ホストにハマりすぎている女たち――通称“ホス狂い”。「ホストに多額のカネを貢ぐ女」というイメージだけが横行する中、外の世界からはわからない彼女たちの悲喜劇がある。「ホストにハマらなかったら、今頃家が建っていた」という、新宿・歌舞伎町では名の知れたアラサー元風俗嬢ライター・せりなが、ホス狂いの姿を活写する。

2月23日。とある女性のツイートが、ホス狂い界隈を絶望の淵へと叩き落とした。
取り急ぎあらましを説明しよう。
Twitterで1万人以上のフォロワーを持つ有名ホストAくんに、「キャバ嬢の本命彼女がいること」を、Aくんのお客さんの一人がTwitter上で告発したのである。
今回は「ホストにたくさんお金を使うと、いったいどんな待遇を受けられるのか」について書く予定だったが、急遽変更することにする。テーマは、ずばり「ホス狂いの告発問題」だ。アイドルの異性関係が週刊誌で報道されるように、ホストの世界でも同様のスキャンダルが頻繁に起きる。ホス狂いの世界では、それを「暴露」と呼ぶ。
一昔前までの暴露は、ホス狂いたちの集う掲示板や日記サイトなどのクローズドな空間で展開されていた。しかし最近は、TwitterなどSNSによって全世界に向けて発信されている。なので、ホストに行かない人でも、ホス狂いの暴走を目にしたことがあるかもしれない。
今回は、そのメカニズムについて解説していく。そもそも、なぜ、ホス狂いたちは暴露をするのか。100の暴露があれば100の理由があることは承知の上だが、大きく分けて、暴露は2つのタイプに分類できる。
一つは、担当ホストとの関係が破局を迎えたときの「最後の大花火」だ。これは、担当ホストに一番お金を使っていた「エース級の女たち」によって主に決行される。前回のホス狂いマッピングでいえば、階段の上段にいる女たちがそれに当たる。
暴露内容に関してはお察しの通り、「担当にたくさんお金を使ったけど裏切られた」がほとんどだ。平たくいってしまえば、復讐である。
冒頭のAくんのエピソードもこれに当てはまる。
「シャンパンタワー楽しかったね」……その言葉とともに、女性は自分とAくんの写真を何枚もTwitterに投稿した。ちなみに、シャンパンタワーは最低でも1回150万円程度のお金がかかる。つまり、暴露をした女の子は、間違いなくエース級のお客さんだったということだ。そして、思い出話に続けて、女性はこう暴露した。Aくんにはキャバ嬢の彼女がいる、自分は嘘をつかれていた、と。
Aくんが、ひと月の売り上げ1000万円クラスの有名ホストだったこともあり、私の周囲のホス狂いたちは、しばらくこの話題でもちきりだった。ホス狂いの掲示板では、3日間で3スレッドを消費し、「Aくんとキャバ嬢の部屋のインテリアが同じだ」やら「二人は同日に店を休んでいる」やら、二人の交際を裏付けようと、さまざまな臆測が飛び交った。みんな他人の人生に興味津々である。
しかし実は、ここまでの暴露であれば、ある意味定期便みたいなものなので、大騒動にはならなかった。では、なぜ今回の暴露事件がたくさんのホス狂いたちの感情を揺さぶったのか(現に、私も揺さぶられすぎてコラムのテーマを急遽変更してしまったほどだ)。その理由は、たった一つ――暴露をした女性も、彼女とウワサされたキャバ嬢も、どちらも相当な“美人”だったのである。
私たちの動揺を、ホストに行ったことのない人は想像しづらいかもしれない。しかしこれは、前回に書いた「お金を使えば、容姿に関係なく一番になれる」というホスト遊びの価値観を根底から覆しかねない大事件なのだ。
「こんなに可愛い子がたくさんお金を使っても裏切られるのか……」
絶望的な話である。いや、絶望そのものだ。
そしてこの暴露による炎上は、直接関係のないホス狂いたちにまで延焼した。すなわち、多くのホス狂いたちが、まるで自分ごとのように大ダメージを受けたのである。私ももちろん被弾した。鬱々としてくるから、この話はここらへんで切り上げよう。というか、もう筆を置きたくなってきた。なので、さっさともう一つの「暴露」を紹介して、終わりにしよう。
二つ目の暴露とは、ホストのベッド写真や裸の写真などをいたずらに載せる「テロ」である。要するに、リベンジポルノだ。たちの悪いことに、遊び半分、愉快犯的に行われることも多い。
なぜそんなことをするのか。推測するしかないが、「自分はお金を払わなくてもホストと寝れる」というほかのホス狂いたちへのマウンティング行為と、私は解釈している。そもそも、考えてみてほしい。そんなみだらな写真があるというのは、最初から暴露する可能性を視野に入れていることにほかならない。ホストクラブの初回を渡り歩き、店ごとのホストと寝て、その痴態を集めて暴露する猛者などもたまにいる。だから、ホストも決して油断はできない。恐ろしい話である。
とはいえ、暴露をきっかけに名をあげるホストもいる。「暴露されてこそ一人前」なんて言われていたりするので、全てが全て悪と断罪できないのが、難しいところであり、ホストの世界の面白さでもある。
また、特にエースによる暴露は、ホストの「一番」の席が空いたことも意味する。その場合、暴露をされたことがきっかけで、ホス狂いたちのやる気に火をつけ、かえって、売り上げが伸びることも珍しくない。
何が言いたいのかといえば、「暴露」にもいろいろあるということだ。決して、わかりやすい悲劇やカタストロフだけではないのである。ただ、共通して言えることは、「暴露」という行為はホス狂いにとって、物語の幕引きなのだ。やや自惚れた表現をするならば、ヒロインを降りるための儀式なのである。
だから、人によっては幸福なハッピーエンドを望むこともあるし、破滅的なバッドエンドを望むこともある。いや、幸福であるかどうかは当人しかわからないものなので、他人から見て、どれだけ悲惨な破局に見えても、本人にとってはそれが一番幸せな終わりなんてこともある。
ということで、最後に、個人的に思い入れのある「暴露」を紹介して終わりにしたい。昨年、とあるAV女優――しかも、半年間で120本の作品に出演している超人気AV女優が、Twitterにて、担当ホストとの思い出の写真を大量にアップした。
続けてその女優は、担当ホストへお金を使うためにAVデビューしたことや、パパ活などで1年間に3000万円以上のお金を稼いだことを明かし、そして、そのホストと破局したことを告白したのだ。
「AV女優としての私を生んでくれた人です。もう会えないけど大好きです」
彼女はそう呟いていた。この子の選んだエンディングは、果たしてハッピーだったのだろうか、バッドだったのだろうか。いつか歌舞伎町にすれ違うことがあれば、ちょっと訊いてみたい気もする。
余談ではあるが、私が知っている暴露経験者のホス狂いたちは、その後、歌舞伎町で姿を見ることはなかった……なんてことはなく、みんなケロリとした様子で、いまだにホストに通っている。AV女優の子にしても、いま現在も大活躍中だ。「女の恋愛は上書き保存」とはよく言ったものである。
せりな
新宿・歌舞伎町の元風俗嬢ライター。『マツコが日本の風俗を紐解く』(日本テレビ系)で、 現役時代のプレイ動画を「徹底した商業主義に支配された風俗嬢」 と勝手に流されたが、 ホストに貢いでいたのであながち間違いではない。その他、デリヘル経営に携わるなど、業界では知られた存在。 現在も夜な夜な歌舞伎町の飲み屋に出没している。
Twitter
【バックナンバー】
第1回:歌舞伎町の元風俗嬢が語る、愛しき“ホス狂い”たち――「滑稽だけど大真面目」な素顔
第2回:担当ホストに月200万円……OLから風俗嬢になった女が駆け上がった「ホス狂い」の階段
第3回:容姿や年齢より「使った金額」! ホス狂いたちが繰り広げる、担当ホストのエースをめぐる闘争