ダウンタウンの松本人志はいまやネット炎上の常連で、特に『ワイドナショー』(フジテレビ系)の発言や態度は基本的にいつも物議を醸している。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)や『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)、『ダウンタウンなう』(フジ)ではそうはならない。やはり時事問題を扱うにもかかわらず、被害者のいる案件も茶化す姿勢に問題があるのだと思われる。
松本人志は2月24日放送の『ワイドナショー』において、性行為の同意を確認することについて<それはどうかな、と僕は思うけどね>と疑問を繰り返した。これは元自民党の田畑毅衆議院議員による準強制性交容疑について扱ったくだりで、スウェーデンでは性行為に必ず互いの同意が必要になったという説明を受けての発言。
<やっぱり男女間のムードってあるじゃないですか。そんな明確に『いいよ』とか……、ねぇ? 『やろうね?』『いいよ!』『イェイ!』みたいな。これはすげえ冷めるし>
<でも、女性って途中で『いやぁん』って言うときあるよ>
性行為においてムードは大切なものかもしれない。けれど、「実はイヤだったが、怖くて言い出せなかった」り、「酩酊していて拒絶することができなかった」りもする。それによって一方的に肉体を弄ばれたとしても、拒めなかった側の自己責任にされてきた。
また、片方が「二人でお酒を飲んだのだから、性行為もOKだろう」「部屋に来たのだから性行為もOKだろう」と思い込み、明確な同意を得ないまま強制的に性行為に及ぶことを肯定はできない。
しかしよりによって実際の性暴力の被害を訴える人間がいる事件について扱っているなかで、松本人志は「イヤよイヤよも好きのうち」だと言ってしまう。その軽率さは一部の視聴者に批判され、“炎上”した。
だが一方で、別の一部の視聴者は彼の主張に同意し、「同意なんて興醒め」と言う。松本の発言が“炎上”するとき、当然、擁護派も存在する。むしろそちらが多数派かもしれない、と思うときもある。現状では日本社会において、「性行為は互いの同意が必要」という認識は一般的ではなく、「イヤよイヤよも好きのうち」はまかり通る概念なのだ。
だからだろうか、松本人志は番組内でしきりに<これ大丈夫かな?>と、自らの発言が“炎上”しないかどうかを気にする素振りを見せたが、本音では“炎上”など意に介していないように見える。番組スタッフや事務所から「そうした価値観は今、更新すべきだ」と苦言を呈されることもないのだろう。Twitterで批判されたり、ネットニュースで“炎上”と伝えられることなど、おそらく業界にとってもただのエンタメに過ぎない。
[wezzy_blogcard 46723]
松本人志の“炎上”は性行為同意に関するものだけではないが、ここでは敢えてそのトピックに絞る。性行為に同意が必要だということを認めると、自分がこれまでしてきたことが「悪いことだったのかもしれない」と内省せざるを得なくなる。自分が誰かにとって加害者である可能性も出てくる。過去の自分を否定したくないし、今さら優等生じみたことは言えない。だから茶化して笑いのネタにしようとしているのかもしれない。
けれど時事問題を扱う番組において、しかも被害を訴える人間のいる事件について、そのような態度で振る舞うことの醜悪さにはさすがに気付くべきだ。あくまでもお笑いにしたいのなら、『ワイドナショー』は虚構のトピックだけを扱ったほうがいい。冒頭で記したように、他の出演番組ではこの番組のように“炎上”はしない。
自分を正当化するために既存の価値観にしがみつき、事件を都合よくネタにするくらいなら、『ワイドナショー』は思い切ってリニューアルすべきではないだろうか。
[wezzy_blogcard 19046]