「デブじゃない、ぽっちゃりなだけ」
僕たち私たちは、今までそうやって自分を励ましながら、そして真実から目をそらしながら人生を過ごしてきた。だけれどある日、その閾値を超えてしまうことがある。それは、親しい友人に「お前はデブだ」とはっきり指摘された時だったり、鏡に映った自分が想像を超えた巨大なシルエットだった時……。そして、その瞬間は予告もなく突然やってくる。「デブの自覚」「絶望」……。
今回ご紹介するマンガは、そんな絶望からの脱却を試みる子羊たちにうってつけのダイエットマンガ『超時空減量ブタ&ゴリラ』です。現在講談社のアプリ「マガポケ」で絶賛連載中のなのですが、タイトルがいきなりトチ狂ってますよね!
今夏、『ダンベル何キロ持てる?』という筋トレマンガがアニメ化され話題となりましたが、この作品の影響で、アニメファンのジム入会者が殺到しているのだとか。それ以前にもダイエットや筋トレをテーマにしたマンガはいくつもあったのですが、なぜ『ダンベル何キロ持てる?』だけが爆発的に人気になったのか? それは女子高生たちが惜しみなく繰り出すエロ……もとい、お色気にあるといえるでしょう。「エクササイズ」×「お色気」……そこに今までにないニッチ市場があったのです。
『超時空減量ブタ&ゴリラ』は、どうしてもジャンル的に『ダンベル何キロ持てる?』のフォロワーであるかのようなイメージを持たれがちですが、方向性が明確に違います。
タイトルが時空を超えちゃってるのももちろんなのですが、なんといっても、お色気指数がゼロ! なんならマイナスといってもいいかもしれないレベル。そして何よりも、紹介されているトレーニング法がことごとくローコスト! ほとんど自宅で完結できてしまう、お財布に優しいマンガなのです。ジムに通ってトレーニング器具を使うことが前提の『ダンベル何キロ持てる?』とは、似ているようでぜんっぜん別物といえるでしょう。
「デブブン★」という豪快な擬音とともに登場する本作品のヒロイン・円高ドル美。アイドルグループ「スラリ★」のセンターを務める17歳。もともとは身長157cm・体重50kgでしたが、大好きなドーナツを好きなだけ食べまくり、現在は70kgまで激太りしています。
円高ドル美って、びっくりするほどヒロインのネーミングが雑ですね!
こんな感じで動画のコメントでも煽られまくり。まあ、確かにこの体形で「スラリ★」はないわ。そして、ついに見かねたプロダクションの社長がドル美にクビを宣告、しかも次期センター候補として後輩の本願寺光輪(ピカリン)の指名付きという、ドル美にとって絶体絶命の状況です。
まあ、擬音が「デブブン★」なので誰もが納得の結論ですが……。ドル美は、卒業公演までの2カ月の間に20kg痩せればクビは撤回、という約束をなんとか取り付けます。
見てください、この熱さがみなぎる決意と色気のなさ。そして、20kg痩せるためにドル美が始めた過酷なダイエット法とは……‼?
世にも魅力的な激ヤセダイエットグッズ&食品たち!! そう、ドル美の性根は完全に腐っていたのです。その結果はもちろん……全然痩せません。ていうか、「寝るだけでやせる枕」ってなんだよ! 便利すぎるだろ!!
数々のダイエット法に失敗するドル美、もしかしたら自分は水を飲んだだけで太ってしまう特異体質なのかも……と勝手に絶望し、ビルから飛び降り自殺を図ります。
そんなドル美を自殺から救ったのが、謎の男「ゴリラ」です。自称・元WBA1位のボディビルダーでダイエットのプロでもあるゴリラが、ドル美の専属トレーナーになるのです。
このゴリラ、とにかく名ゼリフだらけの男です。挫折しそうなダイエッターたちを奮い立たせる熱きダイエット名言の数々がこのマンガの面白さといえます。
「決意以外はなんにもいらねえ!!!」
ダイエットのために筋トレしようとしても、面倒臭さが先に立って、無意識にいろんな言い訳をしがちですよね。「運動経験がない」「道具がない」「覚えられない」ナイナイ尽くしですが、ゴリラは「決意以外はなんにもいらねえ!!!」と一喝。そんなこと言われちゃったら、グウの音も出ないです。
「なんでもいいから走り出せ、勝負は走り出す前だ!」
ダイエットの必須種目、有酸素運動……つまりランニング。これもまたハードルが高いです。面倒くさいの極致。しかし、いざ走り出すとハマってしまう人も結構いますよね。だからこそ、走り出す前の決意こそがすべてなのです。
ほかにも挫折の温床となりやすいランニングですが、ゴリラが次々と繰り出すあの手この手のダイエット語録で、折れそうなハートに先回りしてきます。
「走りに行くと思うな、遊びに行くと思え」
「走り疲れたら帰りにタクシー使っちまえ」
「三日坊主は脳のバグ」
その中でもすごいのが……
「ジャージで暮らせ」っていうやつ。
これぞまさに、思いついたらすぐに運動できる臨戦態勢。「走りに行く服がない」なんて言い訳すらできませんね。ジャージって、そんなにすごい効能があったんだ……。
「ジムは天国じゃねェ!!」
ジムに行けばモチベーションが上がって運動するのに……なんて言い訳するやつには、このセリフが待っています。そう、人によってはジムに行くのは逆効果。ジムなんか行かなくっても、ダイエットはできるのです。このセリフこそまさに『ダンベル~』に対するゴリラからのアンサーソングといえるでしょう(ソングじゃないけど)。
ゴリラが提唱するダイエットは、とにかくお金がかからず、自宅でできるものばかり。器具を買う金がないからダイエットができない……も、言い訳にならないのです。
器具を使うタイプのトレーニングでも、そのへんに転がっている棒を使うだけのやつとか、とにかく徹底してます。
雨の日は外に走りに行けない……そんな日の有酸素運動は「シャドーボクシング」。自分で「シッ」とか言いながらやるとカッコいいぞ! なんてことまで懇切丁寧にアドバイスされていて逆に恥ずかしい!!
シャドーボクシングをするときは、アニソンを流すとテンションも上がるし、きっちり3分で終わるのでタイマー代わりにもなるなど、ナイスなアドバイスもついてます。シャドーボクシング、いいじゃないか!!
運動だけでなく、食事制限の領域もガッツリアドバイスしてくれます。それも身近なコンビニを利用したものがメイン。お手軽すぎる……どこまで等身大なんだ!!
最終的には「コンビニは調教できる!!」なんてパワーワードまで出てきちゃって。読んでると、ダッシュでコンビニにサラダチキンを買いに行きたくなるレベルです。
果たしてドル美は20kg痩せられるのか? そして、自分はコンビニを調教できるのか? いろいろと気になってしまう作品です。現在単行本になるかどうか微妙な瀬戸際らしいのですが、お色気を排除したこのストロングスタイルを、ぜひとも応援したい。単行本が無事に出ることを祈ってます!
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)
●『超時空減量ブタ&ゴリラ』