HiHi Jets・井上「ふざけんな、猪狩!」と憤怒、Snow Manは次回チャンネル卒業!【ジャニーズJr.チャンネル週報】

 ジャニーズ事務所が動画配信サイト・YouTubeに開設した「ジャニーズJr.チャンネル」。現在、Snow Man(水曜)Travis Japan(木曜)7 MEN 侍(金曜)美 少年(土曜)HiHi Jets(日曜)がオリジナル動画を投稿中だが、その出来ばえは実にさまざま。そこで、「しょせんジャニオタ向け」と切り捨てるにはもったいない動画と、「ジャニオタでもしんどい」動画をジャニーズウォッチャー・中村チズ子が解説&ツッコミ! 今回は、12月5日~11日公開の動画から注目度順に紹介します!

Snow Man、Jr.チャンネル卒業

 Snow Manの動画は、「YouTube FanFest Music Japan 2019 | 『Party! Party! Party!』『Lock on!』『D.D.』」(5日)と、ハーゲンダッツ ジャパンのプロモーション「【贅沢王選手権】あなたの贅沢って何ですか?」(9日)に加えて、「【YouTube FanFest 2019】舞台裏公開&重大発表」(11日)の3本が配信されている。5日、Snow Manは『YouTube FanFest Music Japan 2019』にゲスト出演。通常回はそのリハーサルや本番前の舞台裏に密着し、リラックスムードの9人、真面目に振り付けの練習に取り組む様子などをカメラがとらえている。

 18年の『YouTube FanFest』はSixTONESが登場したが、阿部亮平は「去年、SixTONESが『ジャニーズJr.チャンネル』を代表して出てくれたじゃないですか。本当は僕らも行きたかったなっていう、ちょっと悔しい思いもあって」と、胸に秘めた思いを告白。続けて、「でも、それが今回かなったということで。これがSnow Manだというのを全世界に見てもらえるように、注目してもらえるように、爪痕残します」と、意欲をみなぎらせた。また、来年1月22日のCDデビューに向け、渡辺翔太も「ジャニーズの幅が広がったから、そこでちゃんと爪痕残さないといけないし。デビュー曲(『D.D.』)も広めないといけないしっていう。だからね、なかなか大事なイベントになるんじゃないかな」と、やる気満々だ。

 本番当日、午後2時にメンバーが会場入り。私服の岩本照、宮舘涼太が映った後、現役高校生である16歳・ラウールらしき声の「おはようございます」という声が聞こえるも、本人の姿は見えず。以降も向井康二、佐久間大介、目黒蓮、深澤辰哉、阿部、渡辺の全員が映り、ラウールの姿がないことに疑問が残るが、この理由は後のシーンで判明する。8分16秒頃、イベントのMCを務めるタレント・ハリー杉山がSnow Manのもとを訪問。その時、ラウールは深澤の私服とみられるピンク色のアウターを着ており、岩本の後ろに隠れるようにぴったりとくっついていた。チャックを締めて中の洋服を隠していたものの、ラウールの襟元にはわずかに白いシャツが見えている。

 ファンの書き込みを見る限り、どうやらラウールは制服のまま会場に駆けつけ、リハーサルに臨んだようだ。制服の特徴や校章などが映れば通学先がわかってしまう危険性もあるため、深澤の上着を借りて隠したのだろう。SNSやコメント欄では「ラウールだけ映らないのも、照くんの後ろに隠れてるのも、制服だからか……学校も頑張ってて偉いね」「制服だから深澤くんの上着借りて岩本くんの後ろにすっぽり隠れてるんだ。Snow Manのパパとママにしっかりと守られてる」「ラウール、どんな時もしっかり守ってくれる優しいパパとママがいて安心だね」と、メンバーの関係性に感激の声が上がっている。

 一方、出番を控える中で、阿部は「YouTubeを始めるなんて、最初は思ってもなかったから。今、こういう大きなイベントに出れるっていうのは、ジャニーズの新しい可能性を見つけられたんじゃないかなと思います」と胸を張る。今年1月に加入した目黒も「俺がSnow ManのYouTubeに出させてもらってから、1年たってないんですよ。だから、本当に1年前の自分は想像もできないところに今はいれてるから」と感慨深げにコメントしていた。

 そして、動画の12分50秒頃からは岩本、ラウール、深澤のトークパートに突入。深澤が「ここで重大発表があります」と切り出し、「実は……僕たちSnow Manは次回で、『ジャニーズJr.チャンネル』を卒業します!」と報告した。8月8日のコンサート『ジャニーズJr.8・8祭り ~東京ドームから始まる~』以降、SixTONESはすぐにYouTube内に「アーティストチャンネル」を開設し、一足先に「Jr.チャンネル」から旅立っている。

 深澤は「寂しいですけどね。こういうのも僕たちはいずれね、下の子たちに引き継いでいかなきゃいけない」と話し、岩本も「デビューして、いろんな形でYouTubeさんのお力を借りながらね、たくさん海外の人たちにも、日本の人たちにも届けていくデカいグループにSnow Manなっていきたいなと思っております」と述べていたことから、SixTONESに続いてSnow Manの独自チャンネルが始動する可能性もありそうだ。次回は長編の卒業スペシャルになるというが、彼らの後任を含めて注目が集まる。再生回数は13日時点で1本目が91万台、2本目は48万台、そして3本目が36万台。

 8日の動画は「HiHi Jets【喜怒哀楽グルメ】気持ちは一緒!タイ料理食べたいだけなのに…」(再生回数は13日時点で16万台)。今回も神奈川県・鎌倉ロケで、タイ料理の「タイ村889」にてグルメ企画を行っている。同じく料理をテーマに戦った「【真ん中争奪】横浜中華街で値段予想バトル!」(11月17日配信)では、いつもこの手のゲームに弱い高橋優斗が連敗。「食べようよ、みんなで」(高橋)の一言をきっかけに、猪狩蒼弥は「俺、勝つことに夢中になりすぎて、みんなで食べるっていう選択肢がなかった」「大事なこと忘れてた。本当にありがとう」と、メンバー愛を取り戻すという一幕があった。

 このタイ料理屋での撮影は、同日の夜に行われたもので、猪狩、高橋、井上瑞稀の3人が食べたい料理をチョイスし、“全員の答えが揃えば実食できる”というルールに変更。個人戦から一転して、チームワークが試される連帯責任の勝負となった。また、彼らは日中に「【懐かしのガラケー】漢字一文字だけで出会いゴールできるのか?」企画でバラバラの場所にいたものの、見事に再会を果たしたばかり。鎌倉を激走しただけあって、おなかはペコペコのようだ。しかし、第1試合のサラダは8種類もあり、のっけから「選択肢、エグない?」(猪狩)「揃うのか!?」(井上)と困惑。自分が食べたいメニューをほかのメンバーに理解してもらうため、イメージワードを出し合うのはOKだとか。

 猪狩は「パパイヤサラダ」でダンサー・振付師のパパイヤ鈴木を想像したのか、「この人のダンス、俺スゴい個性的で好き!」と、コメント。ところが、これは井上が苦手な食材が使われている可能性が高いとして、今度は高橋が「俺のヒントを言うわ。ダンサーかな。ある意味。全部の食材にダンスさせて。一番なめらかな、ちょっとウザい動きするから」と、主張した。解答を出してみると、猪狩&高橋は「豚トロサラダ」で、井上のみ「シーフードサラダ」と記入。猪狩は「豚トロでしょ!? 本当に踊らせたのかよ!」と井上を責め、高橋と2人で謎の“豚トロの舞”を披露したのだった。

 そんな中、第2試合の焼き物・揚げ物で高橋が足を引っ張ると、打って変わって「ありえないんですけど!」といら立つ猪狩。高橋は「いや、待ってくれ。この企画の趣旨を思い出してくれよ。俺がさ、散々食べれなかったから、『やっぱちょっと可哀想だと思った』っつったから……」と述べたが、「可哀想な人に合わせる企画じゃないの!」(井上)「何その、下に合わせる企画みたいの!? そういうんじゃない!」(猪狩)などとヒートアップし、口論へと発展するまでに。すると、ここで「Jr.チャンネル」スタッフが「皆さん、もうちょっと仲悪くなってるんで……」と制止。

 その言葉で険悪ムードが解け、大笑いしたHiHi Jetsは「俺も本当に申し訳なかった。そっちに行けばよかった」(高橋)「もうちょっとルールを決めていった方がいいよね」(井上)と反省。2品目までの失敗を踏まえて「一番熱量が高かった人に揃えていこう」と、判断基準を設定したのだが……。第3試合は、猪狩がメニュー名を間違えて書くという、まさかの凡ミス。ようやく3人の答えが一致するかと思いきや、ある意味で期待を裏切る展開に。視聴者側はもどかしい気持ちにもなるが、狙ってやっていないからこその面白さを生み出している。

 第4試合は「ここに来た目的というか。タイ料理屋さんじゃん。だから食べたいなっていう……」(井上)「海でこれ食いたくね?」(高橋)と会話し、やっと「タイ風焼きそば」で初勝利。心が通じ合ってきたメンバーは次も「シーフードバジルの炒めご飯」をゲットし、仲良く、そしておいしそうに食べている姿に、見ているこちらもつい笑みがこぼれてしまう。さらに、ラストはWチャンスで「タイ風ソーセージ」「豚肉のガーリック炒め」の2品を獲得していた(丸一日がかりの撮影、お疲れさま)。

 空腹感が満たされ、冷静になった3人は「人としてのあり方を学んだ気がする。食を通じて」(猪狩)「荒んでたわ」(高橋)「だって、2回戦とか大揉めだったもんね」(井上)「平和が一番だな」(高橋)「争ってもしょうがないよね」(猪狩)「何も生まれなかったね。人ってみんな違うからね、好きなものも。嫌いなものも」(井上)としみじみ。その上で、猪狩が「人を受け入れる心っていうのは、やっぱりあって然るべしなのかもしれないね」と総括するも、最後に高橋は井上に向けて「イカのガーリック食いたかったでしょ?」と、“悪魔の囁き”を投げかけた。

 これは、第3試合での猪狩の失態を蒸し返した形だが、「あれ誰のせい?」(高橋)と煽られた井上は「ガーリックはもう……Garryのせいだ! ふざけんな、猪狩!」と憤激。それぞれ溜まっていた不満をぶつけた後、我に返った一同は「結局、バチバチしてんだよ。俺たちは」(猪狩)「その方が俺らに合ってるよね。食べたらちょっと落ち着くんじゃね?」(井上)「世界平和だわ、うまいもんは」(高橋)「ガリさん、さっきはちょっとごめんね」(井上)「全然大丈夫」(猪狩)「俺もごめん」(高橋)と、食事を再開していたのだった。

 足並みが揃っていない状態から一致団結し、丸く収まるだけでなく、終盤にも感情を爆発させたHiHi Jets。1本の動画内で起承転結がしっかりしており、最終的にほっこりとするようなオチまでついている。高橋の誘導に乗り、空気を読んでブチ切れた井上をはじめ、彼らのバラエティ能力にすっかり感心してしまった。

  5日の動画は「Travis Japan【舞台裏密着】虎者-NINJAPAN-を徹底公開!」。11月に東京・サンシャイン劇場や京都四條 南座などで上演されたTravis Japanの主演舞台『虎者 -NINJAPAN-』(京都公演)の裏側に迫った1本だ。開演3時間前の会場入りをはじめ、第一幕の見せどころの1つだというトランポリンを使った演技の練習風景を公開。七五三掛龍也は「最初、めっちゃ怖かったですよ。ちゃんとできるようになったのが、本番の1週間切ってぐらいだったから。本当に俺だけ(習得できたのが)ギリで。それまで俺、トランポリン、外されるのかなっていうぐらいできなかったから……」と、吐露した。

 そんな七五三掛は、トランポリンのリハーサル中に高さ4m地点でバランスを崩すアクシデントも。不安を抱えながら本番へ向かうという、リアルな姿を映し出していた。そんな七五三掛は、ハンディカメラを持って開演45分前のメンバーの楽屋を突撃訪問。七五三掛&中村海人や、川島如恵留&吉澤閑也の部屋には、大量のファンレターらしきものが積み上がっており、合間を縫って手紙に目を通している様子がうかがえた。

 さらに、この日の第一幕終了後、宮近海斗は「Jr.チャンネル」視聴者に向けて「丈くんが見に来てくれました!」と、関西Jr.内ユニット・なにわ男子の藤原丈一郎を紹介。その上で、藤原が着ていたトレーナーを指差して「どういうことですか?」「南座ですよ」と場にふさわしくないとチクリ。「BOB&TOM」の名前とともにアメリカンな似顔絵がプリントされた服とあって、宮近はどうしてもスルーできなかったよう。藤原も「南座でBOB&TOMは場違いやな……」と反省したが、「ジャムと……」(宮近)「ジャムじゃない、ボブや!」(藤原)「ジョム?」(松田元太)「ジョムじゃない! 丈一郎!」(藤原)と、Travis Japanメンバーのボケにツッコミを入れた。

 あらためて、藤原は「『虎者』見に来たのよ」と本題に戻しつつ、「阪急電車乗って来たのよ。河原町で降りて。5番出口!」と、移動の手段まで詳細にアピール。続けて、「今日なんか俺、(兵庫県の)淡路島で釣りしてたからね。太刀魚、2匹釣ったわ!」と、ドヤ顔に(もはや、会話の内容はただの釣り好きおじさんの自慢……)。松田は「さすがジョム!」とイジり、すかさず「ジョムちゃうわ!」と、吠えていた。

 ちなみに、このトレーナーは米インディアナ州のラジオ番組『The BOB & TOM Show』のグッズらしく、なんとその番組Twitterがファンの投稿を引用リツイートする形で「We're World Wide(私たちはワールドワイドです)」と反応。トレーナーの販売先であるWEBショップのURLも案内し、藤原に乗っかってちゃっかりと宣伝していたのだった。「Jr.チャンネル」初参戦にして、プライベートの渋い釣りトークを披露したほか、私服が思わぬ話題を呼んだ藤原。チラッと出た動画でしっかりと足跡を残すあたり、入所歴15年の底力を感じた。

 SNSやコメント欄では「丈くん、普段はイジる方なのに、トラジャにはイジられてて不思議な感じがした」「丈くんとトラジャの絡みが最高」「丈くん、記念すべき『Jr.チャンネル』デビュー、しかも南座でBOB&TOMってどんなチョイス(笑)」「BOB&TOMの場面、何回見ても面白い。丈くんのセンスが最高だし、しっかりとイジるチャカも最高」と、当該シーンにファンも大興奮。再生回数は13日時点で27万台となっている。

 7 MEN 侍は、メインの「7 MEN 侍【ASMR対決】オリジナルドリンクで心地よい音」に加えて、「【ASMR】『アリス~うさぎを添えて~』中村嶺亜&本高克樹&今野大輝」「【ASMR】『すずきたけし』佐々木大光&矢花黎」(全て6日)の計3本が公開中。今回は、5人で「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」動画の撮影に挑戦している。

 そもそもASMRとは、「人が聴覚や視覚への刺激で心地良さを感じたり、ゾクゾクしたりする感覚」を指すワード。YouTubeでも大人気のコンテンツだが、7 MEN 侍の場合は2チームに分かれてオリジナルドリンクを作成している。料理中にメンバーはほぼしゃべっておらず、7 MEN 侍ファンにとっては“推し”の咀嚼音が聞こえるほか、ASMR好きな一部マニアにはたまらないであろう動画。個人的には本高の「ねぇねぇ~、聞こえてますか?」(2分3秒頃)の囁きにドキッとしたため、ぜひイヤホンでの視聴をオススメしたい。

 また、本編は静かな空間の中でも、佐々木が随所で笑いの要素を提供。本高に「デブ」と暴言を吐いたり、相手チームが材料に悩んでいた時は、「早く作ってくんね? マジで」と催促したりと、仲間の矢花が「うちの“大将”がもうイライラしてるから」と肩を持っても、「タイショウじゃねぇ、大光だ!」とツッコミ。ボケではなく、おそらく天然で「大将」を美 少年・岩崎大昇の“大昇”だと勘違いしたようだった。さらに、3人が撮影していると、佐々木はみかんを手に取って大袈裟にキス。中村は「あれ何? パンくん?」と、『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)に出演していたチンパンジーのパンくんにたとえて笑わせていた。

 2チームの動画は公開から10日後の12月16日までの再生回数を競い合い、視聴数が多いチームの勝利とのこと。13日時点で、1本目は12万台、2本目は9万台、3本目が10万台だった。

 7日に配信されたのは「美 少年【休み時間の遊び】雑巾がけリレーやってみたら…大爆笑!」(再生回数は13日時点で18万台)。小・中学校の休み時間にはやったという「馬跳び」「消しピン」「雑巾がけリレー」を2チームに分かれて対決。藤井直樹を除き、現代高校生が5人いる美 少年らしい企画だ。序盤から浮所飛貴が那須雄登の耳に息を吹きかけようとしていたほか(39妙頃)、ちょっかいを出してくる浮所に対し、那須がお尻辺りを触って仕返しする場面も(1分頃)。6人が“わちゃわちゃ”と楽しんでいる姿が印象的で、ユル~いゲームに全力なところも見ていて微笑ましい。

 3本勝負終了後、岩崎は「俺は気づいた。あれはあの若さがあってできたこと。無理だね。たぶん視聴者のみなさんね、『いや、何言ってんだよ。17歳、16歳のくせに』って思うじゃないですか。意外とね、腰とかも全部痛くて……」と、コメント。浮所が「おっさんやん!」とつぶやいた通り、17歳とは思えないほど落ち着き払った岩崎の話しぶりにも注目してほしい(さすが、美空ひばりの曲を歌っているだけある)。一方で、最後は“反則”したことを理由に、岩崎が一人で罰ゲームのお掃除を担当。自業自得とはいえ、広いリハーサル室に取り残されてしまい、少し可哀想だと感じたのは、筆者だけだろうか。

 

「誰もヒーローにしない」ということ ― 韓国生まれの表現者 イ・ラン インタビュー

 韓国で生まれたイ・ランは、シンガー・ソングライター、映像作家、コミック作家、エッセイスト、そして小説家として活動する多彩な表現者だ。その活躍は、日本のカルチャーシーンでも注目を集める。

 ジャンルや国境を行き交うイ・ランのまなざしは“社会”と“個”の関係性に向けられており、その真摯で豊かな言葉は私たちにシンパシーを抱かせると同時に、新たな気づきをもたらす。彼女が“地獄”(ヘル)という言葉で形容するこの社会で生きる私達は、何に気づき、どこへ向かおうか。常に何かに気づき、変化しているイ・ランの現在地を聞きに行った。

――最近、身の回りで起こった出来事によって、新しい発見をしたことはありましたか?

イ・ラン:先週、韓国で開催された“家族ではないから”というイベントに参加して、歌を歌ってきました。韓国ではまだ結婚というのは男女しか出来ない制度なので、それ以外の家族の形は認められていないんですけど、そのイベントではいろんな“家族”を持つ人たちが、それぞれ「うちはこんな家族です」って発表していました。
 社会的に家族として認められていない、同性のパートナーを持つ人で、自分が死んだときにパートナーへ保険金が渡るように保険会社とどう戦って認められたのかという話をする人もいました。
 性愛の関係ではなく社会的に助け合えるパートナーを何人か持つ人からは、自分がガンで闘病していたときにパートナーたちがどのように連帯して助けてくれたかを教えてくれました。
 その時、その人が使っていたのは“마을연대”、日本語にすると“町連帯”という言葉だったんですけど、そういういろんな家族の話を聞いていたら、「こんなにいっぱい家族の形があるのに、法律はまだまだ過去のまんまだな」と思ったんです。それぞれ自分が頑張って探した家族がいるのに、社会の方から「あなたたちは家族じゃない」と言われるのは違うでしょう。

――他者から「それは違う」と否定されて悩む人は多いと思いますし、自分の在り方が既存の社会的な価値観と違っているというだけで、攻撃を受けてしまう人もいます。イベントで話をした方々のように、オリジナルな自分のことを発表する姿は周りに勇気を与えますね。

イ・ラン:そうも思いましたけど、でもそうやって皆の前に出る人たちが“ヒーロー”のように見られることも危険だなと考えているんです。

――危険というのは?

イ・ラン:最近、ソルリというアイドルが自殺で亡くなりました(※2019年10月、女性アイドルグループf(x) 元メンバー・ソルリが自宅で亡くなっているのが発見された。訃報後、SNS上において彼女に向けられていた悪質な書き込みや女性蔑視的な発言に対する怒りが広がっている)。
 ソルリが自殺したこと、私はすごく悲しくて。ソルリは自分の考えをはっきり言う人で、たくさんの人に勇気を与えていたのですが、それによっていっぱいバッシングを受けていました。
 ソルリが亡くなる一週間前、彼女のインスタライブを見ました。画面には見ている人たちが投稿したコメントがずっと流れるんですけど、その多くは醜い悪口で、彼女はその言葉をじっと見ているだけでした。ソルリはノーブラでテレビ番組に出たことがあって、何万人もの人からバッシングを受けていたんですけど、私はなんでソルリがノーブラだというだけでこんな騒ぎになるのかわからなかった。
 きっと皆、ソルリのようなアイドルはブラジャーを着けていて当たり前だから着けるべきだって書き込んだんだと思うけど、ブラジャーを着けるかどうかなんてその人の自由でしょう。しかも、ソルリがノーブラでテレビ番組に出たのは何年も前のことなのに、亡くなる直前のインスタライブでもそれについてのバッシングコメントが本当にいっぱいで。
 彼女が自殺したことで、一人の人間が“ヒーロー”にされることの危うさについて実感したんです。たぶん、皆は「ソルリが言ってくれるだろう」「ソルリがやってくれるだろう」と考えていたし、ソルリが先頭に立って皆の代わりに戦ってくれると思っていた。でも、そうやって生きていた彼女はどれだけ辛かったんだろうと思うと、すごくショックだったんです。

――誰かをヒーローとして見ることは、自分の問題や悩みをその人に仮託することでもあって、もしかしたらその人を傷つけてしまっていることもあるのかも知れない。

イ・ラン:私も人から「強いね」とか「強いからそんなこと出来るんだね」なんて言われるけど、それってすごくプレッシャーを感じるんです。一人の人間は誰も強くないんです。強いから自分の意見を言えるなんて人間はいません。世界はなんで“皆の代表”を作ってしまうのか、わかりません。でも、だからって「皆がヒーローになりましょう、皆がそれぞれ自分の考えを声に出しましょう」って言っても、自分の考えを口にすることで攻撃を受けたり、危ない目に遭うこともあるでしょう。「勇気を出して、話して」と言うこと自体が、暴力にもなりかねない。

――エンパワメントのつもりが、暴力になってしまう。そうはならないために、どうしたらいいと思いますか。

イ・ラン:難しい。どうやったら皆がそれぞれ自分の生き方を認められていけるか、もうちょっと考えないといけないですよね。
 私はテレビの現場を少し経験したことがあるんですけど、そのときに「ここには一人も幸せそうな人がいないな」と思ったんです。時間もないし、多くの人やお金が動く。そういう現場で余裕なく働き続けて、過労死したり自殺したりする芸能人やスタッフもたくさんいます。なのに「ちょっとストップしましょう!」と言える人が誰もいない。それはテレビの世界だけじゃなくて、今は社会全体がそうなっていると思います。

――皆が自分のことで精一杯になってしまって、周りが見えなくなってしまっているんですね。

イ・ラン:はい。みんながゾンビみたいになっている。人間じゃなくなってしまう。誰も幸せになれていないのに、なんで誰も立ち止まらないのかなって、すごく怖いです。

――ソルリさんに対する世間の見方もそうですし、社会全体を見てもお互いがお互いを一人の人間として見れていないから、孤独なヒーローやゾンビを生み出してしまう構造になってしまっているんだと思います。

イ・ラン:そうですね。私はお正月のソウルが大好きなんですけど、なぜかと言うと、皆が実家に帰って、街が静かになるから。お正月というものがソウルのストップボタンを強制的に押してくれる、それを感じるのがとても好きです。私もタワーに登ってみたりして、ソウルの街を見下ろしたりするんですよ。
 でもね、元々は皆がそれぞれ自分のストップボタンを持っているはずなんです。なのに押さない。皆、ストップボタンを押して、人間になりたいはずなのに。

――社会が強制的に停止しないと、自分でストップボタンを押せなくなっている。

イ・ラン:誰もがそうなってしまっていると思います。女性なら「タバコだめ」「ノーブラだめ」なんて言われて、社会が思う女性らしさのイメージに合わせないと攻撃されてしまう。でも、じゃあ一体いつ、社会や他人のためじゃない、自分のための自分になるんですか? ソルリが自殺したとき、皆が「あれは自殺じゃない。他殺だ」と言いました。彼女は、自分のための自分になりたかっただけなのに、それを許さなかった社会が彼女を殺した。ああ、地獄(ヘル)だ……。

笑いながら話を続けるか、コップの水をぶちまけるか

©服部健太郎
――この社会に生きる中で、自分になろうとすると、攻撃を受けてしまう。その葛藤に悩んでいる人って、いっぱいいるんじゃないかと思うんです。

イ・ラン:そうですね。私はフェミニストであろうとしているけど、一緒に仕事をやろうと声をかけてくるクライアントの中には、とてもミソジニーなことを言う人もいるんです。その人と仕事をすればいっぱいお金が貰えるし、次のキャリアにもつながるという現実的な結果が得られるけど、フェミニストの私としては嫌だから、どうすべきか悩むことはすごく多い。

――たとえ相手に悪気はなかったとしても、嫌な思いをするタイミングがたくさんあります。その度に何かを言い返したり、アクションを起こしたりする体力はこっちにもない。でもフェミニストとしては、何かを言わなきゃいけない、頑張らなきゃいけないと思っている自分もいる。今、そうやって頑張りすぎて、疲れてしまっている人も多いんじゃないかと思います。

イ・ラン:それは、すっごく分かる。フェミニストとしての私は、ミソジニーなクライアントと対峙するのはとても覚悟が要ります。笑いながら話を続けるのか、それとも目の前のコップの水をぶちまけてしまうのか。どっちにするかという選択肢が必ず目の前に現れて、いつも迷っています。同意できない話には同意できないと伝えたいし、目の前のコップの水をぶちまけてしまいたいんだけれど、でも私にも明日があると考えると、そんなことは出来ないことが多い。そういうことで、いちいち迷っています。

――でも、すぐに社会は変わらないし、答えは出ません。

イ・ラン:だから私は、自分が描く小説の中で「自分に明日がなかったら、今この瞬間に出来ること」をやるんです。小説の中でなら、相手にコップの水をぶちまけることが出来るから。そうやって、自分の話をすることで自分になれるんです。

――小説の中で、自分になるんですね。

イ・ラン:でも、それも怖いなと思いながらやっているんですけど。最近、韓国で出した本のあとがきでも「本を出すことがすごく怖いけど、出します」ということを書いたんです。いつになったら、自分の話をすることが怖くならなくなるんだろう。

――「すごく怖いけど」。それでも、ランさんが自分の話をしようと思うのはなぜですか?

イ・ラン:怖がっている私に、「一緒にいるから大丈夫ですよ」と言ってくれる人がいるからです。例えばこの本のときは、そう言ってくれる編集者の人たちがいました。その人たちがいなければ、私は怖がって何も出来なかったと思う。誰にとっても、そうやって連帯してくれる人がいたらいいのにと思います。
 さっき話した家族のイベントで、自分自身のこと、レズビアンであることやパートナーとの生活を話していた人たちも、怖かっただろうけど、その会場には「一緒にいるから大丈夫」って連帯してくれる人たちがいたから、自分の話が出来たんだと思う。

――他者を“ヒーロー”として見るのではなく、“仲間”として見る、連帯する。

イ・ラン:うん。人って結局一人だから、皆怖いんですよ。私が本を出すときは「本が出来上がったことが嬉しい」ではなくて、その過程で「誰かと連帯が出来たことが嬉しい」んです。この経験が、私にとってどれだけ大きな力になっているか。
 自分の本や音楽に対しても、私が嬉しいなと思う反応は「自分も書きたい」「自分も曲を作りたい」というものです。私は勉強家じゃないし、文章や音楽の作り方をちゃんと学んできたわけではないから、だからこそ皆に「自分にも作れそう」って思ってもらいたい。

――ランさんのように表舞台にいる人だけではなく、どんな人でも誰かと連帯する経験を持てればと思います。

イ・ラン:皆、本当は自分の話をしたいんだと思います。私のお母さんは、私が子供の頃から密かにずっと文章を書き続けてきました。でもある時、その文章を書いたノートを全部捨ててしまったんです。私はそれがとても辛くて、なぜ捨てたのか考えたんですけど、きっとお母さんは自分のことを話すのが怖かったから捨てちゃったんじゃないかなと思いました。もし、お母さんの周りに「いいね」とか「もっと書けば?」とか言ってくれたり、話を聞いてくれたりする人がいたら、きっとお母さんはノートを捨てなかったでしょう。
 ヒーローが話をしているのを、黙って聞けばいいわけじゃないんです。皆がそれぞれ自分の話をすればいいし、皆がその話を聞いたらいい。

――ランさんがフェミニストとしての自分を自覚したのも、他のフェミニストの話を聞いたことがきっかけだということでしたね。それまで“名誉男性”(男尊女卑的価値観を持つ女性を指す言葉)として生きてきた自分にショックを受けたとも話していました。変化とは混乱を生むもので、新しい価値観と出会うことで戸惑いを受けることもあると思います。

イ・ラン:新しい考えと出会うことで、これまでの当たり前を見直しますから、私は混乱ばかりです。例えば、人は好きな人とキスするじゃないですか。「なんで口と口をつけることが愛の表現なの?」って思った時期もあって。

――これまで当たり前と思ってきたものをひとつひとつ見直して、プリミティヴな疑問に立ち返ったんですね。

イ・ラン:そうそう。もういちばん最初の、種になった気分でした。でも結局は「やっぱり好きな人の口と自分の口をつけると気分がいいもんね!」と思えるようになりましたけど。そうやって、これまでの当たり前を全部、最初から自分の頭で考え直したいなって思います。
たとえば、私は前まで、自分は男性のパートナーを持つことを当たり前にしていたけど、女友達に告白されてからは「なんで自分は男性の中からしかパートナーを探してこなかったんだろう?」という考えを持ったんです。色んな人の話の中に、未知があると思う。何が一番初めなのか、見つけるのが難しいから混乱するんだけど、だからこそ一緒にそれを考えたい。

――最近、ランさんが「これはなぜだろう」と考えたことは他にもありますか?

イ・ラン:今、漢字を勉強したくて公文式をやっているんです。“火”とか“木”とかをドリルに書いて覚えるところから始めているんですけど、学んでいくうちに「漢字って、すごくセクシズムだな」と思ったんです。漢字には女偏(おんなへん)や男偏(おとこへん)があるじゃないですか。でも、それってなんで性別を表す必要があるんですか?
それである日、翻訳家の斉藤真理子さんとご飯を食べていたときにそのことを言ったら、「じゃあ、中性的な漢字を勝手に作っちゃえばいいんじゃない?」という話になったんです。
 例えば……“嫉妬”って、すごくミソジニーな漢字ですよね。ネガティヴな意味の言葉に“女”が入っていますから。きっとこの漢字は男性主義的な社会の中で作られたものでしょう。でも今、英語では“He”“She”だけじゃなく、性別を限定しない(三人称単数としての)“They”が使われるようになっていますよね。時代は変わっているんだから、この漢字をずっと使い続けるのはおかしいと思うんです。だから、女偏のところを勝手に“人間”に変えてみました。

©服部健太郎
――漢字の勉強を始めたばかりのランさんが、漢字の持つセクシズムや“嫉妬”という文字のミソジニーについて気づいたことは、混乱しがちな私たちに原点に立ち返ることの大切さを教えてくれている気がします。

イ・ラン:私はまだ“嫉妬”を習うところまではたどり着いてないので、斎藤さんとお話したから気づけたんですけど。ほかにも女偏を使う漢字はありますか? 「地獄」とか「悪魔」の漢字は、女偏を使わないんですね?
 あとは、私は「お腹が減った」とか「早く帰ろう」とかを略した新しい言葉を作って、パートナーとの間で暗号のように使っています。たとえば、どこかでミソジニーで嫌だなって人と会ってしまった時にも、パートナーだけに「早く家に帰ろう」って伝えることができますから。
 ハンドサイン(手話)も好きです。新しい価値観や表現が世の中に出てきたときに、皆がそれぞれ新しいサインを作れるし、もしそれが便利なものであればSNSで広まっていくこともあるから。日本にもスラングがあるでしょう? 皆、勝手に作ったらいいのに。

――つまり、皆が声を持っているし、新しいものを作っていく力がある。

イ・ラン:新しい言葉を作るのは、研究者や博士、有名人みたいな“ヒーロー”だけではありません。自分の話を、自分の話しやすい言葉で話すことができる世の中になれば、皆の気分がいいですよね。新しい社会は、私たちの新しい言葉から始まると思います。

©服部健太郎

※本インタビュー収録後の2019年11月24日、元KARAのク・ハラさんが命を絶ちました。謹んでご冥福をお祈りします。

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イ・ラン(이랑)
韓国ソウル生まれのマルチ・アーティスト。2012年にファースト・アルバム『ヨンヨンスン』を、2016年に第14回韓国大衆音楽賞最優秀フォーク楽曲賞を受賞したセカンド・アルバム『神様ごっこ』をリリースして大きな注目を浴びる。2019年には柴田聡子との共作盤『ランナウェイ』とライブ・アルバム『クロミョン~ Lang Lee Live in Tokyo 2018 ~』を発表。さらに、2018年にはエッセイ集『悲しくてかっこいい人』を、2019年にはコミック『私が30代になった』を本邦でも上梓。その真摯で嘘のない発言やフレンドリーな姿勢、思考、行動が韓日両国でセンセーションとシンパシーを生んでいる。

(取材・構成/菅原史稀)

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 ママ友同士のLINEグループチャットでは、雑談の一環として「夫」について話題に上ることもあるという。しかし、ママ友の「夫」という存在については、どこまで踏み込んでよいのか難しいものだけに、「モヤモヤしている」 というママたちは少なくないようだ。今回、そんな悩めるママの声を集めた。

「旦那さんが育児に協力的でいいなぁ」ママ友の自虐にうんざり

 今日子さん(仮名)は、都内にある幼稚園に4歳になる男児を通わせている。その園では、幼少期の親子関係がのちの人格形成に影響するという考えから、未就学期のうちは、母親は就労せずに、子どものそばにいることを推奨しているそうだ。

「普段から保育参観や家庭訪問があるなど、普通の幼稚園より園と保護者の関係が濃いかもしれません。もちろん、ママ友付き合いも濃密で、お迎え時の立ち話から始まり、グループチャットでのやりとりも盛んなんです」

 しかし、よその家庭の夫婦関係に首を突っ込んでくるママ友がいて困っているという。

「彼女は20代後半くらいの若めのママで、旦那さんが忙しいらしく、ずっとワンオペ育児みたいなんです。一方うちは、夫がフレックス制の企業に勤めているため、平日の保育参観などに参加することもよくあるのですが、そのたびに彼女が『今日子さんはいいなあ。今日も旦那さんが保育参観に来ていたよね』とメッセージを送ってきて……この前も、夫に保護者会へ出てもらったら、『旦那さんがそういうのに出てくれるのうらやましい。うちの夫はダメ、そういうの絶対無理』と。正直、何と返したらいいか悩んでしまいます」

 対面であれば、別の話題などにすりかえて、やり過ごすことができるが、「LINEの場合は、終わりがないのが苦痛」だという。

「そのママさんは、グループチャットでも『うちは今日もママだけだよ(笑)』とか、夫が行事に来られないアピールをしてくるんです。最初はみんな気を使って『うちも次は来られないかも』と返信していたのですが、卒園までのあと1年ちょっと、このやりとりが続くと思うと、付き合いが面倒に感じています」

 このように、ママ友グループ内では、送迎や行事参加といった育児を、夫がどの程度担当しているのか、話題に上がることが多いようだ。

「このママさんは、若いのにほぼ1人で育児や家事をしていて大変だろうなって、最初は同情していたんです。でもあまりに『うちの夫は非協力』という自虐がすごすぎて、最近ママ友たちの間では、逆マウンティングしているんじゃないのって、話題になるようになりました。よその家の夫を『育児や家事に協力的だよね』と褒めているようで、その実、『私は1人で頑張っている』ことを主張したかったのではないか、と。まぁみんなに『すごいね』と認めてほしかったのかもしれませんが……そう考えると、ちょっとかわいそうにもなりますね」

 都内にある認証保育園に、1歳になる息子を通わせている真奈美さん(仮名)。彼女は、出版社勤務だった経歴を生かし、出産後はフリーで書籍の編集や、ライターとして取材などを行っている。一方、彼女の夫は、フリーランスで映像制作などを手掛ける仕事をしているそうだ。

「夫婦ともにフリーランスだったので、保育園に入れるかは不安だったんです。入園前から、ベビーシッターさんを頼んだり、短期で無認可保育園に預けたり、点数につながる保活を頑張ったせいか、なんとか0歳から認証保育園に入所できました。最初、0歳児は3人しかいなかったので、ママ友付き合いのしがらみに巻き込まれることもなくてほっとしていたのですが、自分の知らないところで、夫のことがうわさになっていたみたいです」

 真奈美さんの夫は、取材の予定が入ることがある真奈美さんに代わって、子どもの送り迎えなどを積極的に行っていたそうだ。

「夫は、天然パーマに、黒ぶち眼鏡。ちょっと小太りなのですが、派手目な柄の服が好きで、映画をモチーフにしたTシャツや、迷彩柄のパーカーなどを好んで着ていたんです。撮影以外は、編集など自宅作業が多いため、夏はサンダルで迎えに行ってました」

 そんな中、彼女が知らない間に、ママ友のグループチャットで、夫の仕事を詮索するやりとりが行われていたという。

「うちの園では、1歳から園児数が増え、そのタイミングで運動会など行事への参加が始まります。それをきっかけに、あるママさんから声をかけられて親しくなり、その流れでママ友のグループチャットにも招待されました。ただ、途中参加だと過去のやりとりが見られないので、ママさんにお願いして、今までのトーク履歴を送ってもらったんです。そうしたら、なんとうちの夫について『あの人、なんの仕事をしているんだろうね』『この前、夕方に駅前で見かけたよ』というやりとりをしているのを見つけてしまって……! グループチャットでコソコソ詮索するくらいなら、直接聞いてくれればいいのに。特に私からは何も言わず、知らんぷりをしていますが、ママ友グループって何だかなと思ってしまいましたよ」

 美波さん(仮名)は、関東近県にあるベッドタウンで3歳の女児と暮らしている。離婚を機に、都内にある園から地元の大型保育園に転園したそうだ。

「子どもが1歳の時に離婚して、それ以来シングルマザーです。今は実家で暮らしながら、ECショッピングサイトの仕事をしています。娘のクラスで、シンママは私だけなのですが、ママ友とのグループチャットで、ちょっと気になることが。運動会の親子競技や遠足に夫婦で参加するかどうかなどの話題が、急に途切れたりすることがあって、どうやら私に気を使っているみたいなんですよね。逆にモヤモヤしてしまいますよ……」

 子どもを迎えに行った際、仲の良いママ同士が、「親子競技は夫に参加してもらおう」と話していたのを見かけたという美波さん。しかし、グループチャットでは夫の話題があまり出ないのは「私のせいだな」と感じたそうだ。

「グループチャットには、閲覧だけで何も発言しないママもいるんです。気を使われない方が、こちらもいいのですが……」

 各家庭、さまざまな事情がある中、夫のことに立ち入りすぎるのも、はたまた気を使いすぎるのも、ママを困惑させる可能性があるようだ。適度な距離感を保った付き合いができるといいものだが……。

元極妻が考える「反社会的勢力」の定義――ワルモノがいないと、警察の予算がつかない?

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

政府が「反社会的勢力の定義は困難」と閣議決定

「政府が反社会的勢力の定義ができないことについて、どう思われます?」
 編集者さんから聞かれました。政府として「反社会的勢力の定義は困難」と閣議決定した件ですね。

 「桜を見る会にハンシャ(反社会的勢力のことです)が出席してたって言われても、それがハンシャかどうかはわかんないし」的な言い逃れのようです。これについては、「今までの企業の契約とかのハンシャ条項はどうしてくれるんだ」という批判も噴出しているんですね。

 まあマジレスしちゃうと、もともとの定義も、たしかに「社会情勢に応じて変化」しています。ハンシャについて定義したのは、2007年の法務省の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が最初だといわれています。

 これには、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」とあります。

 なんか死語が満載ですよね。総会屋も今はいないでしょうし、さらに「社会運動標ぼうゴロ」の意味がわかる人も、あんまりいないんじゃないですかね。そもそも「ゴロ」がわかんないですよね。ゴロとは「ごろつき」のことなんですが、いまどき「ごろつき」も言わないですよね。

 ちなみに「社会運動標ぼうゴロ」とは、いわゆる「エセ同和」(これも死語)とかで、「人権」をタテに恐喝とかしてくる系です。これもめっきり減りましたねえ。また、「政治活動標ぼうゴロ」とは、大音量の街宣車でやってくるアレです。これも政治的なことを言っているけど、ほんとはお金が欲しいだけで、お金を払えば解決します。さらに「特殊知能暴力集団」となったら、もう全然わからないですよね。これは株のインサイダー取引とか高度なお金もうけをヤクザとつるんでやってる人たちです。株や法律の知識がないとできないので、こんな名称のようです。こういう人たちは、たしかに外見もほぼ映画に出てくるヤクザみたいでした。

 そして、この法務省の定義には、半グレやオレオレ詐欺グループは入っていません。やはり当時の社会情勢に応じているのだと思います。いいか悪いかは別にして、要するに、ワルモノかどうかはいつの時代もおかみが決めるんですよ。

 では、なぜ定義の定まらない「反社会的勢力」という言葉ができたのでしょうか。私は、予算の都合だと思います。ワルモノがいないと、警察の予算がつかないんですよ。

 1954年をピークに殺人事件は減り続けていて、最近は年間で1000件を切っています。さらに少子高齢化や不景気で、暴力団員も減り続けています。これらは政府にとっていいことのはずなのに、ムリに「暴力団」の周辺にいそうな人たちをひとくくりにしている印象です。危機感をあおって予算を確保したいのでしょう。

 それにしても、「社会情勢で変化する」とはいえ、定義が定まってないっていうのもおかしいですよね。大枠は決めておかないと、企業だって困りますよね。それに、「個別に判断する」となったら、どこが判断するのでしょうか? 裁判所ですかね。けっこう案件が多いでしょうし、現実的ではない気がします。

 まあ裁判所もヤクザには冷たいので、今後もどんどん「反社認定」していくのでしょう。今までも「悪者」の烙印はさんざん押されてきましたから、驚きはしませんけれど。その最たるものが、「冤罪」ということになります。ヤクザ以外の皆さまも、他人事ではないですよ。

元極妻が考える「反社会的勢力」の定義――ワルモノがいないと、警察の予算がつかない?

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

政府が「反社会的勢力の定義は困難」と閣議決定

「政府が反社会的勢力の定義ができないことについて、どう思われます?」
 編集者さんから聞かれました。政府として「反社会的勢力の定義は困難」と閣議決定した件ですね。

 「桜を見る会にハンシャ(反社会的勢力のことです)が出席してたって言われても、それがハンシャかどうかはわかんないし」的な言い逃れのようです。これについては、「今までの企業の契約とかのハンシャ条項はどうしてくれるんだ」という批判も噴出しているんですね。

 まあマジレスしちゃうと、もともとの定義も、たしかに「社会情勢に応じて変化」しています。ハンシャについて定義したのは、2007年の法務省の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が最初だといわれています。

 これには、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」とあります。

 なんか死語が満載ですよね。総会屋も今はいないでしょうし、さらに「社会運動標ぼうゴロ」の意味がわかる人も、あんまりいないんじゃないですかね。そもそも「ゴロ」がわかんないですよね。ゴロとは「ごろつき」のことなんですが、いまどき「ごろつき」も言わないですよね。

 ちなみに「社会運動標ぼうゴロ」とは、いわゆる「エセ同和」(これも死語)とかで、「人権」をタテに恐喝とかしてくる系です。これもめっきり減りましたねえ。また、「政治活動標ぼうゴロ」とは、大音量の街宣車でやってくるアレです。これも政治的なことを言っているけど、ほんとはお金が欲しいだけで、お金を払えば解決します。さらに「特殊知能暴力集団」となったら、もう全然わからないですよね。これは株のインサイダー取引とか高度なお金もうけをヤクザとつるんでやってる人たちです。株や法律の知識がないとできないので、こんな名称のようです。こういう人たちは、たしかに外見もほぼ映画に出てくるヤクザみたいでした。

 そして、この法務省の定義には、半グレやオレオレ詐欺グループは入っていません。やはり当時の社会情勢に応じているのだと思います。いいか悪いかは別にして、要するに、ワルモノかどうかはいつの時代もおかみが決めるんですよ。

 では、なぜ定義の定まらない「反社会的勢力」という言葉ができたのでしょうか。私は、予算の都合だと思います。ワルモノがいないと、警察の予算がつかないんですよ。

 1954年をピークに殺人事件は減り続けていて、最近は年間で1000件を切っています。さらに少子高齢化や不景気で、暴力団員も減り続けています。これらは政府にとっていいことのはずなのに、ムリに「暴力団」の周辺にいそうな人たちをひとくくりにしている印象です。危機感をあおって予算を確保したいのでしょう。

 それにしても、「社会情勢で変化する」とはいえ、定義が定まってないっていうのもおかしいですよね。大枠は決めておかないと、企業だって困りますよね。それに、「個別に判断する」となったら、どこが判断するのでしょうか? 裁判所ですかね。けっこう案件が多いでしょうし、現実的ではない気がします。

 まあ裁判所もヤクザには冷たいので、今後もどんどん「反社認定」していくのでしょう。今までも「悪者」の烙印はさんざん押されてきましたから、驚きはしませんけれど。その最たるものが、「冤罪」ということになります。ヤクザ以外の皆さまも、他人事ではないですよ。

中学受験「算数」の落とし穴――最終模試で息子の偏差値を暴落させた、父親の「スパルタ塾」

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 中学受験では多くの学校で「算数」が重要視されている。今では算数1科目だけの入試を行う学校もあるくらいだ。しかし、中学受験の算数はかなり難易度が高いので、一度つまずくと、子どもに「苦手意識」が定着してしまい、合格へ大きなブレーキとなってしまうことも多い。
 
 こうなると、本人だけではなく、親の焦りを呼び込みがちになる。勢い、講師の経験もない親が手っ取り早く得点を上げようとして、中学以降で習う公式を暗記させようとするなど、塾とはまったく違う解き方を子どもに強要することもよくある話なのだ。

“父能研”で方程式を強要、息子が大パニックに

 健君(仮名)が小6秋のこと。お父さんがいきなり「“父能研”をやる!」と(注:父能研=父親が家庭内で塾講師役を引き受けることを意味する業界スラング)宣言した。このお父さんは今まで、仕事が忙しいという理由で中学受験に興味を示さなかったそうだが、健君の模試の偏差値が60台から50台に下がったことで、突然「俺の出番だ!」と言い出したという。学生時代の得意科目が数学だったそうで、その日から、自宅での「スパルタ算数塾」が始まった。

 ところが、このお父さんに中学受験の経験がなかったことが災いし、「方程式で解く」ということにこだわったため、健君の頭は大混乱をきたすようになる。というのも、小学校でも塾でも方程式は使わないので、「今までの解き方とは違うことを言われている」ように、健君は感じたのであろう。

 お父さんは、健君が算数の問題を線分図で解こうとすると、横からこんなふうに口出しをしていたそうだ。

「何度言ったらわかるんだ? 入試はスピードだ! そんなまどろっこしいことをして、いくらあっても時間が足りないぞ!」

 そこで、健君はお父さんに言われた通り、懸命に「XやY」を書きながら、問題を解こうとしたらしいが、まったくもって正答にはたどり着けず、余計にお父さんの苛立ちを買ってしまったのだという。
 
 絶対に方程式で解いてはいけないということはないのだが、中学受験の算数の問題は、「今、わかっている条件から、何がわかるか? さらに、そこから、何が考えられるか?」というアプローチで解くものが多く、それは、数学の定理・公式を当てはめて考えるというアプローチとは異なるものなのだ。上位校になればなるほど、手を動かし、試行錯誤を繰り返させるような問題を作成している。逆に言えば、方程式という“裏技”が使えない問題も頻出しているのだ。
 
 一般的に、数学の「定理・公式を当てはめる」といった抽象的なものの考え方ができるようになるには、年齢を重ねないと難しい面もあると言われている。つまり、小学生にとって「数学」の方程式は、理解の範疇を超えるものなのである。むしろ、小学生に求められる「算数」の力とは、条件を視覚化し、試行錯誤しながら正解を導き出す“閃き”。そしてこれこそが「算数」の醍醐味でもあるわけだ。

 健君はもともと算数が得意科目であったらしいが、次第に、これまで間違えることがなかった計算問題でもケアレスミスを連発するようになったという。そしてついに最終模試で、今まで取ったことのない「42」という偏差値を叩き出し、ここでお父さんは初めて、窮状を塾に訴えたそうだ。

 塾長はお父さんに、直ちに「父能研」からの撤退をお願いし、算数と数学の思考法はまったく違うということを指摘した上で、こう言ったという。

「お父さん、受験は偏差値を上げて上位校に合格することも大切ですが、もっと重要なことがあります。それは健君に、得意の算数で、“試行錯誤しながら答えを発見する喜び”を味わわせてあげることです。どうですか? お父さんはこの2カ月、見守り役に徹しませんか?」

 それから、受験本番まで、健君は塾がない日も学習室に通い、「勘」を取り戻すべく、懸命に手を動かし続けたそうだ。

 塾長は、健君が教えてくれる「この問題は、こういうふうに考えてみた」という説明を、「健は大したもんだ! うんうん、このアプローチの仕方は面白い!」と大いに褒め、喜び、そして、その閃きを大切にさせるため、類題を提示したという。こうして健君は、徐々に調子を戻していったそうだ。

 一方、お父さんは健君と一緒にお風呂に入りながら、自分が間違っていたことを素直に詫びたという。

「健、悪かったな……。どうやらお父さんは間違っていたようだ。今、お前がやっている算数は、限られた道具しかない状態で、どうすれば正解に辿り着けるか? ってことを考えることに意味があると、塾長先生に教えられたよ。合格も大事だが、『問題にぶち当たったとき、自分で考えて工夫できる力』っていうのは、テストでいい点を取るだけじゃなくて、人生にとっても役立つ力だと思う。お前ならやれるって塾長先生も言ってるし、お父さんもそう思うよ」

 筆者が後日、塾長に話を聞いたところ、健君とお父さんの一件をこんなふうに振り返ってくれた。

「もともと、健は算数のセンスがある子だったので、自信さえ取り戻せば、残り2カ月でどうにかなると思っていました。小6の秋というのは、これまで蓄えた知識が、ジグゾーパズルのようにバラバラになりがちな時期なんです。夏の疲れもあって、たまたま成績が急降下しただけだったのでしょう。このお父さんも、一時的に迷走されましたが、息子に良かれと思って自ら勉強を見始めたとのこと。自分のやり方は間違いだったと気づき、受験勉強の意義を認め、さらに、息子に対して素直に謝ったってことですから、素晴らしいお方だと思いますよ」

 健君はお父さんが理解して見守ってくれたことも功を奏し、当初から目標としていた偏差値60の第一志望校に入学し、現在、中3である。今年、彼は学園祭で仲間と共に、来年入試の算数の予想問題を発表し、教師たちを唸らせたと聞いている。

中学受験「算数」の落とし穴――最終模試で息子の偏差値を暴落させた、父親の「スパルタ塾」

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 中学受験では多くの学校で「算数」が重要視されている。今では算数1科目だけの入試を行う学校もあるくらいだ。しかし、中学受験の算数はかなり難易度が高いので、一度つまずくと、子どもに「苦手意識」が定着してしまい、合格へ大きなブレーキとなってしまうことも多い。
 
 こうなると、本人だけではなく、親の焦りを呼び込みがちになる。勢い、講師の経験もない親が手っ取り早く得点を上げようとして、中学以降で習う公式を暗記させようとするなど、塾とはまったく違う解き方を子どもに強要することもよくある話なのだ。

“父能研”で方程式を強要、息子が大パニックに

 健君(仮名)が小6秋のこと。お父さんがいきなり「“父能研”をやる!」と(注:父能研=父親が家庭内で塾講師役を引き受けることを意味する業界スラング)宣言した。このお父さんは今まで、仕事が忙しいという理由で中学受験に興味を示さなかったそうだが、健君の模試の偏差値が60台から50台に下がったことで、突然「俺の出番だ!」と言い出したという。学生時代の得意科目が数学だったそうで、その日から、自宅での「スパルタ算数塾」が始まった。

 ところが、このお父さんに中学受験の経験がなかったことが災いし、「方程式で解く」ということにこだわったため、健君の頭は大混乱をきたすようになる。というのも、小学校でも塾でも方程式は使わないので、「今までの解き方とは違うことを言われている」ように、健君は感じたのであろう。

 お父さんは、健君が算数の問題を線分図で解こうとすると、横からこんなふうに口出しをしていたそうだ。

「何度言ったらわかるんだ? 入試はスピードだ! そんなまどろっこしいことをして、いくらあっても時間が足りないぞ!」

 そこで、健君はお父さんに言われた通り、懸命に「XやY」を書きながら、問題を解こうとしたらしいが、まったくもって正答にはたどり着けず、余計にお父さんの苛立ちを買ってしまったのだという。
 
 絶対に方程式で解いてはいけないということはないのだが、中学受験の算数の問題は、「今、わかっている条件から、何がわかるか? さらに、そこから、何が考えられるか?」というアプローチで解くものが多く、それは、数学の定理・公式を当てはめて考えるというアプローチとは異なるものなのだ。上位校になればなるほど、手を動かし、試行錯誤を繰り返させるような問題を作成している。逆に言えば、方程式という“裏技”が使えない問題も頻出しているのだ。
 
 一般的に、数学の「定理・公式を当てはめる」といった抽象的なものの考え方ができるようになるには、年齢を重ねないと難しい面もあると言われている。つまり、小学生にとって「数学」の方程式は、理解の範疇を超えるものなのである。むしろ、小学生に求められる「算数」の力とは、条件を視覚化し、試行錯誤しながら正解を導き出す“閃き”。そしてこれこそが「算数」の醍醐味でもあるわけだ。

 健君はもともと算数が得意科目であったらしいが、次第に、これまで間違えることがなかった計算問題でもケアレスミスを連発するようになったという。そしてついに最終模試で、今まで取ったことのない「42」という偏差値を叩き出し、ここでお父さんは初めて、窮状を塾に訴えたそうだ。

 塾長はお父さんに、直ちに「父能研」からの撤退をお願いし、算数と数学の思考法はまったく違うということを指摘した上で、こう言ったという。

「お父さん、受験は偏差値を上げて上位校に合格することも大切ですが、もっと重要なことがあります。それは健君に、得意の算数で、“試行錯誤しながら答えを発見する喜び”を味わわせてあげることです。どうですか? お父さんはこの2カ月、見守り役に徹しませんか?」

 それから、受験本番まで、健君は塾がない日も学習室に通い、「勘」を取り戻すべく、懸命に手を動かし続けたそうだ。

 塾長は、健君が教えてくれる「この問題は、こういうふうに考えてみた」という説明を、「健は大したもんだ! うんうん、このアプローチの仕方は面白い!」と大いに褒め、喜び、そして、その閃きを大切にさせるため、類題を提示したという。こうして健君は、徐々に調子を戻していったそうだ。

 一方、お父さんは健君と一緒にお風呂に入りながら、自分が間違っていたことを素直に詫びたという。

「健、悪かったな……。どうやらお父さんは間違っていたようだ。今、お前がやっている算数は、限られた道具しかない状態で、どうすれば正解に辿り着けるか? ってことを考えることに意味があると、塾長先生に教えられたよ。合格も大事だが、『問題にぶち当たったとき、自分で考えて工夫できる力』っていうのは、テストでいい点を取るだけじゃなくて、人生にとっても役立つ力だと思う。お前ならやれるって塾長先生も言ってるし、お父さんもそう思うよ」

 筆者が後日、塾長に話を聞いたところ、健君とお父さんの一件をこんなふうに振り返ってくれた。

「もともと、健は算数のセンスがある子だったので、自信さえ取り戻せば、残り2カ月でどうにかなると思っていました。小6の秋というのは、これまで蓄えた知識が、ジグゾーパズルのようにバラバラになりがちな時期なんです。夏の疲れもあって、たまたま成績が急降下しただけだったのでしょう。このお父さんも、一時的に迷走されましたが、息子に良かれと思って自ら勉強を見始めたとのこと。自分のやり方は間違いだったと気づき、受験勉強の意義を認め、さらに、息子に対して素直に謝ったってことですから、素晴らしいお方だと思いますよ」

 健君はお父さんが理解して見守ってくれたことも功を奏し、当初から目標としていた偏差値60の第一志望校に入学し、現在、中3である。今年、彼は学園祭で仲間と共に、来年入試の算数の予想問題を発表し、教師たちを唸らせたと聞いている。

元女囚が考える薬物依存治療――ダルクはもっと「経験者」の知恵を生かしてほしいです

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

田代まさしとダルク

 11月6日の田代まさしさんの逮捕はめっちゃ話題でしたが、その後はエリカ様の逮捕もあってか、再逮捕のニュースはひっそりしてましたね。こんどの実刑はどのくらいになるんでしょうかね。 

 今回の田代さんの逮捕は、薬物依存のリハビリ施設「ダルク」のスタッフとして講演活動などをしていたことも、「ダルクの名前を使っておきながらクスリも使っていた」と批判されていました。そもそも以前は「リハビリ施設なんか入らなくても薬物依存は自分で治せる」と豪語していたのに、2回目の出所後に府中刑務所からダルクに直行したのは話題になってましたね。「なら最初からダルクに行けばいいのに……」と言われてもしょうがないかも?

ダルクの代表も過去に覚醒剤を使用していた

 ところで、ダルクについてご存じでした? 改めてダルク(DARC)について考えてみたいと思います。

 公式サイトによると、「ドラッグ(DRUG=薬物)のD、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA、リハビリテーション(RIHABILITATION=回復)のR、センター(CENTER=施設、建物)のCを組み合わせた造語で、覚せい剤、危険ドラッグ、有機溶剤(シンナー等)、市販薬、その他の薬物から解放されるためのプログラム(ミーティングを中心に組まれたもの)を行っております。 薬物依存症は、再犯率が極めて高いものです。しかし、適切なプログラムによって回復していくことが可能です」とあります。

 代表の近藤恒夫さんも過去に覚醒剤を使用していたことはわりと有名ですよね。ウィキペディアによると、近藤さんは、アメリカ人の神父さんが運営していた日本のアル中リハビリ施設の職員を経て、1985年に東京・荒川区に「東京ダルク」を作ったそうです。それが今では全国に90にまで増えているのだとか。

 こういう施設が世の中に必要とされているのはわかりますが、地元では「迷惑施設」として反対運動も起こっているそうです。「ポン中は何をするかわからない」ということでしょうか。ホンマはポン中はおとなしいのですが、「アブナイ人」というイメージがあるのは仕方ないですね。

 実は、私も本を出させていただいたせいか、ダルクともご縁があり、時々お話もさせていただいています。それで知ったのですが、ダルクのスタッフの方は全員が「元薬物依存症」というわけではないんですね。まあたしかに「全員が元ポン中」というわけにもいかないですかね(苦笑)。いろんな方がスタッフとして関わっていらっしゃるんですよ。

 もちろん薬物依存になんかならないほうがいいに決まってますが、薬物依存のホンマの苦しさとかは、経験のない方にはわかりません。もっと「当事者」をたくさん入れて、意見を反映されたらどうですかね。たとえば私とかね(笑)。いつでも相談に乗りますよ。

 ダルクは有名なんですから、知名度を生かして、いろいろできることはあると思います。あと、「薬物依存症」は、れっきとした病気です。田代さんもホンマ病気なんやなと思いました。治すには努力や根性だけではムリで、ちゃんと治療を受けることが大事です。

 あとは、居場所や生きがいですね。私は守りたいものがたくさんあるので、なんとか立ち直れました。でも、田代さんみたいになってしまうと、家族や仕事があってもクスリをやめられません。ガチの「病気」やから。

 とはいえ、病気を治すためのお医者さんが少ないのも問題やそうです。お医者さんもエリートやから「ポン中の治療」なんかしたくないんですね。気持ちはわかりますが、専門医の養成とか、ぜひ国家プロジェクトでお願いします。私もお手伝いしたいです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

※この連載が本になりました!
女子刑務所ライフ!』(イースト・プレス)発売中です。

元女囚が考える薬物依存治療――ダルクはもっと「経験者」の知恵を生かしてほしいです

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

田代まさしとダルク

 11月6日の田代まさしさんの逮捕はめっちゃ話題でしたが、その後はエリカ様の逮捕もあってか、再逮捕のニュースはひっそりしてましたね。こんどの実刑はどのくらいになるんでしょうかね。 

 今回の田代さんの逮捕は、薬物依存のリハビリ施設「ダルク」のスタッフとして講演活動などをしていたことも、「ダルクの名前を使っておきながらクスリも使っていた」と批判されていました。そもそも以前は「リハビリ施設なんか入らなくても薬物依存は自分で治せる」と豪語していたのに、2回目の出所後に府中刑務所からダルクに直行したのは話題になってましたね。「なら最初からダルクに行けばいいのに……」と言われてもしょうがないかも?

ダルクの代表も過去に覚醒剤を使用していた

 ところで、ダルクについてご存じでした? 改めてダルク(DARC)について考えてみたいと思います。

 公式サイトによると、「ドラッグ(DRUG=薬物)のD、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA、リハビリテーション(RIHABILITATION=回復)のR、センター(CENTER=施設、建物)のCを組み合わせた造語で、覚せい剤、危険ドラッグ、有機溶剤(シンナー等)、市販薬、その他の薬物から解放されるためのプログラム(ミーティングを中心に組まれたもの)を行っております。 薬物依存症は、再犯率が極めて高いものです。しかし、適切なプログラムによって回復していくことが可能です」とあります。

 代表の近藤恒夫さんも過去に覚醒剤を使用していたことはわりと有名ですよね。ウィキペディアによると、近藤さんは、アメリカ人の神父さんが運営していた日本のアル中リハビリ施設の職員を経て、1985年に東京・荒川区に「東京ダルク」を作ったそうです。それが今では全国に90にまで増えているのだとか。

 こういう施設が世の中に必要とされているのはわかりますが、地元では「迷惑施設」として反対運動も起こっているそうです。「ポン中は何をするかわからない」ということでしょうか。ホンマはポン中はおとなしいのですが、「アブナイ人」というイメージがあるのは仕方ないですね。

 実は、私も本を出させていただいたせいか、ダルクともご縁があり、時々お話もさせていただいています。それで知ったのですが、ダルクのスタッフの方は全員が「元薬物依存症」というわけではないんですね。まあたしかに「全員が元ポン中」というわけにもいかないですかね(苦笑)。いろんな方がスタッフとして関わっていらっしゃるんですよ。

 もちろん薬物依存になんかならないほうがいいに決まってますが、薬物依存のホンマの苦しさとかは、経験のない方にはわかりません。もっと「当事者」をたくさん入れて、意見を反映されたらどうですかね。たとえば私とかね(笑)。いつでも相談に乗りますよ。

 ダルクは有名なんですから、知名度を生かして、いろいろできることはあると思います。あと、「薬物依存症」は、れっきとした病気です。田代さんもホンマ病気なんやなと思いました。治すには努力や根性だけではムリで、ちゃんと治療を受けることが大事です。

 あとは、居場所や生きがいですね。私は守りたいものがたくさんあるので、なんとか立ち直れました。でも、田代さんみたいになってしまうと、家族や仕事があってもクスリをやめられません。ガチの「病気」やから。

 とはいえ、病気を治すためのお医者さんが少ないのも問題やそうです。お医者さんもエリートやから「ポン中の治療」なんかしたくないんですね。気持ちはわかりますが、専門医の養成とか、ぜひ国家プロジェクトでお願いします。私もお手伝いしたいです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

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「考え方の違いが自分たちを救うかもしれない」“自己肯定感高い中国人マンガ”が生まれた理由

 近頃Twitterでたびたびバズっている特徴的なマンガがある。白いウサギが中国や台湾の人々の流行や発言を紹介し、「楽しく生きよう!」と語るマンガだ。

 4万リツイートされたこのツイートを、タイムライン上で見たことがある人も少なくないのではないだろうか。描いているのは、イラストレーターのよねはらうさこさん。中国・台湾カルチャーに明るく、そうした「異文化」を紹介することを旨として活動している。よねはらさんはなぜTwitterでこうした発信をする道を選んだのだろうか?

――中国、台湾カルチャーを紹介するマンガをTwitterにアップするようになったきっかけを教えて下さい。

よねはら 元からライター兼イラストレーターとして活動していたんです。今みたいな形でTwitterにマンガをあげるようになったのは、2018年頃からですね。それ以前は、カルチャー紹介というよりは、友人との旅行をレポマンガにしているくらいでした。そこから、iPad proを手に入れて「もっとマンガを描きたい!」と思ったのがきっかけですね。

――なるほど、iPad ProとApple Pencilで作業がはかどるようになったというイラストレーターやマンガ家の話は耳にします。やはり便利なんですか?

よねはら iPad Pro、最高ですよ~! 絵を描くストレスが全然なくて、超おすすめです! ……ちょっとiPadの宣伝みたいですね(笑)。気軽に描いてすぐアップできるので、マンガを描くにあたって、新鮮な気持ちやスピード感を大事にするようになりました。

――Twitterマンガのスピード感ってありますよね。いわゆる「プロのマンガ家」を目指していた時期はあったのでしょうか?

よねはら 私はすごく絵がうまいわけでもないですし、「プロを目指すぞ!」みたいなテンションではなくて、「伝えるツール」としてイラストやマンガがあったというか。文章や映像が得意だったらそっちに行っていたでしょうし、私の中で最適なツールがマンガだったんです。

――そして、中国や台湾についてのマンガが拡散されるようになったと。では、よねはらさんがアジア圏のカルチャーと深く接するようになったのは、いつからなのでしょうか?

よねはら もともと小さい頃から、父の仕事の関係で、外国の方と触れ合うことが多かったんです。海外に行く機会も多かったし、父の友人の外国人が日本に遊びに来ることもあって。だから、自然と自分の日常の中に「外国の人」がいる環境だったんですね。

――なるほど。

よねはら そんな中で、父の中国関係の仕事が増えていき、母も元から中国、台湾カルチャーが好きだったこともあり、一緒に中国語教室に通っていくうちに、また友達が増えて……という感じですね。友達ができると語学力って向上するじゃないですか。そうやってどんどん中国の人や文化に触れるようになると、近い国なのに考え方が全然違うことが面白くて、「この違いをシェアしたい!」と思うようになりました。

――それは、よねはらさんのマンガにも現れていますよね。

よねはら 自分たち日本人が持っていない、「中国の良い部分」を皆にも知ってほしかったし、「違う」からこそ、素敵な影響を受けることができると思ったんです。私は東京出身なんですが、特に都心部だったということもあってか、あまり地域性を感じられたことがなくて。「なんでもあるけどなんにもない」というか。

――いま東京はオリンピックを控えて、観光、インバウンドに力を入れて再開発をしていますが、よねはらさんとしては地域としてのオリジナル性を感じないと。

よねはら 現在は大阪に住んでいるんですけど、大阪や中国には地域性の強さを感じるんです。マンガにも描いたことがありますが、中国の友達はどこ出身でも「ウチの地方は最高だからおいでよ」って言うんです。でも私は「東京は最高だからおいでよ」と思えなくて。下町に住んでいればまた違ったかもしれないけど、都心部にいたわたしが自信を持って連れていけるのは渋谷のスクランブル交差点ぐらいしかないかも(笑)。だからそういう地域性の強さに対して憧れがあります。

 

――日本国内の中国のイメージって、この数年で二極化しているように感じます。以前からあるネガティヴ・ヘイト的なイメージと、最近は「中国スゴイ! 進んでる! それに比べて日本は……」的な言説も目立ちます。

よねはら 今でも、私のマンガの内容とは直接関係ない、中国嫌いのコメントは届きますね。私もニュースだけを見ていたら、そんなイメージを持っていたかもしれない。それに、皆が中国を知る機会が増えたから「スゴイ」という意見も増えたのかな。とはいえ、「中国最高! 日本ダメ!」みたいなのも違うと思うし、私としては、お互いにいい影響を与えながら、国と国の仲はともかく、人同士が仲良くなれたらいいなと思っています。

――何万リツイートも拡散されると、ちょっとした商業メディアに掲載されるよりも「見られる」機会があると思います。ポジティヴな意見もネガティヴな意見もダイレクトに、作家個人に集まりがちです。

よねはら 激しく「炎上」してしまったこともあります。とても反省しているのですが、伝えたい気持ちが先行して強い言葉を使ってしまったせいで、私の考えていることがうまく伝わらなくて。私自身は「人類が平和になるためにはどうしたらいいか」とわりと本気で考えているのですが、過程をないがしろにしてしまうと自分の考えていることが違った形で受け止められてしまう。もともと賛否両論あるだろうなとは思っていましたが、「差別主義者だ」といった人格を否定するコメントがたくさん届いたときには、「もう生きていては許されないのでは」ってくらい堪えました。わたしだけではなく、きっといろんなジャンルの人がSNSをきっかけにそんな気持ちに陥っているのかも。もっと表に出ている人はさらにたくさんの鋭い言葉を浴びているのかも、といろいろ考えるようになりました。私自身も、言葉で人を活かすことも殺すこともできるということは忘れずにいたいですし、SNSに関わる人すべてに知っていてほしいです。

――その一方で「これはバズってよかった」と思うマンガや記事はありますか?

よねはら 中国の人の考え方や生き方についてのマンガは、バズってよかったと思います。今って皆が日々生きづらさを感じていて、特にSNSではあらゆるところでさまざまな争いが起こっているじゃないですか。好きでSNSやってても「なんか疲れるな」ってことはある。そんな中で、中国の子たちと話していると、自己肯定感の高さを感じることが多くて。この「違い」が自分たちを救うかもしれないと、マンガを描いているところはあります。もちろん、「全部中国の真似をしろ、中国人になれ」なんてことは言ってなくて、「こういう考え方があるよ」と知ることで、日本での生きづらさが少し軽くなるんじゃないかとシェアしていきたいんです。実際に「気持ちが軽くなった」「元気が出ました」なんて感想をもらえると、やっててよかったって思いますね。

――ちなみに、最近気になっている、シェアしたいと感じる中国カルチャーはありますか? 例えば、先日の「独身の日(中国では、11月11日が1が並ぶことで『独身の日』と呼ばれ、大規模なセールが開催される)」は、中国全体で盛り上がっていたようですが(※取材は11月下旬)。

よねはら すごく盛り上がってました! 1時間で何兆円も動いていたみたいです。この日を盛り上げるためのコンサートもあったりして、一大イベントですよね。中国にいる友だちからも盛り上がっている様子は伝わってきました。シェアしたいカルチャーでいうと、ガジェットやファッションが、最初は他国の真似から入っていても、どんどん現地ナイズされていくのが興味深いです。だけど、私はやっぱり「考え方」が一番面白いと思います。

――最後に、マンガを描く上での目標はありますか?

よねはら 最終的には、私のマンガに出ている友達を、読者の方の友達くらいに思ってほしいんですよ(笑)。「知っている人のいる国」って親近感がわくと思うんです。私が友達をマンガで紹介していくことで、もっと中国を身近に感じてもらえたらうれしいですね。

(取材・構成:藤谷千明/編集:斎藤岬)

●よねはらうさこ
イラストレーター。Twitterやnote、ブログ等で中国を中心とした異文化を紹介するマンガやイラストを発表し、人気を博す。
@yoneharausako