バイブレーターやデリケートゾーンのケア製品を扱う女性向けセルフプレジャーブランド「iroha」が、百貨店である大丸梅田店に常設店をオープンさせたことが話題になっている。女性の性欲やセルフプレジャーがタブー視される状況に変化が生じだしたと見えるが、アダルトグッズメーカーはそれをどう捉えているのか。前編では、「iroha」広報チームに取材を行い、「セルフプレジャー=ヘルスケア」という空気が日本で生まれつつある実感について語ってもらったが、後編では、アダルトショップを展開するとともに、自社メーカーからさまざまなグッズを販売している「ワイルドワン」の広報・泉由香氏に話をお聞きした。
若い世代は堅実、だからこそアダルトグッズを使うことも?
――近年、“女性の性欲”や“女性のセルフプレジャー”に対する世間の反応に、変化が生じていると感じることはありますか。
泉由香氏(以下、泉) ありますね。この仕事を通して実感しているのは、「アダルトグッズに抵抗がない20代女性が増えている」ということ。「パートナーとのセックスをより良くしたい」とか「自分が気持ちいいスポットを知っておきたい」とか、目的を持って購入する女性が、特に若い世代に増えたように思うんです。「ワイルドワン」は通販サイトも展開していますが、店舗に足を運んで、現物を見ながら選ぶという方も結構いらっしゃいますよ。自分好みの洋服を選ぶのと近いような感覚で、アダルトグッズを購入しているようにも感じます。
いまの20代は、物心ついた頃から、スマートフォンやパソコンが身近にあった世代。ちょっと検索すればアダルトな情報が簡単に手に入り、エッチな動画も無料で見られるので、彼女たちは早い段階から幅広いアダルト情報を知識として持っています。また、そのような方法で得られる情報は、ニッチだったりハードだったりすることが多いので、バイブや電マを持っている/使っているくらいは、そんなに特別ではない、普通のことだと感じているのかもしれません。実際、若い世代ほど、アダルトグッズを購入して使っていることを普通に話しますし、感想なども恥ずかしがらずに聞かせてくれますよ。女性がSNSなどにアダルトグッズを使用した率直な感想を上げ、それを見た男性が、より女性に好まれる方を選ぶようになった……という話もあるくらいです。
――「いまの若い子はセックスに興味がない」とも言われていますが。
泉 確かに、いまの若い世代は「堅実」という面はあると思います。ただ、だからこそ、欲求のままよく知らない男性とセックスをして、性病を移されたり、望まぬ妊娠をしたり、トラブルに巻き込まれたりする心配を抱くくらいなら、「アダルトグッズを使ってみよう」となる人もいるのではないでしょうか。性経験のない女性、見るからに真面目そうな女性も、店舗にアダルトグッズを買いに来ますよ。私もこの仕事を通して、「無駄なセックスをして心をすり減らすくらいなら、グッズを使ってください」と若い世代に向けて発信し続けています。
――アダルトショップに足を運ぶ若い世代は、特に「性に対する意識が高い」という傾向もあるのかもしれません。そういった人にとって、大丸梅田店での「iroha STORE」常設店オープンは、どのように捉えられていると思いますか。
泉 若い世代には「百貨店でバイブレーターが販売されているくらいでは驚かない」という人も多いのではないでしょうか。ただ、百貨店のターゲットは年齢層が高めなので、その世代の方にとってはサプライズだったのかなと思いますね。
――最近メディアでは、セルフプレジャーをヘルスケアと捉え、“健康や美容にいい”と取り上げられることが増えてきました。
泉 健康や美容に結び付けることで、セルフプレジャーに抵抗がある方の罪悪感が払しょくされる面もあるのかなと思います。ただ、私としては“趣味の1つ”として捉えるくらいがいいのかなとも感じています。「健康にいい」という根拠を明らかにするのは難しい面もあるので、それより「好きなことをすると、気分がいいし、楽しいし、すっきりするし、ストレス解消にもなるよね」といった捉え方でいいのかな、と。筋トレとか、読書とか、いろんな趣味の中の1つにセルフプレジャーという選択肢もあって、やってみたければやってみればいいし、体や心の負担になるならやらなければいい。若い女性たちは、自然な好奇心で、アダルトグッズを使っているのかなとも思います。
――趣味と捉えれば、無理をすることもなさそうですね。
泉 セルフプレジャーって、言ってみれば“自主練”なんだと思います。痛点と快感は紙一重、初めは痛くても、繰り返し刺激を与えるうちに研ぎ澄まされて、痛みが快楽に切り替わる瞬間がある。その扉を開きやすくしてくれるのが、アダルトグッズ。一方、どこをどうすれば気持ちいいかを追及する面白さもあって、想像以上の快感が得られたりすると、もっと違うグッズが欲しくなる。“筋トレ”みたいなものでもあるんですよね。ただ、そもそもセルフプレジャーが好きではない人もいるし、楽しめない人もいる。筋トレだって、体を動かすのが苦手だったり、嫌いな人はやらないでしょうから、それらと同じ感覚で受け止められたらいいと思います。
少し前までは、女性向けアダルトグッズは、「女性の性の解放」と紐づけられ、革新的でリベラルなものといったイメージもありましたが、今はもっとピュアに、日常に溶け込んでいる感じなのではないでしょうか。若い世代の間では特に、セルフプレジャーは、「気持ちいい」という素直な感覚で楽しむものと認識されるようになっていると思います。

――女性のセルフプレジャーに対する意識が変化してきたことに伴い、アダルトグッズの傾向なども変わってきているのでしょうか。
泉 グッズが多様化してきていると感じます。例えば、弊社で出しているバイブレーター「みちしお」や「さざなみ」は、女性の意見を取り入れており、“本物”に近い挿入感にこだわっているほか、見た目もグロテスクさのない真っ白なデザインになっています。また、デリケートな部分に触れる物だけに、“安心安全の日本製”という点からも、多くの女性から支持をいただいているんです。しかしその一方で、男性に好まれる傾向にある「強そうなデザインのゴツゴツしたバイブが好き」という女性もいるし、はたまた同性愛者の女性は、“本物感”に抵抗があるとのことで、男性器をイメージさせない抽象的なバイブを好まれる方もいらっしゃいます。そのほか、性感帯を開発したいという女性は、部位ごとの開発に特化したバイブを求めていますし、本当に多種多様になってきていると思いますね。これが「女性向けです」とひとくくりにできるものではありません。性感帯も性癖も、またアダルトグッズを購入する目的も一人ひとり違います。今後、さらに多種多様なグッズが登場することで、「自分の好きなものを選べる」状況が生まれるといいなと思います。
――今後、性に対する意識はどのように変化していくと思いますか。
泉 これまで、性的な事象は「恥ずかしいこと」「いけないこと」と捉えられてきましたが、今の若い世代を見ていると、その意識はどんどん薄らいでいくのではないかなと思いますね。それはとてもいい傾向だと感じます。性欲は、食欲や物欲など、ほかの欲求と大差はなくて、セルフプレジャーがしたい、セックスがしたいと思うことも、当たり前の欲求だと思うんです。だからこそ、タブーをなくし、より日常的なものになっていってほしいですね。