“推し”のために何度も海外遠征をしている、K-POPファンとサッカーファンを招き行われた“オタク談義”。前編では、オタ活ならではの旅トラブルや、「わざわざ行く」からこそ得られる経験について語っていただいた。後編では、さらに具体的なオタ活事情、日本と海外の違いが話題となった。
【出席者】
カナコさん……アラフォー、既婚。K-POPアイドルにハマり、韓国に数えきれないほどの渡航歴アリ。2009年頃、洋楽好きな友達の勧めでK-POPを聴くようになり、その後、現在の推しが韓国でデビュー。13年頃に「この子しかいないっ!」と開眼してから、頻繁に遠征するようになった。なお、“推し”の名前は非公開。
しんいちさん……1974年生まれの45歳、既婚。サッカー日本代表や、Jリーグチーム・FC東京のサポーターとして海外に遠征。95年に「アンブロ・カップ」という国際親善大会のため、“聖地”と呼ばれるイギリスのウェンブリー・スタジアムに行ったのが初めての海外遠征。アニメやゲームも好きで、海外で行われる「アニメコンベンション」に参加することもある。
「言葉を間違えたら恥ずかしい」とは思わなくていい!
――海外遠征に行こうと思っても、なかなか一歩踏み出せない理由として、「言葉の壁」は大きいのではないかと思います。お二人はその点、どう克服しましたか?
カナコさん 私はK-POPにハマってから、韓国語を勉強しています。週に1回、先生のレッスンを受ける程度ですけどね。最初は「推しを見ているうちに自然と覚えちゃった!」って時期もあったんですが、それでは飽き足らず……。というか、言葉がわからないと、現場で“交渉”できないんですよ。
――何を交渉するんですか?
カナコさん 参加するイベントが毎回ちゃんとした運営だとは限らないという事情もあり(笑)、その場で概要が説明されるとか、列に並ばされたはいいけど、その後どうなるかわからないとか、結構あるんです。説明が理解できないとスタッフさんも困るし、何より自分が損をしちゃう。私の場合、韓国語がわかったから、足を運べるようになったというイベントもあります。
――しんいちさんは、英語圏に遠征することが多そうですが、言葉について不自由はないですか?
しんいちさん 最初に行ったイギリスでは、しばらく滞在するうちに耳が英語に慣れて、だんだん聞き取れるようになったんです。「よっしゃ~、だいぶ慣れたぞ~!」と安心していた頃にリヴァプールへ行ったら、もう、同じ英語とは思えないぐらい訛ってて(笑)。ちっとも聞き取れなかった経験がありますね。
でもひとつ言っておきたいのは、向こうからしたら「外国語を話してるだけエライ!」「コミュニケーションをとろうとしてるだけでスゴイ!」って感じなので、「間違えたら恥ずかしい」とかは、本当に考えなくていい(笑)。物おじしないで話してみると案外通じますし、自然と度胸もつきますよ。
カナコさん 最初のうちは、言葉が通じなくて四苦八苦するのも、いい思い出になるんじゃないでしょうか。そこは覚悟してトライしてほしいですね。
――日本でも海外でも、オタ活に必要なものといえば、やっぱり“チケット”です。お二人は、どのように手配しているんですか?
しんいちさん サッカーの場合は、クラブチームから直接買うのが一番確実ですね。海外の試合であれば、オフィシャルツアーも組まれるはずなので、航空券・ホテル・試合のチケットがすべて一括で手配できるし、周りも日本人サポーターばかりなので、初心者にはオススメです。あとは国にもよるんですけど、オフィシャルツアーじゃないと入国できないパターンもあります。中東は特に大変で、入国するためのビザがなかなか下りないこともありますね。
だけど、トーナメント戦の場合は、勝ち進んでみないと、どこで試合があるかわからないんですよ。トーナメントで当たった国によって、試合の開催国が変わったりするので。だからもう、先に「この日に日本とこの国が試合をやるハズだから、会場は多分ここになるだろう」とか予想して、航空券やホテルの情報を先に調べたり……。
――それってもはや“賭け”じゃないですか。
しんいちさん とはいえ海外試合の場合だと、チケットが完売しちゃうことって、そうそうないです。ワールドカップなんかはもちろん別ですが、よほどのビッグマッチじゃない限り、普通は売り切れないんですよ。もちろん海外まで行くんですから、なるべく事前に手配できるものは手配したほうが安心ですけど、会場に入るチケットだけなら、結構なんとかなっちゃうんじゃないかな? 海外出張のついでに現地でサッカー観戦、みたいなことをしている友達もいますよ。
――K-POPのチケット事情はどうですか?
カナコさん 韓国は今、“本人確認ブーム”の嵐が吹き荒れていて……。今回のミュージカルも結構、本人確認のルールが厳しいんです。昔は当日券でなんとかなることもあったんですけど、今は難しいですね。外国人がチケットを買う場合、パスポートの確認が必要ってこともあるし。そもそも、「外国人は買えません」っていうチケットもあります。韓国って住民登録番号(RNN)と携帯電話の番号などが全部ひもづいていて、外国人っていうだけですごく購入のハードルが上がるんですよね。
――今回のミュージカルのチケットは、どうやって手配したんですか?
カナコさん 外国人向けのグローバルサイトがあるので、そこで買いました。韓国って座席は“早い者勝ち”のものが多いので、チケットの発売日には、熱心なファンがネットカフェの高速回線を使って買ったりするんです(笑)。そういう点では、ある程度努力すればいい席を取れる可能性があるので、日本の抽選式よりは、熱意が試されてるかもしれませんね。
――海外の現場に行ってみてわかる、「日本のここが好き」「海外ってすごい」というポイントはありますか?
しんいちさん 僕が感じるのは、日本のホスピタリティの良さ。海外のスタジアムに行くとわかるんですけど、スタジアムのホスピタリティって、圧倒的に日本が良いんですよ。そりゃもう、ズバ抜けて良いんです(笑)。海外はほったらかしというか、自由にしていられるんだけど、越えちゃいけない一線がそれぞれの場所であって。それを越えたらもう、注意じゃなくて「即、逮捕!」みたいな感じなんです。スタジアムに入ってから、大勢の警察官に囲まれた中で応援する……みたいな国もありました。
――怖っ! “一発レッドカード”ってことですか!?
しんいちさん もちろん、普通にしていれば怖い目に遭うことなんてないですよ。でも、調子に乗っているとヤバイ。国によっては、警察官が一般市民に本当に銃向けますからね。あとアジア圏だと、スポーツと政治を絡めたがる人たちがいます。一目で国がわかるユニフォームを着て街を歩いていると、ちょっかい出されることとか……。そういう時は、「日本ってやっぱり平和なんだな」と思いますね。
カナコさん 私は、日本では体験できないことや知り得ないことを知る、違う文化に触れられるのが、単純に楽しいです。K-POPは韓国のアイドルと言いつつ、香港や台湾にアジアツアーもするし、コンサートやイベント会場には、世界各国からファンが集まるんですよ。あと最近は、中国のエンターテインメントがすごい勢いだなって思います。K-POPファンの中でも、感覚の鋭い人はもう、中国のアイドルに移っていたり。
――そういうファンの方って、アジア圏のアイドルをどんどん深めていく感覚なんですか?
カナコさん というよりも、今一番“新しいもの”が好きなんじゃないかな? K-POPって、昔はマニアックな趣味というか、アジアのちょっと珍しい面白いもの・キッチュなもの、っていう感じで受け取られていたと思うんですけど、今はむしろトレンドの最先端になっているじゃないですか。K-POPのファンは、K-POPがどんどん発展して、洗練されていくのをずっと目の当たりにしてきたんです。そうやって、韓国や中国のエンターテインメントが恐ろしい勢いで発達しているのを見て、ファンは楽しんでいるんだと思います。それと同時に、日本の文化やエンターテインメントがどんどん古く・つまらなくなっているのを、かなり前から肌で感じていたんじゃないでしょうか。
しんいちさん “新しいもの好き”な人が国内のエンタメに満足できなくなっているというのは、正直すごく感じます。
カナコさん これからグローバル化が進んでいくことを考えると、日本の中で一生懸命に新しいことや楽しいものを探さなくてもいいのでは、と思います。世界中を見渡しながら、「今は何が一番新しくて、面白いのかな?」という視点で、“推し”を探す人が増えるかもしれませんね。