これからの時代、スポーツにも「ユルさ」が必要……そんなことを考えさせられる事象が、ここのところ多い。 象徴的だったのは、スポーツ庁が示した「スポーツが嫌いな中学生を現在の半分に減らす」という目標設定に、各方面から反発の声が上がったこと。『久保みねヒャダ こじらせナイト』(フジテレビ系)で「体育への恨みつらみ川柳」なるコーナーを持つ久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダインがその急先鋒だ。 そりゃあ反発するよ、と思う。そもそもスポーツ庁のいう「スポーツ」は体育の延長線上でしかなく、あまりに十把一絡げ。スポーツには<「する」スポーツ>もあれば<「見る」スポーツ>も<「語る」スポーツ>も、いろいろあるはずなのだから。その懐の深さこそがスポーツの魅力なのだ。 筆者個人としては熱闘や熱血も大好物なわけだが、別軸から攻める「ユルいスポーツ番組」が増えると、スポーツの楽しみ方はもっと柔軟に、多様性が出てくると思う。 そこでオススメしたいのが、テレビ東京系で4月から始まった『さまスポ』(毎週土曜夕方6時〜)。さまぁ~ず初のスポーツ番組だ。 さまぁ~ずの2人がさまざまなスポーツに体当たりで挑戦し、その魅力を学んでいく、というコンセプト。ただ、「体当たり」といっても、そこはやはりさまぁ~ず。ある意味、「熱血」とか「精神論」といったものと対極に存在しそうな2人を起用したところに、この番組の意義がある。一歩間違うとグダグダになりそうな……それでいてなぜか心地いい、さまぁ~ずの世界観がスポーツを題材にしても成り立っているのだ。 お笑い芸人がスポーツ番組を持つ、というのはもはや見慣れた光景。ただ、その多くは芸人としてのトークスキルやまわしの技術を生かして、スタジオでアスリートの素を引き出す、という企画が多かった。言うなれば、バラエティのフォーマットの中でスポーツやアスリートを扱う、というものだ。 一方の『さまスポ』は、あくまでも“スポーツ番組”を標榜。スタジオ収録ではなく、各競技の現場に出向き、アスリートの「技」や「身体」にスポットを当てていく。 実はテレビ東京、今もっともスポーツに力を入れている民放局、といっても過言ではない。先月末から今月頭にかけては「世界卓球×全仏テニス」の二大世界大会を生放送。卓球では、テレビ東京が今年放送した全番組の中で最高視聴率となる13.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、5月29日から6月4日のゴールデンタイムの週間平均視聴率は8.6%を記録。1964年の開局以来、初の民放3位に輝いたことがニュースとなった。 ある意味、スポーツに社運を懸けているテレビ東京だからこそ、『さまスポ』におけるアスリートのキャスティングに妥協がないのも好印象だ。ここまで登場したのは、卓球・リオ五輪銀メダリストの水谷隼。レスリング・リオ五輪金メダリストの登坂絵莉と土性沙羅。プロバスケットボールBリーグのアルバルク東京。野球界のレジェンド・山本昌。プロボクシング・ロンドン五輪銅メダリストの清水聡……この豪華一流アスリートたちの「技」が見られるのだから、それだけでも十分楽しめる。 番組の製作総指揮を務めるのは、『モヤモヤさまぁ~ず2』でもさまぁ~ずとコンビを組む伊藤隆行。その伊藤が「ザテレビジョン」(KADOKAWA)のインタビューで、こんな言葉を述べていた。 《僕は、これからのテレビは『素直』がキーワードだと思っていて。素直に面白い、素直にすごい、というストレートな感性で番組を作っていかないと。今のテレビって、勝手にいろんな心配をしてヤスリで削っていっちゃうんですよ。万人に受けるように、どんどんおとなしい番組になっちゃう。だからそのための『勇気』も必要かもしれない。テレビに必要なのは『素直』と『勇気』ですね》 『さまスポ』も、まさに「素直」を軸にした番組。アスリートの技と身体を「素直」に訴求しているからこそ、さまぁ~ずのリアクションも生きてくるわけだ。 むしろ、今以上にアスリートや競技の持つ魅力だけで勝負してほしいほど。ボクシング回では、パンチがヒットするタイミングで“当たる音”を後から加えていたのは明らかだったが、そういった編集すら不要だと思う。その点は、もっともっと勇気を持った編集を目指してほしい。 というわけで、いま、スポーツ庁の方々に見てほしいのが『さまスポ』だ。なんなら、鈴木大地スポーツ庁長官のゲスト回なんてどうだろう。あえて今、バサロ泳法を学ぶさまぁ~ず、ちょっと面白いと思うのだが。 (文=オグマナオト)『さまスポ』テレビ東京
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朝ドラ『ひよっこ』でブレーク! “天然系ドジッ子”キャラで証明された、松本穂香の破壊力
NHK連続テレビ小説『ひよっこ』は、奥茨城村出身の谷田部みね子(有村架純)が東京で働きながら、行方不明となった父親を捜す姿を描いたドラマだ。 脚本は岡田惠和。『ちゅらさん』『おひさま』に続き、朝ドラは3本目。 1964年の東京オリンピック前後の時代を描くことで、2020年の東京オリンピックを控えた現代の空気と対峙させる試みや、饒舌すぎて前衛的な表現となっている増田明美のナレーションなど、見どころは多数あるのだが、現時点での面白さは、次々と登場する魅力的な登場人物たちだろう。 特にみね子が上京し、向島電機に就職して乙女寮で暮らすようになってからは、みね子と同じように地方からやってきた女の子が一気に増えて楽しかった。 みね子が乙女寮で同じ部屋になるのは、親友で女優を目指す、背が高い助川時子(佐久間由衣)。勉強に励む真面目な努力家で、通信制の高校で学んでいる秋田県出身の兼平豊子(藤野涼子)。一年先輩で、小柄で体が弱い秋田県出身の夏井優子(八木優希)。コーラス部を指導する高島雄大(井之脇海)と付き合っている山形県出身の寮長・秋葉幸子(小島藤子)。マイペースで食いしん坊のおかっぱメガネ、福島県出身の青天目(なばため)澄子(松本穂香)。 ほかにも、みね子たちを見守る母親的存在である永井愛子(和久井映見)も含め、登場人物がみんなかわいくていい子ばかりなので、アイドルドラマとして優れた作品になったといえる。 もともと朝ドラは、若手新人女優の登竜門としての側面が強く、ヒロインを演じることで成長していく女優の姿を楽しむというアイドルドラマとしての側面が強かった。 アイドルになりたい女の子を主人公にした『あまちゃん』以降は、ヒロインだけでなく主人公の親友や娘などといった脇役にも注目が集まるようになり、吉岡里帆のように朝ドラで脇役を演じた女優が注目されて売れていくことが、もうひとつのシンデレラストーリーとなっている。 『ひよっこ』はその極致で、乙女寮の女の子は誰を主人公にしても朝ドラが作れそうな魅力と物語を備えている。 中でも目を引くのが、松本穂香が演じた青天目澄子である。 澄子は、おかっぱのメガネっ子で福島弁を話すのだが、野暮ったい格好をして方言を話す姿が、逆にかわいさにつながっており、朝ドラヒロインの系譜でいうと、『あまちゃん』の天野アキ(能年玲奈)と『あさが来た』に登場したメガネっ子の“のぶちゃん”こと田村宜(吉岡里帆)を足して2で割ったような、天然系ドジッ子キャラだ。食べることと寝ることが好きで、いつもぼーっとしていて動きが遅く、話し方もゆっくり。 しかも方言なので、何を言っているのかわからないのだが、それがすさまじい破壊力を放っている。青天目という珍しい名字もあってか、人間というよりは「ゆるキャラ」的な存在で、そばにいるだけでみんなが癒やされているのが、見ていてよくわかる。 澄子が面白いのは、動作がゆっくりしているので、みんなが普通に話している時に一人だけズレた動きをしていることが多いという点。 時子と豊子がケンカを始めてしまった時、みね子が寝たふりをして困っている中で、澄子は気づかずにずっと寝ている。登場するたびに何かを食べていて、食堂でも気づいたらおかわりをしている。 『あさが来た』ののぶちゃんもおかしな動きをしていたが、『ひよっこ』のほうが自覚的に描かれており、作り手が澄子を楽しんでいるのがよくわかる。 澄子を演じる松本は、有村と同じ芸能事務所・フラームに所属する20歳。17歳の時に『あまちゃん』を見て本格的に女優を目指そうと思い、事務所に応募したという。 本人の印象としては、事務所の先輩である広末涼子の系譜にあたるショートカットで透明感のある女の子という感じで、清純派女優のど真ん中である。 ドラマ出演はまだ少ないが、ワコール「ブラ・リサイクルキャンペーン」のWEBムービーや「江崎グリコ ビーフカレーLEE『辛い(うまい)』編」のCMなどに出演しており、それぞれ印象は違うが、目元が独特で小動物のようだ。 澄子は、メガネにおかっぱという極端なキャラクターだが、元の容姿がここまでいいと、多少変なコスプレをしても逆に愛嬌が際立つのだなと、CM等を見て思った。 残念ながら、物語上では向島電機は倒産し、乙女寮の面々はバラバラになってしまった。澄子も石鹸工場に転職し、今は物語から退場している。 しかし、NHKのトーク番組『土曜スタジオパーク』の『ひよっこ』特集に、佐久間由、衣藤野涼子と松本が出演した際、乙女寮の面々の再登場はあると言っていたので、楽しみである。 その時、石鹸工場に就職した澄子は大人に成長して戻ってくるのか、相変わらずマイペースでおっとりしているのか? 澄子の再登場を心待ちにしながら、今も『ひよっこ』を追いかけている。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。FLaMme公式サイトより
朝ドラ『ひよっこ』でブレーク! “天然系ドジッ子”キャラで証明された、松本穂香の破壊力
NHK連続テレビ小説『ひよっこ』は、奥茨城村出身の谷田部みね子(有村架純)が東京で働きながら、行方不明となった父親を捜す姿を描いたドラマだ。 脚本は岡田惠和。『ちゅらさん』『おひさま』に続き、朝ドラは3本目。 1964年の東京オリンピック前後の時代を描くことで、2020年の東京オリンピックを控えた現代の空気と対峙させる試みや、饒舌すぎて前衛的な表現となっている増田明美のナレーションなど、見どころは多数あるのだが、現時点での面白さは、次々と登場する魅力的な登場人物たちだろう。 特にみね子が上京し、向島電機に就職して乙女寮で暮らすようになってからは、みね子と同じように地方からやってきた女の子が一気に増えて楽しかった。 みね子が乙女寮で同じ部屋になるのは、親友で女優を目指す、背が高い助川時子(佐久間由衣)。勉強に励む真面目な努力家で、通信制の高校で学んでいる秋田県出身の兼平豊子(藤野涼子)。一年先輩で、小柄で体が弱い秋田県出身の夏井優子(八木優希)。コーラス部を指導する高島雄大(井之脇海)と付き合っている山形県出身の寮長・秋葉幸子(小島藤子)。マイペースで食いしん坊のおかっぱメガネ、福島県出身の青天目(なばため)澄子(松本穂香)。 ほかにも、みね子たちを見守る母親的存在である永井愛子(和久井映見)も含め、登場人物がみんなかわいくていい子ばかりなので、アイドルドラマとして優れた作品になったといえる。 もともと朝ドラは、若手新人女優の登竜門としての側面が強く、ヒロインを演じることで成長していく女優の姿を楽しむというアイドルドラマとしての側面が強かった。 アイドルになりたい女の子を主人公にした『あまちゃん』以降は、ヒロインだけでなく主人公の親友や娘などといった脇役にも注目が集まるようになり、吉岡里帆のように朝ドラで脇役を演じた女優が注目されて売れていくことが、もうひとつのシンデレラストーリーとなっている。 『ひよっこ』はその極致で、乙女寮の女の子は誰を主人公にしても朝ドラが作れそうな魅力と物語を備えている。 中でも目を引くのが、松本穂香が演じた青天目澄子である。 澄子は、おかっぱのメガネっ子で福島弁を話すのだが、野暮ったい格好をして方言を話す姿が、逆にかわいさにつながっており、朝ドラヒロインの系譜でいうと、『あまちゃん』の天野アキ(能年玲奈)と『あさが来た』に登場したメガネっ子の“のぶちゃん”こと田村宜(吉岡里帆)を足して2で割ったような、天然系ドジッ子キャラだ。食べることと寝ることが好きで、いつもぼーっとしていて動きが遅く、話し方もゆっくり。 しかも方言なので、何を言っているのかわからないのだが、それがすさまじい破壊力を放っている。青天目という珍しい名字もあってか、人間というよりは「ゆるキャラ」的な存在で、そばにいるだけでみんなが癒やされているのが、見ていてよくわかる。 澄子が面白いのは、動作がゆっくりしているので、みんなが普通に話している時に一人だけズレた動きをしていることが多いという点。 時子と豊子がケンカを始めてしまった時、みね子が寝たふりをして困っている中で、澄子は気づかずにずっと寝ている。登場するたびに何かを食べていて、食堂でも気づいたらおかわりをしている。 『あさが来た』ののぶちゃんもおかしな動きをしていたが、『ひよっこ』のほうが自覚的に描かれており、作り手が澄子を楽しんでいるのがよくわかる。 澄子を演じる松本は、有村と同じ芸能事務所・フラームに所属する20歳。17歳の時に『あまちゃん』を見て本格的に女優を目指そうと思い、事務所に応募したという。 本人の印象としては、事務所の先輩である広末涼子の系譜にあたるショートカットで透明感のある女の子という感じで、清純派女優のど真ん中である。 ドラマ出演はまだ少ないが、ワコール「ブラ・リサイクルキャンペーン」のWEBムービーや「江崎グリコ ビーフカレーLEE『辛い(うまい)』編」のCMなどに出演しており、それぞれ印象は違うが、目元が独特で小動物のようだ。 澄子は、メガネにおかっぱという極端なキャラクターだが、元の容姿がここまでいいと、多少変なコスプレをしても逆に愛嬌が際立つのだなと、CM等を見て思った。 残念ながら、物語上では向島電機は倒産し、乙女寮の面々はバラバラになってしまった。澄子も石鹸工場に転職し、今は物語から退場している。 しかし、NHKのトーク番組『土曜スタジオパーク』の『ひよっこ』特集に、佐久間由、衣藤野涼子と松本が出演した際、乙女寮の面々の再登場はあると言っていたので、楽しみである。 その時、石鹸工場に就職した澄子は大人に成長して戻ってくるのか、相変わらずマイペースでおっとりしているのか? 澄子の再登場を心待ちにしながら、今も『ひよっこ』を追いかけている。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。FLaMme公式サイトより
“にわか”なアルコ&ピースが『勇者ああああ』で伝える「ゲームで遊ぶ楽しさ」
テレビのバラエティ番組の系譜のひとつとして脈々と続いているジャンルが、「ゲーム情報番組」である。 ファミコン発売以降に登場し、新作のゲームを紹介する番組で、その多くはゲーム会社がスポンサーになっている。番組の性質上、当然ゲームファンに向けたものだ。だから、ゲームファン以外が目にすることは基本的にはない。 だが一方で、古くは『大竹まことのただいま!PCランド』(テレビ東京系)をはじめ、「ゲーム情報番組」とは名ばかりで、それを隠れみのにお笑い要素をふんだんに取り込んだ、もはや「お笑い番組」と呼ぶべき番組も少なくなかった。最低限、新作ゲーム情報を入れれば、あとはゲームに関係あろうがなかろうがやりたい放題。そんな番組だ。 今年4月から始まった『勇者ああああ』(同/木曜深夜1時35分~)も、その系譜にあるといっていい。サブタイトル通り「ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組」だ。 司会はアルコ&ピース。アルピーといえば、通常の番組では平子祐希が目立っているが、この番組では、自身のラジオ番組同様、奔放に振る舞う酒井健太も負けず劣らずの存在感を放っている。そう、ラジオのような自由さが、アルピーの魅力を最大限引き出しているのだ。 ところで先ほど、「ゲーム情報を隠れみのにゲームとは無関係なお笑い番組の系譜」とこの番組を紹介したが、それは正確ではない。なぜなら、この番組のすべての企画が「ゲーム」を題材にしているからだ。 たとえば「コマンド危機一髪」。これは、アルピーとゲストが、リレー形式でコマンド入力を正確に行っていくというもの。スーパーマラドーナがゲスト出演した回では、『ストリートファイターII』で無抵抗な相手をリュウの「竜巻旋風脚」だけで倒すというミッション。一見簡単そうだが、一発一発リレー形式で行い、コマンド入力をミスして別の技が出てしまった時点で挑戦失敗。連帯責任で、全員に電流が流れるのだ。 「メチャクチャ得意」という武智に対し、田中一彦は「(『ストII』は)持ってたんですけど、いつか友達できたらやろうと思ってたので……」と哀しい思い出を語り、ほとんどやったことがないという。 頼りになる武智を先頭に酒井、平子、田中の順で挑戦する。武智、酒井が順調に成功する中、3人目の平子。慎重にコマンド入力するも、繰り出した技は「巴投げ」。 その瞬間、全員に電流が走る。 「何、変なタイミングでミスってるんですか!」 2回目の挑戦では平子も無事成功。だが、初挑戦となる田中がやはりミス。普通のハイキックを繰り出した。 「俺、リュウのあのキック見たの初めてだわ!」 その後も、平子は巴投げを繰り出し、激高した田中から「デブ、こら!」と罵倒され、まさかの「隠れデブ疑惑」が浮上する始末。その2人が足を引っ張り続け、なかなか成功しない。 それでも制限時間残り3分となった15回目の挑戦で、ついに成功。4人は歓喜した。コマンド入力は決して難しいわけではないが、ちょっとしたタイミングで失敗してしまうもの。実際のゲームではそこを多少ミスしても問題がないため、あらためて正確さを要求されると、普段とは違う力が入る。しかも、電流という連帯責任のプレッシャーもかかる。結果、ゲーム上級者ではない彼らは、失敗を繰り返してしまうのだ。見ている方も、いつしか感情移入し、手に汗を握る。で、達成したときに妙な感動を覚えるのだ。 ほかにも「にわかゲーマー一斉摘発 芸能界ゲーム風紀委員」というコーナーでは、アルピーの2人が「ゲーム風紀委員」となり、ゲームがたいして好きでもないのに、仕事を増やそうとプロフィールに「ゲーム好き」などと書く女性アイドルらをオーディションと称して呼び出し、本当にゲーム好きかを検証する企画。 実際、「にわか」のアイドルたちがほとんど。それを“摘発”し、追い詰めていくのは痛快だが、そこではアルピーの「にわか」っぷりが浮き彫りになることも。だが、それを逆手に取り、翌週の放送ではネットで批判されたと公言し、間違いを訂正し、仰々しく謝罪からスタートするふざけっぷりも面白い。 「ゲーム芸人公開オーディション」では、ゲームに絡んだネタならなんでもOKというハードルの低さから、“にわか”の粗い芸を見せる芸人が大挙出演。かつての『あらびき団』(TBS系)を思わせる雰囲気が心地よい。 こうしたお笑い要素が強い企画だけではなく、ゲーム情報要素の強い企画ももちろんある。そのひとつが「ゲーマーの異常な愛情」。ゲーム愛の強い芸人が登場し、人生で最高の一本を紹介するというものだ。 ここでは、今でもカルト的人気を誇る『リンダキューブ アゲイン』や『鈴木爆発』などが、かなりの時間を割いて紹介された。 先にも触れた通り、アルピーは決してゲームに詳しいわけではない。けれど、ゲームを知らないわけではない。彼らは現在、30代。物心ついたときからファミコンで遊び、ゲームの成長とともに大きくなった世代といっていい。その世代における標準的なゲーム知識とゲーム愛を持っている。 だから、マニアックに振れることもなく、メジャーなものだけを扱うわけでもない。ちょうどいいのだ。“にわか”だからこそ伝えられる面白さがあるのだ。 「ゲーム情報」だけを求めるなら、物足りないかもしれない。けれど、『勇者ああああ』が目指し実現させているのは、きっと「ゲームで遊ぶ楽しさ」を伝えることなのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『勇者ああああ』テレビ東京
枠移動で絶好調! 日テレ『嵐にしやがれ』視聴率2ケタ安定の背景は……
どうしてあのタレントは人気なのか? なぜ、あんなにテレビに出ているのか? その理由を、業界目線でズバッと斬る「ズバッと芸能人」。 今回は『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)について、あらためて検証してみたい。今年4月、土曜夜10時から夜9時に引っ越して以来、毎週2ケタの好調を維持しているのだ。 移動後の初回スペシャルは14.2%(ビデオリサーチ調べ、関東/以下同)を記録。直近の6月10日(ゲスト:滝沢秀明、芦田愛菜)も12.7%、5月13日(ゲスト:岡田准一、小栗旬、渡辺直美)も同じく12.7%という好視聴率をマークした。 移動前の半年間(2016年10月1日から2017年3月18日までの23回)の平均視聴率は9.9%であるに対し、枠移動してからの平均視聴率は12.0%と、約2ポイントもアップしている。 とはいえ、引っ越し前の平均スコアも、このご時世、決して悪いわけではない。だが、当時のウィークポイントは、各回によって数字に「ムラ」があることだった。例えば10月1日に13.1%(ゲスト:石原さとみ、唐沢寿明)を獲得した翌週のオンエアでは6.8%(ゲスト:船越英一郎、バカリズム)と約6ポイントも下げている。 一体なぜ、ここまでの「乱高下」が起きたのだろうか? それはひとえにゲストのネームバリューというより、その前の夜9時から放送されていた「土曜ドラマ」によるところが大きいものと思われる。 こんなデータがある。今年2月18日、『スーパーサラリーマン左江内氏』は10.2%。そのあとの『しやがれ』は10.4%(ゲスト:片岡愛之助)。翌週25日の『左江内氏』は7.9%。そのあとの『しやがれ』は8.3%(ゲスト:松岡修造)。つまりドラマの好不調が、後ろの『しやがれ』に影響していたことがわかる。 4月以降、常に10%強はキープしている人気番組『世界一受けたい授業』の直後に『しやがれ』が移ってきたことが、2ケタキープの大きな要因になったといえよう。 だが、好調の理由はそれだけではない。移動後は、企画のマイナーチェンジも試みている。例えば、ゲストの思い出の品を見ながら人生をひもとく「しやがれ記念館」というレギュラーコーナーの新設だ。 これは、番組開始当初行われていた、年上の男性芸能人から生き方を学ぶ「嵐に直伝!アニキの三か条!」に通じる番組“お決まり”の企画を据えようという狙いがあったと考えられる。 そもそも、この番組は一度、大改革をしている。2015年4月から総合演出が現在の『世界の果てまでイッテQ!』などを手がける古立善之氏に交代し、「今まで見たことのない嵐を見せる」「世の中のどうでもいい真実を嵐が体を張って解き明かす」という新たなコンセプトでリスタートしたのだ。 その頃は、櫻井翔が誰にも気づかれず沖縄でクジラを見たり、手先が器用な大野智が爪楊枝を作ったり、松本潤がかっこよく柵を飛び越えるなど、メンバー主体の企画が放送され、そこに『イッテQ』が得意とするイジリテロップとイジリナレーションが加わり、いわば嵐版『イッテQ』が放送されていた。 だが、そんなメンバー主体の企画の放送も徐々に減り、番組開始当初のようにゲストと一緒にワチャワチャするスタイルが嵐には合っていることがあらためて認知されつつある。また、番組タイトル同様の「○○しやがれ」というフレーズを再びに耳にする機会も増えた。 つまり、10年にスタートした当初のコンセプトが一番“強い”ということが、今のところ証明されているのではないだろうか? 7年目の『しやがれ』は原点に立ち戻りつつも、プラスアルファの色も加わり、さらに盛り返していくに違いない。 (文=都築雄一郎)
究極の内輪番組? 『あいつ今何してる?』が深く心に刺さる理由
見るたびに、毎回よくできているなあと思う番組がある。『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系)だ。 2015年10月から深夜で放送され、翌年4月から新たにネプチューンを司会に迎え、早くもゴールデンに昇格。現在も好評放送中だ。 番組の内容はタイトル通り。ゲストの著名人が、事前に学生時代の卒業アルバムを見ながら友人たちを回想、その話に出た友人=あいつが今、何をしているかを探る番組だ。 昨今、「素人」に焦点を当てたドキュメント系バラエティ番組が隆盛を誇っている。たとえば、空港を訪れた外国人に密着する『YOUは何しに日本へ?』や、終電を逃した人の家についていく『家、ついて行ってイイですか?』(ともにテレビ東京系)、あるひとつの場所を訪れる人に話を聞く『ドキュメント72時間』(NHK総合)などがそれに当たるが、この番組もその系譜にあるといっていいだろう。 スタッフが「あいつ」を探し出し、その人の職場や自宅に出向き、その後にたどった人生を振り返りながら、ゲストが回想しているVTRを見せて、感想を聞くというものだ。もちろん、「あいつ」はほとんどの場合、一般の人たち。そんな無名の人たちの人生なんか、テレビの、それもゴールデンの番組で取り上げて誰が興味あるんだ? と思うかもしれないが、ひとたび見始めると、これがくぎづけになるのだ。 もちろん、その面白さのひとつに、「あいつ」を通して見た有名人の知られざる過去の話を聞くというものもあるだろう。 卒業アルバムを見ながらゲストが回想するため、それまで忘れていたようなことを思い出したりする。あるいは、これまで話してこなかった初恋の話などをポロッとしたりする。その相手はどんな人なんだろうというミーハーな興味を満たされたりもするし、これまで鉄板のエピソードトークの登場人物のひとりとして登場していた人を実際に見られる喜びもある。数は少ないが、意外な有名人と学生時代からつながっているという奇妙な縁を感じさせるようなときもあったりする。 そして何より、友人の「あいつ」しか知らないゲストのエピソードが語られる、という面白みもある。学生時代、ゲストがどんな人物だったのか、それを本人ではなく、実際に間近で見てきた人から聞けるのは、めったにない。 そうした話には、また違った意味の面白さも付随する。それは記憶の齟齬だ。ゲストが間違いない話として語ったことが、実は全然違うこともよくあるのだ。事実は見る角度で違うのはもちろんだが、人は自分が見たい方向でしか物事を見ないし、その時々の心境が如実に記憶を塗り替えてしまうということがあらわになる。そんな面白さも潜んでいる。 これは、「あいつ」をスタジオに呼ばず、自宅や職場で話を聞くというスタイルが功を奏しているのだろう。スタジオのような素人にとって緊張する場で、テレビで活躍している相手が目の前にいて口を挟んでくると、思うようには話せなくなってしまうもの。だが、慣れた場所でスタッフ相手なら、じっくりと話すことができるのだ。 たとえば、野々村真の「あいつ」は、足に障害を負った同級生。一緒に帰る約束をしていたが、野々村がその約束をすっぽかした日に、その同級生が命に関わる大事故に遭ってしまい、今でも責任を感じているというのだ。 そんな「あいつ」は現在、フランスに住んでいるという。スタッフがフランスの自宅を訪れると、波瀾万丈な人生を経て、ルーヴル美術館のサイトなどを手がけるデザイナーとして活躍していることが明かされた。野々村が後悔している事故の件は、実は約束していたという事実はなく、野々村の家の目の前で事故に遭ったため、責任を感じたのではないかというのだ。つまり、事故を目の前で目撃した母から「いつも一緒に帰っているのに、なんでその日に限ってついていてあげなかったのか」などと叱られた野々村は責任を感じ、記憶が改ざんされたのだろう。そんな野々村に「責任を感じさせてしまっていたら申し訳ない」と優しく語る「あいつ」。その言葉に目を潤ませる野々村の姿に、誰もが持っているであろう青春時代の後悔の重さを思い起こさせるのだ。 また、記憶ということでいえば、「あいつ」がよく口にするのは「覚えてくれていてありがとう」という言葉だ。有名人となり、遠い世界に行ってしまったかのように感じていた同級生が、今でも自分のことを覚えていてくれる。それは、相手への思いが大きければ大きいほど感動するものだろう。彼ら(「あいつ」ら)の多くは、そんな同級生たちの活躍を、日々の生活の糧にしている。そういう思いを吐露する姿は胸に迫るものがあるし、それを見ながら、自分の同級生の「あいつ」は今何をしてるのだろうと思いを巡らせてしまう。 だが、それだけだと、ゲストに興味のある人しか楽しめない。けれど、この番組は、ゲストが誰であろうと面白い。実際、複数のゲストのうちのひとりを目当てに見だしたら、もう一方のゲストの「あいつ」のほうにくぎづけになってしまうことも少なくない。 「日本一面白いテレビ!」 「この5年で見たVTRで一番衝撃!」 出演したゲストの多くは、興奮して口々に絶賛する。ただし、この言葉には注釈がつく。それは「自分にとって」というものだ。ゲストにとっては自分の思い出の扉が開く上、自分が知らない同級生のその後を知ることができるのだから当然だ。「究極の内輪話」といっても過言ではない。ゲストにとっていかに大事な人でも、視聴者にとっては関係ない。狭い話だ。けれど、だからこそ深く刺さる面もある。 今、テレビは「みんなにとって」の方向にばかり進化していっている。なぜなら、それが視聴率を獲るための近道だからだ。だが、本当に大事なのは、いつも「自分にとって」だ。「その人」に向けて作ることだ。だからこそ、思いがダイレクトに伝わってきて、「あいつ」がいつしか自分に投影され、感情が揺さぶられる。 誰かにとって脇役の「あいつ」にも、みんなそれぞれに濃厚な人生がある。人はそれぞれ、自分の人生の主人公だ。と同時に、みんな誰かの「あいつ」のひとりなのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからテレビ朝日『あいつ今何してる?』
フジテレビ社長交代で「日ハム大谷」対応強化へ!? 『HERO’S』宮澤智・カトパン外しの舞台裏
6月28日に行われるフジ・メディア・ホールディングスの株主総会でフジテレビの新社長に正式就任する宮内正喜社長が、9月の番組改編で大ナタを振るうといわれている。その一環として検討されて いるのが、週末のスポーツニュース番組『スポーツLIFE HERO'S』の土曜担当キャスターを宮澤智アナから新人の久慈暁子アナへ交代、さらに日曜担当キャスターだった加藤綾子を降板させるというもの。 今年4月にフジに入社した新人アナは女性2名、男性2名。すでに6月9日に放送された『ダウンタウンなう』でお披露目されている。中でも注目を浴びているのは、テレビ東京の新人アナの角谷暁子アナと並んで“W暁子”と呼ばれている久慈アナだ。 久慈アナは、女子アナ界の最高ブランドといわれている青山学院大学卒業で、在学中に「2014年旭化成グループキャンペーンモデル」に選ばれ、ファッション誌などでも活躍していた。さらにモデル時代には、北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手と同じ岩手県奥州市出身ということもあり、同市の広報誌で大谷と対談。共通の友人がいて、これまでも数回食事するなど、親しい関係にあるという。 スポーツ番組関係者は「大谷の取材に関して、実はフジでは過去に問題があったんです」と言う。 「一時、宮澤は『LIFE HERO'S』土曜日だけでなく日曜日も担当していたんですが、彼女ばかりが大谷の取材担当になることを不満に思ったカトパンが『日曜日は自分だけでやりたい』と上層部に直訴、宮澤が降板させられたといわれています。ところが、そのカトパンが大谷のところへ取材へ行った際に、タブーだった恋愛について執拗に質問したため、球団から出禁を食らったんです」(同) また、土曜日担当だけになった宮澤アナも、取材に行った際に私的に大谷を誘おうとしたことが球団にバレて、単独取材を禁止されたという。そもそも、宮澤アナは田中将大投手が渡米する際に「アメリカに何しに行くんですか?」と質問し、「野球でしょ」と一蹴されたり、北島康介の引退会見で「自分のどこを誉めたいですか?」と質問して、本人や周囲を絶句させたりという“前科”があり、一部週刊誌に「アスリートから取材に来てほしくない女子アナ」として報道された、いわくつきの人物だった。 宮澤アナは現在、『LIFE HERO'S』の土曜版と早朝番組『めざましテレビ アクア』の司会を務めているが、9月以降は『アクア』1本になる可能性が高いという。 それに代わって、大谷と太いパイプを持つ新人の久慈アナを大抜擢するというプランが浮上したようだ。 また、現社長の亀山千広氏が寵愛していたカトパンは、亀山氏の退任に伴い、後ろ盾を失うことで、『LIFE HERO'S』を9月で降板させられるという情報が流れている。番組開始当初は、カトパンの突撃取材ぶりが話題になるなど高視聴率をキープしていたが、最近はその高額なギャラに見合う成果を残せていないという評価のようだ。 しかし、フリーになったとはいえ、フジテレビの顔ともいえるカトパンと、スポーツアナとして局が長年プッシュしてきた宮澤アナを外し、新人を抜擢するのは簡単なことではない。現場からの反発は強いだろう。宮内新社長が本当に大ナタを振るうことができるのか、注目したい。 (文=本多圭)フジテレビ『スポーツLIFE HERO'S』より
石原さとみが、半同棲中の山下智久を『24時間テレビ』にゴリ押し!? 小山慶一郎とは「出たくない」
今年の『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)のチャリティーパーソナリティーに決定した女優の石原さとみが、“半同棲”が報じられた山下智久を「番組に出演させて」と番組関係者にゴネているという。 『24時間テレビ』のパーソナリティーは だいぶ前からジャニタレが独占しているが、今年も早々に嵐・櫻井翔、KAT-TUN亀梨和也、NEWS小山慶一郎がメインパーソナリティーに決定していた。 しかし、小山に関しては、地下アイドルとの交際が発覚。そのアイドルは、小山との交際発覚が影響し、所属グループを解雇されたにもかかわらず、小山はわれ関せずと無視していることから、ネット上では「キャスター失格」「パーソナリティーを降ろせ」などという批判の声が上がっている。 それとは別に、以前から石原は小山を「キモ男」と呼んで毛嫌いしており、『24時間テレビ』のオファーが来たときも「小山が一緒なら出たくない」と出演を渋ったという。 石原は昨年、昨年10月期に同局で放送したドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』の平均視聴率が12.4%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)とまあまあの視聴率だったことから、この秋にスペシャルドラマの放送が予定されている。スペシャルの視聴率次第では「パート2」も予定しているというが、凋落激しいフジテレビのドラマ出演が目立っていた石原にとっては、王者・日テレに定着できるいいチャンス。そのスペシャルの番宣も兼ねるということもあって、パーソナリティーを引き受けたという。 だが、石原はそれを引き受ける条件として、毛嫌いしている小山に代わって、山下を出すよう要求しているというのだ。日テレとしては『校閲ガール』のパート2を制作したいだけに、むげに断れない。かといって、今さら小山を切るようなことはできない。ジャニーズ事務所さえ許せば、山下に番組内の1コーナーを担当させるという線が現実的だが、どう調整するかの決断を迫られている。本番まで、ひと波乱あるかもしれない。 (文=本多圭)
『極道の妻たち』の岩下志麻みたいな姐さんはいない――極道いろいろ、極妻もいろいろ
皆様、はじめまして。待田芳子と申します。
オットは某指定組織の三次団体幹部、つまりヤクザでした。「でした」というのは少し前に刑務所で病死したからなのですが、近ごろの暴力団排除は本当にひどいなあと思います。大都市を中心に、ヤクザは妻までがクレジットカードを止められ、銀行口座や生命保険を解約され、子どもたちは保育園や私学で入園・入学を拒否されています。私は以前からメディアの取材は積極的に受けさせていただくようにして、そうしたことを、なるべく記者さんたちに丁寧にお話をして、記事に反映してもらえるようにしてきました。ちゃんと聞いて原稿にしてくださる記者さんも少なくなく、そういったご縁から、今回の執筆の機会をいただくことになった次第です。
■コワモテなのにひらがなもロクに読めない・書けないのは普通
最近は子どものために離婚している極妻さんも増えていますし、ヤクザをやめるお父さんも目立ちます。でも、それって数字上のことなので、「ヤクザが減った」「暴排の効果だ」と喜ぶことではないと思います。だって、今までヤクザとして生きてきた人がそうカンタンに仕事を見つけられるわけがないのですから。
そもそも皆さんが思われるほど、ヤクザ社会はギスギスしていませんでした(今はシノギがないので、ややギスギスしてきましたが)。
ヤクザになる人は、主に家庭の事情で学校に行けなかった人が大半ですから、コワモテなのにひらがなもロクに読めない・書けないのは普通です。それだけで本が何冊も書けるくらいおバカなエピソードがありますが、そんなこんなを仲間内でネタにして笑いとばし、助け合ってきたのです。
たとえば、みんなでちょっといいレストランに行って、オットが「サンペレグリノ」を頼んだことがありました。サービスの手間暇も考えて、若い衆たちがこぞって「オレも」「ワシも」となるのは、いつものことです。でも、この時は運ばれたグラスを口にした1人が「なんや、これっ? ただの水やんか! コラッ!」と叫び、ボーイさんが笑いをこらえていました。
暴排条例施行の前で、みんな赤いシャツやらスキンヘッドやらの“いかにも”な外見だったので、余計に面白かったのだと思います。オットも「このバカ、ミネラル・ウォーターも知らんのか!」とウケていましたが、「まあワシも昔はそうやったなあ」と遠い目をしていました。
こんなメンバーは、だいたい懲役に行って読み書きを覚えます。刑務所とは「侠(おとこ)を磨く場」といわれますが、その前に学校で勉強しなかったことを教えてくれる場所でもあるのです。
覚えたてのたどたどしい字で、刑務所から「ねえさんの、つくってくれた、かれーらいすがまたたべたいです」なんて手紙が来ると、ホロっとしますね。ヤクザになるコたちは、ほとんどが親の愛に恵まれていません。人間関係に問題があるのはそのせいでしょうね。それでも上下関係が厳しい組にいられるコたちのほうが、まだ更生の見込みはあるかもしれませんよ。
私はなるべく彼らの「お母さん」的な役割を果たすようにしてきました。「極妻」といっても、まさに十人十色なのですが、私は昔ながらのスタンダードなタイプでしたね。若い衆に手伝わせて、みんなの分の食事を作り、洗濯や掃除もしていました。あとは逮捕された時の弁護士との連絡、本や服の差し入れ、手紙の代筆などですね。
ちなみに映画『極道の妻たち』の岩下志麻さん演じる環さんみたいな極妻はいません(笑)。実際は完全な男の世界ですから、オットの子分に「あんた、指詰めなアカンよ」なんて言えるわけはないのです。まあファッションや話し方に、映画の影響を受けているのがミエミエの姐さんはいますけどね。
伴侶にヤクザを選ぶわりには、まっとうな職業の女性も多く、私の知り合いの姐さんたちにも、看護師や保険の外交員、スーパーの店員や事務員などの出身の方がいます。変わったところでは鍼灸師やファッションモデル、クラブのピアニストなんかもいるんですよ。あとは「アタシと結婚したいならヤクザをやめて」と言って足を洗わせた焼き鳥屋のおかみさんもいます。ご主人はゼロから焼き鳥の作り方を練習したそうで、けっこうおいしいです。
極道もいろいろ、極妻もいろいろ、というわけです。私の場合はオットが亡くなって、この世界から離れることになりましたが、これを機に体験した面白エピソードを伝えていきたいなあ、なんて思っています。
『極道の妻たち』の岩下志麻みたいな姐さんはいない――極道いろいろ、極妻もいろいろ
皆様、はじめまして。待田芳子と申します。
オットは某指定組織の三次団体幹部、つまりヤクザでした。「でした」というのは少し前に刑務所で病死したからなのですが、近ごろの暴力団排除は本当にひどいなあと思います。大都市を中心に、ヤクザは妻までがクレジットカードを止められ、銀行口座や生命保険を解約され、子どもたちは保育園や私学で入園・入学を拒否されています。私は以前からメディアの取材は積極的に受けさせていただくようにして、そうしたことを、なるべく記者さんたちに丁寧にお話をして、記事に反映してもらえるようにしてきました。ちゃんと聞いて原稿にしてくださる記者さんも少なくなく、そういったご縁から、今回の執筆の機会をいただくことになった次第です。
■コワモテなのにひらがなもロクに読めない・書けないのは普通
最近は子どものために離婚している極妻さんも増えていますし、ヤクザをやめるお父さんも目立ちます。でも、それって数字上のことなので、「ヤクザが減った」「暴排の効果だ」と喜ぶことではないと思います。だって、今までヤクザとして生きてきた人がそうカンタンに仕事を見つけられるわけがないのですから。
そもそも皆さんが思われるほど、ヤクザ社会はギスギスしていませんでした(今はシノギがないので、ややギスギスしてきましたが)。
ヤクザになる人は、主に家庭の事情で学校に行けなかった人が大半ですから、コワモテなのにひらがなもロクに読めない・書けないのは普通です。それだけで本が何冊も書けるくらいおバカなエピソードがありますが、そんなこんなを仲間内でネタにして笑いとばし、助け合ってきたのです。
たとえば、みんなでちょっといいレストランに行って、オットが「サンペレグリノ」を頼んだことがありました。サービスの手間暇も考えて、若い衆たちがこぞって「オレも」「ワシも」となるのは、いつものことです。でも、この時は運ばれたグラスを口にした1人が「なんや、これっ? ただの水やんか! コラッ!」と叫び、ボーイさんが笑いをこらえていました。
暴排条例施行の前で、みんな赤いシャツやらスキンヘッドやらの“いかにも”な外見だったので、余計に面白かったのだと思います。オットも「このバカ、ミネラル・ウォーターも知らんのか!」とウケていましたが、「まあワシも昔はそうやったなあ」と遠い目をしていました。
こんなメンバーは、だいたい懲役に行って読み書きを覚えます。刑務所とは「侠(おとこ)を磨く場」といわれますが、その前に学校で勉強しなかったことを教えてくれる場所でもあるのです。
覚えたてのたどたどしい字で、刑務所から「ねえさんの、つくってくれた、かれーらいすがまたたべたいです」なんて手紙が来ると、ホロっとしますね。ヤクザになるコたちは、ほとんどが親の愛に恵まれていません。人間関係に問題があるのはそのせいでしょうね。それでも上下関係が厳しい組にいられるコたちのほうが、まだ更生の見込みはあるかもしれませんよ。
私はなるべく彼らの「お母さん」的な役割を果たすようにしてきました。「極妻」といっても、まさに十人十色なのですが、私は昔ながらのスタンダードなタイプでしたね。若い衆に手伝わせて、みんなの分の食事を作り、洗濯や掃除もしていました。あとは逮捕された時の弁護士との連絡、本や服の差し入れ、手紙の代筆などですね。
ちなみに映画『極道の妻たち』の岩下志麻さん演じる環さんみたいな極妻はいません(笑)。実際は完全な男の世界ですから、オットの子分に「あんた、指詰めなアカンよ」なんて言えるわけはないのです。まあファッションや話し方に、映画の影響を受けているのがミエミエの姐さんはいますけどね。
伴侶にヤクザを選ぶわりには、まっとうな職業の女性も多く、私の知り合いの姐さんたちにも、看護師や保険の外交員、スーパーの店員や事務員などの出身の方がいます。変わったところでは鍼灸師やファッションモデル、クラブのピアニストなんかもいるんですよ。あとは「アタシと結婚したいならヤクザをやめて」と言って足を洗わせた焼き鳥屋のおかみさんもいます。ご主人はゼロから焼き鳥の作り方を練習したそうで、けっこうおいしいです。
極道もいろいろ、極妻もいろいろ、というわけです。私の場合はオットが亡くなって、この世界から離れることになりましたが、これを機に体験した面白エピソードを伝えていきたいなあ、なんて思っています。






