職場でハイヒールやパンプスの着用を強制されることに異議を唱える運動「#Kutoo」(「靴」「苦痛」「#Metoo」を掛け合わせたネーミング)が、SNS上で拡散し、広まっている。
「#Kutoo」運動の発起人は、葬儀場でアルバイトをしている石川優実さんだ。石川さんはWezzyにおいてもジェンダー不平等の改善を目指す記事を複数寄稿してくれている。
葬儀場という職場では、就業ルールとして5~7cmほどのパンプスを履いて業務することを求められたという。しかし高いヒールで足を痛め、このルールに強い違和感を抱いた石川さんは、Twitterで以下のように呟いた。
<いつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたい>
<パンプスで足がもうダメ>
<なんで足怪我しながら仕事しなきゃいけないんだろう>
この訴えは共感を呼び、SNS上では「#Kutoo」のハッシュタグをつけて拡散された。これを受け、石川さんは、署名サイト「Change.org」上で、<職場でのヒール・パンプスの強制をなくしたい!>と訴える署名活動をスタート。職場でヒールやパンプスを強制され、靴擦れや外反母趾、腰痛などの体調不良に陥った経験を持つ人、そしてその痛みに理解を示す人は非常に多く、2万5000筆を越える署名が集まっている(7日時点)。
3日には、約1万8800人分の署名を厚生労働省に提出し、ハイヒールやパンプスの強制を禁止するように通達することを求めた。
そして5日、衆院厚生労働委員会で話し合いが持たれ、立憲民主党の尾辻かな子議員は、ハイヒールやパンプスの着用によって健康被害があることを指摘。そのうえで、“慣習”としてパンプスやハイヒールの着用を強制している職場が多くあることについて、根本匠厚労相に「義務づけは必要かどうか」と尋ねた。
根本匠厚労相は、以下のように答弁している。
「女性にハイヒール・パンプスの着用を指示する、義務づける。これは、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲かと。この辺なんだろうと思います。それぞれの業務の特性がありますから」
「社会通念に照らして、業務上必要かどうかということ。要は、社会慣習に関わることではないかなと思います」
「社会通念に照らして、業務上必要かつ相当な範囲を越えているかどうか、これがポイントだと思います」
根本厚労相が何度も繰り返した「社会通念」とは、社会が不文律として共有してきた慣習やマナーのことを指しているのだろう。
たとえば、冠婚葬祭に関わる仕事や、ホテルマン、客室乗務員など特定の接客業に従事する人は、キチンとした身なりをしていることが望ましい。だからこそ、ハイヒールやパンプスを履くことが“あるべき”姿とされる。
しかし、健康を損なってまで、ハイヒールやパンプスを履く「マナー」が、なぜ“あるべき”なのか。
今、社会通念そのものを疑うことが求められている。健康を損なってでも慣習やマナーを遵守する社会通念こそが、問題なのではないだろうか。
スニーカーにパンツルックの女性客室乗務員は「失礼」か?
2020年夏の就航を予定している日本航空の新しい国際線中距離LCCエアライン「ZIPAIR」は、今年4月に都内で会見を開き、客室乗務員の制服をお披露目した。
「ZIPAIR」の客室乗務員の制服は、黒と白を基調にスタイリッシュにまとめられているが、注目すべきはその足元だ。性別に拠らず、靴ひもとベルクロテープつきのフラットなスニーカーに統一されている。
デザインをつとめた堀内太郎氏は、「(客室乗務員が)ヒールで走っているところを見て、改善点としてスニーカーが出てきた」とコメントし、安全性や働きやすさへの配慮を強調した。また、女性の客室乗務員には、スカートやワンピースだけでなく、パンツスタイルの制服も用意されている。「女性の客室乗務員はスカートにヒール」という「社会通念」を見事に覆している。
そもそも、職場での服装で重視すべきなのは、それぞれの職場に合った働きやすさ、機能性であり、根拠のない常識やマナーではないだろう。もちろん、これは女性のヒールに限ったことではなく、男性も動きやすく楽な服装、具体的にはノーネクタイやノージャケットであったり、革靴ではなくスニーカーであってもいいはずだ。たとえ取引先を訪問する時であっても、「ラフなスタイルで構わない」という会社はすでにあるだろう。
“あるべき”とされてきたマナーが、本当に“あるべき”ものなのか。個々人の権利が尊重されず画一的なルールに従わざるをえなかった時代に形成された常識やマナーを、今も頑なに守り続ける必要はない。積極的に価値観をアップデートし、それぞれの当事者にとって快適なあり方を認める社会でありたいものだ。