昨年発表の「新語・流行語大賞」にノミネートされた、“eスポーツ”という言葉をご存じだろうか。コンピューターゲームを“競技”と捉える際の名称で、今、数十億円の賞金が出る大会が世界中で開催されるなど、大きな盛り上がりを見せている。国内でも、大手企業が選手のスポンサーに名乗り出て、大会での賞金などで生計を立てる “プロゲーマー”が続々と誕生しているが、そんな中で「活動しにくい」と風当たりの強さを感じているのは、女性ゲーマーだ。
前編に続き、女性ゲーミングチーム「花鳥風月」のメンバーである、ドスコイ☆花子さん、あさいさん、razさん、そしてイベントMCやゲーム配信者として活動するセリーナさんに話を聞き、男性が9割とも言われるゲーム業界で、「女性だけのチーム」を作った狙いを聞いた。「男女の垣根をなくしたいというゴールに向かって、女性だけのチームで活動する」という、一見ねじれた状況について、本人たちはなにを感じているのだろうか。
【座談会出席者プロフィール】
セリーナ……忍ismストリーマー部門所属。『キャサリン』やホラーゲームなどを配信するバイリンガル女子ゲーマー。
ドスコイ☆花子……花鳥風月所属。『スプラトゥーン2』をメインに、 格闘ゲームや『Dead by Daylight』をプレイ。
あさい……花鳥風月所属。『スプラトゥーン2』をメインに配信を行っている。『Apex Legends』などFPSゲームもプレイ。
raz……花鳥風月所属。『スプラトゥーン2』の配信や動画投稿など、 YouTubeでの活動を中心に行っている。
“男性社会”だからこそ生まれた「女性チーム」
――「花鳥風月」の女性限定ゲーミングチームという発想は、なにがきっかけで出てきたのですか。
ドスコイ☆花子(以下、花子) 「女性がゲームを楽しめる場所が少ない」というのはずっと感じていて、それなら女性限定のイベントを開いたり、女性だけのチームを作れば、もっといろんな人が入ってきやすくなるのでは、という話がスタートでした。
――イベントや大会に出ることが目的であれば、男女同数の混合チームを作る選択肢もあったと思いますが、女性限定としたのはなぜでしょう。
花子 男性がいると、どうしても躊躇してしまう女性ゲーマーの方がいると感じていたので、そこに配慮した形です。あとは、ゲーム業界が“男性社会”だからこそ、「女性だけのチーム」と打ち出した方が、注目されるのではないかという狙いも、正直ありました。偏った部分を逆手に取るというか。その結果、女性ゲーマーが増えたり、横のつながりが広がっていけば、女性チームを作ったことは成功だと思っています。
あさい 私とrazさんは、チームができてから応募して入ったんですけど、やっぱり女性チームというのは、気持ち的にハードルが下がって助かりました。同じゲームをしてる同性の友だちってなかなか見つからないし、そういう意味でも入りやすさがありましたね。
――あさいさんとrazさんが「花鳥風月」の活動の成果でもあるわけですね。女性だけのゲーミングチームというと、過去にいくつもできては消えてという状況が続いていたと思います。正直、“アイドル路線”のグループも多い中で、「花鳥風月」が特別だというのは、どこで感じましたか?
raz 「花鳥風月」のメンバーはアメリカで行われた大会にも出ているし、SNSで練習の過程やゲームの成績を公開していて、“本気度”がすぐにわかりました。まあ、本気でやってるか、ゲームを好きかどうかって、ゲーマーだったら絶対わかりますよね。
セリーナ 私は「花鳥風月」のメンバーではないんですけど、真剣にゲームをやってることは伝わってきますよね。あとやっぱり、最後に残るのは“本当にゲームが好きな人”なんですよ。どういう形であれ、ゲームを楽しんでくれるのはうれしいんですけど、メンバーみんなが「好き」でやってないと、チームとしては続かないのではないかと思います。
――ちょっといじわるな質問かもしれませんが、女性ゲーマーの人口が増えた場合、「女性だけのチーム」としての特異性はなくなってしまいますよね。それはみなさんにとって、あまり喜ばしいことではない気もするのですが……。
セリーナ 確かにその通りだと思いますが、私たちが特別注目されなくなるということは、女性ゲーマーが増えて、活躍しているということと同じですよね。それは素直にうれしいし、今、私たちが目指すべき目標だと思います。
花子 ゲームって、体を動かすスポーツとは違って、男女の差が出にくい、ジェンダーレスな勝負だと思っています。だから、プロゲーマーの数が男女半々ぐらいになってくれたら、ミッションコンプリートですかね。
あさい 女性の数が増えれば、私たちもさらに「同性には負けたくない!」っていう気持ちになるし(笑)。切磋琢磨していきたいですよね。
――ゲームの世界での話をうかがってきましたが、性別による差別や偏見は、ゲーム業界と一般社会を比べると、どのような違いを感じますか。
セリーナ 学校や職場で直接言われることのない悪口も、ネット上だと匿名で言えますよね。今はオンライン対戦が中心の時代なので、ゲームとネットはとても密接につながっています。だから「ゲーマーとしての私」の方が、性差別を受けることが多いですかね。
花子 でも、ゲーム業界に「女性専用車両」みたいなものを作ってほしくはないかな。ゲームをやってて、性別を理由に嫌な気持ちになることもあったけど、ゲームセンターに「女性専用スペース」を作ってほしいわけではない。特別扱いされてしまうと、ハンデがあるとか、弱いことを認めちゃうみたいになるので。
raz なぜ女性プレイヤーが特別視されてしまうかと言うと、「数が少ないから」なんですよね。ゲームの能力に男女で大きな差はなく、誰とでも平等に戦えます。だから私たちには、そもそもハンデなんてないわけです。少数派だからといって、特別扱いしすぎるのは違うかなって思います。
――それでは最後に、これからゲーム業界がどのように変わってほしいと思うか教えてください。
花子 男性も女性も、容姿のことを言われたりしないで、楽しく大会に出られるようになるといいですよね。女の子がどんどん増えてくれば、それが当たり前になって「女だ!」とも言われなくなるだろうし。ゲームが好きなのに、別の理由で躊躇してしまうのは、とてももったいないと思うので。
raz 性別ではなく、もっと個人が尊重されて、好きなことをできるようになれば、それが一番いいですね。
あさい 私たちにできることは、ゲームの面白さを伝えたり、イベントを開催して遊ぶきっかけを作ったりすることだと思っています。その活動を通して、「ゲームって楽しいよ」「女の子も遠慮しなくていいんだよ」って感じられるようになれば、コミュニティは良い方向に向かってくんじゃないかなと思ってます。
セリーナ 「女性ゲーミングチーム」が目立たなくなるくらい、女性ゲーマーが増えてくれたらうれしいです。男性だけのチームがあって、女性だけのチームがあって、混合のチームがあって……その中に「花鳥風月」もある、みたいな。それと最後に、男性ゲーマーは女性ゲーマーにとって“敵”ではない、ということは言いたいです。ゲーマーは性別も年齢も、さらに国籍も関係なくみんな“仲間”ですし、ほとんどの男性ゲーマーが「女性が嫌な思いをしないように」と思ってくれているのも感じてます。なので、みんなで協力して、でも大会ではガチで戦って、そんなふうになっていけば最高ですね。