日本で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうようになって早1年。未曾有の事態に直面した国民は、これまで以上に政治に関心を持たざるを得なくなったが、そんな中、爆発的に知名度を上げた政治家といえば、大阪府知事・吉村洋文氏ではないだろうか。
弁護士出身で、かつて関西の大スター、故・やしきたかじんさんの顧問弁護士を務めた経験もある吉村府知事。昨年5月、緊急事態宣言が延長された際、規制の早期緩和のため、感染拡大・収束状況を判断する独自基準「大阪モデル」を打ち出すと、メディアはこれをこぞって称賛。45歳という若さ、韓流スター・ヒョンビンにそっくりといわれる甘いルックスも注目を浴び、「新しいリーダー」として大々的に持ち上げられたのだった。
しかし、そんな吉村府知事も、決して「完全無欠のリーダー」ではなかった。同8月に突如会見を開き、新型コロナ対策にポビドンヨード入りうがい薬を推奨、「コロナに打ち勝てるのではないか」とぶち上げたところ、専門家を中心に「科学的根拠が不足」と批判され、一方でイソジンの買い占め騒動にも発展。こうした事態を前にしても、「僕にとってそれほど想定外のことは起こってない」と批判をあしらったことも物議を醸した。
もちろん、大阪府民を中心に、熱心な支持者も大勢いる吉村府知事だが、その後も批判を受け入れないような姿勢が露呈するたびに、ネットは炎上。「新しいリーダー」ともてはやされる人物が、謝れないというのはいかがなものか? と悶々とする人が続出している。
そこでサイゾーウーマンは、かねてからメディアやSNSで、吉村府知事に対する厳しい意見を発信している元衆議院議員で現在はタレントの上西小百合氏のもとを緊急訪問。上西氏に「謝れないリーダー」吉村府知事をズバリ斬っていただいた。
吉村府知事は「総理大臣になりたい」くらいの夢は見ている
——上西さんは吉村府知事をどのような人物であると捉えていますか?
上西小百合氏(以下、上西) マスコミが記事にしてくれるような“聞こえがいいキャッチーな話”ばかりをする人でしょうか。イソジンもそうですが、言うことが本当だったら、昨年9月には大阪で新型コロナのワクチンができるはずだったんですよ(※)! なぜ吉村さんが派手なことばかり言うのかというと、知名度を維持して国会議員に戻りたいからだと思います。
日本維新の会の地方議員って、なぜか国会議員に対する憧れが強くて、妬みがものすごいんです。彼は地方議員から国会議員になったのもつかの間、大阪市長選挙に立候補するため、辞めざるを得なかったという経緯があるため、もう一度という気持ちがあるのでしょう。そしてゆくゆくは若いリーダー、総理大臣になりたい……正直、無理な話ですが、それくらいの夢は見ていると思いますよ。
(※)昨年4月、大阪府は、新型コロナ感染症における予防ワクチン・治療薬などの研究開発のため、大学や医療機関、大阪市などと連携・協定を締結。会見で吉村府知事は「ワクチンは9月から実用化に向かう。年内には10万〜20万単位で投与させる」と説明していた。
——野心が人一倍強いという人物像が浮かび上がってきますね。
上西 野心家ですよね。つてを頼って、弁護士から政治家になったわけですから。また、党利党略としか思えないタイミングで、コロナ禍にもかかわらず、大阪都構想の住民投票の説明会を行ったり、「Go To Eat」に合わせ、ミナミの飲食店を利用するとさらにポイントを還元するキャンペーンを実施し、人を集め倒したり……「コロナって案外、大丈夫なんだな」という風潮をつくって、吉村府知事は府民の命をどう考えているの!? と。結果的に、大阪府は死者数や重症者用の病床使用率が全国的に突出してしまいました。
——上西さんは以前から、吉村さんの「謝れない」一面を指摘してきました。
上西 不祥事を起こした時の政治家の対応って、それぞれのキャラクターによって異なるんです。王道は「雲隠れ」かもしれませんが、例えば、元大阪府知事の橋下徹さんの場合は、「オカンに怒られたから許して!」とかわい子ぶる。一方、先日、緊急事態宣言下でのふぐ会食が報じられた自民党の石破茂元幹事長は、率直に「本当にごめんなさい!」と謝っていました。そうしたほうが「世間のウケがいい」と思っているのでしょう。
そんな中、吉村さんは、間違ったことを認めない。「誤解が生じる言い方をしてしまったが、真意はこうです」といった、物事を別の方向から見るような弁護士っぽい言い訳の仕方をしていると感じます。またイソジンの件でバッシングされたとき、“こうなることは最初からわかってた”と言っていましたが、自分をカッコ良く見せたい子どもみたいで、思わず「わかってたらいいんかい!」とツッコミたくなりますよね。
——その後、吉村府知事が、毎日放送のトイレにイソジンが設置されているのを見つけ、「MBS(毎日放送)!僕のうがい薬会見を散々批判してたけど、自社のトイレにポビドンヨードのうがい薬を置いてるやんか」とツイートしたことも話題になりました。
上西 ねちっこいですよねぇ。別にコロナ禍じゃなくたって、イソジンを置いてる会社はありますよ。それにMBSって、そこまで維新に批判的な報道をしていないんですが……何か一つでも嫌なことを言われると許せないのかな? と思ってしまいます。コロナ禍以前は、今ほどスポットが当たっていなかったというか、徹底的に批判されることもなかったので、単純にこの状況に慣れておらず、こうした反応になってしまうのかもしれませんが。
——吉村府知事が1月、コロナ新規感染者が急増した状況を「一挙にガラスの天井が突き抜けた」と述べて、炎上した件はいかがでしょう。「ガラスの天井」はそもそも「女性のキャリアアップを阻む目に見えない障壁」を意味する言葉なので、誤用としか思えないのですが、それを指摘されると、謝るどころか、Twitterで「蓮舫議員や太田議員が、吉村が『ガラスの天井』を間違って使ってる!と一生懸命だが、僕が役所内の『ガラスの天井』を打ち破る為に何をしてるのかも知らないんだろうな。その意味で使ってない(後略)」と反論しました。
上西 こういう使い方をしている時点で、「ガラスの天井」の意味はわかっていないですよね。それにツイートの中で、自民党の太田房江議員と立憲民主党の蓮舫議員の名前を出してるのが気になります。というのも維新は、元府知事である太田さんについて、「あの人のせいで大阪はひどい目に遭った」とボロカス言うことで、党の宣伝をしてきたんですよ。だから維新支持者は、太田さんを嫌う傾向がある。また保守派である維新支持者は、革新派である蓮舫さんのことも敵と見なします。吉村さんは、自分の味方が「そうだそうだ!」と盛り上がってくれることを期待して、この二人の名前を出したんだろうなぁと思ってしまいます。
——大阪府民は、「謝れないリーダー」をどう思っているのでしょう。
上西 「折れない」「強い」リーダーが好きというのは、府民性としてあると思います。ただ、謝る人が嫌いかというと、そうではなくて、先ほども触れたように、橋下さんは「オカンに叱られちゃったよ」という謝罪で、府民から「トオルちゃんかわいいわね」なんて親しまれていたんですよ。ただ、吉村府知事が橋下さんと同じことをやると、キャラにそぐわないですし、頼りないというか、アホっぽく見えてしまうかもしれませんね。
——吉村府知事が「謝れない」というのは、府民に好かれるための戦略でもあるのでしょうか。
上西 いや、単純に性格だと思いますよ(笑)。吉村府知事というか、維新が好かれているのって、府民のプライドをくすぐるのが上手だから。大阪都構想もその一つでしょう。住民投票で否決されましたが、維新は府民を「東京と肩を並べてやっていける」「もしや東京に勝てるんじゃないか?」とワクワクさせたんです。それに、維新って大阪でしか根付かなかった、いわば名物。府民は「大阪だけのもの」を守らなければという気持ちも強いんです。
——「謝れないリーダー」の危険なところはどこにあるのでしょうか?
上西 間違っていても、そのまま進んでいってしまうところです。例えば大阪府民は、「9月には実用化」と言っていた新型コロナのワクチンを信じて待っていたわけですよね。マスコミもワクチンの件について、その後どうなったのかをしっかり追っていないんですが、吉村府知事は「すみません、できませんでした」と言うべきだったんじゃないかなと思ってしまいます。
でも、同時に「謝ったら全て許してもらえる」と思っている政治家も怖い。本来、謝罪とは、その後にどう改善されるかが大事であって、解決策や改善策がセットじゃないといけません。というか、「謝るようなことをしてはいけない」のが大事な点ではないでしょうか。吉村府知事は、謝らなければいけないポイントが多すぎる。
——謝罪の有無以前に、“そもそも”そうあるべきですよね。
上西 政治家だったら、石橋を叩いてばかりで、はっきりした政策を打ち出せないというのも問題ですが、ある程度は「人のお手本になって生きるんだ」と自分に言い聞かせ、慎重に行動をしなくちゃいけないと思います。吉村府知事はイソジン騒動にせよ、どうしてあそこまで突っ走ってしまうのか。結局のところ、府民に甘えてるんじゃないんですかね。
上西小百合(うえにし・さゆり)
1983年、大阪府生まれ。会社員を経て、第46回衆議院議員選挙に大阪7区(吹田市・摂津市)より立候補し、初当選を果たす。第47回衆議院議員選挙も同区にて2期目の当選。現在はテレビ・ラジオを中心にコメンテーター・タレントとして活躍中。