「子どもは親を選んで生まれる」――のぶみ・池川明医師の思想が“絵本コーナー”に並ぶ危うさ

 誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

 今月26日、何かとお騒がせな絵本作家・のぶみさんが、サンマーク出版より新作絵本『うまれるまえにきーめた』を発売します。Amazonの商品説明には「ママのお腹へと行く前に、一人ひとり、やりたいことを決めるのです」とありました。のぶみさんご本人が自身のSNSなどで内容を小出しにして宣伝していましたが、生まれる前の子どもが“神様”に促され、自分が欲しい才能や、人生のあらすじを紙に書かせる(でも「ほとんどのじんせいが そのとおりにならない」と言われる)という、摩訶不思議な内容でした。

 のぶみさんは2017年にも『このママにきーめた!』(同)という絵本を出版しており、その中には「ねぇ、どうしてママをえらんだのか、しってる?」「ようし! ぼく、このママにきーめた!」といった子どものセリフが出てきます。また、あとがきには「おなかのなかの記憶がある子どもたちに会って描いた絵本です」とも書かれており、「子どもの証言」を作品に落とし込んでいることがうかがえます。

 のぶみさんといえば、元暴走族の総長で33回も逮捕された(自称)という、絵本作家としても、社会人としても異色の経歴の持ち主。昨年、「あたしおかあさんだから」という歌の歌詞で“自己犠牲”の母親像を礼讃して、ネットを大炎上させました。この時、『このママにきーめた!』をはじめとした他の作品についても疑問の声が上がり、それ以来、嫌悪感を抱く人が増えたようです。よせばいいのに、のぶみさんはたびたび“アンチ”に応戦。しかも「弁護士に相談した」などと、33回の逮捕で学んだのであろう、社会通念上の善悪の規範をチラつかせてくるとか。

 “のぶみアンチ”な方々は、一体彼の何を警戒しているのか。気になった私は、Twitter上で交流のある、のぶみさんを「危険視する」方々から話を聞きました。

「SNSでの支離滅裂な発言、つじつまの合わない経歴、母親を馬鹿にして描いていることを疑問視しています。彼を売り出したメディアや、のぶみさんを起用する公的機関にも責任があると思います」(女性、子育て経験なし)

「命への尊厳とそれを描く技量が欠けているため、子どもに対して暴力的な作用をするのではないでしょうか。無害なふりをして、他の絵本の横に並んでいる恐ろしさがあります」(女性、子育て経験あり)

「作者本人がSNSで講演会開催を熱望したり、10冊や100冊単位で買うようにファンに呼び掛けていることに違和感を覚えます。一部の母親たちを“信者”のように慕わせ、母親たちも『私がのぶみさんを助けなきゃ』と共依存しているように見え、まるで“カルト”のようです」(女性、子育て経験あり)

 このような批判を浴びながらも、のぶみさん自身が“教祖様”さながらに、自身のコミュニティ内でひたすら宣伝を繰り返している点は、私も気になるところです。

 新刊『うまれるまえにきーめた』は、のぶみさん自らが100人の子どもから聞いた「産まれる前の記憶」を、作品に反映させているとのこと。これは「胎内記憶」と呼ばれ、誕生後にその記憶を話す子どももいるそうです。前述の『このママにきーめた!』も、「おなかのなかの記憶がある子どもたちに会って描いた絵本」というあとがきからわかるように、「胎内記憶」に基づいた物語だと考えられます。

 この話題では、日本における胎内記憶の第一人者として多数の著書を世に出し、「日本胎内記憶教育協会」なる団体の代表を務める、池川明医師にも触れなければなりません。池川医師の著書を見ると、『ママのおなかをえらんできたよ。』(リヨン社)『だから、ママのところに来たんだよ』(総合法令出版)『子どもは親を選んで生まれてくる』(日本教文社)といった具合で、「子は親を選ぶ」と主張されています。

 「日本メンタルサービス研究所」の公式サイトに掲載されている池川医師のインタビューでは、保育園で0~6歳の子どもにアンケートを取ったところ、「3歳までで限って言えばだいたい40%位のお子さんに、記憶があるのではないかと思います」とした上で、「『お父さんお母さんを選んできた』って言う子が2割います」と断言しています。また、“流産”についても「子ども達に聞いた」話として、「家族が幸せになるために流産する」「『このお母さんはこのレベルじゃだめだから、一気に成長させてやるか』って、(子どもが)命を賭ける」(すべて原文ママ)などと語っていました。

 これらの空想が、“医師による”ケアだとすれば、すごく乱暴ではありませんか。医師ならば本来、流産しないためにはどうしたらよいか伝えるべきだと思いますが、「あなたに子どもが生まれないのは、選ばれなかったから」「流産してもしょうがない。だって子どもが試練を与えたのだから」なとど言われるとしたら、“医学”そのものを疑ってしまいそうです。「胎内記憶」の危うさは、科学的な根拠が皆無だと思われる点と、不妊や流産で悩む人が、いたずらにつらい気持ちを背負わされてしまう可能性があることだと考えます。

 昨年、心理カウンセラーの心屋仁之助氏が、虐待の連鎖に悩む相談者に「キミの娘さん、叩かれるために生まれたのよ」と言い放って騒動になりました。心屋氏もまた、池川医師の提唱する説を信じていることがブログなどからわかり、スピリチュアルや自己啓発界隈には、「胎内記憶」が蔓延していると言えるでしょう。「胎内記憶」は心屋氏のように、都合よく虐待を肯定するための説にさえもなりうるのです。

 「胎内記憶」を唱える界隈では、炎上をものともせず新刊を出し続けるのぶみさんが“広告塔”となり、池川医師の支持者を集める構図が出来上がっています。2人は頻繁にコラボ企画や公演を行っており、“協力関係”であることは明白。誰もが手に取れる「絵本コーナー」にのぶみさんの本が置かれることへの不安は、どうしても拭えません。

 妊娠・出産など、生命の神秘を感じさせるものとスピリチュアルは常に密接です。「お空の上からママを見てた」「お母さんを選んで生まれた」「パパとママを喜ばせるためにやって来た」――。まだ空想と現実の区別がつかない子どもたちの無邪気な言葉を利用して、思想を流布したい大人がいることは、紛れもない事実です。絵本という一見何の害もなく、手に取りやすいイラスト入りの書籍で“教祖様”たちの思想を子どもにまで広げ、“スピリチュアルビジネス”を拡大させようと画策しているなら……。書店や保育関係者にも、慎重なご判断をお願いしたいものです。

■黒猫ドラネコ
 1983年5月生まれ。性別、職業は非公表。大分県出身、学生時代から大阪で過ごし結婚を機に上京。穏やかで細かい性格。自分勝手な人が嫌い。趣味はスポーツ観戦、カフェ巡り、漫画・アニメ鑑賞など。甘党でお酒よりジュースを好む。ショートスリーパーにつき夜行性。

Twitter/ブログ「黒猫ドラネコのブログ(仮)

認知症の義母の介護中に、倒れた夫……ダブル介護を背負った嫁 【老いてゆく親と向き合う】

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”

――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考える当シリーズ……なのだが、ヨロヨロがなく、突然ドタリという人もいる。その代表的な疾患が脳卒中だ。昔なら「ピンピンコロリ」で、ある意味うらやましがられたものだ。先日、くも膜下出血で倒れ、間もなく亡くなったジャーニさんもその一人だろう。しかし今、脳卒中で「ピンピンコロリ」というのはもはや少数だ。ドタリと倒れてから長い介護生活がはじまるのだ。

「お父さんが死にそうだからすぐに来て」と言う義母

 藤本千恵子さん(仮名・58)は、この10年余り介護を続けている。始まりは、すぐ近所に住んでいた義母のヨシエさんからだった。たくさんの「おかしいな」が重なった。

 この頃、夫の公男さん(63)は仕事帰りにヨシエさんが一人で暮らす実家に一旦立ち寄り、戸締りをして自宅に帰る。朝も実家に寄ってから出勤するというのが日課だった。

「その日、夫が夜9時頃に実家に寄ると、お風呂が沸かしっぱなしで、室内に水蒸気が立ち込めていたそうです。義母は気づかずにぐっすり寝ていて、夫が実家に寄っていなかったら、間違いなく火事になっていたでしょう」

 ほかにも、お金の管理ができなくなって、藤本さんに「1万円貸して」とたびたび言ってきたり、家事が億劫になってきたヨシエさんのために弁当のデリバリーを注文したが「受け取っていない」と言ったりと、ただの物忘れとは思えない言動が増えていった。

「決定的だったのは、夜中に電話がかかってきて『お父さんが死にそうだからすぐ来て』と言うんです。『お父さんは、もうとっくに亡くなっていますよ』と言っても、『ベッドで死にそうになっている』と言い張るので、夫と駆け付けました。すると家中に灯りがついて、玄関で義母が『早く来て!』と呼んでいるんです。もう間違いなく認知症だと確信しました」

 病院に行きたくないと言っていたヨシエさんを、なんとか連れて行った。病院では、公男さんのことを「弟」と呼んでいたという。診断結果はアルツハイマー型認知症だった。その後室内で転倒、骨折し、要介護2に認定された。

 ヨシエさんの介護は、訪問介護とデイサービスを利用することで比較的スムーズに進んだ。週2~3回はデイサービスに行き、それ以外の日はヘルパーが入った。

「もともと義母は面倒見が良くて、さっぱりした性格。大正生まれの気丈な人でした。それが人の世話を受けるというのは、嫌だったんでしょう。最初はデイサービスにも行きたくないと言っていましたが、行ってみると結構気に入って、楽しく通うようになりました。私はパート勤めをしていたので、朝、義母の身支度を手伝い、デイサービスの準備をしてから出勤し、パートから帰ると、デイサービスから戻った義母の晩ご飯をつくる。義母が食べ終わって、片付けてから自宅に戻るという毎日でした」

 そうして3年ほどたった。ヨシエさんの足腰が弱くなってきたと感じていたある日、いつものように実家に寄って出勤しようとした公男さんが倒れた。脳出血だった。

「高血圧だったのに、何かと理由をつけて薬も飲んでいなかったので、いつか倒れるんじゃないかとヒヤヒヤしていました。運悪く、倒れたのは義母がデイサービスに行ったあと。義母がデイサービスから帰って、送ってきたスタッフに発見されるまで7時間くらい放置されることになりました。パート先に電話が来て、『義母に何かあったのかな』と思って出たら、義母ではなくて夫だったんです」

 意識がもうろうとしていた公男さんは、手術を受けた。

「手術後はずっと眠った状態だったので、10日ほどたって目を開けて言葉を発したときには、娘たちと思わず歓声を上げました」

 こうして、千恵子さんにとってはダブル介護が、公男さんにとっては過酷なリハビリがはじまったのだ。

――次回(7月28日更新)に続く

坂口鈴香(さかぐち・すずか)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 

【老いゆく親と向き合う】シリーズ

介護施設は虐待が心配――生活が破綻寸前でも母を手放せない娘
父は被害者なのに――老人ホーム、認知症の入居者とのトラブル
・父の遺産は1円ももらっていないのに――仲睦まじい姉妹の本音
明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心
認知症の母は壊れてなんかいない。本質があらわになっただけ

【介護をめぐる親子・家族模様】シリーズ

認知症の義母の介護中に、倒れた夫……ダブル介護を背負った嫁 【老いてゆく親と向き合う】

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”

――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考える当シリーズ……なのだが、ヨロヨロがなく、突然ドタリという人もいる。その代表的な疾患が脳卒中だ。昔なら「ピンピンコロリ」で、ある意味うらやましがられたものだ。先日、くも膜下出血で倒れ、間もなく亡くなったジャーニさんもその一人だろう。しかし今、脳卒中で「ピンピンコロリ」というのはもはや少数だ。ドタリと倒れてから長い介護生活がはじまるのだ。

「お父さんが死にそうだからすぐに来て」と言う義母

 藤本千恵子さん(仮名・58)は、この10年余り介護を続けている。始まりは、すぐ近所に住んでいた義母のヨシエさんからだった。たくさんの「おかしいな」が重なった。

 この頃、夫の公男さん(63)は仕事帰りにヨシエさんが一人で暮らす実家に一旦立ち寄り、戸締りをして自宅に帰る。朝も実家に寄ってから出勤するというのが日課だった。

「その日、夫が夜9時頃に実家に寄ると、お風呂が沸かしっぱなしで、室内に水蒸気が立ち込めていたそうです。義母は気づかずにぐっすり寝ていて、夫が実家に寄っていなかったら、間違いなく火事になっていたでしょう」

 ほかにも、お金の管理ができなくなって、藤本さんに「1万円貸して」とたびたび言ってきたり、家事が億劫になってきたヨシエさんのために弁当のデリバリーを注文したが「受け取っていない」と言ったりと、ただの物忘れとは思えない言動が増えていった。

「決定的だったのは、夜中に電話がかかってきて『お父さんが死にそうだからすぐ来て』と言うんです。『お父さんは、もうとっくに亡くなっていますよ』と言っても、『ベッドで死にそうになっている』と言い張るので、夫と駆け付けました。すると家中に灯りがついて、玄関で義母が『早く来て!』と呼んでいるんです。もう間違いなく認知症だと確信しました」

 病院に行きたくないと言っていたヨシエさんを、なんとか連れて行った。病院では、公男さんのことを「弟」と呼んでいたという。診断結果はアルツハイマー型認知症だった。その後室内で転倒、骨折し、要介護2に認定された。

 ヨシエさんの介護は、訪問介護とデイサービスを利用することで比較的スムーズに進んだ。週2~3回はデイサービスに行き、それ以外の日はヘルパーが入った。

「もともと義母は面倒見が良くて、さっぱりした性格。大正生まれの気丈な人でした。それが人の世話を受けるというのは、嫌だったんでしょう。最初はデイサービスにも行きたくないと言っていましたが、行ってみると結構気に入って、楽しく通うようになりました。私はパート勤めをしていたので、朝、義母の身支度を手伝い、デイサービスの準備をしてから出勤し、パートから帰ると、デイサービスから戻った義母の晩ご飯をつくる。義母が食べ終わって、片付けてから自宅に戻るという毎日でした」

 そうして3年ほどたった。ヨシエさんの足腰が弱くなってきたと感じていたある日、いつものように実家に寄って出勤しようとした公男さんが倒れた。脳出血だった。

「高血圧だったのに、何かと理由をつけて薬も飲んでいなかったので、いつか倒れるんじゃないかとヒヤヒヤしていました。運悪く、倒れたのは義母がデイサービスに行ったあと。義母がデイサービスから帰って、送ってきたスタッフに発見されるまで7時間くらい放置されることになりました。パート先に電話が来て、『義母に何かあったのかな』と思って出たら、義母ではなくて夫だったんです」

 意識がもうろうとしていた公男さんは、手術を受けた。

「手術後はずっと眠った状態だったので、10日ほどたって目を開けて言葉を発したときには、娘たちと思わず歓声を上げました」

 こうして、千恵子さんにとってはダブル介護が、公男さんにとっては過酷なリハビリがはじまったのだ。

――次回(7月28日更新)に続く

坂口鈴香(さかぐち・すずか)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 

【老いゆく親と向き合う】シリーズ

介護施設は虐待が心配――生活が破綻寸前でも母を手放せない娘
父は被害者なのに――老人ホーム、認知症の入居者とのトラブル
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明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心
認知症の母は壊れてなんかいない。本質があらわになっただけ

【介護をめぐる親子・家族模様】シリーズ

父が息子を「刺殺」という最悪の結末も――中学受験で「子どもの人生を乗っ取る」親の愚かさ

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 日本人は儒教の影響もあり、昔から「家」や「家族」というものを重要視する傾向にあると言われている。そのため、家族は連帯責任という有形無形の圧力をかけられてしまいがちだ。

 その良い例が、有名芸能人の子どもの不祥事である。芸能人自身が起こした不祥事ではなく、しかも成人している子どもの罪なのに、世間という名の不特定多数に向けて、謝罪しなければ許されない状況に追い込まれていく現状がある。こういう謝罪会見を、私たちはもう何度目にしたことだろう。有名芸能人ばかりではない。警察官に重傷を負わせて、拳銃を奪った犯人の親が責任を取って、自らの職を辞したのは記憶に新しい。

 これらの出来事は欧米をはじめとした「個人主義」が当たり前とされている国々では驚きをもって受け止められているという。「子どもの人生と親の人生はまったく別物」という社会的コンセンサスがある国々では、成人年齢を遥かに超えている人間に対しても、親が延々と責任を取らなければならないという社会的圧力は、奇異に感じるものなのだろう。

 そういう風潮があるせいで、私たちはともすると「子どもの人生」と「親の人生」を混同しがちになるという危険性を孕んでいるのではないだろうか。成人している子であっても、親の責任を問うてくる世の中である。ましてや、未成年である子を育てている親は、余程注意深く、自身の言動を顧みていなければ、子どもの人生を乗っ取ってしまう可能性が大なのだ。

 中学受験ではその「可能性」が高まるということを親は肝に銘じておかなければならない。先日も「自分の母校に子どもを行かせたい」という理由で始めた中学受験で、結果、息子を刺し殺してしまった父親の裁判が始まったと、ニュースが報じられた。この父親は、息子に勉強させようと日常的に暴力を振るっていたそうだが、彼もまた自分の人生と子どもの人生を混同し、支配しようとしていたように見える。

 子どもの未来を応援するための中学受験で、最悪の結果になってしまったケースがこれであるが、殺人まではいかないにしても、中学受験において、子どもの心を壊してしまう例は枚挙にいとまがない。たとえ親が学校の先生といった専門家でも、我が子の勉強の面倒はみられないという話もよく耳にする。なぜなら、我が子ゆえに冷静にはなれず、「キレ」てしまうからだそうだ。両親どちらであっても、言葉も含め暴力は言語道断。子どもに取り返しがつかないダメージを与えてしまうので、絶対にやめていただきたい。

 以前、小学校5年生の克己君(仮名)の母親・リエさん(仮名)から、「夫が息子の勉強をみるにあたって、殴る蹴るの暴力を振るっている。どうすればいいだろうか?」という相談が筆者の元に入った。 聞けば、夫の茂さん(仮名)は高学歴であり、一流企業で働いているものの、仕事的にはうまくいっていない状況だという。

「夫はまるで、仕事でうまくいかないというストレスを息子にぶつけているかのようです。息子がため息をついただけでもビンタをしていますし、教えたところを間違えようものなら、もう……」

 リエさんは、「夫にとっては、私も克己も“所有物”でしかない」と感じていたそうだ。解決策として、筆者はまず離婚か別居を勧めたが、経済力がないという理由で二の足を踏んでいるということだった。であれば、とりあえずの手段として、父能研(父親が受験指導するという意味のスラッグ)を止めて、指導力が高い個別塾に、克己君を“緊急避難”させるように伝えた。塾に行っている時間を引き延ばすことで、父親との物理的接触を減らそうとしたのだ。

 そして同時に、塾の老練な先生に、茂さんを指導してもらうようにした。茂さんのようなタイプは、今の中学受験の実態並びに傾向と対策を論理的に筋道立てて教えられると、意外にもプロの言いなりになる場合がある。

 茂さんは見事にそれにハマってくれたのだ。その塾の先生は「茂さんの気持ちは解る」と共感した上で「古来より、優れた子にするためには、他人を師と仰ぐ方が効果的」という話をし、「お子さんを私に預けなさい」「預けたからには口出し無用」と説得したようだ。

 一方で、筆者はリエさんに、もっと強くなることと精神的・経済的自立を助言した。そんなこんなで3カ月ほどがたった頃、これはたまたまなのだが、茂さんに辞令が下りて海外赴任をすることになったのだ。リエさんは頑なに同行を拒否。こうして、晴れて、リエさんは克己君と弟の3人暮らしになった。

 リエさんは今まで、茂さんからの暴力を結果的に止められなかった非を心から克己君に詫びたそうだ。そして、「克己、ママはこれから強くなって、どんなことがあっても克己を守る。約束する。でも、克己の人生は自分のものなのだから、自分の好きなように生きなさい」とも伝え、受験をやめるように提案したという。

 しかし、克己君の答えはこうだった。

「このままやめたら、アイツ(茂さん)に殴られ損だろう?」

 克己君はそれから、なぜかスイッチが入ったが如く勉強に取り組みだし、結果、見事にS学園の特待生として合格した。将来の夢は、克己君を救ってくれた塾の先生のようになることだそうだ。

 リエさんは、もともと持っていた資格を生かして、再就職。さらにステップアップするために勉強中である。現在も海外にいる茂さんとは将来的には離婚するという意志を固めている。

 中学受験は親主導の受験ではあるが、やるのは子どもだ。自分の人生の1ページをどう描くのかは子ども自身が決めていくということは、中学受験も変わらない。親の役割は「安心安全な環境」での「見守り」だけだ。これが途切れた時に、中学受験は「家庭崩壊」を簡単に招いてしまうものであることだけは、お伝えしておきたい。
(鳥居りんこ)

ラブホテル街で避妊具を万引きした40代女性……連れの男とのド修羅場に、Gメン震撼!

 こんにちは、保安員の澄江です。

 今年の梅雨は、長いですね。ここのところ駅から遠い現場が続いているので、雨の中を歩いて出勤しなければならないことが多く、毎日の通勤が憂鬱でなりません。本音を言えば転ばないためにも、防水性の高い靴や長靴を履いて出勤したいところですが、余計な足音がたってしまって仕事にならないですし、歩く時には1日に2万歩以上も歩く仕事なので、あきらめています。この季節は、靴の中に浸み込む雨水の不快さを堪えて、よちよちと歩くほかないのです。

 長年の経験から言えば、雨の日は晴れの日に比べると万引きする人が少なく、この時期の捕捉率は低くなります。雨天時は客足が悪くなるので、やる側の心理からすると、目立ってしまう気がするのでしょう。混み合う店内の人混みのなかで、どさくさに紛れて万引き行為に至る人の方が圧倒的に多いのです。それでも、まったくないというわけではないので、私たちが油断することはありません。今回は、大雨の日に捕らえた被疑者の中でも、特に印象深かった中年カップルの末路について、お話ししていきたいと思います。

 当日の現場は、東京の繁華街にあるホテル街、その脇に位置する中規模総合スーパーD。土地柄なのか、外国人やホームレス、水商売風のお客さんが目立ち、どことなく落ち着けない雰囲気のお店です。前の契約が終了して以降、しばらくご無沙汰していたお店ですが、ここのところ夜間の被害が頻発しているようで、この日は午後2時から10時までの勤務となりました。繁華街における夜の勤務は客質が悪く、いつもより強い緊張を強いられるので、はっきり言って苦手です。

(こんな時間からホテルに入るなんて、どんな関係なのかしら……)

 年齢様々な複数のカップルと行き交いながら、小雨降りしきるホテル街を抜けて現場に向かうと、小太りで妙に顔色の悪い店長が満面の笑みで出迎えてくれました。

「お、今日は忙しくなるかな。最近、ちょこちょこと怪しいのを見かけているので、よろしく頼みますね」

 控えめな言い回しですが、言われている側の私からすれば、こうした一言が大きなプレッシャーになります。

(たくさんいるから、捕まえろ。あんた、そのために来たんだろう?)

 万引き被害は賞与査定に影響するというので、このような本音が聞こえてくる気がしてしまうのです。

(早く捕まえて、楽になりたい)

 その一心で閑散とした店内の巡回を始めると、1時間ほど経過したところで、肩に提げたトートバッグに手を差し入れている中年女性を発見しました。一見して40代前半くらいに見えますが、胸やお尻の形が強調された黒のワンピースに赤いハイヒールという典型的とも言える水商売風の服装が、その年齢を不詳にさせます。髪の毛も茶色で、お顔を確認すれば、秘書を暴行して問題になった元女性議員さんに似ておられました。男好きのするいい女と言えば聞こえはいいでしょうが、正直なところ昔で言う“尻軽女”といった雰囲気で、私の苦手とするタイプです。

(何を出したのかしら……)

 遠巻きに行動を見守っていると、トートバッグから出しされた手は握られたままで、なにかを取り出したように見えます。不審な動向を見極めるべく追尾を続ければ、ドラッグコスメのコーナーでいくつかの化粧品と0.01ミリの避妊具、マッサージオイル、それに続けて一番高価なユンケルをカゴに入れた彼女は、この店一番の死角と言える狭い通路に向かっていきました。すると、カゴの中にある商品を左手で掴んだ彼女は、右手に握っていたらしい小型カッターの刃を使って、いくつかの商品に貼られている防犯シールを切り裂き、それらを次々とトートバッグに隠していきました。防犯シールは、小さく丸められて、最終的にはキャベツの外葉を捨てるポリバケツに投げ込まれています。

(風俗関係の人かしら……)

 そんなことを想像しながら目を離さないでいると、歯磨きセットとミントタブレット、2本の缶コーヒーを棚から手にした彼女は、そのままレジに入っていきました。チラチラと後方に視線を飛ばしているところを見れば、悪いことをしている認識はあるのでしょう。いくつかの商品を精算することで、お客さんとして帰るつもりのようですが、自分の心はごまかしきれないようです。レジ店員の視線を気にして、トートバッグの口を脇の下で固く抑えた彼女は支払いを済ませると、どこか憮然とした様子で屋上駐車場に向かうエレベーターに乗り込んでいきました。同乗者は誰もおらず、同時に乗り込めば瞬時に気付かれてしまう感じです。扉が閉まり、エレベーターが動き出すのを見届けた私は、老体に鞭を打って階段を駆け上がります。

 屋上駐車場のエレベーターホールに辿りつくと同時に、エレベーターから降りてくる彼女の姿が見えました。幸いなことに、降りしきる雨に躊躇しているのか、出口前で足を止めてくれています。その隙に、閉じかけた扉の奥を覗いて隠した商品が出されていないか確認すると、それらしきモノは一つも見当たりません。

(間違いない)

 声をかけることに決めて彼女の動向を見守ると、営業車に見えるワゴン車が、彼女の前に横付けされました。

「おまたせー」

 猫撫で声を出しながら、後部座席の扉を開けた女性が、トートバッグを車内に置いたところで声をかけます。

「お客さん、すみません。お店の者ですけど、何かお忘れじゃないでしょうか?」
「はあ? なんですか?」

 眉間にしわを寄せ、目を大きく見開いた彼女は、麻生太郎さんのように口元を歪めて私を睨みつけてきました。カッターのことが気になって手を確認しましたが、いまは持っていないので、その表情に怯むことなく要件を簡潔に伝えます。

「そのトートバッグに入れた商品、お金払ってないですよね。一緒に事務所まで来てもらえますか?」
「……ごめんなさい。でも、この人は関係ないので、わからないようにしてもらっていいですか?」
「お話することはないから大丈夫ですよ」

 動じなかったことが功を奏したのか、途端に表情を変えて犯行を認めた彼女は、後部座席にあるトートバッグを取り出しながら男性に言いました。

「忘れ物しちゃったみたいだから、もう少し待ってて……」

 余計なことは聞かれたくなかったのでしょう。男性の返事を聞くことなく、その場から逃れるように扉を閉めた彼女は、自ら進んでエレベーターホールに戻っていきました。事務所に向かう道中、いつのまにか泣いていた彼女が、私の袖口を掴んで言います。

「お金払ったら、警察には行かないですよね?」
「それは店長さんが決めることで、私にはわからないのよ」
「あの人に、待っててもらって、大丈夫でしょうか?」
「どちらにせよ、お迎えは必要になると思いますけどね。お天気も悪いし……」

 事務所に連れて行き身分を確認すると、彼女は46歳のパート従業員で、仕事帰りに同僚と立ち寄ったと話していました。今回の被害は、計7点、合計1万円ほど。所持金を聞けば、3万円ほど持っているというので、経済的な理由で盗んだわけではなさそうです。一連のことを店長に報告すると、よくやってくれたと破顔の笑みで褒められ、すぐに警察を呼ぶことになりました。彼女に聞かれないように注意しながら通報を済ませて、警察官が到着するまでの間は、他愛のない話をしてつなぎます。警察を呼んだと知られた途端に暴れ出して、逃走を図る被疑者もいるので、気を逸らすことが重要なのです。

「防犯シールをカッターで切るなんて、なかなかできないことだと思いますけど、いつもやってらっしゃるの?」
「本当にすみません。お金払うので、警察だけは……」

 そんなやりとりをしているうちに、彼女のことを心配した男性が事務所に現れました。間の悪いことに、その後方には3人の警察官が続いています。

「どうしてこうなるの……」

 一気に修羅場を迎えて激しく動揺したらしい彼女は、顔を覆ってうずくまると、大声で泣き始めました。警察官の質問にも答えられないほどの乱心ぶりで、ようやくに状況を理解したらしい男性は、彼女をかばうことなく呆然としています。

「あんたたちは、どんな関係よ? ご夫婦?」
「いえ、ネットで知り合って、さっき初めて会ったんです。本当の名前も知らないくらいの関係なんですよ」
「買春するつもりじゃないだろうな?」
「ち、違いますよ……」

 警察官の質問に飄々と答えた男性は、どこか蔑んだ目で彼女を見下ろすと、その場を離れていきました。どうやら二人は、出会い系サイトを介して知り合った関係らしく、これから近くのホテルで一緒に時間を過ごす予定だったようです。

「お願い、主人には言わないで!」

 ようやく泣き終えた彼女が、警察官に放った断末魔の叫びは、いまも耳に残っています。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

【監修・伊東ゆうからの告知】
「7月16日午後6時55分より、テレビ東京系列にて放送される『悪い奴を見逃すな!THE犯罪特捜ファイル【万引き& 盗聴現場を激撮SP】』に登場いたします。前回同様、自分の出番は、最初と最後の二部構成。タオル巻きおばあちゃんとの死闘は、 自分史上に残る闘いとなりました。ぜひ全編を通してご視聴いただき、世の中を憂いてくださいませ」

『悪い奴を見逃すな!THE犯罪特捜ファイル【万引き& 盗聴現場を激撮SP】』公式サイト

ラブホテル街で避妊具を万引きした40代女性……連れの男とのド修羅場に、Gメン震撼!

 こんにちは、保安員の澄江です。

 今年の梅雨は、長いですね。ここのところ駅から遠い現場が続いているので、雨の中を歩いて出勤しなければならないことが多く、毎日の通勤が憂鬱でなりません。本音を言えば転ばないためにも、防水性の高い靴や長靴を履いて出勤したいところですが、余計な足音がたってしまって仕事にならないですし、歩く時には1日に2万歩以上も歩く仕事なので、あきらめています。この季節は、靴の中に浸み込む雨水の不快さを堪えて、よちよちと歩くほかないのです。

 長年の経験から言えば、雨の日は晴れの日に比べると万引きする人が少なく、この時期の捕捉率は低くなります。雨天時は客足が悪くなるので、やる側の心理からすると、目立ってしまう気がするのでしょう。混み合う店内の人混みのなかで、どさくさに紛れて万引き行為に至る人の方が圧倒的に多いのです。それでも、まったくないというわけではないので、私たちが油断することはありません。今回は、大雨の日に捕らえた被疑者の中でも、特に印象深かった中年カップルの末路について、お話ししていきたいと思います。

 当日の現場は、東京の繁華街にあるホテル街、その脇に位置する中規模総合スーパーD。土地柄なのか、外国人やホームレス、水商売風のお客さんが目立ち、どことなく落ち着けない雰囲気のお店です。前の契約が終了して以降、しばらくご無沙汰していたお店ですが、ここのところ夜間の被害が頻発しているようで、この日は午後2時から10時までの勤務となりました。繁華街における夜の勤務は客質が悪く、いつもより強い緊張を強いられるので、はっきり言って苦手です。

(こんな時間からホテルに入るなんて、どんな関係なのかしら……)

 年齢様々な複数のカップルと行き交いながら、小雨降りしきるホテル街を抜けて現場に向かうと、小太りで妙に顔色の悪い店長が満面の笑みで出迎えてくれました。

「お、今日は忙しくなるかな。最近、ちょこちょこと怪しいのを見かけているので、よろしく頼みますね」

 控えめな言い回しですが、言われている側の私からすれば、こうした一言が大きなプレッシャーになります。

(たくさんいるから、捕まえろ。あんた、そのために来たんだろう?)

 万引き被害は賞与査定に影響するというので、このような本音が聞こえてくる気がしてしまうのです。

(早く捕まえて、楽になりたい)

 その一心で閑散とした店内の巡回を始めると、1時間ほど経過したところで、肩に提げたトートバッグに手を差し入れている中年女性を発見しました。一見して40代前半くらいに見えますが、胸やお尻の形が強調された黒のワンピースに赤いハイヒールという典型的とも言える水商売風の服装が、その年齢を不詳にさせます。髪の毛も茶色で、お顔を確認すれば、秘書を暴行して問題になった元女性議員さんに似ておられました。男好きのするいい女と言えば聞こえはいいでしょうが、正直なところ昔で言う“尻軽女”といった雰囲気で、私の苦手とするタイプです。

(何を出したのかしら……)

 遠巻きに行動を見守っていると、トートバッグから出しされた手は握られたままで、なにかを取り出したように見えます。不審な動向を見極めるべく追尾を続ければ、ドラッグコスメのコーナーでいくつかの化粧品と0.01ミリの避妊具、マッサージオイル、それに続けて一番高価なユンケルをカゴに入れた彼女は、この店一番の死角と言える狭い通路に向かっていきました。すると、カゴの中にある商品を左手で掴んだ彼女は、右手に握っていたらしい小型カッターの刃を使って、いくつかの商品に貼られている防犯シールを切り裂き、それらを次々とトートバッグに隠していきました。防犯シールは、小さく丸められて、最終的にはキャベツの外葉を捨てるポリバケツに投げ込まれています。

(風俗関係の人かしら……)

 そんなことを想像しながら目を離さないでいると、歯磨きセットとミントタブレット、2本の缶コーヒーを棚から手にした彼女は、そのままレジに入っていきました。チラチラと後方に視線を飛ばしているところを見れば、悪いことをしている認識はあるのでしょう。いくつかの商品を精算することで、お客さんとして帰るつもりのようですが、自分の心はごまかしきれないようです。レジ店員の視線を気にして、トートバッグの口を脇の下で固く抑えた彼女は支払いを済ませると、どこか憮然とした様子で屋上駐車場に向かうエレベーターに乗り込んでいきました。同乗者は誰もおらず、同時に乗り込めば瞬時に気付かれてしまう感じです。扉が閉まり、エレベーターが動き出すのを見届けた私は、老体に鞭を打って階段を駆け上がります。

 屋上駐車場のエレベーターホールに辿りつくと同時に、エレベーターから降りてくる彼女の姿が見えました。幸いなことに、降りしきる雨に躊躇しているのか、出口前で足を止めてくれています。その隙に、閉じかけた扉の奥を覗いて隠した商品が出されていないか確認すると、それらしきモノは一つも見当たりません。

(間違いない)

 声をかけることに決めて彼女の動向を見守ると、営業車に見えるワゴン車が、彼女の前に横付けされました。

「おまたせー」

 猫撫で声を出しながら、後部座席の扉を開けた女性が、トートバッグを車内に置いたところで声をかけます。

「お客さん、すみません。お店の者ですけど、何かお忘れじゃないでしょうか?」
「はあ? なんですか?」

 眉間にしわを寄せ、目を大きく見開いた彼女は、麻生太郎さんのように口元を歪めて私を睨みつけてきました。カッターのことが気になって手を確認しましたが、いまは持っていないので、その表情に怯むことなく要件を簡潔に伝えます。

「そのトートバッグに入れた商品、お金払ってないですよね。一緒に事務所まで来てもらえますか?」
「……ごめんなさい。でも、この人は関係ないので、わからないようにしてもらっていいですか?」
「お話することはないから大丈夫ですよ」

 動じなかったことが功を奏したのか、途端に表情を変えて犯行を認めた彼女は、後部座席にあるトートバッグを取り出しながら男性に言いました。

「忘れ物しちゃったみたいだから、もう少し待ってて……」

 余計なことは聞かれたくなかったのでしょう。男性の返事を聞くことなく、その場から逃れるように扉を閉めた彼女は、自ら進んでエレベーターホールに戻っていきました。事務所に向かう道中、いつのまにか泣いていた彼女が、私の袖口を掴んで言います。

「お金払ったら、警察には行かないですよね?」
「それは店長さんが決めることで、私にはわからないのよ」
「あの人に、待っててもらって、大丈夫でしょうか?」
「どちらにせよ、お迎えは必要になると思いますけどね。お天気も悪いし……」

 事務所に連れて行き身分を確認すると、彼女は46歳のパート従業員で、仕事帰りに同僚と立ち寄ったと話していました。今回の被害は、計7点、合計1万円ほど。所持金を聞けば、3万円ほど持っているというので、経済的な理由で盗んだわけではなさそうです。一連のことを店長に報告すると、よくやってくれたと破顔の笑みで褒められ、すぐに警察を呼ぶことになりました。彼女に聞かれないように注意しながら通報を済ませて、警察官が到着するまでの間は、他愛のない話をしてつなぎます。警察を呼んだと知られた途端に暴れ出して、逃走を図る被疑者もいるので、気を逸らすことが重要なのです。

「防犯シールをカッターで切るなんて、なかなかできないことだと思いますけど、いつもやってらっしゃるの?」
「本当にすみません。お金払うので、警察だけは……」

 そんなやりとりをしているうちに、彼女のことを心配した男性が事務所に現れました。間の悪いことに、その後方には3人の警察官が続いています。

「どうしてこうなるの……」

 一気に修羅場を迎えて激しく動揺したらしい彼女は、顔を覆ってうずくまると、大声で泣き始めました。警察官の質問にも答えられないほどの乱心ぶりで、ようやくに状況を理解したらしい男性は、彼女をかばうことなく呆然としています。

「あんたたちは、どんな関係よ? ご夫婦?」
「いえ、ネットで知り合って、さっき初めて会ったんです。本当の名前も知らないくらいの関係なんですよ」
「買春するつもりじゃないだろうな?」
「ち、違いますよ……」

 警察官の質問に飄々と答えた男性は、どこか蔑んだ目で彼女を見下ろすと、その場を離れていきました。どうやら二人は、出会い系サイトを介して知り合った関係らしく、これから近くのホテルで一緒に時間を過ごす予定だったようです。

「お願い、主人には言わないで!」

 ようやく泣き終えた彼女が、警察官に放った断末魔の叫びは、いまも耳に残っています。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

【監修・伊東ゆうからの告知】
「7月16日午後6時55分より、テレビ東京系列にて放送される『悪い奴を見逃すな!THE犯罪特捜ファイル【万引き& 盗聴現場を激撮SP】』に登場いたします。前回同様、自分の出番は、最初と最後の二部構成。タオル巻きおばあちゃんとの死闘は、 自分史上に残る闘いとなりました。ぜひ全編を通してご視聴いただき、世の中を憂いてくださいませ」

『悪い奴を見逃すな!THE犯罪特捜ファイル【万引き& 盗聴現場を激撮SP】』公式サイト

天皇に寵愛された、いわくつきの“養女”――66歳と18歳の知られざる関係【日本のアウト皇室史】

 皇室が特別な存在であることを日本中が改めて再認識する機会となった、平成から令和への改元。最近では、女性・女系天皇論争の皇位継承者問題や秋篠宮家の長女・眞子さまの婚約者・小室圭を巡る一連の騒動などが注目されているものの、実は、こんなのは大した騒動ではなかった……? 「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な天皇家のエピソードを教えてもらいます!

養女に手を出すタフなおじいちゃん・白河法皇

―――第1回では、平安時代の天皇家にさかのぼり、白河法皇(1053~1129)のエピソードをうかがいました。白河法皇にはイケメンかつ家柄が良い友人・藤原公実(ふじわらのきんざね)がおり、彼が亡くなった後、公実の娘の璋子を引き取ったんですよね。しかし、父娘という関係を超えた「あやしい」ことをしていた……と『今鏡』という歴史物語に書かれていたみたいですが、「あやしいこと」って一体なんでしょうか?

堀江宏樹(以下、堀江) 当時、璋子ちゃんの年齢は小学生くらいでしょうか。最高権力者・白河法皇のもとを、現在でいえば総理大臣にあたる関白が用事で訪れたのです。すると、御簾のむこうの白河法皇は、何を思ったか「璋子の足を自分のふところに差し込んでいた」というのです! 美少女を両腕で抱っこしているだけでは飽き足らず、彼女の足を自分の胸に密着させようとしていたのでしょう。季節についての詳しい記述はありませんが、寒い日だったのかも(笑)。璋子の足が冷たいということで、それを「私が温めてやらなきゃ」とでも思ったのでしょうか。そして、総理大臣にあたる関白に対し、白河法皇は「私は今、手が離せないんだ~」などと言ってのけたかもしれません。それにしても、わざわざ自分の胸をカイロがわりに、ポカポカしてやる必要もないわけですが(笑)。

 そして、文芸評論家・白洲正子が執筆した『西行』によれば璋子ちゃんが13歳の時、白河法皇はどうにも我慢ができなくなり、彼女と“肉体的”に結ばれ、彼女を自分の寵姫の一人にしてしまったようです……。

―――13歳って……。ロリコンというか、現在なら犯罪ですよ! そして二人の年齢差は48歳。璋子が13歳ということは、白河法皇は61歳。還暦過ぎて、夜の方もお元気だったということですね。天皇だった方がそんな、加藤茶より衝撃的な関係を持っていたとは、付いていけません!

堀江 権力者は、業が深いんですよ。ただ、この頃は初潮を迎えれば成人したという感覚があり結婚もしていたので、そう考えれば大丈夫なんです。それ以前の年齢の女子との関係だと、当時でも変態枠なんですが。しかし……養女と養父の関係という近親相姦チックなところに加え、璋子はかつて自分の愛した男の忘れ形見ですからねぇ。おまけに、というか白河法皇、現代の年齢感覚でいえば76歳くらいに相当するので、周囲から、相当「お元気」だと思われていたでしょう。確実に“変態枠”のお話だと思われます……。

―――資料によると、さらにびっくりな「事実」があるんですよね。璋子ちゃんに固執する一方、白河法皇は彼女の“幸せな結婚”ものぞんでいて、自分の孫で、後に鳥羽天皇となる皇子と璋子を結婚させています。しかし、璋子は結婚後も、夫と寝所をともにすることを拒み続けたという記録があるのですが、もしかして“おじいさん好き”だったとか?

堀江 そう! ていうか、璋子と白河法皇の関係は知れ渡っていて、白河法皇が正式に璋子と結婚させようとした相手から「ボクは彼女と結婚したくない」と断わられたりもしています。実際には、鴨川の水や僧兵以外にも、意のままにならないことがたくさんあったんですね(笑)。その一番が璋子だったのかも。

 さて、璋子は崇徳天皇“とも”仲良くなり、崇徳天皇となる皇子を産みます。ですが、その父親は鳥羽天皇ではなく、“白河法皇”であるという説があるのです。これは同時代から囁かれていました。昭和時代に角田文衛という大学者が、璋子の「生理周期」を彼女の侍女の書いた記録から計算したところ、オギノ式でいう危険日に白河法皇と璋子は会っていた……。しかもその頃は、夫・鳥羽天皇とはほとんど会ってもいなかったということもわかっています。この時、璋子18歳。白河法皇66歳。ティーンの美少女から恋い慕われて、れっきとした恋愛が出来る「魔性のおじいちゃん」って、現代でもなかなかいませんよねぇ。

―――芸能人でたとえると、66歳の男性は吉幾三や水谷豊。18歳の美少女は浜辺美波ちゃん。ちょっと、想像するのはやめておきます……。話は戻りますが、璋子の夫はどういう反応を?

堀江 2012年NHK大河ドラマ『平清盛』では、伊東四朗演じる“タフマン”白河法皇に、檀れい演じる璋子が抱かれるというシーンが描かれましたが、ネット上では「こんなこと、描いてはいけない!」と主に政治的意識の高い方々による怒りの声が聞こえたとか。 

 当然、璋子の夫・鳥羽天皇は反感を抱いたものの、史実でいうと“嫉妬”からくる具体的な言動や、白河法皇に当ったというような話はないようです……。鳥羽天皇も、一番エラい人が白河法皇であることがわかっており、彼に愛されなくてはなにも自分はできないと悟っていたからかも。

 あとね、璋子からすると、鳥羽からも白河からも愛されちゃう、モテる自分最高! みたいな感じで、名誉に思っていたのかもしれませんね。その後も彼女は自分自身に満足しており、気も強いんです。

―――今でも、彼氏や夫がハイスペックだと、自分も同じレベルになったかのように勘違いする女性がいますよね~。まぁ璋子の場合、もともと家柄も良いですが……。その後、璋子は年上に飽きてしまったのか、17歳下の出家前の西行法師、俗名・佐藤義清(さとうのりきよ)とデキちゃっていたという「伝説」があるとか。

堀江 彼らと同時代ではなく、また正式な歴史の記録ではないものの、軍記物語『源平盛衰記』には、璋子に本気になりかけた西行が「私とセックスしたくらいで、彼氏面するのはしつこい」なんて言われて……という一節も出てきます。この言葉にショックを受けた西行は、結婚もしていて家族もいたのですが、何もかもを捨てて出家してしまったとか。

ところで、48歳年上の相手とのガチな恋愛って想像できますか?

―――いやー、私は無理かな……。男性というか、おじいちゃんにしか思えない!

堀江 正直でよろしいです(笑)。ただ、ときどき芸能界でもすごく若い子と、有名なシニアの「年の差カップル」って出てきたりするじゃないですか。それこそ加藤茶とか、離婚しちゃったけど虎舞竜の高橋ジョージ、沢尻エリカの話もそうですね。結局、わざわざかなり年上の男性と付き合うメリットって、彼の持っている財力・権力が大きな媚薬、フェロモンとして働くからかもしれない。「男は顔、イケメン万歳」とか言ってる女性とは価値観がまったく異なるかもしれません(笑) 

 若くて賢い女の子ほど、人生経験豊富で優秀な男性に「プロデュースしてほしい!」という欲求があるような気がするんです。だから権力者との関係は、成功への近道だけでなく、権力者と関わることで成長する自分を実感できるものなんでしょうかねぇ。

―――男社会だと、若い女が評価を得る手っ取り早い方法は、名声あるオジサンにプロデュースしてもらうことですもんね。でも、それって結構「ダサい」ことだと最近は思われてます(笑)。しかし、璋子さんみたいな女は、皇室はもちろん現代でも見かけません。

堀江 一昔前までは、プロデューサーとデキちゃってる女性アーティスト、すごく多かったよね。最近はみんな地に足ついてるから。そこまでして、成り上がりたくないっていう生き方が主流になってるんでしょうねぇ。

 次回以降も、歴史の中の破天荒な天皇家の方々の姿を追いかけていきたいと思います!

堀江宏樹(ほりえ・ひろき)
1977年、大阪府生まれ。出身作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。2019年7月1日、新刊『愛と欲望の世界史』が発売。好評既刊に『本当は怖い世界史 戦慄篇』『本当は怖い日本史』(いずれも三笠書房・王様文庫)など。
Twitter/公式ブログ「橙通信

風俗大好き女芸人、北海道上陸! 松坂桃李似“なまら”イケメンのコスパ最強「アナル責め」

 「女にも性欲」がある――そんな当たり前のことが広く知られるようになり、女性向けセルフプレジャーグッズや、イケメンAV男優が出演するアダルト動画などが、身近な存在になりつつある中、それでも「女性向け風俗」は男性向け風俗に比べ、まだまだ未知の領域かも? そんな中、Twitterやラジオ、インターネット番組で、自らの女性向け風俗の体験談を赤裸々に語っているのがお笑いコンビ・ハナイチゴの関谷友美さん。女性向け風俗の世界を関谷さんに案内してもらいます!

カニとラベンダー畑より、やっぱり“すすきの”!  

 みなさんこんにちは。女性向け風俗が大好きなハナイチゴ・関谷です! 前回は、福岡で出会った鈴木宗男似の人情派セラピストについてお話しました。宗男とは、“ある意味”客とセラピストを飛び越えた関係になりましたが(詳しくは第3回をご覧ください!)、今回は札幌で出会った松坂桃李似セラピストの話です。

 ちょうど1年前、女性向け風俗店を求めて北海道に上陸しました。カニを食べてラベンダー畑を見に行こう~ぐらいの軽い気持ちでしたが、北海道には日本有数の歓楽街として有名な、すすきのがあるんですよ! 思い立ったら吉日。仲が良い札幌出身の芸人の実家に泊めてもらうことにしたのですが、当日トラブルが発生してしまい、急遽この芸人に紹介してもらった地元の友達宅(男性)に泊めてもらうことに……。そこでのワンチャンも期待したのですが、結局何も起きず……。おとなしく女性向け風俗店を利用しました!

 札幌の女性向け風俗店のホームページにはセラピストの写真が載っていませんでした。そして、金額は「通常コース」の相場が1万5,000~2万円の東京と比べ、半額近くの8,000円とリーズナブル! 「ソフトSM・90分コース」に至っては1万円ぽっきりですよ!? ただ、「ちょっと待てよ……」と、前に写真を見ずに格安店を利用した際に鈴木宗男似のセラピストが来たこともあるので不安がよぎります。しかし「ソフトSMコースは、どういうことをされるのだろう……?」と、好奇心が上回り試してみることにしました。

 ラブホテルは、芸人仲間から教えてもらった、休憩3時間で2,000円の「お○ぼけ○ーバー」という怪しい名前のホテルを利用。女性向け風俗店を利用していると、全国のラブホ情報にも詳しくなります(笑)。ビーバーのキャラクターに囲まれたホテルで、どんな人が来るのだろうとドキドキしていると、やって来たのはなんと松坂桃李似のスラっと背の高い男性! 見るからに若い感じで、年齢を聞くと24歳とのこと。指名をせずにガチで桃李くんに似ているイケメンが来るなんてびっくりです。ちなみに源氏名も、何ともイケメンらしい名前で、こちらの気分も盛り上がってきました!

 ただ、まだ接客に不慣れななのか、カウンセリング用紙を忘れてしまうなど、ちょっぴりドジな一面もありましたが、それもご愛嬌。「●●だべ」とか「お風呂に入ろうさー」みたいな、ときおり出る方言がかわいいんです。そんな愛くるしい桃李にニヤニヤしつつ、シャワーを浴びたら、早速「ソフトSMコース」に突入です!

 初体験の「ソフトSMコース」は、私はM役でお願いしました。お風呂に一緒に入ってイチャイチャしていると、桃李が「そろそろやってみよっか」とポツリ。ローションでたっぷりと濡れた指が私の“菊門”にニュルニュルっと入ってきたんです!! ちょっと挿れては戻しを繰り返して、人生初の「アナル責め」を経験しました。痛くはなかったものの、まだ“快感”の域には達せず……。お尻が真空パックされるような不思議な気分でした。

 その後はベッドに行き、性感マッサージがスタート! 「ソフトSMコース」ということもあり、ちょっとだけ手首を縛られて、目隠しをされるのですが、イケメンすぎる桃李の顔をどうしても拝みたかったので、こっそり目隠しをズラしちゃいました(笑)。桃李の「すっごい濡れてるね」や「エッチな体だね」「やらしいよ」という言葉責めに大興奮。通常コースだと「きれいだね」「かわいいよ」と甘~い感じで褒めてくれることが多いので、なんだかいつもより“エロい”気がしました。そして、視線をいっさい外さない桃李の目力に完全にやられちゃった私は、8割勃ちの桃李のメガホンを思わずパクリ。桃李も喜んでくれて、喉の奥まで咥える“イラマチオ”にも挑戦しちゃいました。本番行為は禁止なので、プレイはここまで。途中、電マを使おうとしたら電池が切れていたりとハプニングもありましたが、イケメンな上にプレイも濃厚で、満足でした。

 “初体験”尽くしの90分が終了し、帰り支度をしていると、私の旅行用の荷物を見た桃李は「重そうだね」と、ホテルから最寄りの駅にあるコインロッカーまで運んでくれたんです。そして最後に、「こんなに思い出に残る日はない」という素敵な言葉を残し去っていきました。

カウンセリング遵守でSMプレイも安心安全 

 女性向け風俗の不安点って「嫌なことをされたらどうしよう……」「怖い目に遭ったら……」ということではないでしょうか? しかし今回「ソフトSMコース」という少々ハードなプレイではあったものの、「痛いこと」などはまったくされず、最初に行うカウンセリング内容をキチンと守ってくれるので安心でした。風営法のマークがついている店であれば、セラピストの身分証明の確認も行われているということも覚えておいた方がいいかも。

コスパ最強の札幌の女性向け風俗店。これだから地方遠征は止められません!! みなさんにも安心安全の「女性向け風俗」を楽しんでほしいです!
 
■ハナイチゴ・関谷友美 
太田プロダクション所属の芸人。コンプライアンス小松﨑とハナイチゴというコンビで活躍中。
Twitter/公式ブログ「サブマリンに憧れて

吉本芸人の“スピリチュアル営業”はなぜ許される? 「宗教の広告塔になる」罪深さ

 誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

 令和初めての梅雨入りと時を同じくして、雨上がり決死隊・宮迫博之さん、ロンドンブーツ1号2号・田村亮さんら、吉本興業所属の芸人が、反社会的勢力が主催するイベントに出演していた「闇営業」で、世間を騒がせました。宮迫さんらは当初、反社会的勢力からの金銭授受を否定しましたが、後に一転して認めたことが、事態を悪化させた要因だと思います。このあたりの批判はすでに多数出ているので、私からは今回言及しません。

 「闇営業」というと、“裏社会”とのつながりをイメージしがちですが、その定義は「所属事務所を通さずに仕事をすること」だそうですね。これを聞いて、すぐに思い浮かべたことがあります。それは、吉本興業所属の芸人による「スピリチュアル営業」です。私が観察を続けている界隈のイベントに、これまで複数の吉本芸人が出ていました。あれって、事務所は把握していたのでしょうか……?

 前回も紹介した「スピリチュアリスト」のhappy(現在は「さちまる」「竹腰紗智」に改名。以下、元happy)は、定期的に「イメージが降りてきた」などと言いながら、自身の支持者を集めて大規模なイベントを開催しています。そのイベントに出演する“ゲスト”の手配に重要な役割を果たしていると思われるのが、吉本興業に「文化人」として所属している、旺季志ずかさんです。本業は脚本家で、公式プロフィールには「心屋リセット心理カウンセラー」「ヒプノセラピスト」の資格があると紹介されています(それって、吉本的には公にアピールするものなんだ!?)。

 そんな旺季さんは、2018年4月16日に更新された自身のブログで、アイドルグループ「吉本坂46」のオーディションにて、「隣に座ったことから始まった おそるべきシンクロニシティで」吉本所属のピン芸人・なだぎ武さんと飲み会を開いたと明かしています。その後なだぎさんは、昨年4月に開催された元happy主催のイベント「第2回シンデレラ・プロジェクト」で司会を担当。このイベントは、グランドプリンスホテル新高輪で盛大に行われ、元happyと仲良しのタレント・小林麻耶さんが奇抜なドレスを着て、嬉々とした表情でランウェイを歩いたことで話題になりました。舞台上で麻耶さんに抱きつかれるなだぎさんの写真も、ネットに転がっています。吉本所属のお笑いコンビ・ダイノジの2人も、会場で軽快なDJを披露し、参加者を盛り上げていました。

 ダイノジは昨年10月に長崎県壱岐島で行われた「縄文祭」にも招かれています。これも、壱岐市の観光大使を務める元happyの主催イベント。島におよそ2,000人を集め、深夜まで騒音を出し、会場となった公園の芝生を荒らしたことで住民から怒りを買い、市議会で問題視されたことは前回も述べました。さらに、今年5月に旺季さん主催で、元happyも登場した「ええじゃないか文化祭」は、吉本所属の若手コンビ・ラフレクランがMCを担当。同じく吉本所属・プラスマイナスも出演し、漫才を披露しました。旺季さんが書いたお芝居を、なだぎさんと元happyが熱演する、なんてコーナーもあったようです。

 なだぎさんは、闇営業騒動で所属事務所が揺れていた6月27日、自身のTwitterに「今月の給料を確認。。地獄過ぎて笑うことも泣くこともでけへん、、来月はとりあえずバナナで乗りきります。皆様、もし私を街で見かける事があれば、エサを与えて下さい。。」と、投稿していました。吉本興業は、報道でも取り沙汰されるほど“薄給”な芸能事務所だといいます。前述のイベントに参加した芸人さんたちが、報酬をもらっていたかどうかは確認のしようがありませんが、彼らを取り巻く人々が反社会的勢力の一員だったら、宮迫さんらのように明確に“クロ”として厳しく処分されたはずです。しかしスピ界隈は(裏に何がいるかは知りませんが)、仕事上の関わりとして、“クロ”だとまでは断定しにくいのでしょうね。芸人さんたちは、オファーを受けるのが「悪いこと」とは思わなかったのでしょう。では、何が問題なのか。考えてほしいのは、“この界隈がどのように商売をしているか”ということです。

■いつの間にか“広告塔”になっている罪深さ

 スピリチュアルな“教祖様”は、SNSを駆使し、「意識はいつも自分の内側」などとよくわからないことを言いつつ、主に若い女性の心を操り、「あなたも幸せになれる」「創造の目撃者に」と大げさに煽って熱狂させ、高額な物を売るビジネスを展開しています。元happyも、このお決まりの手法を利用し、若い女性から支持を得ました。「第2回シンデレラ・プロジェクト」は、素人のダンス大会や、素人のファッションショーがメイン。この舞台を見るのに、なんと最低でも3万円のチケット代が必要でした。「縄文祭」なんて、3万3,000円のチケット代が含まれた、8万8,000円のプランまで登場。島への旅費や宿代が含まれているのかと思いきや、もちろんそんな財布にも人にも優しい配慮など皆無で、例えば参加者は“寝袋で野宿”を勧められていたのです。一般的な感覚ならこれが「高い」と思えますが、宗教的なやり方で説得力を持たせ、信者に支払わせるのが“教祖様”。華々しくステージに上がった吉本芸人たちは、教祖様の信用を強固にし、このビジネスへの違和感を薄れさせる役割を担ってしまったと、私は考えます。

 元happyらが、根拠のないものを「布教している」のは、調べればすぐにわかるはずです。素性を隠す反社会的勢力とは違い、彼女たちは自ら発信しています。テレビ業界では、新興宗教やオカルトの類いの取り扱いについて、コンプライアンス意識が強くなってきているはずです。「精神世界」だの「宇宙からのエネルギー」だのと言って客寄せをする“宗教的なもの”に、お墨付きを与えるような“自覚なき”加担も、芸能人・著名人には慎んでほしいのです。「有名な人を呼んでハクをつけたい」「人脈をアピールしたい」という動機は、怪しいスピ集団も、反社会的勢力も変わりません。軽はずみにオファーを受けることによって、いつの間にかスピリチュアルの “広告塔”になってしまう。この罪深さは、著名人個々人や、芸能事務所がきちんと理解するべきではないでしょうか。

 闇営業問題をクリアにするには、どのような依頼主のイベントに所属タレントが出演しようとしているのか、事務所がしっかり見極めなければいけませんよね。それに加え、「反社会的勢力じゃないからセーフ」なのかどうかも、ぜひ考えていただきたいと思います。怪しいスピリチュアルに依存し、一般社会と乖離することを誇りながら、大金をつぎ込む人たちがいます。「芸人さんがイベントに出ていたから」「タレントさんが信じている思想だから」と新たな世界を知り、一歩踏み出してしまう人がいるかもしれない。そうして信者の人口が拡大する可能性は、ゼロではありません。社会問題として認識された時に、「素性がわからなかった」では、闇営業騒動から何も学んでいないことになります。今のうちに対策を練っておくことを、強くおすすめします。

■黒猫ドラネコ
 1983年5月生まれ。性別、職業は非公表。大分県出身、学生時代から大阪で過ごし結婚を機に上京。穏やかで細かい性格。自分勝手な人が嫌い。趣味はスポーツ観戦、カフェ巡り、漫画・アニメ鑑賞など。甘党でお酒よりジュースを好む。ショートスリーパーにつき夜行性。

保育園の参観日は「サングラスとマスク」必須!? ママ友LINEを盛り上げる「変装参観」

今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。

 子どもを幼稚園や保育園に通わせるようになると、保護者参加の行事が多いことに驚く新米ママは少なくないという。数ある行事の中でも、園の特色が現れるのが保育参観だろうか。入園や進級から3カ月が過ぎた6~7月に開催されるケースが多く、0~5歳児まで年齢を問わず行われるという。そんな保育参観の“ルール”をめぐって、ママ友のグループチャットが盛り上がるようだ。

 2歳になる男児を大型の保育園に転園させたばかりの真奈美さん(仮名)は、新しい園での保育参観に戸惑いを感じたそうだ。

「3月までは認可家庭的保育事業という、保育者の自宅のような場所に息子を通わせていました。5名程度の園児しか在園していないアットホームな保育施設だったので、行事は少なかったですね。その後、空きが出たので大型保育園に4月から入園でき、いろいろな行事があることに驚いています。なかでもびっくりしたのが保育参観。前の園では、保育参観自体なかったのですが、今の園では、1週間もあり、参加内容が日替わりなんです」

 保育参観というのは、子どもの年齢や園によっても内容が違う。真奈美さんの息子が通う園では、園児たちの“普段の姿”を保護者に見てもらうことを重視しているという。「そのため、『子どもたちにばれないように、変装してきてください』とのことで、これには驚きました(笑)。ママ友とのグループチャットでも、『どれくらい変装すればいいのか?』という話題で大盛り上がり。私は、給食の時間を見学し、当日は、保育園から支給されたエプロンを身に着け、三角巾で頭を覆って、目元には持参したサングラス、口元はマスクという扮装で臨みました」と、真奈美さんはやや興奮気味の口調で語る。

 一見すると、子どもたちにばれてしまいそうな変装だが、「まだ1~2歳くらいの子どもにはばれないみたいですね」という。

「私の場合は、先生と一緒に食事の配膳までしました。息子がきちんと上手に食べている姿を見られて、うれしかったです。公共の公園での保育参観に参加したママは、髪形や顔を隠すような服装をして、遠巻きから子どもたちが遊んでいる様子を見ていたようです。事情を知らない人が見たら、変質者みたいですよね……(笑)」

 「風変わり」とも言えるこうした“変装参観”だが、保育園の2歳児クラスまでの保育参観ではよく見られる光景らしい。真奈美さんは「ママ友とのチャットで、『どこまで顔を隠す?』『どんな変装にする?』と打ち合わせするのは面白かったですよ。一緒の日に参加したママとは、まるで共犯者みたいで、ちょっと楽しかったです」と振り返る。

 介護施設の栄養士として働きながら、4歳になる男児を育児中のシングルマザー・紀子さん(仮名)は、保育参観に参加したいのに、できないジレンマを感じているという。保育参観は、子どもが緊張しないように、一つの内容に2~4人程度の保護者しか参加ができない場合が多い。さらにこの時期天候に左右されない屋内の行事に希望が集中しがちだという。なかには、仲の良いママ友と同日になるよう調整しているママもいるため、保育参観の希望日は重なりやすいと言える。また、希望が集中した日は園側により参加者が振り分けられるため、融通が利きづらいのだそうだ。

「私はシフト上、平日がほぼ埋まってしまっているんです。希望日に参加者が集中してムリだった場合は、保育参観は見送っています。そのため、LINEのチャットで『今日は年中さんの空手の授業を見てきました! 』とか『合同誕生会の様子を送ります』と動画が送られてくると、チャット内で『ありがとうございます』とレスをしています。普段は見られない子どもの姿を見ることができてうれしいのですが、内心、『この日しか休めないから、自分の方を優先してもらいたいのに……』と思ったりしています」

 ママ友とのグループチャットは、保育参観の情報共有に持ってこいのアイテムだが、一方で「逆に不満を抱くきっかけになることもあるんですよね」と紀子さんは言う。

 保育園だけではなく、幼稚園でも保育参観の行事は行われている。幼稚園の場合は、保育園のように低年齢の幼児がいないため、前述したような“変装参観”はほとんどなく、親子で体験できる造形教室や、体操、調理体験など内容は多岐に渡っているという。今年の4月から3歳になる男児を幼稚園に通わせている愛子さん(仮名)は、「どんな服装で行けばよいのか迷った」と語る。

 愛子さんの息子が通っている幼稚園は、地元でも歴史が長く園児数も多い人気園。子どもの送迎時、ちゃんとメイクをしているママや、キレイめのカジュアルファッションのママが多いため、参観日には服装に気合が入るという。

「保育参観の日は、一斉にママたちが集まるので、服装などに気を使います。インスタグラムで『#参観コーデ』を検索してチェックしたり、前日、親しいママ友に『明日のコーデはどうする?』とLINEで聞いたり……自分だけ浮いた格好になるのは避けたいですからね」

 普段子どもが、どのように園生活を過ごしているのかを見ることができる保育参観だが、ママたちにとっては意外と気を使う行事のようだ。LINEのグループチャットでの念入りな情報交換はその表れなのかもしれない。
(池守りぜね)