少女マンガに縁がなかった男子たちに、突発的に少女マンガの名作をご紹介しがちな本コラム。今回は現在、実写版映画公開中の『ママレード・ボーイ』をご紹介します。
『きまぐれオレンジ☆ロード』と共に“柑橘系ラブコメ”の2大巨頭といわれる『ママレード・ボーイ』は「りぼん」(集英社)で1992~95年まで連載され、ほぼ同時期にアニメ化もされていました。
アニメ主題歌の歌詞にも象徴される「甘くて苦いママレード」なイケメン男子・松浦遊と女子高生・小石川光希の恋物語で、一見すると超さわやかな正統派少女マンガですが、家族構成がかなり特殊で、そこいらの昼ドラでは太刀打ちできないレベルのドロドロ設定になっています。
ごく普通の女子高生が、超イケメン男子とひょんなことから同居するようになる……これだけだと少女マンガでよくあるパターンのように思えますが、その同居の理由にインパクトがありすぎるのです。
■小学生向けのマンガで、まさかのスワッ◯ング
なんの予兆もなくある日突然、光希の両親と遊の両親が、それぞれ離婚。そして夫婦の組み合わせをそっくりそのまま交換して再婚するという、「え? そんなの日本の法律で許されるの?」ぐらいすさまじい展開です。
しかも、小石川夫妻と松浦夫妻は仲良し、家族ぐるみのお付き合いということで、光希と遊を含む、2ファミリー計6人が、一つ屋根の下で同居することになります。これは相当な異常事態といえるでしょう。
ちょっ、りぼん読者にス◯ッピングの話はまだ早すぎるだろ……と心配してしまうところですが、そこは「りぼん」ですから心配はご無用。当然のことながら、ス◯ッピングのスの字も出てきません。
大人だと、どうしても背徳的な目線で見てしまうパートナー交換の設定も、少女マンガの中では単なるヒロインとイケメンが同居するためのこじつけ理由にすぎません。理由はどうあれ、とにかくイケメンと同居しなければ始まらない、細かいことはどうでもいいのです。
■ムチャクチャな状況でも明るく生きるヒロイン・光希
当然ながら、光希は自分の置かれた異常な境遇に大混乱。自分を産んだ母親がある日突然、初対面の男子の義理の母になるという……気持ちの持って行き場がわかりません。
光希の唯一の救いは、超絶イケメン男子の遊と同居できることです。イケメンと一つ屋根の下、しかも同じ学校に通う同級生です。ワクワクせざるを得ませんね。ただ、これはあくまで遊がイケメンだったからです。同居するのがフツメン、ブサメンだったら、まったくワクワクすることはないでしょう。少女マンガの掟です。
しかしそんな光希は、母親に「遊くんに恋しちゃダメよ」と、くぎを刺されます。これ以上、家族関係をややこしくしたくない、という理由からなのですが……お前ら大人はいけしゃあしゃあとスワッ◯ングしといて、どの口が言うのか! ひどい、ひどすぎる。これは間違いなくグレるパターンですよね(グレないけど)。
■イケメン男子・遊の境遇が悲惨すぎる
イケメンでテニスがうまく、学校でもモテモテの遊。見た目はスウィートですが、ちょっとクールで意地悪なところがある「ママレード・ボーイ」。「ツンデレ男子」よりもオシャレでファッショナブルな言い回しは、さすが少女マンガです。
光希と同様、異常な家庭環境で動揺しているはずの遊ですが、常にクールで、そんなそぶりをまったく見せません。しかし、遊には誰にも話していない、ある秘密を抱えていました。
実は、自分の父親・松浦要士は本当の父親ではなく、母親が昔付き合っていた別の男が本当の父親だということを偶然知ってしまい、誰にも告げずに一人思い悩んでいるのでした。周りを心配させないよう、両親にも光希にも内緒で、一人孤独に本当の父親探しをする遊。大変な境遇ですよね。
そんな息子の悩みも知らず、パートナー交換をして浮かれてる両親’s(ズ)。これはグレても仕方ありません(グレないけど)。
■今のご時世なら絶対アウトなロリコン教師「なっちゃん」
光希と遊の担任である名村先生は生徒からの信望が厚く、「なっちゃん」と呼ばれて慕われている教師ですが、実は光希の親友・茗子とこっそり付き合っていたことが発覚してしまいます。
未成年の、しかも卒業前の教え子とのリアルタイム交際、これは完全アウトですよね。今のご時世なら「名村メンバー」と呼ばれて、同僚に「正直あなたは病気です」とか「野菜の味は変わりません」などと言われてもおかしくない事案です。
結局、なっちゃんは学校を去ることになり、茗子は自宅謹慎となるのですが、その後、茗子が駆け落ち同然でなっちゃんの元へ行き、結婚することになります。倫理的にはアウトですが、少女マンガ的には素敵な純愛ストーリーといえましょう。
■子どもたちの人生を無意識にもてあそぶ両親’s
本作品では、夫婦交換の結果、人間関係がややこしくなりすぎたため、小石川夫妻・松浦夫妻をひとまとめで両親’sと呼んでいます。この両親’s、一見するといい人たちに見えますが、やってることは随分と身勝手です。
両親’sの手前、ずっとお互いの気持を抑えていた光希と遊は、作品後半でとうとう正式なカップルとなるのですが、幸せムードの絶頂の中で、両親’sの隠されていた衝撃の過去が発覚し、2人の愛が引き裂かれる事態に陥ります。
隠しごとが多すぎて、子どもの人生をメチャクチャに狂わせてくれる、毒親ならぬ毒両親’s。子どもたちがこれでグレていないのは奇跡といえるでしょう。
■続編『ママレード・ボーイ little』で、さらに状況は複雑に
現在、集英社の少女マンガ誌「Cocohana」で連載中の「ママレード・ボーイ little」という続編があります。これは、『ママレード・ボーイ』の13年後が舞台で、タイトルからも想像できる通り、夫婦交換後の小石川家・松浦家にそれぞれ生まれた、朔(♂)と立夏(♀)という子どもたちの話。一つ屋根の下、きょうだい同然に育った男女が中学生になり、お互いに恋を意識し始める……という、血は争えない展開に。
さらに、名村と茗子の間に生まれた息子・名村碧も恋のライバルとして参戦してきて……という、もはや何がなんだか、それキンシン◯ーカンじゃないの? え、ギリギリセーフなの? みたいな、ややこしすぎる人間模様が繰り広げられます。
というわけで、「さわやかコーティングが施された昼ドラ」ともいえる少女マンガ『ママレード・ボーイ』をご紹介しました。少女マンガに免疫のない男子諸君は、あまりのあり得ない設定に打ちのめされるかもしれませんが、大ヒットする作品っていうのは、こういう他の追従を許さない突き抜けた部分があるものですよね。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)
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