【第86回】「高須幹弥センセイ、アートメイク除去は眉毛やまつげがなくなるって本当?」
皮膚に色素を注入して眉やアイラインを描く「アートメイク」。毎日のメイクの煩わしさから解放されるというメリットがある一方で、「思っていたのと違う仕上がりになった」などの失敗談も後を絶たない。一度施すと数年は消えないため、美容整形外科で除去手術を受ける人も少なくないのだとか。高須クリニック名古屋院院長の高須幹弥先生、貴院にも「アートメイクの除去手術」メニューがありますが、実際にどのような失敗例を見ましたか? 失敗しないためのアドバイスも教えてください!
■アートメイクで多い失敗例とは?
アートメイク除去に来られる患者さんに多いのは、「眉毛の失敗」「アイラインの失敗」「数年たっても消えない」といった理由です。
眉毛は微妙な違いでイメージが大きく変わる上、デザインの流行もあるので、除去を希望される患者さんの多い部位です。とくに年齢を重ねると下がっていく眉毛の外側は、若く見えるように上げて描く人が多いのですが、「はね具合が気に入らない」とか「上がりすぎでキツい印象になってしまった」といった声をよく耳にします。また、「色が濃すぎて普段のメイクよりきつく見えてしまう」との理由で来られる方も多いですね。50代60代の女性でもいらっしゃいます。
男性でも、眉毛が薄いのが悩みで「男らしい眉毛にしたい」とアートメイクを入れたけど、イモトアヤコさんみたいに異様に太い眉毛になってしまったり、メイクをしたみたいな見た目になってオネエっぽく見えたりといったことで、除去を希望されることがあります。
アイラインの場合は、濃すぎる色で太すぎる幅に描かれてしまい、一昔前の韓国人おばちゃんみたいになってしまったという人や、目を大きく見せようとして、上下のまぶたにガッツリと、ぐるっと1周囲むように黒い色のアイラインを入れてしまったことで、かえって目が小さく見えてしまったという人もいました。
アートメイクは数年で消えるといわれているため、「消えると聞いたからやったのに、全然薄くならない」という理由で来られる方もいます。表皮と真皮のあいだくらいの浅いところに、薄い色素をちょろっと入れたくらいなら5~10年でほとんど消えますが、真皮層に濃い色素を入れてしまうとなかなか吸収されずにずっと残ってしまいます。入れる色素の濃さや深さによっては消えない場合もあり、個人差も影響するので、「アートメイクは数年で取れる」というのは、あまり過信しない方がいいでしょう。
美容整形外科でアートメイクの除去をする場合は、濃い色に反応して色素を破壊する刺青用のレーザーを照射します。レーザーを当てれば必ず薄くなるのですが、脱毛用のレーザーと原理が同じなので、毛が生えている部位だと永久脱毛になってしまうというリスクがあるんです。かなり薄いアートメイクでない限り、1回では完全に取り切れずに、2カ月以上、間を開けて再度照射することが多いため、やはり回数が多いほど、永久脱毛されてしまう可能性は高くなります。つまり、場所的に眉毛やまつ毛がなくなるということ。そのため、事前説明を聞いて除去をあきらめる患者さんも少なくありません。
もし除去手術を受けて永久脱毛になってしまった場合、まつ毛の場合は、ほんの少しでも毛が残っていたら、まつ毛貧毛症の治療薬で長く太くしてある程度カバーすることができます。眉毛やまつ毛が完全になくなってしまった場合は、頭の毛を植毛する手術で補うことも可能ですが、髪の毛としてどんどん伸びてくるので、定期的にケアしなければなりません。また、生え変わるサイクルも髪の毛の周期なので、次に生えてくるまでの期間も眉毛やまつ毛の毛周期より長くなってしまいます。
なお、アートメイクの失敗を施術した店に訴えて、失敗箇所に肌色の色素を入れてカバーしてから描きなおしてもらったという人もいます。それなら眉毛やまつ毛が永久脱毛される心配はありませんが、やはり地肌の色とは微妙に差があるため、修正箇所が不自然になってしまうんですよね。それで除去に来られる方もいますが、肌色はレーザーに反応しづらいので、除去が難しいです。
■アートメイクで失敗しないために
目元は色の濃さやデザインなどで印象が大きく変わるので、アートメイクで失敗しないためには、しっかり話し合えるところで施術を受けるのが望ましいでしょう。また、皮膚に針を刺して色素を注入するというハイリスクな行為で、針の使い回しをするとHIVやC型肝炎、B型肝炎などに感染する可能性もあるので、きちんと衛生管理された環境であることも大切です。
なお、一昨年から昨年にかけて、医師免許を持たない彫り師が医師法違反罪に問われた裁判があり、「刺青を彫るのは医療行為か否か」という点に注目が集まっていました。一審では有罪、二審では逆転無罪となって、大阪高裁が上告している状況ですが、世間的には医療行為として捉える風潮になりつつあるようですね。もし刺青が医療行為になったら医師しか施せなくなるので、刺青の一つであるアートメイクも、医院でやることになります。アートメイクでひと儲けしようと、今から技術の習得にいそしんでいる医師も少なくないようですよ(笑)。
ただ、アートメイクをする人の大半は、「メイクが面倒」とか「すっぴんでもメイクしたような顔でいたい」といった理由なので、失敗したときのリスクを考えると、地道にメイクをした方がいいとは思います。もちろん、アートメイクをやってよかったという人もたくさんいるとは思うのですが、僕のところには失敗して後悔している人しか来ないし、年間を通して結構な人数なので、やらないに越したことはないのかな? と感じてしまいますね。
高須幹弥(たかす・みきや)
美容外科「高須クリニック」名古屋院・院長。オールマイティーに美容外科治療を担当し、全国から患者が集まる。美容整形について真摯につづられたブログが好評。
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