「花柄」「蝶柄」「レース柄」「パステルカラー」などのデザインに偏りがちで、世間から「ダサい」と言われることも少なくない生理用品のパッケージ。そんな中、ユニ・チャームは「生理用品を隠す必要性を感じさせない」新しいパッケージのデザインを開発すると、「#NoBagForMe」プロジェクトをスタートしたが、生理用品を隠すのは、そもそもパッケージデザインの問題なのだろうか。
ブログ「これ、誰がデザインしたの?」において、生理用品のデザインに疑問を投げかけた、デザインジャーナリストで東京造形大学准教授の渡部千春氏が、日本の生理用品のパッケージデザインと生理に対する抵抗感の関係性について分析する。
(前編はこちら)
黒い袋に入れるのは「生理用品自体」が恥ずかしいから
――生理用品のパッケージのデザインに「恥ずかしさ」を覚える女性も多いようですが、その理由はどこにあると思われますか。
渡部千春氏(以下、渡部) それはパッケージのデザインよりも「生理用品」そのものに恥ずかしさを覚えている人が多いのだと思います。前編で意見を聞いたゼミの学生によると、「ドラッグストアの黒い袋はいかにも『生理用品を買いました』と言っているようなので嫌。知り合いのおじいさんが『成人用オムツを買うのは恥ずかしい』と言っていたので、男女問わずデリケートゾーンに関するものに対しては、そういう感覚はあるのだと思う」「女性同士でも『このナプキンいいよ』『このパッケージいいね』という話はしない」と言っていました。生理用品を購入したこと自体、男性に知られたくないし、女性同士であっても生理的な事柄についてはあまり話さない。にもかかわらず、パッケージの主張がすごく強く、透明の袋だと透けて見えてしまう。
なお、紙袋や黒い袋に入れるのは日本特有ですね。欧米は最近ではプラスチック廃止の方向に動いていることもあり、レジ袋は使わずカバンの中に直接入れる人が増えています。中国、香港、またイスラム教徒が多いインドネシアやマレーシアといったアジア圏でも、一般的なレジ袋に入れたり、カバンに直接入れているのを見かけます。
――日本では、個別のナプキン数個をポーチなどに入れて持ち運ぶ人が多いですよね。そのままカバンに……というのは、躊躇する人が多いと思います。
渡部 海外では、夫が妻の生理用品を買うことも、日本ほどには抵抗がないようです。もう20年以上前ですが、私がスウェーデンに遊びに行っていたとき、男性の友人に「生理ナプキンを買ってくる」と言えなくて、「ちょっとドラッグストアに……」と曖昧にぼかしていたんですね。でも結局ばれてしまって恥ずかしい思いをしていたら、「なんだ、ナプキンか。ママに買ってこいと言われて、買うこともある」と平然と言われて驚いたことがあります。
――海外の生理用品で、「この商品のデザインはいいな」と思うものがあれば教えてください。
渡部 理想的という意味では、アメリカ「Edgewell Personal Care」の「o.b.タンポン」、オランダ「hema」やフランス「monoprix」のプライベートブランド商品などでしょうか。海外では、大きさや形、対応する経血量を示す「1〜5」の表記などが、パッケージの目立つところに付いているデザインが多いですね。特に、アメリカ、フランスは移民が多いので、文字よりも視覚的にわかるようになっており、それを邪魔しない程度のデコレーションが施されています。日本の場合は、まずデコレーションで目を引いてから、大きさや形は小さく表記されているので、機能がわかりにくい。色分けによって、機能を一目でわかるようにしている商品もありますが、その違いは、ある程度買い慣れてからでないとわかりません。
なお世界的に展開している「always」(日本ではプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンより1986年から2018年まで「whisper」として販売)ブランドも、国によってかなり違います。米国では、大柄な装飾が多く、フランスは柄が少なめ。ロシアは細かい装飾が多く、インドネシアはシンプル。個人的には、インドネシアくらいシンプルな方が、清潔感があるように思いますね。
――海外では、日本のような「花柄」「蝶柄」「レース柄」「フリル柄」はあまりないのですね。
渡部 いえ、ロシアは派手なパッケージが多いですよ。ただそれは、本当にこういうデザインが好きな人が多いのではないかと推測しています。生理用品だけでなく、ヘアケア製品にもそういったデザインが多用されているので。
――生理用品のパッケージデザインは、今後どう変わっていってほしいと感じますか。
渡部 「血」のイメージを払拭するものとしては、包帯や絆創膏のようなアプローチが正しいのではないかと思うのですが、あまり医療品の雰囲気を漂わせるのは、商品としてのアプローチ力が足りないかもしれません。というのも、医療品のイメージが強いと「使用感が悪い」と思われそうだからです。世界的なトレンドとして「肌にやさしい」などオーガニックの流れから、デザインは徐々に変わってくるのではないでしょうか。
ただ、日本でその傾向がはっきりと表れるには時間がかかるかもしれません。というのも、日本の女性はいまだに男性と比べ「働きにくい」環境にあり、「買い物をするのは女性」というイメージも根強い。そういった社会が根本的に変わり、「男性も女性用を含め家族のものを買う」といったことが一般的になれば、もっとニュートラルなデザインになるでしょうし、商品としてのアプローチも「かわいい」より、機能のわかりやすさを重視するようになると思います。実際、世界的に男性向けの尿もれパッドや成人用オムツは、かつて妻が夫のため、親のために買って用意するものでしたが、今では男性自ら買うものとするアプローチに変わってきています。
――消費者側の意識、そしてニーズが変わると、おのずとデザインも変わっていくということでしょうか。
渡部 イメージとしては、ティッシュのパッケージに近い。例えば、日本製紙クレシアの「スコッティ」。かつてティッシュといえば「装飾が施されている方が、高級感がある」とされ、今も「スコッティ」にはそういった商品があるのですが、現在は、値段やサイズ、また「肌にやさしいか」などでティッシュを選ぶ人が増えたので、白を基調にしたシンプルなパッケージのものも展開されています。また「スコッティ」は、基幹となっている5個セットの商品がブランドとして確立されていることから、さまざまな種類、デザインのものを展開できる面があると思います。生理用品も、各ブランドのベーシックな商品をしっかり確立させた上で、バリエーションを広げていくことが望ましいのではないでしょうか。今は、どれが基幹商品かわかりにくく、あまりにも種類が多すぎて選びにくいという面もあります。
女性は生理用ナプキンの使用が終了する頃、あるいは並行して、尿漏れパッドに移行する人も多く、その次にオムツと続く人もいるでしょう。一人暮らしの高齢者も多いので、自分でオムツを買うのに恥ずかしくないものがほしい。ただこれは生理と同様、パッケージデザインよりも社会的な認知が必要です。
――確かに、そもそも生理が恥ずかしいものとして捉えられている限り、どんなパッケージであっても恥ずかしさは続いてしまいますね。
渡部 親が娘に対して、初潮をどう説明するかは、日本に限らず各国でも難しいトピックのようです。そうした根本的なところが変わっていくといいですね。そういった意味でも、ユニ・チャームの「#NoBagForMe」はいいプロジェクトだと思います。こういったプロジェクトが一時的な話題作りではなく世間に浸透していくかどうかは、ユニ・チャームがしっかり広報し、ドラッグストアの店員さんから消費者まで理解を広めていくことが必要だと思います。
渡部千春(わたべ・ちはる)
東京造形大学准教授。デザインジャーナリスト。1969年新潟生まれ、93年東京造形大学卒業。世界の日用品、食品パッケージなどを研究。『これ、誰がデザインしたの?』『続・これ、誰がデザインしたの?』(美術出版社)、『北欧デザイン』(プチグラパブリッシング)、『北欧デザインを知る』(NHK生活人新書)など著書多数。
ブログ「これ、誰がデザインしたの?」