したのだ。宮内庁がこの文書を公表した意図とは、そして美智子さまの思いとは――皇室ウォッチャーX氏に、見解を聞いた。

――宮内庁が発表された文書を、どのように読みましたか? 宮内庁がこの文書を発表した意図に関してもご意見をお聞きしたいです。

皇室ウォッチャーX氏(以下、X) 宮内庁のホームページに掲載されている「皇室関連報道について」のページでは、主に美智子さまに関する週刊誌記事などで、事実と異なる記述があった場合の“訂正”がなされます。今回も「眞子内親王殿下に関する最近の週刊誌報道について」というタイトルがつけられていますが、内容としては、「美智子さまが眞子さまの結婚延期に関して発言されたことはない」というものでした。週刊誌による“臆測”が入り混じった記事を目にした美智子さまが、「訂正をしたい」というお気持ちがあり、宮内庁が発表したものだと思います。

――なるほど、主に美智子さまに関する報道に対して、宮内庁は訂正を出しているんですね。

X そうなんです。「皇室関連報道について」というカテゴリーになってはいますが、実質上は美智子さまに関する事実と異なる報道を、美智子さまが訂正をされるためのページになっています。その証拠に、このページにおいて、美智子さまが関わっていない報道を訂正されたことは今までに一度もありません。過去に、皇太子ご一家や秋篠宮ご一家に関連した報道はいくらでもあるものの、訂正が入ったことはないのです。今回も今までと同じように、眞子さまに重きを置いている文書ではありますが、実質上は「皇后さまのご発言はなかった」ということを世間に報せたいという意味合いが強かったと思います。

――なぜ美智子さまは週刊誌報道に敏感なのでしょうか?

X 美智子さまは1993年、誤報によって世間からバッシングを受け、「失声症」になった経験もあり、週刊誌記事にトラウマがおありです。眞子さまの結婚延期が発表されて以降、週刊誌は眞子さまと小室さんに関する報道をこれでもかというほど記事にしていて、その中には事実と異なる記述もあるのだと思います。それを読んでしまった眞子さまが、体調を崩されてしまう可能性を危惧されたのではないでしょうか。

――美智子さまの失声症に関しては、今回の文書内でも触れられています。

X 「皇居内のゴルフ場であった場所に両陛下の御所建設が計画された際,昭和天皇が愛された自然林を皇后さまが丸坊主にした等の報道がなされ,前後数ヶ月に及ぶ謂われない批判記事の連続により,皇后さまは何ヶ月も声を失われる事態に陥られました」の箇所ですね。このように20年以上前の事実を引っ張ってくるほど、「眞子に関する報道をいい加減にやめてほしい」と、暗に要請したかったのだと推測できます。やはり可愛い初孫のためにとの思いがあったのだと思います。

――両陛下が結婚延期に関して「一切発言を慎まれてこられました」というのも、眞子さまを思ってのことでしょうか。

X 両陛下は、初孫である眞子さまをとても可愛がられてきました。特に美智子さまは、養蚕について教えてあげたり、戦後60年の節目の那須ご静養中、満州からの引揚者が切り開いた千振開拓地に眞子さまを同行させていました。そんな溺愛している初孫が、前代未聞の結婚延期という状態になり、さぞご心配のことと思います。発表された文書の中では、「(結婚延期に関して)沈黙に徹している」とありますが、眞子さまは金銭トラブルがあった後もたびたび皇居を訪れているようですし、何かしらのアドバイスをされているとは思いますが……。

――宮内庁がこの文書を出したことで、週刊誌報道が変わることはあると思いますか?

X 基本的にはあまり変わらないのではないかと思います。この文書が発表される前に、一通り小室さんやご家族についての報道は終わったという印象です。報道する“ネタ”が、一旦なくなったということでしょうか、週刊誌も最近は落ちついてきています。ただ、例えば小室家が借金を返済したり、秋篠宮邸を訪れたり、破談になるなどの新しい動きを見せれば、また週刊誌は事あるごとに記事にするでしょうね。変わることがあるとすれば、週刊誌記者たちもこの文書を読んでいるだろうし、「美智子さまが○○をした」「○○とおっしゃった」など、推測の域を出ない記述は少しは減るかもしれません。

処方薬の転売に、ヤミ整形……中国人コミュニティ内の「最新違法ビジネス」の実態

 6月12日、大阪府警は医師の処方箋が必要な医薬品などを違法に売買していた容疑で、留学生を含む中国人9人を逮捕したことを発表した。当サイトでも既報の通り、近年、日本の市販医薬品が中国で「神薬」としてネット上で高値で取引されており、それが処方薬にまで拡大した格好だ。これまで中国人が中国人相手に販売してきたため、警察も真相解明にかなりの時間がかかったものと思われる。

「中国新聞網」(6月13日付)など中国メディアでも、今回のニュースは大きく報じられた。現地の報道によれば、日本の処方薬は中国で正規輸入品の1.3~1.5倍の価格で転売されており、在日中国人の間では小遣い稼ぎとして、留学生などが事件の背後にいることが多いと伝えている。処方薬は在日外国人が所持している日本の健康保険証などを使い、医師や薬剤師の許可が必要な処方薬を安く手に入れ、それを転売するという仕組み。中国版LINE「WeChat」上で転売が行われていることが多く、筆者が調べてみたところ、在日中国人が多く集まるSNSのグループチャットで、「日本の緊急避妊薬あります」「処方箋の必要ながん治療薬・イレッサあります」などといった文言が飛び交っていた。

 投稿者たちは写真付きで医薬品のパッケージを公開し、在庫の多さをアピールしており、組織ぐるみで処方薬を不正に取得していたことがうかがえる。中国メディアの報道によれば、処方薬は日本で定められている薬価の2~5倍の価格で売られていたというが、保険証を使って入手していたとなれば、薬価は3割負担となるので、利幅はかなり大きいだろう。1万円の薬価の処方薬だとすれば、保険証を使えば3,000円で手に入り、それを最大5万円で転売できる計算になる。

 日本人がまったく知らないところで、こういった行為が平然と行われているわけだが、今回の事件も氷山の一角だと言わざるを得ないだろう。一方、処方薬の転売だけでなく、在日中国人の間では新たな商売が行われているという。

「在日中国人コミュニティの中では最近、プチ整形を施術する広告や宣伝が大量に流れています。実際に調べてみると、プチ整形はマンションの一室で行われていることが多いようで、施術者の多くは韓国でプチ整形の技術をわずか1週間ほど学んだのち、日本で開業しているというのです。二重手術や目頭切開、リフトアップ、シワ取りなどを5~10万円ほどで行っています。医師免許を持たない中国人が、日本のマンションの一室でメスを握り整形手術を行っているわけですから、警察や行政はただちに実態調査を行うべきだと思います」(在日中国人犯罪に詳しいルポライター)

 こうした商売は中国人コミュニティの中だけで完結してしまうため、事件の捜査や解明が難しいのだが、決して野放しにしてはいけない。

(文=青山大樹)

貢がせて自殺に追い込む……中国で「悪徳ナンパセミナー」が大流行! 

 英語でナンパ師のことを「PUA(Pick Up Artist)」と表現するが、いま中国ではPUAのノウハウを悪用して、女性から金品をだまし取る、卑劣な犯罪が急増している。さらに、こうした手口を教える“セミナー”まであるというのだから驚きだ。

「中国百家号」(6月15日付)によると、中国各地でPUAセミナーが開催されるようになったのは2008年ごろ。最初は、受講生である富裕層が女性を口説くためのテクニックを学ぶという、至ってシンプルなものだった。ところが、11年ごろからスマホの普及と共に、ネット上でPUAセミナーが急増し、中には恋愛テクニックを使って女性から金品をだまし取る方法を教える悪徳セミナーも出現。その結果、金銭をだまし取られた女性たちが自殺に追い込まれる事件が発生するなど、社会問題となりつつあるというのだ。

 中国事情に詳しいライターの吉井透氏は、こう解説する。

「こうしたナンパセミナーは、人気講座になると3~8万元(約50~130万円)もの受講料が必要になります。ここで教えているのは、『5段階感情掌握テクニック』と呼ばれるもの。まず、優しい男性を演じて女性に近づき、純愛を語り、体の関係を結びます。その後、相手の女性を叱りつけたり怒ったりして精神的に追い詰める。そして女性に『自分は捨てられてしまう』という絶望感を植え付けるのです。仕上げは、正常な判断ができなくなってしまった女性から、金目のものを吸い上げるという手口です。中には、用済みになった女性を自殺へと追い込む方法まで公開しているセミナーもあり、ゲーム感覚で楽しんでいる」

 当然、犯罪行為であることは明らかだ。警察当局もすでに捜査を進めており、5月にはネット上でセミナーを行っていた悪徳グループの関係者が逮捕された。このグループの事件では、金銭をだまし取られた女性被害者が20人以上いるという。

 日本でも4月に、ナンパ塾の関係者が準強制性交等の容疑で逮捕されるという事件が発生したが、ナンパ講座の名目を掲げて性犯罪や詐欺事件を助長する、こうした組織の撲滅が急がれるところだ。

(取材・文=青山大樹)

貢がせて自殺に追い込む……中国で「悪徳ナンパセミナー」が大流行! 

 英語でナンパ師のことを「PUA(Pick Up Artist)」と表現するが、いま中国ではPUAのノウハウを悪用して、女性から金品をだまし取る、卑劣な犯罪が急増している。さらに、こうした手口を教える“セミナー”まであるというのだから驚きだ。

「中国百家号」(6月15日付)によると、中国各地でPUAセミナーが開催されるようになったのは2008年ごろ。最初は、受講生である富裕層が女性を口説くためのテクニックを学ぶという、至ってシンプルなものだった。ところが、11年ごろからスマホの普及と共に、ネット上でPUAセミナーが急増し、中には恋愛テクニックを使って女性から金品をだまし取る方法を教える悪徳セミナーも出現。その結果、金銭をだまし取られた女性たちが自殺に追い込まれる事件が発生するなど、社会問題となりつつあるというのだ。

 中国事情に詳しいライターの吉井透氏は、こう解説する。

「こうしたナンパセミナーは、人気講座になると3~8万元(約50~130万円)もの受講料が必要になります。ここで教えているのは、『5段階感情掌握テクニック』と呼ばれるもの。まず、優しい男性を演じて女性に近づき、純愛を語り、体の関係を結びます。その後、相手の女性を叱りつけたり怒ったりして精神的に追い詰める。そして女性に『自分は捨てられてしまう』という絶望感を植え付けるのです。仕上げは、正常な判断ができなくなってしまった女性から、金目のものを吸い上げるという手口です。中には、用済みになった女性を自殺へと追い込む方法まで公開しているセミナーもあり、ゲーム感覚で楽しんでいる」

 当然、犯罪行為であることは明らかだ。警察当局もすでに捜査を進めており、5月にはネット上でセミナーを行っていた悪徳グループの関係者が逮捕された。このグループの事件では、金銭をだまし取られた女性被害者が20人以上いるという。

 日本でも4月に、ナンパ塾の関係者が準強制性交等の容疑で逮捕されるという事件が発生したが、ナンパ講座の名目を掲げて性犯罪や詐欺事件を助長する、こうした組織の撲滅が急がれるところだ。

(取材・文=青山大樹)