テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(10月27日~11月2日)見たテレビの気になる発言をピックアップします。
所ジョージ「(肩書は)テレビの人でいいよ。テレビに向かって何かやるんだから」
その昔、ある番組に出ていた野村沙知代の肩書が「エッセイスト」だった。もちろん、そういう仕事もしていたのだし、野村のメディアへの露出が増えたひとつのきっかけは文筆業だったのだから、肩書に詐称の疑いはない(学歴とは違って)。ただ、「タレント」ではいけないのか、とは思った。誰のどういう意向で番組出演時の肩書が決まるのか知らないけれど、共演していたスザンヌらと同じ「タレント」ではダメだったのだろうか。
野村の場合はともかくとして、確かに、芸能人には肩書問題というのがあるのだと思う。職業欄になんと書けばいいのか迷う、という話はテレビでよく聞く。肩書をどうするかは、「どう見られているのか」以上に、「どう見てほしいのか」という自意識を時に露呈してしまうから厄介だ。肩書は第三者が決めるものだから自分でどうなるものでもない、最終的にはマジシャンってことにしといてくれないか、そう言って笑う高田純次の境地にはなかなかたどり着けない。だから「エッセイスト」とかつい言いたくなってしまう。
他方で、複数の肩書を持ち、それを行き来することで底上げ効果やロンダリング効果を生んでいるケースというのもあるように思う。「タレント×政治家」という組み合わせが、その筆頭だろうか。要は、東国原英夫のことだけど。
そんな中、この人ほどジャンルが不定で、かつ肩書の境界を超えることに特別感を出さない人もいないかもしれない。所ジョージである。
司会をしたり、歌ったり、演じたり、仕事場(世田谷ベース)でいろいろ作ったり。そんな所は、自分の肩書についてどのように捉えているのか? 27日放送の『情熱大陸』(TBS系)で密着されていた所は、肩書を尋ねられて次のように答えた。
「テレビの人でいいよ。テレビに向かって何かやるんだから」
多岐にわたる活動を繰り広げている所にとって、「これ」という肩書は定めづらい。ならばいっそのこと、テレビでいろいろやるのだから「テレビの人」。なるほど、確かに適切なのかもしれない。
もちろん、テレビに映る自分に対する徹底した客観視と、その客観的な自分のイメージをテレビの中で完璧にコントロールする技術、にもかかわらず何にも拘束されていないように見える身のこなしでもって長年テレビに映り続けている所は、ただ単にテレビに映っている人という意味での「テレビの人」ではない。卓越したテレビ向けのパフォーマンスを体得した人という意味での特別な「テレビの人」といえるだろう。いや、後者の特別な意味での「テレビの人」を強調してしまうのが、まさに所ジョージ的ではないわけだけれど。
もちろん、時代の流れの中で、テレビで活躍する芸能人の職場はますますテレビだけに限られなくなっている。「テレビの人」を自称しつつ、必ずしもテレビに映るわけでもない何かを世田谷ベースで毎日作り続けたり、自分で編集した動画をYouTubeに上げたりしている所の存在自体が、その証左だろう。
だれど、どれだけ時代が流れても、簡単に変わってはいけないものもある。野村沙知代がまずもって「エッセイスト」として回顧されるような歴史の修正が行われたときには、テレビウォッチャーとしてちょっと待ってと言いたい。――って、「テレビウォッチャー」ってなんだ。
肩書といえば、スピードワゴン・小沢(一敬)が、かつてこんなことを言っていた(『ボクらの時代』2016年3月20日、フジテレビ系)。
「芸人って言われても……芸って言われてもな、って思う時ない? だから芸人じゃないんだよね。特にオレなんか、芸人じゃないのよ。マジ困るんだよね、だから。職業欄マジ困る」
自分に何か芸があるわけではない。そんな自分が「芸人」という肩書を名乗ることができるのだろうか? そういう迷いを語った言葉である。
そんな小沢が、31日の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に出演していた。この日は、交友関係が広いことで知られるミュージシャンの川谷絵音(ゲスの極み乙女。など)と小沢が、それぞれの「ファミリー」とともに交遊録を語るというような企画。小沢ファミリーからは、秋野暢子、河合郁人(A.B.C-Z)、とろサーモン・久保田といった面々が出演し、小沢について語っていた。
小沢といえば、「SEKAI NO OZAWA(セカオザ)」と評される独特な世界観と、そこから発されるカッコいい名言の数々で知られる。小沢と同居している後輩芸人、大自然・ロジャーが、そんな名言のひとつを語っていた。
小沢と一緒に食事に行き、タクシーで帰っていたときのこと。家まで100メートルぐらいのところで小沢が「一流の彫刻家が、どうやって石から石像を彫ってるかわかる?」と話しだした。「わからないですね」と答えると、そこから小沢はなぜか黙った。そのままタクシーを降りる2人。そこでようやく小沢が口を開く。
「さっきボクがなんで黙ったかわかる? タクシーの運転手さん、ボクたちの話、聞いてたよね。すると答え気になるよね。自分で調べるよね。知識になるよね。そういうこと」
10年以上前から小沢と親交のある野呂佳代も語る。
「ある飲み会のときに、女の子が1人泣いてたんですよ。悲しいことがあって。そしたらハーモニカの音が聞こえてきて、え? って思ったら、小沢さんがその女の子のためにハーモニカを吹いてた」
パーティーをし、名言を放ち、ハーモニカを吹く。漫才をし、トークをし、そして、自分が「芸人」なのかどうか迷う。そんな自分をどこか客観視しているがゆえの迷いも含めて、小沢はいま改めて、カメラが捉える一つひとつの言動が見逃せない「テレビの人」だ(ちなみに、僕が好きな小沢の言葉は、「やり方って3つしかないの知ってる? 正しいやり方と、間違ったやり方と、キミのやり方だよ」です)。
さて、話は飛んで、1日の『ウタフクヤマ』(フジテレビ系)。福山雅治が石田ゆり子やリリー・フランキー、満島真之介と一緒に車で熱海をドライブし、最後に旅の思い出を詞にして歌を作るという番組で、4人が車内で歌いだしたりしていた。荒井由実の「卒業写真」を歌う助手席の石田。後部座席でギターを弾く福山。そして、その横でハーモニカを吹くリリー。
この光景、なんだか面白くて笑ってしまった。どうやら、女性に向けてハーモニカを吹く男性は皆、スピードワゴン・小沢に見える体になってしまったようだ。