いよいよクライマックスを迎えようとしている連続ドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日系)。同作は、男性同士の恋愛を描くボーイズラブ(BL)作品で、社会現象になるほどの大ヒットとなった2018年4月期『おっさんずラブ』のシーズン2なのだが、制作発表当時から、一部ファンの間で物議を醸していた。
というのも、『おっさんずラブ』(以下、シーズン1)は、「天空不動産」の社員である主人公・春田創一(田中圭)が、部長である黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と後輩の牧凌太(林遣都)に恋心を抱かれ、最終的に牧と両想いになって結ばれるというハッピーエンドを迎えたものの、『おっさんずラブ-in the sky-』(以下、シーズン2)では、舞台や設定、キャラクター、そしてキャストまでもが大幅変更に。春田と黒澤という役柄は残り、田中、吉田も続投しているが、牧と彼を演じる林は姿を消し、舞台も「天空ピーチエアライン」にチェンジ。CAの春田をめぐり、キャプテンの黒澤と副操縦士の成瀬竜(千葉雄大)、整備士の四宮要(戸次重幸)が四角関係を展開するというストーリーになったのだ。
これに、春田と牧の物語を愛していた一部ファンは激高。放送前から「私の大好きな『おさラブ』がなくなってしまった」「天空不動産の春田と牧の続編が見たかったのに」「シーズン2は、ほかのドラマとして放送してほしい」などの悲痛な声がネット上に噴出し、放送が始まると、一部から内容自体にも批判が飛び交うようになった。果たして、彼女たちは、何に憤り、悲しんでいるのか――今回サイゾーウーマンでは、シーズン2に物申したいという3人の女性に集まってもらい、座談会を開催。この3人は「腐女子」というバックボーンを持ち、この炎上の原因は「BL作品としての“タブー”を犯したこと」と持論を展開する――。前編では、シーズン1大ヒットの理由をあらためて考察してもらうとともに、なぜシーズン2で一部ファンが大荒れになったのか、話をしてもらった。
【座談会参加者】
Aさん:中学時代から2次元、3次元問わず愛好。田中圭の顔が三度の飯より好き。しかし、シーズン2での春田に「イライラが止まらない」。
Bさん:林遣都の演技力に魅せられてシーズン1のファンに。過去に『おそ松さん』(テレビ東京系)にどハマりしていたが、シーズン2で熱が冷めた経験があり、「またこのパターンか」と嘆いている。
Cさん:BLも少女漫画も大好き。牧と春田の関係性に萌えていたが、シーズン2の成瀬と春田には「心がまったくなびかない」と漏らす。
――最初に、皆さんが『おっさんずラブ』にハマッたきっかけを教えてくれますか。
A 私はシーズン1の放送が告知されたとき、「絶対見ない」と思ってたんです(笑)。BLのことを知らない人が、「腐女子はこういうのが好きなんでしょ?」と安易な気持ちで作ったドラマなのではないかなと、邪推してしまって。腐女子は少年マンガを読んで、「このキャラとこのキャラはできてる」と妄想を働かせて楽しむ生き物。だから、腐女子用にあらかじめ作られたものに、興味をそそられないんですよ。でもその半面、気になってはいたので、公式サイトを覗いてみたら、「ん? めちゃくちゃ“受け”の顔をした人がいるぞ?」と。それが、田中圭だったんですけど(笑)。それで、2016年末に放送された単発ドラマを見たら、田中圭がめちゃくちゃ可愛くって、シーズン1初回から見ることにしました。
B Aさんは“牧春”の方なんですね。私はシーズン1に関しては後発組。最近あんまりハマれる作品がないなぁと手持ち無沙汰で、Amazon Primeを物色していたときに、「あぁ最近話題になってるやつね」と思って見始めたのがきっかけですね。気づいたら一晩で一気見(笑)。私、そもそも「ショタ」の人なんで、サラリーマンは許容範囲外なんですが、黒澤部長のコメディ部分が笑えたし、春田と牧のBLストーリーも面白く見ることができました。ちなみに私は、“牧春”も“春牧”もどっちも好きです。
C 私も最初はまったく興味がなくて、でも腐女子界隈で話題になってるのを知って見始めました。“牧春”のカップリングって、BLというか、少女漫画においても超王道。なので、途中からでも「あ、はいはいこれね!」「100億回見てきたやつ」って感じで、入りやすかったんです。
B 「カッコよくて優秀でクールで、でもちょっとこじらせてる」牧と、「天真爛漫でおっちょこちょいで一生懸命で、誰にでも愛される」春田のカップリングは、もう王道中の王道。
A そうそう。シーズン1がなんであんなに大ヒットしたかって、私は「王道だったから」に尽きると思うんですよ。教科書通りだから、大半の腐女子が安心して見られたんじゃないかなって。女性キャラクターも教科書通りという印象。荒井ちずは、春田の幼なじみで、彼のことをよく知っていて、淡い恋心を抱いているんだけど、でも彼の幸せを思って背中を押す……これぞBLのモブ女(笑)。ストーリーも教科書通りですよね。途中いったんはくっつくんだけど、ゲイとノンケゆえのすれ違いによって関係が崩れかけ、でも最終的には「やっぱりお前がいい」と気づいてハッピーエンド。
C 最後の最後にくっつくんじゃないんですよね(笑)。やっぱり、延々すれ違いを見せられてもつらいだけだし、要所要所に胸キュンシーンがないと。だから、いったんくっつく展開は王道なのかなと思います。みんな、風邪を引いた牧を春田が看病するシーン、鬼リピしたでしょう?
B もちろん!! あれが見たいんですよ、腐女子は(笑)。大好きな2人が、イチャイチャしてるところが見たい。私はシーズン1って、林遣都の演技によって支えられていたと思ってるんです。湿度があるんですよ、彼の演技には。第4話で、春田が食事中の牧に「俺も食べたい」と言ったとき、「あげないよ」と意地悪く返すシーンがあって、この「あげないよ」はアドリブなんですが、その言い方や表情、視線、全てから牧の春田への感情が伝わってきて……牧の心の機微を感じられたのが、腐女子としてシーズン1にハマッた理由ですね。
――大盛り上がりの中、終了したシーズン1でしたが、その後劇場版を挟んで、シーズン2の詳細が告知されるとファンは大騒ぎになりましたよね。
A シーズン2の詳細が発表されて、突然ファンが爆発したわけではないんですよ。一個人の視点からですが、最初にファンがざわついたのは、シーズン1の最終回予告だったと思っています。
C あれは荒れた~(笑)。最終回予告で、春田と黒澤部長の結婚式シーンが流れたんですよ。牧春のハッピーエンドを期待していた腐女子が大荒れに荒れて。これってつまり、コミケで「〇〇×●●」というカップリングが表記された同人誌を買ったのに、家に帰って読んでみたら、別のカップリングだった……みたいなことですから!
A しかも、春田が黒澤部長を受け入れているように見えたのがよくなかった。「それでいいのか! 春田!」って。結局、牧とハッピーエンドになったからよかったですが、あの時、公式SNSアカウントに抗議メッセージを送ってたファンも多かったから、テレ朝の製作陣は「腐女子こわっ」と思ったかもしれませんね(笑)。
B その後の劇場版はどうでしたか? もちろん「面白かった」という人も多かったとは思いますが、私が見たいものではなかったですね。もっとイチャイチャしてる2人の幸せな日常を拝みたかった。製作陣は、黒澤部長のコメディ要素が世間にウケてると思っているのではないでしょうか。
A 春田が寝坊する、牧が朝ご飯を作る、2人で一緒にそれを食べて出勤する、同僚から「ラブラブだね~」とやいのやいの言われる……そういうのが見たかったのに! 派手な爆破シーンなんて別にいらなかったんですよ。
B テレ朝って刑事ドラマや特撮ドラマに長けているから、お家芸である爆破をやりたくなっちゃったのかもしれません。あと劇場版は、「春田と牧の物語が続くのかな?」と期待させるようなラストでしたよね。シーズン2は「田中圭以外のキャストが未定」と伝えられていて不安だったこともあり、あのラストに希望を見いだしたファンは少なくなかったのでは。なのに、シーズン2の詳細が発表されたら、牧がいなくなっていて、世界観も全然違っていて、でも、春田と黒澤は存在しているという。「お前らは誰だ?」と思いました。
C Twitterの公式アカウントがそのままシーズン2に引き継がれたり、インスタグラムの「武蔵の部屋」の過去投稿が消されたのも悲しかった。私たちの大好きなあの世界が、上書きされていく、なかったことにされていく……という。
A 本当に、日々公式から燃料がドバドバ投下されているような感じで、大炎上でしたよね。田中圭がシーズン1の放送中から、ブログで「遣都と遊んだ」などと報告してくれていたんですけど、その影響なのか、どこか春田と牧がドラマ内だけでなく、現実世界にも存在して仲良くしているような錯覚にとらわれていたというか。だから、そんな2人が引き離されてしまう、なかったことにされてしまう、とショックを受けた部分もあったかもしれません。
B 正直私は、その感覚は理解できないんですよ。2次元にしかハマッたことがなかったから、役はあくまでも役だと思うし。でもAさんの話を聞いて、その感覚の人がシーズン2の発表を受けたら、死ぬな、と思いました。
C 私は、一部のファンの行動に耐えられなくて。11月1日の牧の誕生日に、新聞にお祝い広告を出すというファン主導の企画があったじゃないですか。この世から消されかかっている牧の存在を知らしめたいという切実な気持ちはわかりつつも、一部のファンが牧を私物化していないかと思ってしまって。オタクのエゴというやつですよね……。
――シーズン2が荒れに荒れた理由は、やはり春田と牧というカップリングを崩したということなのでしょうか。
A そうですね。腐女子の最大のタブーを犯してしまったと思います。結局『おっさんずラブ』が売れたんじゃなくて、“牧春”“春牧”というカップリングが売れたんですよ。そこのところを、テレ朝は勘違いしたのではないでしょうか。私にはやっぱり、パラレルワールドって理解できない。
C 多分、シーズン2も楽しめているファンは、シーズン1とは完全に別物として見ていますよね。だから、これだけは言いたい、テレ朝さんよ、ドラマのタイトルと役名を変えてくれ!
B そもそもの話していいですか? どうして私たち腐女子って、カップリングありきなんでしょうか。私自身、どうしてこんなにカップリングを重要視しているのかなって。もうそういうもんだ! とも感じてるんですけど。
C 私の場合、「この人」と「この人」の関係性に萌えているから、カップリングありきで物語を見るのかなと思います。私は腐女子ですけど、年上女性と年下男性のカップルモノも好きなんです。シーズン1の蝶子さん(黒澤の元妻/大塚寧々)とマロ(春田の後輩/金子大地)の年の差カップルも大好きでしたね。世間的に、女の方が年上だと、偏見の目で見られがちじゃないですか。でも物語の中で、そういった2人が心を通わせていく姿に胸がときめくんですよ。
A 私は蝶子さんとマロのラブストーリーは、正直「そこいる?」と思っちゃったんですけど(笑)。シーズン1の脇役キャラに関しては、武川さん(天空不動産営業所主任、牧の元恋人/眞島秀和)だけが、なぜか最後まで幸せにならないのも気になってたし、いろいろ思うところはあるんです。でも、やっぱり“牧春”のカップリングが大好きだから、見続けていた。この“カップリング”ありきというのは、何かもう性癖としか言えませんね。
B 性癖っていうのは、そのままセクシュアルな意味での?
A そうです。私、BLにセックスシーンは絶対にほしい腐女子なんです! BLマンガでも、もう1ページ目からセックスシーンでいい。セックスは2人じゃないとできないですし、どっちが受けでどっちが攻めかというのは、もう絶対考えますよ。カップリングありきというか、私の性癖ありきで、物語を見ているという感じですね。まず自分の確固たる性癖があって、そこに当てはまる人を2人見つけてカップリングを作る、だから、一度できたカップリングは絶対壊したくないと思ってしまうんです。
C たぶんAさんと私が言ってることって、だいたい同じことだと思いますよ。腐女子には、私の好きな「組み合わせ」というものがあるんですよ。シーズン1の春田と牧は、多くの人が好きな……例えば「カレー」みたいなものだったから、あそこまでヒットしたのでしょうね。
B シーズン2でも、「カレー」みたいなカップリングを作れればよかったんですけど……どうですか? 私はうまくいっているとは思えないですね。
――では後編で、「シーズン2のここに物申す!」という点を聞かせていただきましょう。
(後編につづく)