お正月の楽しみの一つである「福袋」。毎年、百貨店をはじめ、ファッションビル、大型スーパー、各ブランドなどが、さまざまな福袋を販売しており、そこに「お得にいいものをゲットしたい」という人々が大挙して押し寄せるという光景は、もはや“新年の風物詩”と言えるのではないだろうか。
しかし、福袋というのは数に限りがあるものだけに、初心者の中には「何を狙えばいいのか」すらわからないという人も少なくないはず。そこで今回、ホームページ「福袋研究会」を運営しているライターの恩田ひさとし氏に取材を行い、これぞ“花形”と言える百貨店の福袋に関して、「ぜひ狙ってほしい」というオススメの逸品や、購入後にガッカリしないために注意すべき点をお聞きした。
福袋に情熱をかける百貨店は?
長年、福袋の取材を続けているという恩田氏だが、ここ3~4年、百貨店は「二極化が進んでいる」と指摘する。「福袋に情熱をかけている百貨店」と「(力は入れているものの)そこまでの情熱はない百貨店」に分かれているそうだ。
「百貨店は、事前に福袋お披露目会を行うのですが、私がそこに足を運ぶようになった10年前くらいは、11月下旬に開催されていました。しかし、最近では10月の下旬になり、時期がどんどん早まっているんです。これにより、百貨店の各部門のバイヤーさんは、『福袋の準備が間に合わない』という問題に直面するようになり、そこで、『うちはそこまでしなくてもいいか……』という百貨店が出てきた流れ。いま、福袋を百貨店の“目玉”として、全社を挙げて取り組んでいるのは、『松屋銀座』『西武池袋本店』『東武百貨店 池袋本店』の3つと言えます」
では、恩田氏が「ぜひ狙ってほしい」とオススメする2020年新春福袋は何なのだろう。今回、3つの福袋をピックアップしてもらった。
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◎松屋銀座「GINZAのOL福袋 冬のおでかけ編」(税込1万1,000円)
※販売個数:9号、11号 各100点(計200点)限り。コート1点、ニット2点、ワンピース1点、スカート1点の計5点入り
松屋銀座の「GINZAのOL福袋」は、職場に着て行ける実用性の高いアイテムが揃い、働く女性に人気の福袋。もともと2005年発売の「コンセプト福袋」で、通常こうしたコンセプトものは1年限りなのだが、評判が良かったため継続販売されているという。恩田氏はこれを「究極の福袋」「福袋の最終形態」と大絶賛する。
「15年近く販売されているということは、その間、担当者が何回か変わっていると思うのですが、前任者より売り上げを落として評価を下げたくないので、担当者の気合の入り方が違うんです。また、福袋は個数を揃えるのが大変で、どこの百貨店も目玉のものは販売数が少ない中、各100点、計200点用意している点もすごい。企業努力と担当者の『前任者に負けられない』という意地を私は感じますね」
かつて、プランタン銀座のお披露目会に行った際、販売個数が「84個」という福袋があったと恩田氏。この「84」には何の意味もなく、現時点で調達できるギリギリがその数だったそうで、「それだけ、数を確保するのはシビアなこと」という。なお、同社社長から「中途半端だから100個用意して」と指示が下ったという後日談もあり、担当者の苦労は計り知れない。
「『GINZAのOL福袋』は、もはや松屋銀座の顔。私に言わせると、これがコケたら、松屋がコケてしまうと言っても過言ではない福袋なんです。それだけに、満足度の高い福袋であると言えるでしょう」
◎西武池袋本店「ヴィノスやまざき ワイン福袋(4本入)」(税込3,300円、5,500円、1万1,000円)
※販売個数:3,300円=300個、5,500円=200個、1万1,000円=50個
西武池袋本店の酒売場がおすすめする蔵直ワイン®の専門店「ヴィノスやまざき」。担当者が生産者の元に足を運び、直接交渉して、船積みから海上輸送まで手がけるという“蔵直”にこだわっているという。そのため、普通は入荷できないような小さなワイナリーの商品も店頭に並ぶほか、輸送管理も徹底されていて商品が高品質、輸送コストが抑えられるため価格も安く提供できているそうだ。
「そんなこだわりの強い『ヴィノスやまざき』の福袋は、総販売個数『550個』という莫大な数。かさばるワインをそれだけの数用意するのは、ずばり“売れるから”なんですね。すでにワインに精通している人は、ネットで自分好みのワインを購入すればいいと思いますが、初心者の方は、百貨店のお得な福袋を買ってみるのもいいのでは。店員さんがいろいろと教えてくれますし、百貨店なので当然、管理状態もよく、配送もしてくれますから」
◎東武百貨店 池袋本店「チーズ王国 招健招福 チーズ福袋」(税込4,800円、6,800円、1万800円)、「パリ店厳選の選りすぐり福袋」(税込8,800円)
※販売個数:(招健招福 チーズ福袋)4,800円=90個、6,800円=80個、1万800円=70個/(パリ店厳選の選りすぐり福袋)=100個
世界中のチーズを集めているという東武百貨店 池袋本店の「チーズ王国」は、専門店ならではのこだわりの逸品に出会える店だというが、恩田氏は特に「お得感」に着目しているそうだ。
「例えば、1万800円の福袋は、1万7,000円相当、8,800円の福袋は1万2,000円相当の商品が入っているそうで、通常より3~4割近く安くチーズを購入することができます。輸入状況によって内容が変わるため、ギリギリまでどういった商品が入るのかはわかりませんが、ぜひオススメしたい福袋ですね。実は東武は、食品の福袋に力を入れていることで有名。近年、百貨店が、高額の『体験型福袋』を発売して話題を集めるようになっている中、東武はそういった派手な福袋同様、“自分へのご褒美”的な、誰もが買える価格帯の食品福袋に注力し始めました。食品福袋は、マスコミに取り上げられにくい面があるのですが、それでも全社を挙げて食品を推してきた。チーズ王国に限らず、東武の食品福袋はどれもオススメできますね」
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今回、オススメ福袋を選ぶにあたり、「個数が多い」という点を重視したと恩田氏。数を用意するのは、それだけ百貨店が「売れる」と自信を持っていて、いい商品が揃っているからだという。
「各百貨店が、総計何個の福袋を用意しているのかを、売り場面積と比較しながらチェックするといいと思います。一方で、個数に着目するのは、やっぱり、『買えなければ意味がないから』。例えば限定10個など、数がかなり限られた福袋は、赤字覚悟ゆえに確かにいい商品が入っているのですが、手に入れるためには始発で訪れる覚悟でなくてはいけません。だったら、少なくとも100個は用意されている福袋を狙った方がよいのではないでしょうか」
また「私に言わせると」の位置ですが、こちらに入れた方がすわりが良いかなと感じました
では一方で、買わない方がいい福袋を見極める基準はあるのだろうか。恩田氏いわく、昔の福袋は、「売れ残りの商品を何でもかんでも詰めているように思われ、本当に、開けてみないと何が入っているかわからなかったんです。SサイズのスカートとLサイズのコートが一緒に入っているなんてこともありました」というが、恩田氏が高校生だった1982年、西武池袋本店で購入した1万円の「紳士服福袋」は、すでに内容的に満足できるものだったそうだ。
「ちょうど、西武ライオンズが初の日本一に輝いた年で、福袋にはニコルのダブルのスーツが入っていました。一世風靡セピアが『前略、道の上より』で着ていたみたいなスーツで、高校生にはミスマッチだったため、誰かに譲ってしまいましたが、当時『いまの福袋ってこんなにいいものが入ってるんだ!』と驚いた記憶があります。最近は、SNS時代ですから、ヘタな福袋を販売すると、写真付きで一気に拡散され、百貨店のイメージダウンにつながってしまいますし、『あからさまなハズレ福袋』は“ない”と言えるでしょう。そう考えると、買わない方がいい福袋は、『自分のこだわりが強い分野のもの』。先ほど紹介した『GINZAのOL福袋』も、品物自体はいいものの、ファッションにこだわりが強い人だと、『好みじゃないから着ない』となってしまいます」
また、恩田氏は、福袋戦線で肝に銘じた方がいいポイントについても言及する。
「個数の少ない限定品にこだわって行列に並ぶと、時間を取られて、ほかの目玉福袋を買いそびれてしまうことがあります。そういった福袋の行列は、殺伐とした空気が漂っていて、以前取材した際、『長時間並んでいたのに、整理券をもらえなかった』というお客さんに、つかみかかられそうになったことも(笑)。なので、『楽しくお買い物したい』という人に、少ない個数の限定品を狙うことはオススメできませんね。特に百貨店は、従業員がバックヤードにさがってお会計を行うケースが珍しくなく、時間を取られてしまう面があります。少数の限定品を狙うと、そういったロスにも足を引っ張られるので、最初から個数が多く、買いやすい福袋を狙う方がいいのではないかと思います」
さらに以前は、「食品福袋は数が多いから、先に洋服の福袋を購入した方がいい」という鉄則があったものの、「最近、食品福袋のお得度が高いと知れ渡ってしまったゆえに、その作戦だと、目玉の食品福袋を買いそびれる危険も」と恩田氏。
「近年、福袋販売時の食品売り場は、人でごった返すようになっています。テレビ取材のカメラが入るのもはばかられるくらいの混雑ぶりです。食品福袋は、洋服の福袋に比べて人気がないという認識もあらためてほしいですね」
恩田氏のアドバイスを参考に、ぜひ満足できる福袋をゲットしてほしいものだ。
恩田ひさとし(おんだ・ひさとし)
フリーライター。ホームページ「福袋研究会」管理人。上智大学外国語学部卒業。予備校講師、出版社の編集者を経て執筆業に。教育、スポーツ、メディア、ITなど、幅広い分野で執筆活動を展開中。
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