青森県弘前市のご当地アイドル「りんご娘」のメンバー・王林が話題となっている。
「王林」という中国人っぽい芸名でありながら、しゃべりはド天然で津軽弁丸出し。仕事のために東京に来るたびに、人の多さや、街のにぎやかさにショックを受け、「東京が怖い」キャラとしてブレイクしているのだ。
……とはいえ、これだけ頻繁に東京のテレビ番組に出ていたら、さすがに「東京が怖い」という気持ちも薄れてきちゃうんじゃないの? もしかして、キャラ作りで「怖い」と言ってるだけ!?
そのへんのところを突っ込んでみました。
■東京に着いても、自分はブレずに歩き続けよう
――子どもの頃から芸能活動をされていたそうですね。
王林 はい。小学校3年生の時に、弘前にある事務所に入りました。ずっとモデルに憧れていたので、てっきりモデルがやれると思っていたら、小学生で「アルプス乙女」、中学生の時に「りんご娘」というアイドルグループに入って、今みたいなことになっちゃって……。
――王林っていう芸名は「りんご娘」になってからなんですね。初めて聞いた時、どう思いましたか?
王林 「アルプス乙女」の時の芸名は「斉藤」だったんですよ、りんご農家に多い名字なので……。「りんご娘」では、みんなりんごの品種にちなんだ芸名なんですけど、本当は「彩香」ってりんごがよかったです。一番、人の名前っぽいから。
――「王林」って、よく中国人っぽい名前だって言われていますけど。
王林 私の中ではりんごのイメージしかなかったから意外でしたね。青森では常識です。
――アイドル活動をする中で、東京へも来るようになった?
王林 弘前産りんごのPRで全国を回るキャンペーンガールになったんですよ。それで、あちこち行きました。大阪とか福岡とか……。
――そのあたりもだいぶ都会ですけど、やっぱり東京が一番怖い?
王林 圧倒的に東京が怖いですね。人の数からして違いますし、来ること自体、申し訳ないんですけど……ストレスです。新幹線に乗ったら、着いた後のことを考えて自分のメンテナンスをしています。「東京に着いても、自分はブレずに歩き続けよう」って。
――???「都会の絵の具に染まらない」的な意味ですか?
王林 人がぶつかってきても対応できるような感情を、新幹線の中では作るようにしています。

――東京駅は乗り換えも大変ですよね。
王林 そのためのアプリを入れたんですけど、だからといって、そのアプリをそんなに信用していいのかどうかもわからないし……。
――アプリは信用しましょうよ。
王林 「これを見たらわかるよ」って言われていたんですけど、やっぱりわからないんですよ、携帯の画面だと。実際に「ここからここまで」って言ってもらわないと。
――地下だと特にそうですね。人には聞けなかったんですか?
王林 聞きました。
――意外と東京の人も優しいでしょ?
王林 教えてはくれるんですけど……。「わからないから聞いてるんだよ」とは思いますね。教えてくれることが難しいんですよ。「何番線ですよー」とか言われてもわからない。わかる人に聞いてもわからない!
――(笑)。東京で、どこかに遊びに行ったりはしないんですか?
王林 一度もしてません。ホテルと仕事場だけですね。基本的にはホテルに泊まりたくないというか……帰らせてほしい、その日のうちに!
――弘前から日帰りは大変じゃないですか?
王林 でも、帰ったほうが自分の気持ち的には楽になるので。ホテルが怖いんですよ。「青森の人が来た」って思われてるかもしれないじゃないですか。外に出て、もう一回入る時も「この人、本当にホテルに泊まっている人か?」って疑われてるんじゃないかと……。
――基本的に、東京のホテルに東京の人は泊まっていないですから!

――テレビ局って都会の極みみたいな場所ですけど、芸能人と会話するのは怖くないんですか?
王林 緊張はしますけど、電車で隣に座った人に話しかけるよりは、気持ちを楽にして話すことができます。それはなぜかというと、テレビにはいろんな人がいるから、私みたいな人の話も理解してくれるような気がするんです。心を開けます。
—――電車で隣に座った人に話しかけるハードルは、弘前でも同じでしょう。
王林 弘前だったら、特に話せないという感情は浮かばないです。みんな友達っていうか、みんな仲間っていうか。
――いくら弘前でも、大半は知らない人ですよね?
王林 みんな、そんなに壁を作っているような感じではないんです。気軽に話しかけるし、気軽に話しかけられるし。
――何を話すんですか?
王林 たとえば、床のタイルがはがれているのが気になったら、お互いに確実に気づいているんだから、ちゃんと話し合おうと。「はがれてますね」って。
――(笑)。東京では、知らない人とめったに話さないですからね。
王林 みんな、黙々と歩いているのが怖いんですよ。もっと人の存在を理解してほしい。みんなそこにいるのに、なぜいないことにしちゃうのかっていうのは思いますね。
――人が多すぎて、いちいち「人」だって認識してると大変ですからね。
王林 あまりにも考えなさすぎていると思ってしまいます。
――でも、最近は、東京で話しかけられたりもするんじゃないですか?
王林 ああ、すごくまれに、声をかけられるようになりました。ビックリします。東京なんて、青森から離れている場所でも私が知られているなんて。
――知ってますよ、テレビに出てたら。
王林 それをかみしめるようになってきたかもしれません。
――ところで、これだけ何度も東京に来てたら、そろそろ慣れてきてもいいんじゃないかと思うんですが。
王林 うーん、東京駅を降りて、日テレに行くのは上手になりました。
――日テレのある新橋駅まで2駅ですからね。
王林 それに気づいたのが最近でした。新幹線を降りて山手線に乗り換えるのが難しいんですよ。「山手線は『緑』と覚えておけばいい」って言われていたんですけど、色だけで認識するっていうのは、あやふやな世界観なんで。ハッキリした確信は持てないじゃないですか。
――???
王林 これは本当に緑なのか青なのか水色なのかってわからないんで、ちゃんと「山手線」という文字を探して乗るようにしています。
――内回り、外回りは理解していますか?
王林 それはまだちょっとわからないですね。新幹線を降りて最初に現れる山手線が、乗るべき山手線だっていうのは認識しています。
――これだけ東京をイヤがっていますけど、東京のテレビ番組などに呼ばれるのはうれしいんですよね?
王林 それはもう、すっごくありがたいです。東京のテレビに出て、あからさまに青森を押し出したいです。
――王林さんを平均的な青森の人として認識していいかどうかは微妙ですけどね。
王林 そこに関しては、青森の人からも「みんなこうだと思われると困る」とは言われています。でも私としては青森を背負って出てきている気持ちなんで、「まあまあそんなこと言わずに」って思います。
――東京進出っていうのは考えていない?
王林 進出っていうのは、「住む」っていうことですか? それはすみません、いつまでも通わせてほしい。同級生で、東京の大学に進学してひとり暮らししている子もいるんですけど、その話を聞くだけで耐えられないです。どういう生活ぶりをしてるんだろうって思いますね。
――「せっかく仕事で出てきているんだから、東京で会おうよ」みたいな話にならないんですか?
王林 絶対に会いたくないです。会うなら地元で会うし、東京で会う理由が何かあるなら挙げてほしいと思います。
青森から東京に出て行く人も多いですけど、東京でいろんな物を見てからUターンして戻ってきて、それを生かして青森を盛り上げてくれるとうれしいです。だから私も、東京のテレビに出て青森を広めて、地元でりんごを盛り上げていきたい! 「りんご娘」も、もっとたくさんの方に知ってもらいたいし、もっと大きいグループになりたいと思っていますから。
――メンバーみんなが「東京で頑張っていくぞ!」と言いだしたら?
王林 それは間違っています。青森あっての「りんご娘」だから、そんなことしちゃいけないと思います。
――(笑)。じゃあ最後に、青森のアピールを。
王林 これからの時期だと、やっぱり弘前のさくらまつりが最高です! 弘前の桜が、日本で一番キレイだと思いますよ。りんごの剪定技術を桜に応用しているので、すごいボリュームでフワフワした、優しい桜なんです。あれを見てしまうと、東京の桜がすっごいスカスカに見えます。
――いちいち東京をディスらなくてもいいんですよ。
王林 東京の桜で満足している方に、弘前へ来てもらいたいです!
(取材・文=北村ヂン)
●りんご娘
2000年7月に、青森県弘前市のボランティア集団「弘前アクターズスクールプロジェクト」から誕生したダンス&ボーカルユニット。メンバーは王林、とき、ジョナゴールド、彩香(さいか)。音楽・芸能活動を通した地方からの情報発信と地元青森の活性化を目的としている。年間80本以上のイベント出演や地元施設でのボランティアライブのほか、テレビやラジオ、CMへの出演も数多く、幅広い年代層から支持され、青森県での知名度はほぼ100%。3月19日に3rdアルバム『FOUR s 』を発売予定。
http://ringomusume.com/