AVメーカー「ソフト・オン・デマンド」の創業者は高橋がなり。元はテレビ制作会社IVSに所属していた、テリー伊藤の弟子だ。
社風だろうか。SODの作品を見ていると、「この監督は、本当はテレビ業界に進みたかったのでは?」と思わずにはいられない珍作、迷作に出会うことが少なくない。作り手である監督の冒険心や制作欲を許容する度量が、このメーカーにはあるのかもしれない。
今、ネット上で、あるAV作品が激賞されている。タイトルは『【史上初】こんなAV無かった!!蓮実クレアがアメリカ合衆国コ○ラド州○ッキー山脈で3億円の財宝を探しに行く企画 【衝撃の最後…】』。2018年11月発売の1本で、監督はタイガー小堺、主演女優は蓮実クレアだ。SODホームページには、以下のような解説文が載っている。
「3億円の財宝が○ッキー山脈に埋められている情報を得た女優蓮実クレアと監督タイガー小堺が探しに行くAV史上初の企画!」
アメリカの富豪であるフォレスト・フェンが、ロッキー山脈のどこかに3億円相当の財宝を埋めた。その情報をつかんだタイガー監督がクレアを隊長に据え、財宝を掘り起こしに行く……というロードムービーである。
これ、コント仕立てではなくマジなのだ。出発前日に一行はSODの会議室で打ち合わせをし、出発の数時間前に装備品を購入。エコノミー席に座り、10時間かけてアメリカへ旅立ったクレアは、到着していきなり空港で人種差別を受け、すねてしまった。紛れもなくドキュメントだ。
アメリカまで行き、売れっ子女優が延々とスコップで穴を掘るAV
この作品は人選がベストだった。とにかく、クレアがいい子なのだ。といっても、笑顔を絶やさず優しい……というようなステレオタイプじゃない。よく笑うし、よく怒るし、毒も吐く、裏表のない子。友達付き合いしたくなる、容姿抜群の女子といった感じである。
例えば。アメリカに着いて早々、タイガー監督は飲食店のトイレにカメラを置き忘れて盗まれるというヘマをやらかしてしまう。道中で撮った映像の多多くが、失われてしまったのだ。視聴者にトラブルの事情説明を担当するのはクレアだった。
「もしかしたら、私が撮った写真とかをスライドショーで流すかもしれません。ハハハ! だから、それだけご了承いただいて。初日、お疲れ様でした~。タイガーさん、デコピン!」
スタッフのヘマは、これだけではない。ホテルへ戻る際のタクシー代をタイガーらは持ち合わせておらず、しかも到着してからそれに気づく始末。クレアが部屋に財布を取りに行って立て替え、なんとか難を逃れた。頭を下げるタイガーらに「いいってことよ(笑)」と言葉を掛け、さらに「海外とか地方とか含めたロケで、いま一番楽しいかもしれない」と口にするクレア。いちいちポップな彼女の言動に、タイガー監督らは救われたはずだ。
要するに、スタッフが頼りないのが逆によかった。けがの功名で、主演女優の魅力(裏表のなさや行動力)がグングン引き出されていくのだ。ちなみに、ここまでの道中でエロ要素はほとんどない。せいぜい、穴だらけのジーンズをはきながら「パンツはいてくるの忘れちゃった!」とクレアがノーパンである事実を明かしたり、アイスを男性器に見立て疑似フェラするくらいである。
「エロシーン、少なすぎだからね」(クレア)
ネットの情報から、フォレスト・フェンが埋めた財宝は温泉の近くにあるのでは? との結論に達した一行は、目星をつけた温泉に向けて出発した。その後、4日目にしてようやくスコップを手にし、探検し始めたのだ。
ここでもチームを牽引するのはクレアだ。「いいかげん、ちゃんとした山登りっぽい画を撮ろう!」とやる気を見せておきながら、舌の根も乾かぬうちに「山の中は夜になったら危ない」「掘りやすいところを掘りたい。女の力を考慮して!」と速攻で切り上げようともする。ついにはタイガー監督と口論のような形にもなるが、なんだかんだでスコップを振り上げ、発掘作業に励むクレアであった。
「絶対早回しするなよ、チキショー!」(クレア)
シュールな画だ。AV女優がアメリカまで行き、よくわからない場所をスコップでずっと掘っているだけである。果たして、これはAVなのか?
フォレスト・フェンはサンタフェ出身だ。しかし、サンタフェはニューメキシコ州にある。クレアらが今いる場所からは遠すぎる。なので、近場のコロラド州にある「サンタフェ山」に一行は出発した。そして、財宝があると予想されるスポットを延々と掘るクレア。しかし、結果的に財宝は発見できなかった。
クレア「探し求めていた3億円は見つかりはしなかったけれども、今回の旅で重要な仲間との絆を、そしてあきらめずに努力するっていう素敵な気持ちを思い出させてくれたロッキー山脈に感謝」
タイガー「本当に思ってます? 一番思ってないですよね、それ(笑)」
冗談のようなセリフで財宝探しを締めようとするクレア。いや、実はこれは壮大なフリだった。ロケ最終日に用意されていたのは、クレアとタイガー監督の絡みだ。実は、今回の旅で培った“仲間との絆”が、彼女の心理に大きく影響する。百戦錬磨であるはずのクレアに、なぜか冷静さが微塵もない。脇汗をかき、素っ頓狂な声を上げ、とにかく照れまくっている彼女。
「めっちゃ恥ずかしいね。もう、ハメ撮りする監督とは仲良くしない!」(クレア)
大金をかけてアメリカへ宝探しに行き、数々のトラブルに巻き込まれ、ケンカをし、失敗をし、すったもんだの末に女優との絆を深めた。そんな壮大な回り道が、この絡みのためだとすれば恐れ入る。すべて計算だとしたら、タイガー監督はまぎれもなく鬼才だ。
また、今までさんざん“いい奴ぶり”を見せておきながら、唐突にこんなグッとくる痴態を晒すクレアには、見ている側もドギマギしてしまう。一種のギャップ萌えと言えなくもない。“宝探し”という不毛にしか見えなかった行いが、女優のいいところを引き出す助走として作用していた。
旅先でクレアは、こんなツイートを発信している。
「水曜どうでしょうのような、ゆるい旅番組のような、私が普通に喋って笑って怒って拗ねて、掘ってる所をみるのが好きもしくは興味ある方にオススメ」
「エンディング撮りました…恐らくAV史上始まって以来の衝撃的なエンディングだったんじゃないかな きっと今回の作品でしか見れないかなり衝撃的な映像です」
オープニングにて「非常にオナニーしづらい作品になってるかもしれません」という注意喚起のテロップが出されるこの作品。でも、筆者に言わせれば、そんなことない。やはり、これはAVである。水どう的な「Adventure Video」であり、「Adult Video」という意味でもちゃんとAVだった。女優の良さを引き出すための企画と人選、すべてがうまくスイングした快作。
アダルトサイト「FANZA」では14人のユーザーがこの作品を評価しており、現在、平均4.71点(5点満点)という高評価を獲得中。ほとんどのレビュアーが「感動した」「幸せを感じた」「早送りしないで見てほしい」と激賞している。
(文=寺西ジャジューカ)
