関西ではすでに和牛やアキナと並び、抜群の人気を誇るアインシュタイン。そして現在、ボケである稲田直樹の一度見たら忘れられない鮮烈な「顔面」と清らかなメンタルのギャップがバラエティでもてはやされ、その知名度はいよいよ全国区に。しかし、いわく「100点のブス(稲田<)」と「30点の男前(河井ゆずる)」コンビが奏でるネタは、驚くほどに正統派で本格派だ。稲田の顔面という強すぎる武器を上手に出し惜しみしながら、東京で売れていく仲間たちに「おこぼれちょうだい」とお願いしながら、虎視眈々とトップを狙う――。
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――このインタビューのすぐ後にも、別のお仕事が控えていると……次期ブレイク候補として最近特にお名前を伺うのが、アインシュタインさんです。
河井 本当に、よくそんなふうには言っていただけるんですけど……ミキとかEXITに比べたら全然。ただ僕たちは1回出た印象がキツいだけで。
――毎週毎週、どこかで見てる印象があります。
河井 めっちゃ残像が残る期間が長いんです。
――タレントとして、それはとても大事なことですね。
河井 そうですね(苦笑)。いいことではあるとは思いますけど。
――特に『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)や『アメトーーク!』(テレビ朝日系)での稲田さんの衝撃は強かったと思います。
稲田 確かに。
――ただネットなどを拝見すると、もしかして稲田さんより河井さんのほうが変わってるという意見もちょいちょい出てきまして。
河井 いやいや、そんなことないですよ!
稲田 河井さんはおかしい。
――カリスマ伝説。
河井 いやいや、ないです。メチャクチャまともです。
――コンビとしては二段階方式というか、関東のお客さんにはまず稲田さんで衝撃を与えて、その後カリスマ伝説が来るという、そういうコンビとしての戦略があるのかなと。
河井 いや、ないです全然。そんな。カリスマ? なんですか、それ。
――ケンコバさんがラジオでおっしゃっていた――(愛用している自転車は水色の車体に前輪だけピンク色のタイヤの「ミンキーモモ仕様」、夏になると蛍光色の黄色いタンクトップに、アメリカ国旗模様の短パンをはいた上、ミンキー自転車に乗って大阪千日前通に現れるなど)。
河井 あぁ、それ全部ウソです! コバさんがちょっと大げさに言わはったのをラジオのリスナーが面白がって、僕らのWikipediaを書き換えただけなんで。
――Wikipediaは、あまりうのみにしてはいけないということですね。
河井 あんまりっていうか、絶対ダメです!
――稲田さんから見て、河井さんはどういう人ですか?
稲田 しっかり者の、頑固者の、そしていい匂いのする……
河井 なんやねん、それ(笑)。
稲田 そんな39歳ですね。
河井 いや、年はええやろ。お前も35やで。
稲田 アイドルのイベントのMCをさせていただいた時に、楽屋口から入ったら、すごいストロベリーのいい香りがするなぁと思って。さすがアイドルのイベントやなぁと思ったら、それ河井さんから出てた匂いやって。
――まさか体臭が……
稲田 イチゴなんです。
河井 妖精か!!
――よしもと男前ランキング、ブサイクランキングに、それぞれがランクインされています。コンビとして、そういう自らのキャラクターは意識されていますか?
河井 いや、意識も何ももうね、変えられない状況なので。(相方に)男前になってくれっていうのも、むちゃな話なので。あとは僕がどう振り切るかだけやとは思う。
――カリスマが……
河井 いやいや、その呼び方やめてください。なんでカリスマ!
――売れてる芸人さんの特徴なのかもしれないんですけど、コンビがお互いに認め合ってるというか。お互い自由にさせて、良さを引き出し合うみたいなところがあるんじゃないかなと。アインシュタインさんにも、そういうイメージがあります。
河井 コンビ組みたての頃は、よく揉めることもありましたけどね。
――もともと稲田さんから誘ったんですよね。
稲田 そうですね、はい。
――どういうところがカリス……河井さんの魅力だと思われたんですか?
稲田 2年先輩で、よくご飯とか連れていってくれてたんです。学ぶところが多いなというのと、あとしっかりツッコんでくれるなぁというところで。それこそリアルな話でいうと、見た目的にもわかりやすいっていうのもあったんですよ。ただ、ジャニーズの方とか俳優の方とか本物の男前の人を目の前にした時に、河井さんってあれ……? 30点やん!!
河井 当たり前やん! そんなもんプロの男前と並んだらそうなるやろ!!
稲田 いや、30点かーい。
河井 お前ブスのプロか知らんけど、俺は男前のプロちゃうから!
稲田 俺ブスの100点やから。
河井 胸張るな、そんなもん。ええことちゃうやろ!
――稲田さんにコンビ組みたいと言われた時、河井さんはどういうふうに?
河井 断ってました、半年ぐらい。
――それはなぜ?
河井 扱いきれへんなっていう。見たことない武器なんで。僕もピンでやろうと思ってたというのもありましたし。
――気持ちが変わったのは?
河井 『M-1』が2010年に終わるっていうのがわかって、出えへんまま終わるのもなぁというのもあったんです。ほんなら1回ちょっと出てみようか、みたいなのでやり始めたのが、きっかけといえばきっかけだと思いますね。
――組んでみて、印象は変わりましたか?
河井 いや、まぁ組んで変わったっていうことはあんまりないですね。もうある程度はわかっていたので。これとやっていくのか、大変やな、って(笑)。
稲田 めちゃめちゃ嫌々やん……
河井 いやいや、違う。最初は大変ですよ、やっぱり。今よりさらにブスやったので。笑えないブスやったかもわからないです、本当に。
――笑えないブスですか?
河井 今よりも暗かったですし、それこそ。
――今は稲田さんのポジティブな部分が結構フィーチャーされていますが、当時はそういう感じではなかったと。
河井 元の性格はそうやったのかもわかんないですけど、表にあんまり出せてなかったのかもわからないですね。
――河井さんが、それを引き出した……?
河井 いや、そういうつもりでもないんですけど。僕も自分のことでいっぱいいっぱいやったので。徐々にっていうことやと思う。いろんな場面でお仕事させていただいたりとか、いろんな失敗をしてやと思いますけど。
――だんだん「あ、こういうふうにやっていけばいいんだな」という、アインシュタインの形に。
河井 そうですね。でも、何をどうしたらっていうのは、ほんまに劇場の出番を1個1個しっかりちゃんと向き合ってっていうのの積み重ねなのかな、と思いますけど。
――ネタも、そこまで容姿のことを引っ張らないですよね。
河井 意識して、っていうわけじゃないんですけどね。ほんまやったら……。
稲田 フリで入れるくらい。
河井 うまいこと入れられるほうがいいのはいいな、とは思ってるんですけど。
稲田 ネタによってはメチャクチャ入れてるし。でも、毎回毎回そんなブサイクいじりばっかりやと、お客さんも胃もたれするんで。
河井 いじり始めたら、僕らの持ち時間である5分じゃ入りきらない。
――あえてつかみでとどめてっていう。
河井 そうですね、ほどよく……。
稲田 そんな感じですよね。35年ブスやから。35年は5分に収まらない。
――しかし、なんとなく容姿をいじることが難しくなっている風潮というか、やりづらくなってきたりとかあるのかな、とも思うのですが。
稲田 そうなんですよ。でもね、自分で言うのはありですよね、たぶん。それすらも危ういっていわれてる世の中で、全部封じられたらどうしよう。
――不安ですか?
稲田 僕は、面白い文化やと思うんですよね。自分の……言うたら普通の人からしたらコンプレックスなところって、やっぱりちょっと面白いところがあると思うんですよ、絶対に。それをちゃんとお仕事として成り立たせるというか。なくなってはいけない文化だと思うんですよね。一番あかんのは、ブスやなぁと思ってるのに言わへんとか。結局、それがバレてるっていうのが一番ダメなことで。大っぴらに言ったら、こんなに楽しい世界があるんだよって言いたいんですよ。
――卑屈さがないっていうのが、稲田さんのすごいところだと思います。
稲田 ただ、自覚が浅いんですよ。見えないじゃないですか、自分で自分の顔って見えないから。たまにほかの人たちと一緒になって誰かの見た目いじったりしてる時にゾッとします、自分で。
河井 ほんまにようあるんですよ(笑)。
稲田 そこは周りに注意されて、注意っていうか「おい、誰が言ってんねん」って言われた時に「天然でやってしまった感」がすごい恥ずかしいっていう(笑)。
河井 ほかの芸人のことをみんなが「おいブスやなぁ」とか「お前なんやねん、その顔」とか、みんなでわぁってわろてる時に、お前ようわろてんな、本当に。
稲田 いや、笑うのはいいけど、ちょっと優位に立って笑ってる時があって、それはちょっと……。
河井 あるな(笑)。
――でも、いいですよね。妙に自覚しすぎている人より。
稲田 自覚したらしんどいかもしれないですよね、もしかしたら。
――そもそもブサイクとかイケメンって、何を基準としているのかって話ですよね。
稲田 確かに。この人ほんまに男前か? みたいな人が男前って言われたりもしてますもんね。
河井 いやいやいやいや、そんな難しい話じゃないですよ。ブサイクはブサイクでしょ! ただこいつは今までにいなかったブサイク芸人というか。ブラマヨの吉田(敬)さんとか、南キャンの山里(亮太)さんもそうですけど、ブサイクという自覚がちゃんとあって、だからやったからこんなつらい思いしてきた、というのがネタになってる。でも、こいつの場合は、自分のことをブサイクと思えてない瞬間が、長所でもあり短所でもある。無自覚、無責任が功を奏してるのかなぁとは思いますけど。普通じゃない、明るいブスという。
――そして何事においても、やっぱり1位になるってすごい。ブサイクラインキングも男前ランキングも。
河井 中途半端よりは絶対いいと思います。でも、男前ランキングのポスターに和牛の水田(信二)がそこそこの顔して写ってるのはどうかしてるな、とは思いますね。
稲田 本当にそれです。わかってない人が、あのポスター作ったんですよ。
河井 水田に関しては、ちょっと納得してない。
稲田 あれですよね、最近成り金デブですよね。
河井 小金持ち成り金デブです。
――和牛さんやアキナさんなどが一足先に認知度を広げていることに関してはいかがでしょうか。焦りなどはありますか?
河井 いや、でも正直あんまりそういうのはないですね。全然違うので。芸風も違いますし、コンビ歴も違いますし。ずっとユニットでやっててお互いの苦労もよくわかってるので、コンテストの予選で自分たちが落ちて2組が行ってる時とかは、もう頼むから上まで行ってくれ、そんで俺ら引き上げてくれよと。
――なるほど。
河井 おこぼれちょうだい、ちょうだいって(笑)。お互いに、それで面白くやっていけたらいいじゃないですか。
――アインシュタインさんの今後の目標は?
稲田 劇場に出続けていたいな、というのはありますね。あんまり普段、お互いしゃべらないんですよ。舞台上のアドリブで、なんかお互い言いたいことを言うみたいな時間があるんですけど、普段しゃべらない分、それがとてもノリノリになったりするんで。
――お互いの言いたいことを舞台でぶつけ合う、みたいな。
稲田 「お、その角度でいじってくる? ほんなら私も言わしてもらいますけど」って感じで、そのへんがたぶん一番生のお笑いの醍醐味だなと思うので。ネタ合わせしてできるものじゃない。アドリブから生まれるというか。
河井 やっぱりテレビ見て育った世代なので、もちろん全国区の冠番組は目標のうちのひとつです。でも、なんやかんやでやっぱり面白い娯楽やと思うんです、劇場っていうのが。こんだけ数ある娯楽の中から、劇場を選んでもらえるようにし続けたいなというのは思いますね。
――わざわざお客さんが見に来るっていうことですもんね。
河井 そうですね。2,000~3,000円のチケットに加えて何万円も交通費かけてきてくれたりとかっていうのは、やっぱりありがたいですし。
――最近は「第七世代」という言葉をよく聞きますが、お2人的に、そのくくりはどう思われますか?
河井 いや、どうですかね。僕らは意識せずに、やとは思うんですけど。入れるんやったら入りたいなとは思いますね(笑)。
稲田 迷惑してるんですよ。僕らが若くない芸人みたいになるんで。第七世代っていうくくりがあるせいで、それに入れなかった芸人が時代遅れみたいになるでしょ。
河井 でも、まぁ今は漫才劇場も、一応大阪の若手が出る劇場ですけど、もうおっさんばっかりです。
稲田 そうなんですよ。
河井 ゲームコーナー終わった後、もうみんなはぁはぁ言ってるんです。立たれへん、みたいな状況なので。
稲田 第7世代って言いだしたの、霜降りのせいやですよね。一度2人でご飯食べに行って、第七世代についてしっかりお話しないといけませんね。「どう思ってるの?」って。
河井 その発想がおっさんや(笑)。
(取材・文=西澤千央)