『ザ・ノンフィクション』失踪や殴り合いのけんか……元受刑者支援の現実「あの日 妹を殺されて2 ~たとえ裏切られても~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月27日は「あの日 妹を殺されて2 ~たとえ裏切られても~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 新大阪駅の近くに本社があるカンサイ建装工業。社長の草刈健太郎は犯罪加害者を雇い入れる「職親プロジェクト」に7年関わっており、草刈自ら、面接のため全国の刑務所や少年院を訪ねている。ただ、雇い入れた元受刑者がすんなり更生できるケースはかなり少ないようで、失踪し連絡がつかなくなることや、再び罪を犯してしまうケースもあるようだ。

 それでも草刈が元受刑者の支援を続けるのには理由がある。2005年、草刈はアメリカで7歳下の妹・福子さんを犯罪で失う。福子さんを殺害した犯人は彼女の夫だった。そうした経験から、犯罪被害者を減らすには、まず加害者を減らすことが大事だと考え、草刈は加害者支援を続けている。

 20年10月、覚せい剤、大麻の使用により3年の刑期を終えたショウタを、草刈はカンサイ建装工業に雇い入れる。ショウタには妻子がいたが服役中に離婚。中学生の頃から家庭環境が荒れていたことが原因で薬物を始めたそうで、嫌なことがあるとクスリに逃げていたという。

 もともと、塗装職人だったショウタは、最初は真面目に働く様子を見せるが、徐々に寝坊したり、社員寮の寮長であるコウスケに金を借りるなど生活が乱れていく。寮の新年会では、離れて暮らす子どもが元妻の彼氏から虐待を受けていると明かし、草刈やコウスケに子どものためにもきちんと働くことを諭されるが、改善する気配はない。ショウタの部屋からは強い独特な匂いがすることもあるようで、香りの強いタバコであればいいのだが、何らかの薬物かもしれないとコウスケは案ずる。

 草刈は、ショウタの生活の乱れは薬物の影響もあるのではないかと「ダルク(薬物依存症患者の回復施設)」へ行くことを勧める。しかし、ショウタはダルクではなく自分の兄の元へ行くと話し、社員寮から失踪。それでも、草刈はショウタに電話をかけ、𠮟るのではなく電話には出てほしいと伝えた。

 元受刑者の雇い入れは、このような例にとどまらず、会社に大きな影響を及ぼすこともあるよう。

 タイチは母親が父親を殺害するという壮絶な過去を持ち、傷害や薬物使用で逮捕歴のある少年だったが、草刈の元で社会復帰を遂げ、かつて自分が収監されていた少年院で講演を行うまでになった。

 そんなタイチだが、同居する兄との仲は悪く、金の貸し借りがきっかけで殴り合いの兄弟げんかに発展。その場所が草刈の会社が受注した病院の「現場」だったため、カンサイ建装工業は発注元である病院から“出禁”を食らってしまう。草刈は「営業マン(が)頑張って7年もやって、やっと(仕事を)入れたのにな、(けんか)一発でなくなるてなあ。縁ないわ」と番組スタッフに苦しい胸の内を吐露。ただ、その後の病院への謝罪が受け入れられ、無事案件は継続できることになった。

 番組の最後では、ショウタと草刈、コウスケが約2年ぶりに再会。ショウタは職人として働くだけでなく、職人に仕事を回していく立場になるなど、しっかりと社会復帰を遂げていた。

 自社の経営という点から見れば、ショウタを雇ったことのメリットはなかったであろうが、2年ぶりに彼と再会した草刈は、道を踏み外さず社会復帰を遂げていることを、ただただ喜んでいた。それは、社会に加害者が増やさないという自身の信念が一つ、形になったことへの喜びだったのだろう。心底感心する。

 ただ、ショウタのケースは珍しいのかもしれない。失踪した後に連絡も取れなくなるのはよくあるようだ。なお、前回の放送では真面目に働く様子が伝えられていた元受刑者・スグルも、今回の放送内で触れられていなかった。「何事もなさすぎて放送するほどではなかった」のであればいいのだが。

 ちなみに、今回番組内で説明された再犯者率は49.1%(2021年版犯罪白書より)で、前回放送時に触れられていた、2019年度版犯罪白書の再犯者率48.8%よりも上昇してしまっている。

『ザ・ノンフィクション』「苦しさ」「興味本位」ではない薬物利用の動機

 番組中、衝撃的だった言葉があった。コウスケがダルクの見学に行った際、元薬物依存者がミーティングで話していたことだ。

「(薬物を)苦しくて使ったわけではないです、興味本位で使ったわけでもないです。ただ何となく使いました」

 つい想像しがちな「苦しくて(苦しさから逃げたくて)」「興味本位で」という理由ではなく、「ただ何となく」という、スマホを見るかのようなゆるい感覚で、薬物に手を出す人がいる。

 そしてこの発言をした人の、自身への洞察の深さにも驚く。よく言われがちな「苦しさ」や「興味本位」は、どうも自分にはピンとこなかったのだろう。安易な想像で、人をわかった気になってはいけないと背筋が伸びる言葉だった。

 次週は「美咲をさがして ~帰りを信じた家族の3年~」。2019年9月、山梨県・道志村にあるキャンプ場で、突然行方がわからなくなった小倉美咲さん(当時7)。必死で美咲さんを探す母親のとも子は、ネットで心無い中傷を受けることになり……。

『ザ・ノンフィクション』コロナと物価高、“勝負師”なフィリピン人店主の一手は?「母と娘のラーメン ~ピンチをチャンスに変える人~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月20日は「母と娘のラーメン ~ピンチをチャンスに変える人~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 ラーメン激戦区、東京のビジネス街・神田で、コロナ禍の今日まで13年暖簾を守り続けてきた店主がいる。フィリピン人女性のカンラスだ。

 カンラスはフィリピンの貧しい家庭で育った。学費を払えず、母が学校に頭を下げている姿を見たことがあると話す。そんな家計を支えるため17歳から工場で働く中、ミスコンに出たところ入賞。「日本の一流のホテルで働ける」とスカウトされるも、連れていかれたのは東京・錦糸町のフィリピンパブだった。

 日本語もほとんどわからない状況で、カンラスは客との子を身ごもる。里帰り出産し、娘の由奈が産まれるも、その後、父親である客からの連絡は途絶えてしまう。相手からの援助は期待できないものの、カンラスは由奈にちゃんとした教育を受けさせたいという思いから、1歳の彼女を連れ日本に戻る。

 あるラーメン店で厨房や皿洗いの仕事をしていたものの、店を閉めると告げられたカンラスは、居抜きで引継ぎ、自分のラーメン店として新装開店させることを決断。以降、神田というラーメン激戦区で13年、店を継続させてきた。

 ところが、新型コロナウイルスによる自粛ムードや緊急事態宣言等の影響で、神田の町からは人が消え、店の売上はそれまでの1/10にまで落ち込んでしまう。2022年に入り徐々に人は増えてきたものの、今度は円安による物価高が直撃。店の看板ともいえる、つけ麺の上にたっぷりとのせていたとろ肉の原材料(豚バラ)の値段は、1.5倍になってしまった。

 ラーメンには1杯1000円を超えると売れ行きが悪くなる「1000円の壁」というものがあるが、カンラスは1杯1150円に値上げすることを決断。代わりに麺のグレードも上げ、客足をキープする。

 一方で、カンラスは「防戦一方」というわけではない。コロナにより閉まった店も多く、家賃が安くなった今のタイミングを狙い、あえて2号店の出店にも動き出す。カンラスの元で長く働くスタッフは、そんな彼女を「勝負師」と評していた。

 なお、カンラスの娘の由奈は19歳の大学生になり、店の手伝いをしつつ、大学では学費免除を狙えるほどの優秀な成績を維持し続けている。カンラスは由奈がかわいくてたまらないようで、門限は午後9時と厳しく、さらに由奈が出かけると言うとついて行きたがる。

 由奈はそんなカンラスをうっとうしそうにしているところもあるが、母のいない番組スタッフとの取材では、カンラスのことを「力になる存在」と話し、番組の最後では二人で食のイベントに行くなど、仲の良さそうな様子であった。

 筆者は語学留学でフィリピンに滞在していたことがあるが、一番のカルチャーショックはフィリピンの人たちの家族愛のストレートさだった。語学学校の先生やタクシーの運転手が、とにかくうれしそうに家族の話をする。

 語学学校の先生は20代の女性が多かったのだが、週末は家族の元へ帰省し、一緒に過ごすのが楽しみだと話していて、「年ごろなのに家族の優先度がそんなに高いの?」と驚いたものだ。そのため、カンラスの「由奈大好き!」な態度もうなずけるものがある。

 一方で、熱烈な母からの愛情に対し、由奈は塩対応。それについて番組スタッフから尋ねられた由奈は「あなた(カンラス)のために(自分が)努力しているのがバレないようにつんつんしてる」と答えていた。

 実際は母親を愛し、力になりたいと努力しているものの、ストレートに愛情を伝えないツンデレ感は、日本風な家族への愛情表現に思えた。特に相手が親だと照れてしまう、というのも日本的だ。ストレートで熱烈なカンラスの愛情表現の元で育てられたであろう由奈が、それでも日本的なツンデレ愛情表現をするのは興味深い。

 ただ、愛情の表現方法は違っていても、カンラスと由奈はお互いを思いやるいい親子のように見えた。

 次週のザ・ノンフィクションは『あの日 妹を殺されて2 ~たとえ裏切られても~』。建築会社社長の草刈健太郎は、自社に元受刑者を雇い入れる社会支援を行っているが、全員が更生できるわけではなく、現実は裏切られることも多い。また、草刈は妹を殺され喪った被害者遺族でもある。そんな草刈の活動を見つめる。

『ねほりんぱほりん』刑務官のお仕事「玉検査」とは? 受刑者が陰部に玉を入れる理由【2022年シーズン7】

 NHK Eテレの人気番組『ねほりんぱほりん』のシーズン7が10月7日よりスタートした。かわいらしいモグラの人形ねほりん(山里亮太)とぱほりん(YOU)が、ブタの人形に扮した“顔出しNG”の訳ありゲストに、聞きにくい話題を“ねほりはほり”聞き出す新感覚トークショーだ。

※本記事は『ねほりんぱほりん』シーズン7「元刑務官」のネタバレを含みます

『ねほりんぱほりん』元刑務官、24時間監視で“シャリ上げ”も見逃さない!

 11月11日放送回のテーマは「元刑務官」。昨年10月に放送された「女子刑務所にいた人」回が好評で、視聴者から「刑務官の話も聞きたい!」とリクエストが多かったために実現したそうだ。ゲストとして登場した元刑務官は、10年以上勤務したセイタさん(30代、怖いもの:高い場所)と、およそ15年勤務したショウゴさん(40代、怖いもの:妻)。

 セイタさんは、複数の刑務所や拘置所勤務を経験。50人の受刑者の工場作業を1人で監視する「工場担当」も務めた。ショウゴさんは1,000人以上の受刑者がいる刑務所で勤務。現役の暴力団幹部やマフィアのボスとも接してきたそうだ。ブタの人形に扮していても、2人とも百戦錬磨の風格がうかがえる。

 刑務官の仕事とは、「1つは受刑者を更生させること。もう1つは刑務所内の秩序を保つこと」(ショウゴさん)だとか。24時間体制で、荒々しい受刑者を24時間監視し、分刻みのスケジュールを監督するなんて、肉体的にも精神的にもハードな仕事である。

 セイタさんいわく「例えば食事中なんかだと、ほかの受刑者のごはんを奪う“シャリ上げ”っていうんですけど、そういったことを見つけたりはしますね」とのこと。シャリ上げ、される側は地味にキツイであろう。食事の時間も気を抜けない弱肉強食の世界のようだ。

『ねほりんぱほりん』元刑務官、紐を引っ張り絞首刑の練習も

 刑務官は死刑に携わる仕事でもある。執行ボタンは誰が押したかわからないように複数人で押すが、絞首刑のため、最後は人力頼みになる場合も。死刑執行の「練習」もあるという。

 セイタさんは「日本は絞首刑なので、丸太で大体60キロくらいのヒト型の人形を作って、首のところに縄をかけて。実際に死刑台から落として……」と詳細に説明。「下まで落ちた時、そのままだと跳びはねてしまうんですね。だから、それを跳びはねさせないように、落ちたら首の紐を持って上に引っ張るっていう役割を練習していました」と明かした。思っていたよりもアナログで驚く。

 先日、「死刑のはんこを押すときだけニュースになる地味な役職」と失言し、葉梨康弘法務大臣が辞任するタイムリーな出来事があったばかり。確かに、その発言だけ聞くと「死刑ははんこを押すだけで簡単にできる」というような、誤ったイメージを広めそう。実際に執行に携わっている刑務官の話を聞くと、やはり軽すぎる発言と思える。

 「女子刑務所にいた人」回では、入所するときにはお尻の穴まで検査される……という話があった。男性の場合は、お尻の穴に加えて「玉検査」なる検査も存在するそうだ。

 「陰部に、水晶のような玉を入れてるんですね」と説明するショウゴさん。ぱほりん(YOU)が、「真珠が入ってるとか、そういうやつじゃなくて?」と聞くと、「そうです。真珠ではないんですが、実際は」と解説。「まあその、行為をするときに女性の人が気持ちがいいらしくて。実際はあんまり気持ちよくないみたいですけども」と、淡々と語っていく。

 入所時の「玉検査」と、工場作業中などに突然行われる「抜き打ち玉検査」とがあるそうで、「『みんな出せ~っ』って言って、(陰部を)出させるんですね。それで1個1個見ていくんですけど、裏返してとか」と、くまなく確認するらしい。入所時に玉が2つだった受刑者が、抜き打ち玉検査で3個に増えていたら、それは「所内で入れたというわけです」とのこと。

 所内で、玉を……? 1回聞いただけでは意味がわからないが、ショウゴさんによれば「玉を作るんですね。歯ブラシの柄みたいなものを、壁とかでピカピカに磨いて」「部屋で鋭利なもので穴を開けて、自分のところ(陰部)に。それをグッと入れる」のだそうだ。この玉増やし行為は、「自傷行為」と「不正製作」と見なされ、規律違反で懲罰の対象になるという。

 一体なんのためにそんなことを!? と皆が抱くであろう疑問に、ショウゴさんは「ヒマつぶしですよね」と回答。人間とは、ヒマだと玉を作って陰部に入れちゃうこともある……と初めて知ることができた。

 玉検査などを経てようやく出所しても、「数字としては半数近くが再犯で戻ってきてしまいます」(ショウゴさん)とのこと。番組で紹介された法務省「令和3年版犯罪白書」によれば、出所した受刑者が10年以内に刑事施設に再入所した割合は45.3%。そんな現実に相対する刑務官への尊敬の念が高まる回だった。

『ザ・ノンフィクション』利用料月5,000円の赤字フリースクールと補助金問題「そこにいていいんだよ ~もじゃくん夫婦と不登校の子どもたち~」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月6日の放送は「そこにいていいんだよ ~もじゃくん夫婦と不登校の子どもたち~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 神奈川県・横浜市にある、不登校の子どもたちが通うフリースクール「学べる居場所・かけはし」(以下、かけはし)を運営する、元小学校教師・廣瀬貴樹と妻の千尋。貴樹はくせ毛で、「もじゃくん」と呼ばれている。

 かけはしは特定の場所を持たず、廃校になった小学校や行政の施設など日によってさまざまな場所で活動を行っている。2021年5月から活動が始まり、当初は1人の子どもしか通っていない状況だったが、徐々に教師時代の仲間に伝わり、地域の情報紙などにも掲載され、今では毎日20人が通っている。

 かけはしに通う8歳の少年・だいちゃんは、音や刺激に過敏なようで、学校に行けず、家でも幼い弟妹たちの存在にストレスを感じてしまうようだ。また母親にべったりで、近所のコンビニに母親が行くのも嫌がるとのこと。千尋に、“かけはしのスタッフや友達の中で、だいちゃんが遊んで楽しいと思える人ができたらいいかもしれない”と励まされた母親は、ほっとした様子だった。かけはしは子どもの居場所だけではなく、親がほっとできる場所でもある。

 そんなかけはしだが、行政からの金銭的支援などは受けていない状況で、子どもたちの利用料金1人当たり月5,000円と、賛同者の寄付で賄っている。ボランティアスタッフの交通費や子どもたちの保険代を払うと、それだけで運営は火の車だ。そのため、貴樹と千尋の教師時代の貯金を取り崩す生活だという。

 そんな中で貴樹は、近隣の古い空き家を借り、かけはしの拠点にしようと試みるも、フリースクールは住宅街ではなく公的な施設で行ったほうがいいと周囲から助言され、結局、その空き家は地域の人々が集まるカフェとして運営することに。貴樹はカフェで稼いだお金がかけはしの運営費用になればともくろむも、むしろカフェは赤字続きで、かえって経営状況を圧迫してしまう。

 番組の取材開始当初13歳だったかけはしに通う少年・たくみは、「理由なき不登校」のようだ。彼は8歳になるまでは明るい性格だったのだが、徐々に口数が少なくなっていき、小学4年になるとまったく学校に行けなくなってしまった。不登校の理由は、いじめでも病気でもなく、母親もいまだに原因がわからないと話す。その後、いくつかのフリースクールに通わせるも、続いたものはかけはしだけだったという。

 たくみは取材開始時、人とのやりとりはうなずくだけで発話がない状態だったが、貴樹の誘いには素直について行っていた。そして、次に番組スタッフがかけはしを訪ねると、たくみは千尋や、番組スタッフとも短い会話ができるように。

 たくみが所属する中学校の教師は、彼のそんな様子を見た上で、かけはしのようなフリースクールに通うことについて「(家にいるより)よっぽどいい、人と触れ合っている。家の中の刺激は限られてますから。(フリースクールでは)ぜんぜん違う刺激を受けられますよね」と話していた。

 また、母親にいつもべったりだっただいちゃんも、番組の最後では母親から離れ、貴樹でも千尋でもない別のかけはしのスタッフと遊んでいたのだった。

 子どもたちは変化を遂げる中、横浜市・山中竹春市長がかけはしを視察する機会があり、貴樹は運営の厳しさなどを伝えたものの、公的な支援を得られるといった成果にはつながらなかったようだ。

 かけはしは結局、行政からの補助金がもらえなかったようだ。私自身もライター以外の仕事で、行政の補助金があれば助かるという場面があり、いろいろと調べてみたことがあった。単純に、「社会的に意義のあることをしていて、日本の未来を担う子どもたちが元気になっているんです。だから支援してください」と訴えたところで、行政の補助金などもらえないと想像がつく。

 「行政=お役所」ゆえに、民間の企業や一般顧客を相手にするときよりもさまざまなルールや決まりごとがあり、それを滞りなく通過する必要がある。

 例えば行政からの補助金を得たい場合、NPO法人や一般社団法人などの法人格があることが望まれ、ただの個人であったり、法人格のない有志の集まりでは厳しいことが多い。ただ、かけはしのホームページを見たところ「一般社団法人」とあり、この点はクリアしているようだ。

 NPO法人や一般社団法人は、設立だけでなく、運営にも結構な手間や金がかかる。補助金をもらうために金がかかったり、本来の事業(かけはしであれば、不登校の子どもや親の支援)に注力する時間が減っては本末転倒ではないかと腹立たしい気持ちもあるが、一方で行政の「どこの馬の骨かもわからない団体に補助金(税金)を渡せない」という気持ちもわかるので悩ましい。

 なお、かけはしのある神奈川県のホームページを見ると、「神奈川県フリースペース等事業費補助金 令和4年度実施事業のお知らせ」があり、ひきこもり・不登校などで悩んでいる本人、家族を支援している民間団体のうち、県の補助金が対象となっている団体が紹介されている。

 翌年の令和5年度には、かけはしも補助金がもらえているだろうか。

『ねほりんぱほりん』ある手配師、ガーシーが霞む“がっつり犯罪者”なお仕事事情【2022年シーズン7】

 NHK Eテレの人気番組『ねほりんぱほりん』のシーズン7が10月7日よりスタートした。かわいらしいモグラの人形ねほりん(山里亮太)とぱほりん(YOU)が、ブタの人形に扮した“顔出しNG”の訳ありゲストに、聞きにくい話題を“ねほりはほり”聞き出す新感覚トークショーだ。

※本記事は『ねほりんぱほりん』シーズン7「ある手配師」のネタバレを含みます

『ねほりんぱほりん』ある手配師、ゲストはガーシーも霞む“闇アテンダー”

 11月4日放送回のテーマは「ある手配師 労働力から薬物まで……あらゆるものを“手配”した男」。ゲストには元手配師・マサヒコさん(50代)が登場した。好きな動物・チワワ、好きな作家・石田衣良と、つかみにくいプロフィールのマサヒコさん。田舎のヤンキーだったが、上京して建設会社に就職して働いているうちに、会社に内緒で、人手の足りない現場に建築系の職人をアテンドしてお金を稼ぐようになったそうだ。

 労働者派遣に必要な許可をマサヒコさんは得ていないため、これだけでもアウトだが、やがて池袋の「ニンベン屋」といわれる闇の業者に、外国人登録書の偽造を依頼するなど、外国人の不法滞在・不法就労の手引きもスタート。その後も悪い人脈を築き、海外ギャング相手に覚醒剤や麻薬の手配までするようになった……と経歴を語った。

 麻薬の手配では、アジア諸国や中東へ赴いてギャングと打ち合わせするのがマサヒコさんの仕事。成功報酬は「1回200~300万円」だったとのこと。がっつり犯罪者! 今回のタイトルにある「手配師」「あらゆるものを“手配”した男」というワードから、勝手に男性芸能人相手に女性をアテンドしていた暴露系動画配信者で参議院議員のガーシー(東谷義和)氏をイメージしていたのだが、マサヒコさんはガーシーも霞む正真正銘の“闇アテンダー”だった。

『ねほりんぱほりん』ある手配師、パパ友・タカちゃんからシャブ密輸に誘われる

 驚くのがマサヒコさんの闇人脈の広げ方。薬物の密輸は、息子の同級生のお父さん、つまりパパ友の「タカちゃん」が持って来たそう。タカちゃんは現役のヤクザで、「海外からシャブでも入れない?」と軽いノリで誘われたとのこと。「明日、児童館行かない?」程度の軽やかさでシャブ密輸に誘われるパパ友ネットワークが日本に存在しているとは、恐ろしい。

 また、そのような闇人脈にとってはサウナも重要な場所なんだそう。入れ墨OKの特殊なサウナが各所にあり、「そういうところって真っ裸なので。録音されてたり、録画されてたりっていう心配がないので、いろんな情報が飛び交っている。あと、揉めないんです。揉めて行けなくなると、自分たちの居場所がなくなるから」とのこと。

 マサヒコさんは「豊島区のとあるサウナ」を使っていたそうだ。「ニンベン屋」も豊島区(池袋)だったし、サウナも豊島区。好きな作家は、豊島区を舞台にした『池袋ウエストゲートパーク』(文藝春秋)シリーズ。豊島区のイメージが悪化してく。

 薬物の運び屋を手配する仕方も興味深かった。「普通に日本で面接というか、探しに行く」そうで、マサヒコさんが目をつけるのはパチンコ屋さん。負けてお金降ろして……を繰り返している人を発見すると、「どうっすか?」「飯でもどうすか、自分勝ってるんで」と、さりげなく面接へ移行。

 仕事の話の流れで、「手伝ってもらえたりします?」「ちょっと行ってくれたら50万円くらい払えるんだけど」と持ちかけるのだとか。「すぐ乗ってくれたら合格。そこで考える人間はもう面接落ちです」「即答のみ(合格)」だそうだ。パパ友にサウナにパチンコと、身近な場所で闇のスカウトは行われているらしい。

『ねほりんぱほりん』ある手配師、パパ友・タカちゃんとの絆が深い

 犯罪に手を染めながらも、当時の心境は「ワクワク」「根底にあるのは“楽しい”」だったという根っからの手配師に見えるマサヒコさんだが、一度逮捕され、刑務所に入った後に改心。出所後は「福祉の学校に通って国家資格を取って、今は知り合いのつてで、自分みたいな人が社会復帰したときの施設で働いてます」とのことで、更生したらしい。

 改心のきっかけは息子。「父子家庭で、長男はずっと自分が育ててきた」というが、「中学の卒業式の3日くらい前に捕まった」ため、卒業式に出られなかったそう。「子どもの成長の中で、その時しか見られないものがあるじゃないですか。そこが何年か欠落してるんですけど、もっと本当は子どもにいろいろしてやりたかった……」と、意外なほど真っ当な父性を見せた。そんなふうに思える普通の父親でも、闇の手配師になってしまう場合があるのか、と逆に怖い。

 なお、息子の卒業式は、「海外からシャブでも入れない?」と誘ってきたあのパパ友、タカちゃんが見届けてくれたというから驚く。「タカちゃんが息子の卒業式の準備とか全部してくれて。差し入れで(卒業式の)写真とか入れてくれて……」と、いい話風に語っていたが、そのタカちゃんが誘わなければ薬の密輸にまで手を染めずに済んだのでは?

 最後も「普通がいいのかなって今は(思ってますね)」「当たり前っていいんだなって――」と、深い話っぽく締めたマサヒコさん。タカちゃんとはその後もつながっているのか? タカちゃんも足を洗ったのか? と気になる点は山積みのままであった。

『ザ・ノンフィクション』金に執着する認知症の父に、息子は声を荒げ……「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 後編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月30日の放送は「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 後編」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 フジタは45歳の「ゲーム芸人」で、レトロゲーム界隈では知られた存在だ。フジタがゲームにはまったのは自身の壮絶な幼少期と関係している。フジタの母親は彼が幼稚園の時にくも膜下出血で死去。その後、父・陽人は、フジタの同級生の親でシングルマザーの朱美(仮名)と内縁関係になる。陽人は朱美の元で暮らし、フジタには週に一度3万円を渡すだけで、フジタは小学生にして一人暮らしをしていたのだ。

 陽人は朱美の息子をかわいがり、フジタにはきつくあたったそうで、旅行の途中で自分だけ帰らされたこともあったとか。現在82歳の陽人は一人暮らしだが、朱美との関係は続いており、月に一度3万円を渡しているという。そんなある日、陽人はフジタを呼び寄せ、行政書士の立ち合いのもと、財産をフジタに譲ると言い出した。

 しかし、陽人はその後アルツハイマー型認知症と診断される。2カ月分の年金を1カ月で使い切る、キャッシングを利用するなど、金の使い方が荒くなってきたことを心配するフジタは、金が朱美に流れているのではないかと懸念。一方の朱美も、内縁の夫である陽人が自分に断りなくフジタに財産を渡したことが気に入らなかったようで、彼のことを快く思わなくなってしまう。

 フジタは陽人からキャッシュカードなどを預かっていたのだが、陽人はそれを返してほしいとフジタを呼びつける。認知症もあってか、フジタの説得がなんら届いていない陽人。同じ不満を何度も漏らす陽人に、フジタは声を荒らげるしかない。

 また、フジタは陽人の日々の様子を見るため「見守りカメラ」を部屋に設置するが、そこには、陽人が朱美に対して「フジタが働かず自分の金をあてにしている」といった内容を電話で話している姿が。それを真に受けた朱美はフジタへの不信感と不満を番組スタッフに話し、フジタからの電話も忙しいからと取り合わない。

 当の陽人は認知症のため、そのようなことを言った記憶もないようだった。高齢の陽人にとっては、“YouTubeで稼ぐ”というフジタの働き方が理解できず、遊んでいるようにも見えたのだろう。

 しかし、うんざりしかけたフジタに思わぬ救いの手が入る。朱美の孫で、朱美と一緒に暮らす21歳の俊(仮名)だ。俊は祖母・朱美が毎月3万円を受け取っている事実を知らなかったようで、それがなくても大丈夫なことや、その3万円は自分の養育に必要だったのかもしれないとフジタに説明する。

 さらに俊は、荒ぶる朱美をなだめ、陽人、朱美、フジタ、俊がいる場での話し合いの場を用意。そこでフジタは陽人の借金の現状や、フジタ自身がきちんと働いていて収入があることを朱美に説明し、その場はひとまず収まる。

 ただ、陽人の金への執着は増すばかりで、フジタが金を預かると「盗んでいる」と言う。また、陽人の家の鍵付きタンスに金を保管すると、フジタの知らないスペアキーで出してしまう。食器棚に入れワイヤーキーで施錠しても、隙間から「孫の手」を使ってでも取り出す有様だ。往診に来た医師は認知症が進んでおり、これから半年でさらにその症状は悪化するだろうと話し、施設での生活も勧めていた。

 番組の最後、フジタは陽人と朱美を軽井沢旅行に連れて行く。陽人の年金は朱美が預かることになったという。

 軽井沢旅行の場で、朱美に対し、陽人をなぜ好きになったのか尋ねていたフジタ。朱美は「(私の)子どもを虐待しないってこと。だから安心してお付き合いできる」と答え、フジタはその代わりに自分が虐待された、と冷静に説明していた。虐待されていたフジタを前に、朱美のこの答えはあまりにも配慮がないと思うし、私が朱美ならもっと取り繕い、よりによってこの理由を選ばないだろう。

 その後フジタは陽人にも、「土日だけ朱美の家に行く」のではなく、毎日フジタを一人家に置き去りにしたのはなぜかと尋ねるが、「(自分が朱美を)好きだからじゃないの?」と答えていた。素直と言えばそれまでだが、これも幼少期に置き去りにされたフジタに対して配慮がない一言だと思う。

 しかし、陽人と朱美に今さら謝られたところで、私ならどんな回答であっても結局、腹が立ちそうだ。ただ、いち視聴者がどう思おうが、これらを確認することがフジタにとって必要な過程だったのなら、それでいいのだろう。

 それにしても、朱美に陽人の年金の管理を任せて大丈夫なのだろうか。『ザ・ノンフィクション』は続編も楽しみの一つだが、こればかりは続編がないことを願いたい。陽人と朱美に振り回されるフジタをこれ以上見たくない。

 次週は「そこにいていいんだよ ~もじゃくん夫婦と不登校の子どもたち~」。不登校の子どもたちの居場所づくりに奮闘する元小学校教師のもじゃくんと、ちーさん夫妻。ただその運営は手弁当のギリギリな状況だ。夫妻と子どもたちを見つめる。

いしだ壱成、90年代ドラマ『未成年』で見せた俳優としてのすごさ――「痛いおじさん」から脱却できるのか

▼タイトル
1:いしだ壱成、90年代ドラマ『未成年』で見せた俳優としてのすごさ――「痛いおじさん」から脱却できるのか
2:いしだ壱成、輝いていた90年代から「痛いおじさん」と揶揄されるまで――哀愁を武器に復活なるか

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当てて90年代の名作ドラマをレビューする。

 昨年12月、いしだ壱成がインスタライブでパワーストーンを売りつけようとしたというニュースを知った時、なんともやりきれない悲しい気持ちになった。

 いしだは生活費に困っており、24歳年下の妻とも離婚。その後、今年3月にトルコで植毛手術をし、俳優としての再起を目指していると報じられた。

 現在、いしだは47歳。痛々しいおじさんになったと彼を揶揄する声がネット上にはあふれているが、同じくらい聞こえてくるのが、90年代のいしだ壱成のすごさを熱心に語り、懐かしむ声だ。
  
 90年代前半は、歌番組が続々と終了し、アイドル冬の時代といわれていた。SMAPもまだブレーク前で、歌番組という主戦場がなくなったことでドラマ、バラエティといったほかジャンルに進出するために、メンバー各々が試行錯誤を繰り返していた頃だった。昭和から平成へと時代が変わる中、旧来の芸能界の仕組みは大きく崩れ始めていた。

 その間隙を縫って、颯爽と現れたのが、いしだ壱成だった。いしだは、1992年にSPドラマ『悲しいほどお天気』(フジテレビ系)で俳優デビュー。その後、若者向けドラマ枠「ボクたちのドラマシリーズ」(同)の第1作となる『放課後』で観月ありさの相手役に大抜てきされた。本作は高校生の男女二人の体が入れ替わってしまう青春ドラマ。いしだは女子生徒の内面を持った男子生徒を好演したことで、一気に注目を集める。

 当時のいしだは武田真治と共に、女性モノの小さいシャツ(チビT)を着て、テレビ番組やファッション誌を席巻していたため、フェミニン(女性的)な色気を持つ男性、通称“フェミ男”と呼ばれていた。二人の姿を見て、これまでの男性アイドルや若手俳優とは全く違う、新しい時代のスターが現れたと当時は感じた。

 いしだは歌手としてもデビューしているが、デビュー曲はいしだ自身が作詞作曲した「WARNING」というレゲエだったことも斬新だった。芸能人というよりは、センスの良い、少し年上のお兄さんという印象だった。

 一方で、彼が俳優・石田純一の息子だということは、すぐに知られるようになった。俳優デビューも父親のコンサートで知り合ったテレビ番組のプロデューサーの目に留まったためであり、今振り返ると生粋のサラブレッド。ただ、“石田純一の息子”という肩書は当時、いしだを支持していた若いファンにとっては全く関係なかった。

  93年には、野島伸司脚本のドラマ『ひとつ屋根の下』(同)に出演。本作は江口洋介演じる長男が、バラバラだったきょうだいたちと暮らすホームドラマだ。いしだは自動車修理工場で働く元不良少年の三男・柏木和也を演じた。全話平均視聴率28.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を獲得したメガヒットドラマとなった本作に出演したことで、いしだの知名度は一気に全国区となる。

 その後も快進撃は続き『じゃじゃ馬ならし』、『君といた夏』といったフジテレビ系の青春ドラマに次々と出演。そして95年には、野島伸司脚本の青春ドラマ『未成年』(TBS系)で連ドラ初主演を務めた。

 いしだが演じたのは、ヒロこと高校生の戸川博人。父親との関係がうまくいかず、兄の恋人の萌香(桜井幸子)に恋心を抱くヒロは、自分と同じように疎外感を抱えた少年少女たちと心を通わしていく。いしだの演技は、映画『エデンの東』のジェームス・ディーンを彷彿とさせ、思春期の少年が抱えるナイーブな心情を見事に表現していた。感情の発露が極端で、演技として過剰すぎる場面も多かったが、エキセントリックな作風で知られる野島伸司のドラマにハマっていた。

眩しかったからさ。そうさ。ただそれだけなんだ。
オレたちの季節は、いつだって瞬間、真っ白になっちまう。
何よりも一番大事な時に(第3話)

 というような、文字にするとナルシスティックで詩的すぎるモノローグも、いしだが言うと説得力があった。そして最終話、テロリストと間違えられて警察に追われるヒロが、仲間を救うために学校の屋上で大演説をする場面は、ドラマ史に残る名シーンである。野島の作家としての主張が強すぎて、ドラマとしてはバランスを欠いた作品だったが、いしだの演技に関しては完璧な仕事だったと言えるだろう。

 『未成年』以降も、『聖者の行進』(TBS系)や『リップスティック』(フジテレビ系)といった野島ドラマに出演し、俳優業は順調だった。しかし、2001年に大麻・LSDを所持していたことから大麻取締法違反で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受ける。それ以降、テレビドラマの仕事は激減した。園子温の『気球クラブ、その後』や瀬々敬久監督の『涙壺』といった映画に出演し、俳優業を続けてはいるものの、出演作は年々減っている。

 近年はバラエティ番組での発言やゴシップ記事が話題になるばかりで、俳優としての全盛期を知る者としては寂しいものがある。

 ただ、今年8月、いしだは映画『100日後に退職する47歳』(DVDと配信)で、久々に俳優として主演を務めた。石田純一と親子共演する映画『散歩屋ケンちゃん』の企画も動いているようで、少しずつだが、彼を取り巻く状況が変化しているのが伝わってくる。

 パワーストーン事件以降のいしだの振る舞いに、当初は痛々しいものを感じていたが、最近の姿を見ていると、おじさんになったが故の哀愁に魅力を感じる。47歳のいしだだからこそ演じられる役はたくさんあるはず。この哀愁を武器に、名バイプレイヤーとして完全復活してほしい。

いしだ壱成、90年代ドラマ『未成年』で見せた俳優としてのすごさ――「痛いおじさん」から脱却できるのか

▼タイトル
1:いしだ壱成、90年代ドラマ『未成年』で見せた俳優としてのすごさ――「痛いおじさん」から脱却できるのか
2:いしだ壱成、輝いていた90年代から「痛いおじさん」と揶揄されるまで――哀愁を武器に復活なるか

――ドラマにはいつも時代と生きる“俳優”がいる。『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、“俳優”にスポットを当てて90年代の名作ドラマをレビューする。

 昨年12月、いしだ壱成がインスタライブでパワーストーンを売りつけようとしたというニュースを知った時、なんともやりきれない悲しい気持ちになった。

 いしだは生活費に困っており、24歳年下の妻とも離婚。その後、今年3月にトルコで植毛手術をし、俳優としての再起を目指していると報じられた。

 現在、いしだは47歳。痛々しいおじさんになったと彼を揶揄する声がネット上にはあふれているが、同じくらい聞こえてくるのが、90年代のいしだ壱成のすごさを熱心に語り、懐かしむ声だ。
  
 90年代前半は、歌番組が続々と終了し、アイドル冬の時代といわれていた。SMAPもまだブレーク前で、歌番組という主戦場がなくなったことでドラマ、バラエティといったほかジャンルに進出するために、メンバー各々が試行錯誤を繰り返していた頃だった。昭和から平成へと時代が変わる中、旧来の芸能界の仕組みは大きく崩れ始めていた。

 その間隙を縫って、颯爽と現れたのが、いしだ壱成だった。いしだは、1992年にSPドラマ『悲しいほどお天気』(フジテレビ系)で俳優デビュー。その後、若者向けドラマ枠「ボクたちのドラマシリーズ」(同)の第1作となる『放課後』で観月ありさの相手役に大抜てきされた。本作は高校生の男女二人の体が入れ替わってしまう青春ドラマ。いしだは女子生徒の内面を持った男子生徒を好演したことで、一気に注目を集める。

 当時のいしだは武田真治と共に、女性モノの小さいシャツ(チビT)を着て、テレビ番組やファッション誌を席巻していたため、フェミニン(女性的)な色気を持つ男性、通称“フェミ男”と呼ばれていた。二人の姿を見て、これまでの男性アイドルや若手俳優とは全く違う、新しい時代のスターが現れたと当時は感じた。

 いしだは歌手としてもデビューしているが、デビュー曲はいしだ自身が作詞作曲した「WARNING」というレゲエだったことも斬新だった。芸能人というよりは、センスの良い、少し年上のお兄さんという印象だった。

 一方で、彼が俳優・石田純一の息子だということは、すぐに知られるようになった。俳優デビューも父親のコンサートで知り合ったテレビ番組のプロデューサーの目に留まったためであり、今振り返ると生粋のサラブレッド。ただ、“石田純一の息子”という肩書は当時、いしだを支持していた若いファンにとっては全く関係なかった。

  93年には、野島伸司脚本のドラマ『ひとつ屋根の下』(同)に出演。本作は江口洋介演じる長男が、バラバラだったきょうだいたちと暮らすホームドラマだ。いしだは自動車修理工場で働く元不良少年の三男・柏木和也を演じた。全話平均視聴率28.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を獲得したメガヒットドラマとなった本作に出演したことで、いしだの知名度は一気に全国区となる。

 その後も快進撃は続き『じゃじゃ馬ならし』、『君といた夏』といったフジテレビ系の青春ドラマに次々と出演。そして95年には、野島伸司脚本の青春ドラマ『未成年』(TBS系)で連ドラ初主演を務めた。

 いしだが演じたのは、ヒロこと高校生の戸川博人。父親との関係がうまくいかず、兄の恋人の萌香(桜井幸子)に恋心を抱くヒロは、自分と同じように疎外感を抱えた少年少女たちと心を通わしていく。いしだの演技は、映画『エデンの東』のジェームス・ディーンを彷彿とさせ、思春期の少年が抱えるナイーブな心情を見事に表現していた。感情の発露が極端で、演技として過剰すぎる場面も多かったが、エキセントリックな作風で知られる野島伸司のドラマにハマっていた。

眩しかったからさ。そうさ。ただそれだけなんだ。
オレたちの季節は、いつだって瞬間、真っ白になっちまう。
何よりも一番大事な時に(第3話)

 というような、文字にするとナルシスティックで詩的すぎるモノローグも、いしだが言うと説得力があった。そして最終話、テロリストと間違えられて警察に追われるヒロが、仲間を救うために学校の屋上で大演説をする場面は、ドラマ史に残る名シーンである。野島の作家としての主張が強すぎて、ドラマとしてはバランスを欠いた作品だったが、いしだの演技に関しては完璧な仕事だったと言えるだろう。

 『未成年』以降も、『聖者の行進』(TBS系)や『リップスティック』(フジテレビ系)といった野島ドラマに出演し、俳優業は順調だった。しかし、2001年に大麻・LSDを所持していたことから大麻取締法違反で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受ける。それ以降、テレビドラマの仕事は激減した。園子温の『気球クラブ、その後』や瀬々敬久監督の『涙壺』といった映画に出演し、俳優業を続けてはいるものの、出演作は年々減っている。

 近年はバラエティ番組での発言やゴシップ記事が話題になるばかりで、俳優としての全盛期を知る者としては寂しいものがある。

 ただ、今年8月、いしだは映画『100日後に退職する47歳』(DVDと配信)で、久々に俳優として主演を務めた。石田純一と親子共演する映画『散歩屋ケンちゃん』の企画も動いているようで、少しずつだが、彼を取り巻く状況が変化しているのが伝わってくる。

 パワーストーン事件以降のいしだの振る舞いに、当初は痛々しいものを感じていたが、最近の姿を見ていると、おじさんになったが故の哀愁に魅力を感じる。47歳のいしだだからこそ演じられる役はたくさんあるはず。この哀愁を武器に、名バイプレイヤーとして完全復活してほしい。

『ザ・ノンフィクション』父親の遺産と、父の厄介な内縁の妻「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 前編」

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月23日の放送は「あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 前編」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 フジタは45歳の「ゲーム芸人」で、レトロゲーム界隈では知る人ぞ知る存在だ。自室には80年代の初代ファミコンソフトがうずたかく積まれている。今のオンライン配信型ゲームと異なり、流通数が限られていた80年代ゲームソフトの中には、数十万円以上のプレミアがつくようなソフトもあり、フジタ自身、そういったレアゲームを積極的に購入しているため、カードローンに頼る生活だという。

 フジタがゲームにはまったのは自身の壮絶な幼少期と関係している。フジタの母親はフジタが幼稚園の時にくも膜下出血で死去。その後、フジタの父・陽人は、フジタの同級生の親でシングルマザーの朱美(仮名)と内縁関係に。陽人は朱美の元で暮らし、フジタには週に一度3万円を渡すだけで、フジタは小学生にして一人暮らしをしていたのだ。

 陽人は朱美の息子をかわいがり、フジタにはきつくあたったそうで、旅行の途中に自分だけ帰らされたこともあったという。朱美の息子の殺人計画まで立てたフジタだったが、クラスメイトの中で難ゲーム「スーパーマリオブラザーズ2」をクリアできたのがフジタしかおらず、みんなからの羨望を集めたことが、フジタに“実行”を思いとどまらせるきっかけになったようだ。そこから、ゲームがフジタの心の支えになっていた。なお、フジタと同世代の著者も同時期にこのゲームをしたが、手も足も出なかった。

 現在82歳の陽人は一人暮らしだが、朱美との関係は続いているようで月に一度3万円を渡しているという。そんなある日、陽人はフジタを呼び寄せ、行政書士の立ち合いのもと、財産をフジタに譲ると言い出す。

 しかし、陽人の様子がそれからおかしくなっていく。自分のお金が盗まれたと交番に行く、買い物したものがスーパーの中で置き引きされたと話す、約束の時間をすっぽかす……。フジタは陽人を物忘れ外来に連れていき、軽度の認知症と診断された。

 2カ月分の年金を1カ月で使い切る、キャッシングを利用するなど陽人の金の使い方が荒くなってきたことを心配するフジタは、金が朱美に流れているのではないかと懸念する。

 一方の朱美も、内縁の夫である陽人が朱美に断りなくフジタに財産を渡したことが気に入らなかったようで、陽人が借金の返済を優先し、それまで朱美に渡していた月3万円を渡せないようなら陽人と別れると番組スタッフに話す。

 そして、陽人は当初フジタに、月3万円だけを朱美に渡していると話していたが、年金支給日にも同額を支払っていたことが発覚。陽人が朱美に渡すであろう金を立て替えるフジタは不満を募らせていく。

 番組を見ていて複雑な気持ちになったのは、フジタは陽人に対しマイナスな感情があるようにはあまり見えず、むしろ父親の世話をかいがいしく焼いている。一方で、父親の内縁の妻である朱美に対して嫌悪感を抱いているように見えたところだ。

 朱美は確かに自分勝手のように思うが、「子どものフジタに寂しい思いをさせながらのうのうと生活してきた」という点で朱美と陽人は同罪だし、陽人はフジタの実父という点で、より罪深いだろう。

 また、陽人について、番組を見ていない人は「とんでもないクソジジイ」を連想するかもしれないが、テレビ画面に映る陽人は、フジタへの所業に反し「愛嬌のあるおじいちゃん」なのがまた複雑な思いにさせられる。そして一方の朱美も「ちゃきちゃきとしたおばあちゃん」という感じで、陽人と朱美と朱美の孫が回転寿司店で食事をする場面は「ほのぼの」としていたくらいだ。そのほのぼの感を、フジタの幼少期に分けてやってほしかった。

陽人が今のフジタにできること

 不実な男と女は老いて、おじいちゃんとおばあちゃんになる。親は「老いる」ことで、子どもに「もうこの人にはなにを言っても無駄」だと思わせ、複雑な感情を子どもに残しつつ逃げることができてずるい。私がフジタなら、遺産がよほどの高額でもない限り陽人とそもそも連絡を取らないと思うが、そんな父親からでも、関心を持たれるとうれしいのだろうか。

 なお、フジタはYouTuberとしても活動している。今回の放送で登録者数も増えたと思われるが、放送日10月23日午後9時の時点でチャンネル登録者は7.55万人となっている。コメント欄は番組を見た人からのフジタへの激励の言葉であふれていた。息子に対して不実であった陽人はせめて、チャンネル登録者数増やしくらいは貢献してほしい。

 次回は今回の後編。フジタの堪忍袋の緒がいよいよ切れて……。

『ねほりんぱほりん』ボディーガード回――ドラマのような経験談に、ブタの人形がキムタクに見えた【2022年シーズン7】

 NHK Eテレの人気番組『ねほりんぱほりん』のシーズン7が10月7日よりスタートした。かわいらしいモグラの人形ねほりん(山里亮太)とぱほりん(YOU)が、ブタの人形に扮した“顔出しNG”の訳ありゲストに、聞きにくい話題を“ねほりはほり”聞き出す新感覚トークショーだ。

※本記事は『ねほりんぱほりん』シーズン7「ボディーガード」のネタバレを含みます

『ねほりんぱほりん』ボディーガード、「泣いて抱き合う母と子を引き離す」お仕事も

 10月21日放送回のテーマは「ボディーガード」。要人を警護するSP(警視庁所属)とは違い、ボディーガードはさまざまな依頼に応じて民間人の警護を行っているそうだが、なにかと謎に包まれた職業である。今回はボディーガード歴8年のカズマさん(40代)と、同歴4年のヒロキさん(30代)の2名がゲストとして登場した。

 そもそもなぜボディーガードになったのか? カズマさんは「無人島に何か一つ持って行けるとしたら君を持って行きたいと言ってもらえるような男」に憧れて目指したとのこと。元警察官かつ元自衛隊員のヒロキさんは、警察と自衛隊では直接人を守っていると実感できる仕事があまりなかったため、「ボディーガードはダイレクトに人を守る仕事なので、すごいいい仕事だなと思った」そうだ。危険を伴う仕事とあって“人の役に立ちたい”という熱い志が感じられ、ブタの人形がやたらとイケメンに見えてくる。

 カズマさんは政治家や韓流ミュージシャン、ヒロキさんは世界的ガールズグループなどそうそうたる人物を警護してきたが、中にはイレギュラーな仕事もあるそう。印象に残った仕事を聞かれると、カズマさんは、離婚調停中の父親から、「(母親が子どもを連れて行かないように)子どもを守ってほしい」と依頼があり、「4年間くらいお子さんの警護を担当したこと」と回想。

 あるとき、警護中にバッタリ母親と鉢合わせしてしまい、「お母さんも泣いて、お子さんも泣いてしまっていて。2人して泣き崩れてる状況で、抱き合って……」というツライ状況に陥ってしまったとか。「2~3分好きにしてもらって、ちょっと落ち着いたところで『もうそろそろいいですか?』といって声を掛ける」という手段をとったとのこと。過酷だが、ドラマになりそうなシチュエーション。やはり、ブタがキムタクか何かに見えてきやしないか。

 続いてヒロキさんの印象に残った仕事は、一般人が銀座のクラブやキャバクラに行く際に付き添う仕事とのこと。「40代くらいの気の弱そうな方だったんですけど、『いかにもボディーガードらしい動きをしてくれ』と言われました」と明かす。

 要するに、“要人ぶってカッコつけたい!”という見栄で雇われたわけだが、ヒロキさんは警護していてむなしさを感じたものの、「(依頼主)本人の寂しさもあると思うんで。そういう寂しさを満たしてあげるっていうか、心の安全を守るっていうのも、我々の仕事の範疇かなと思いますね」と優しい。

 「お店に先行してバッと入っていって、ライトでイスの下とかパッパッて照らして。顔を頻繁にきょろきょろ動かしたりして、お店の方に『困ります』と押し出されるまでが一連の流れ」と、依頼通りのいかにもボディーガードな動きを全力で行ったそうだ。強いだけじゃなく優しいなんて、このブタに守られたい欲が高まる。

『ねほりんぱほりん』ボディーガードの結論「ヤクザと酒は怖い」

 視聴者として一番気になるのは「どんな危ない目に遭うのか?」という点だと思うが、カズマさん・ヒロキさんをはじめボディーガードの話を聞いていると、この世で最も怖いものはヤクザと酒だ! と思わされる。

 まずカズマさん。「お父様がヤクザのお偉いさん」だという新郎から、結婚式の警護を依頼されたという。結婚を父親に隠して進めていたが気づかれてしまい、「オマエラの結婚式、ぶっ潰してやる」と脅迫を受けたそうで、結婚式当日は「仲間のヤクザが式場の敷地のすぐ外にズラッと。5人くらい並んでました」とのこと。式に直接の被害はなく済んだものの、その後の新郎の安否が気になるエピソードではある。

 また、2人とは別に、インタビューVTRに出演したアキラさん(50代、ボディーガード歴25年)も、不動産がらみの依頼でヤクザ7~8人に囲まれた体験を語っていたし、また別のマサヤさん(50代、歴26年)も、土地問題の依頼でヤクザに拳銃を向けられた体験を語っていた。もはや警察案件では……とも思うが、ボディーガードはヤクザ対応を免れなさそうだ。

 そしてヤクザ同様、酒も恐ろしいと思い知らされることに。VTR出演のアキラさんは、アルコール依存の妻を持つ男性から、「妻が酒を飲まないように見ていてくれ」との依頼を受けたことがあるそう。もう一人、VTR出演のリュウタさん(50代、ボディーガード歴24年)は、不動産会社から「シェアハウスで酒を飲んだら暴れる男性がいる」と依頼され、住み込みで住人警護にあたったという。ヤクザとはまた別の方向性の厄介さがお酒関連にはありそう。

 想像以上にハードなボディーガードのお仕事。ヤクザとお酒に溺れた人に耐性がある人におすすめしたい。