50年で3回生まれ変わった犬に心打たれる! 映画『僕のワンダフル・ライフ』のDVDをプレゼント

   サイ女読者の皆さま、『僕のワンダフル・ライフ』という映画をご存じでしょうか。W・ブルース・キャメロンのベストセラー小説を、『HACHI 約束の犬』などで知られるラッセ・ハルストレム監督が映像化しました。飼い主と再会するために、50年で3回も生まれ変わった犬が主人公の本作。終始、犬目線で飼い主と犬との交流を描いています。一体どのような内容となっているのでしょうか。早速、あらすじをご紹介いたします!

 少年イーサン(ブライス・ガイサー)に拾われた犬は、ベイリーと名付けられる。2人の間には友情が芽生え、ベイリーはイーサンの進学や家族との喧嘩をそばで見守り、また、初めてできたガールフレンドとのキューピッド役も担うことに。そんなイーサンの少年時代から高校時代までを優しく見守っていたベイリーは、ある日、静かに息を引き取る。人間に比べて、犬の寿命は短いのだ。しかしベイリーは、イーサンと再会したい一心で、何度も生まれ変わることに。犬種も性別も場所も飼い主もまったく違うが、ただひとつ変わらないのはその性格で、常に賢く飼い主に忠実だ。時に明るいコーギー、任務に忠実なジャーマンシェパードなど、さまざまな犬に生まれ変わり、3回目でやっと、イーサン(デニス・クエイド)と再会するも、彼は中年男性になっていた。犬種が変わったベイリーに当然、気付くはずがなく……。

 本作は、動物と人間のふれあいだけではなく、イーサンという一人の人間の“成長”にも焦点が当てられており、幅広い層の心を打つ作品になっています。

 今回は、映画『僕のワンダフル・ライフ』のDVDを3名の方にプレゼント。動物好き方はハンカチのご用意をお忘れなく。「心温まるような映画が見たい」という方にもおすすめしたい1本です! サイ女読者の皆さま、奮ってご応募くださいね。お待ちしております!

※3月11日正午〆

ご応募はこちらから
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「可愛かったあの子が」と『イノセンス 冤罪弁護士』元子役・須賀健太の悪役ぶりに悲鳴続出

 3月2日夜10時から第7話が放送される、坂口健太郎主演ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)。視聴率は第5話9.0%から第6話9.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とアップして自己最高タイを記録した。同作は“冤罪”を題材にしたヒューマン・リーガル・エンターテインメントで、若き弁護士・黒川拓(坂口)が弱き人々を救おうと奔走する姿を描く。

 第6話では拓のもとに、樽前裕也(須賀健太)にかけられた冤罪を晴らしてほしいとの依頼が。大学時代からの悪友・新島彰(松本卓也)を射殺したとして逮捕され、裕也の部屋からは殺傷能力を持つ改造エアガンが発見されていた。態度も悪く“クロ”に近い印象だが容疑を否認しており、樽前家の使用人・有珠田(吹越満)も、裕也は部屋でベースを弾いていたとアリバイを語る。

 その頃、新島の母親を名乗る女が弁護士事務所に現れ、裕也の弁護をやめるよう要求。拓は要求を受け流し、近所の住人へ聞き込みを行うが、裕也の演奏音を聞いた人がおらずアリバイを証明できない。さらに、パラリーガル・穂香(趣里)の息子・晴斗が誘拐されてしまう。事件から手を引かなければ、「晴斗の命はない」と脅迫メールが届き決断を迫られる拓たち。

 脅迫はエスカレートするものの、拓たちは粘り強く調査を続け、裕也の演奏音を偶然収録していた映像を入手する。さらに工事の音を耳にした拓は、住民たちの証言を覆す大きなヒントへたどり着く。公判で拓が示したのは、低い音よりも高い音の方がより聞こえる「聴覚特性」という特殊な条件。裕也のベース音よりも、近所の工事現場から響いていた高周波の騒音が住民たちの耳に届いていたというのだ。

 裁判が進むなか、晴斗を誘拐した容疑で有珠田の元妻・丸山依子(山下容莉枝)が警察に逮捕される。2人には新島を主犯とした裕也たちの性暴力によって、娘を自殺に追い込まれた辛い過去が。この一件から、有珠田と丸山は復讐に身を投じたのだった。真相を知った裕也は有珠田を罵倒。そんな裕也を弁護しなければならない拓は、悔しさを滲ませつつ、彼にかけられた殺人容疑についてのみ、無罪を主張するのだった。

「今回は裕也を演じた元子役の俳優、須賀健太が視聴者の目を引きつけました。裕也は演奏による近所迷惑もまったく気に留めておらず、性犯罪の過去が明らかになっても法廷で悪態をつく始末。あまりの“悪役”ぶりに、視聴者から『可愛かった健太くんがいつの間にかとんでもないクズ男に……』『憎たらしすぎて最後まで須賀健太って気づかなかった!』『金髪ヤンキーが須賀君と知って成長ぶりに驚くばかり』といった声が相次ぎました」(芸能ライター)

 第7話で拓と楓(川口春奈)は、資産家・乗鞍(団時朗)を殺害したと疑われている若妻・満里奈(川島海荷)の弁護を担当することに。満里奈は乗鞍が練炭による一酸化炭素中毒で、無理心中を図ったと供述。自らも病院に搬送されていたが、彼女が事前に練炭を買っていたことなどから殺人を疑われていたのだ。

「次回はゲスト出演で女優・川島海荷が疑惑の未亡人役に挑戦。意外なキャスティングにネット上では、『ウソだろ? 海荷ちゃんが罪を犯すなんて間違いに決まってる!』『川島海荷の悪女役なんて全く想像がつかん……』と驚きの声が広まっています」(同)

 満里奈は練炭による自殺の偽装を行ったのか? 拓の名推理に期待しよう。

【五所純子/ドラッグ・フェミニズム】かずきが解離症の中で得た金と薬と3人の神

――覚醒剤、コカイン、大麻、向精神薬……クスリに溺れる女たちを嗤うのはたやすい。だが、彼女らの声に耳を澄ませば、セックスやジェンダーをめぐる社会の歪みが見えてくる。これは、文筆家・五所純子による“女とドラッグ”のルポであり、まったく新しい女性論である。

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 高層タワーの街は空の高さを意識させられ、人は玩具のように小さい。新宿副都心のホテルのロビー、約束の時間より20分早く、彼女は太い柱の陰に座っていた。うつむいて物思いに耽っているようでも、うなだれているようでもあった。

 普段はロリータファッションに身を包むが、「今日は初対面の人に話をするので、そぐわないと思って」。レース編みの白いカーディガンに、黒のミニドレス、ストラップパンプス。誰の気も引かず、誰の気も逆撫でしない、誰でもない服装を選んだ。

 名前は“かずき”。本名は“りつこ”。幼稚園の頃から一人称は“僕”で、10歳のときに「たぶん僕はかずきだ」と思った。女性であることに拒否感があったが、どうしようもないことだと受け入れた。現在19歳の大学生。

 かずきは3人の神と出会った。

 1人目の“神様”は合気道の師匠。香川で200人の門下生を抱える大道場に、生まれつき心臓の弱かったかずきを丈夫にしようと両親が入塾を決め、4歳から通いはじめた。

「師匠は父よりも父みたいな存在でした。『道場の子たちはみんな家族だ』、それが師匠の口癖でした。

 40人くらいの塾生を並ばせて、なかでも成績優秀な先輩に対して『俺が死ねと言ったら死ねるか』と、師匠が問いただした場面をよく憶えてます。子どもを使ったパフォーマンスですね。いかに自分が忠誠を尽くされているかを見せびらかして、威信を保っていたんでしょう。先輩は『死ねます』と答えました。次に、『お前はどうだ』と僕が訊かれました。師匠は僕がためらうのを期待してたと思うんです。でも僕は『死ねます』って答えました。別にいつ死んでもいいし、大好きな師匠のためだったら全然死ねたので。『嘘をつくな』と怒鳴られました。

 道場はバチバチの体育会系で、完全に年功序列、体罰も当たり前です。『はっきりものを言え。お前と話しとるとイライラする』とよく言われました。僕が主将を務めたときは、『お前がいなかったら○○が主将になれたのに』『みんながお前についてきたかったとでも思うのか』と……。

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かずきは小学生の頃からリストカットを始め、腕を噛みちぎったこともある。(写真/草野庸子)

 僕はみんなのことが大好きなんですよ。師匠のことも、先輩たちも後輩たちも。だけど、僕は死んだほうがいいのかな、と思うようになりました。極端ですよね。小学生のときはリストカットを知らなかったので、ハサミで手首を切ってました。中学生のあるとき、気づかないうちに腕を噛みちぎって、目覚めたら口の中に肉片が残っていて。両親は僕を病院に連れていきました。それまでは不眠や頭痛の治療で脳神経外科から睡眠薬を処方されていたんですけど、このとき精神科で解離性障害だと病名がつきました。いまでも記憶がすっぽり抜け落ちたり、日常で現実感がなかったりします。

『かずきはつらくて自傷をしながらも、主将をやり抜いたんだぞ』。中学を卒業する頃、師匠が道場で褒めてくれました。みんなに自傷がバレて恥ずかしかったけど、幸せでした。神様にやっと認めてもらえたから。

 あの頃のことは合気道しか憶えていません。それ以外は靄がかかってます」

 醒めるかずきは神に心酔し、眠るかずきは神を拒絶していた。高校生になると、しだいに道場から足が遠のいた。すると自傷もおさまった。

 道場と入れ替わるように、スナックなどでアルバイトを始めた。16歳が客の接待業務をし、飲酒をする。違法行為だとかずきは理解していた。「大学に行くのはいいけど、学費は自分で出してね」。前々から両親に言い含められていたため、高校在学中に進学費用を稼がなければいけないと考えていたのだ。

「姉が医大に入りました。僕より姉にお金をかけたほうが先行投資として正しいと思います。姉に劣等感ですか?ないです。お姉ちゃんはすごいですもん。僕が姉の犠牲ですか? そんなふうに考えたことないです。うちは仲良し家族ですよ。昨日もLINEグループで父が実家の猫の写真を送ってきて、みんなで『かわいいね』って返事しあいました」

 バイト先の店長に言い寄られた。かずきは恋愛やセックスにさほど興味がなかったが、「人生の必修科目っぽいじゃないですか。やらなきゃいけないのかなと思って」。45歳の人と交際していると母に話したら、「意味がわからない」と号泣された。泣き虫の45歳の恋人を慰めたら、「包容力がある」と褒められた。

“ビッチ”“援交女”などと噂を立てられ、居心地の悪くなったかずきは高校を中退する。成人式に喪服で行ってやろうと考える程度には噂の発信源を恨んでいるが、当時のかずきは同級生を低能集団だと見下していたので、おあいこだとも思っている。

過剰処方する精神科医と愛人契約を結んだ

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いわゆる姫カットのかずきは、自分のことを“僕”と呼ぶ。(写真/草野庸子)

「人が少なくて閉塞感の強い地元を離れたくて、東京の大学を受験しました。それと、このままだと最終学歴が中卒なので、大卒の経歴が欲しかったです」

 18歳で上京、通学しやすい新宿に家を借り、歌舞伎町のキャバクラでアルバイトを始めた。学費も家賃も食費も光熱費も通信費も遊興費も医療費も健康保険料も住民税もすべて自分で稼ぐ生活が始まった。そこで、かずきは2人目の“神様”に出会う。

「キャバクラの女の人ってみんな綺麗でお話が上手ですごいんです。僕は前髪パッツンや姫カットが落ち着くんですけど、男性客のウケが悪いので封印して、お話をがんばって、それでもお客さんに選ばれない。自分が嫌になること、不安になること、忘れたいことがどんどん増えていきました。

 また自傷するようになったので精神科に、自宅にいちばん近い個人医院に行きました。双極性障害、対人恐怖症、ADHD(注意欠如・多動症)と診断されて、精神安定剤のセニラン、抗うつ剤のデプロメール、あと頓服で抗不安剤のデパスが処方されました。薬を飲んだら驚くほど調子がよくなって、僕なんかでも生きてていいような気がしてきました。

 しばらくして、『診察代は安くないし、お金が大変でしょ。連絡先を教えてくれたら、暇なときに相談に乗るよ』と医師が言ってくれました。問診で僕のことを隅々まで話してましたから、不自然には感じませんでした。感激しました。薬を処方してくれるだけでも尊いのに、僕を健康にしてくれる神様が現れた、と。

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薬を処方する精神科医の愛人になると、解離性障害が再発した。(写真/草野庸子)

 LINEを交換して個人的に連絡をとりはじめると、『月20万(円)で俺と付き合わないか』と言われました。医師は40歳の独身男性です。彼は最初のうち、僕のことを“彼女”“恋人”と言ってましたけど、あるとき“愛人”と口を滑らせました。『絶対、誰にも言わないで』と口止めされてましたし、愛人契約なんだろうなとわかってたつもりですが、『好きだよ。君は何もしなくていいよ。そのままでかわいいよ』という言葉を真に受けたかったのかもしれません。優しさの先にはセックスが用意されてたんですよね。

 月20万以外に、化粧品とか服とか、僕がかわいくいられるための物を買ってくれました。じきに20万が30万に増えて、僕ももっと差し出さなきゃいけないと考えました。誰かが好きと言ってくれたら、“じゃあ、僕も好き。こんな体でよければどうぞ”と思うんです。どうして“体”か、ですか? 体以外に僕が差し出せるものって、なにか他にあります? 心とかですか?

 セックスの最中は首をよく絞められました。週に1~2回、会うのはかならず彼の家です。僕のバイトが終わる明け方から、彼の出勤時間まで。休日は深夜に呼び出されました。僕がLINEを返すのが遅れると、興奮した彼が僕の家に乗り込んできました。

 薬は欲しいと言えばなんでもくれて、デパスとマイスリーとレンドルミンをよくもらってました。この頃から解離が再発しました。10針縫うほど深く腕を切って、初めて自分の骨を見たのもこの時期です。骨ってほんとに白いんですね。他人事みたいですか? 記憶がないから、他人の惨状を見てるみたいなんですよ。

 彼の家にいたあるとき、僕が『もうやだ』と叫びながら壁に頭を打ちつけはじめたそうです。それで、彼は僕に鎮静剤を打ったというんですね。目が覚めたら注射器がありました。病院で使ってる薬でしょうけど、なぜ彼の家にあったのか、どういう薬剤なのか、わかりません。僕はだんだん薬がないと生活できなくなってました」

 過剰処方で患者を“薬漬け”にして“常連客”にする精神科医は、医療業界でも評判が悪い。まして女を囲うためになど悪質すぎる。のちに愛人契約を解消して病院を移ると、新しい医師は控えめに言った。「前の先生、ちょっと薬が多いかな」。病院を替えてから、かずきの記憶は飛びにくくなった。医師の愛人だった4カ月間、ずっと意識が朦朧としていたことに気がついた。

新しい居場所を求めて地下アイドルの輪へ

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現在、19歳の大学生であるかずきの恋人は、地下アイドルのライブで出会ったサラリーマン。(写真/草野庸子)

「別れ話をしたら、瓶で殴られたり蹴られたりしました。泣きながら『お前だけは俺のことわかってくれると思ってたのに』って、精神科医と患者の立場が逆ですよね。この人も僕の神様じゃなかった。彼がうずくまってる間に置き手紙をして逃げました。

 愛人契約は悪いことだと思わないですけど、かなり危険をともなうとわかりました。どれだけお金に困っても、もう二度とやりません」

 自己否定感が和らぐものは「薬、お酒」。好きなものは「アイドル」。3人目の“神様”雛方ゆんあの名前を口にした途端、かずきは破顔した。声が柔らかく上ずり、目尻が溶けそうなほど下がった。

「愛人契約で得たお金で会いに行くなんて、ゆんちゃんに顔向けできませんでした。みんながんばって働いてるのに、僕が稼いだお金は汚かったから。ゆんちゃんはかわいくて清くて優しくて、みんなのことを癒やしてくれます。ゆんちゃんだけが僕の神様です。

 神様というのは導いてくれる人のこと。だから、神様の言うことは絶対です。僕は自分の人生に責任をとる自信がなくて、正しい生き方を見せてくれる人を求めてるんでしょうね。師匠も医師も神様じゃなかった。結局、師匠は子どもに甘えて、医師は僕に依存してましたから。

 ゆんちゃんのおかげでやっと居場所を見つけられました。道場と違ってファンの人たちはおっとりしてるし、今度こそ疑似家族になれる、と。

 ゆんちゃんはいわゆる“地下アイドル”で、ファンの人数は限られてます。ライブもほとんどが男性で、女性は2~3人。LINEグループが20人くらいで、そのうち現場でよく会う数人で遊びに行きました。ゆんちゃんは僕たちを愛してくれて、僕たちはゆんちゃんを愛していて、この輪をみんなで大切にしています。輪は強いです。

 だから誰にも言えなかったんですけど、ファングループの人から『かずきちゃんのことが好きになっちゃった。付き合ってほしい』と次々に言われてしまって。僕に優しくしてくれたのは家族だからじゃなくて、その先にセックスがあったからなんだね、と。断るとすごく傷つく人たちですし、僕なんかが傷つけてしまうのも何様なんだという気がして。僕が輪を乱した。もう神様にも会いに行けない。それを考えだすと苦しくて、解離が起きてしまうんです」

 雛方ゆんあのライブは、アイドルとファンが一体化して“ここにあるもの”を信じるという宗教性すらあった。その統制が頼もしくも煩わしくもある。さらにアイドルというシステムは、マトリョーシカのように女子を小さく模造化して取り込む力学をもつのか。アイドルサークル内アイドル、あるいは“雛方ゆんあ”の代理を求められたかずきは、“神”のつくった世界を守るために、トラブルを黙って処理する。“世界”の矛盾が皺寄せる。

「僕はメイドカフェで十分」と、かずき自身のアイドル願望は縮小して保たれる。歌舞伎町のキャバクラを辞め、現在は秋葉原のメイドカフェで働く。家賃8万、医療費・薬代3~4万。毎月金が足りず、キャバクラと医師の手当で貯めた金を取り崩す日々。ライブで出会ったサラリーマンの恋人が、日々の出費をさりげなく払ってくれるのがありがたい。大学にはもう行っておらず、退学届を出すつもりだ。

「薬は増える一方で、どんどんやめられなくなってます。こんな奴が生きてると思うとイラッとします。強くなりたいです」

(つづく)

※人物の名称は仮名です。

(写真/草野庸子)

五所純子(ごしょ・じゅんこ)
1979年生まれ。文筆家。映画や文芸を中心に執筆。著書に『スカトロジー・フルーツ』(天然文庫)、共著に『1990年代論』(河出書房新社)、『心が疲れたときに観る映画』(立東舎)がある。

以前の連載記事は下記のリンクから読むことができます
【第一回】ダンサー・君島かれんの野良知性
【第二回】ゴミ収集員【真弓】の物語(前編)
【第三回】ゴミ収集員【真弓】の物語(後編)
【第四回】【向精神薬】をパステルに包む彼女

テレ東『ワールドビジネスサテライト(WBS)』MCの座を大江麻理子アナに奪われた小谷真生子アナが画面から消える!

 かつて、テレビ東京系の経済ニュース番組『ワールドビジネスサテライト』のメインキャスターとして、中高年ビジネスマンに絶大な人気を誇っていた小谷真生子アナが、ついにテレ東系列の画面から消えることがわかった。

 小谷アナは2014年3月末から、BSテレビ東京(旧BSジャパン)『BSニュース 日経プラス10』のMCを務めていたが、3月末で降板。後任には、これまで『Mプラス11』『NEWS ZONE』『日経マーケットアイ』『日経朝とく』『日経モーニングプラス』など、テレ東、BSテレ東、日経CNBC(CS放送)の数々の番組でキャスターを務めてきた榎戸教子アナが起用される。

 日本航空のCAだった経歴をもつ小谷アナは、NHKでキャスターデビュー。久米宏がメインキャスターを務めていた『ニュースステーション』(テレビ朝日系)などを担当した後、1998年4月より、『WBS』のMCに就任。以降、16年にわたって同番組を仕切った。持ち前の美貌に加え、経済の知識も豊富なことから、中高年ビジネスマンから熱い支持を受けていた。

 ところが、テレ東のエース女子アナ・大江麻理子が米ニューヨーク赴任を終え帰国すると、その座を大江アナに譲ることになり、14年3月末より、『日経プラス10』に異動していた。

 テレ東によれば、同局が降板させたわけではなく、米国にも拠点を置く小谷アナが「自身のビジネスに力を入れたい」として、自ら身を引いたと説明。

「地上波、BSでトータル21年にわたって、テレ東の経済番組を引っ張ってきた小谷アナの貢献度は大。その存在がなければ、『WBS』も継続できなかったかもしれません。BSに移る際は、ギャラもダウンしますし、じくじたる思いがあったようですが、フリーである以上、局の決定にはあらがえません。ファンにとっては、降板はショックでしょうが、小谷アナは3月でもう54歳。『日経プラス10』を引き継ぐ榎戸アナは、一回り以上年下の41歳。小谷アナとはちょっとタイプの違うエキゾチック系美人で、テレ東系の経済情報番組を見ている人にとっては、おなじみの存在。そろそろ若返りを図る必要もあるでしょう」(女子アナウオッチャー)

 同局によると、小谷アナは今後、特番などに出演する機会があるというが、長年番組を見続けてきたファンにとっては、悲しいお別れの春になりそうだ。
(文=田中七男)

テレ東『ワールドビジネスサテライト(WBS)』MCの座を大江麻理子アナに奪われた小谷真生子アナが画面から消える!

 かつて、テレビ東京系の経済ニュース番組『ワールドビジネスサテライト』のメインキャスターとして、中高年ビジネスマンに絶大な人気を誇っていた小谷真生子アナが、ついにテレ東系列の画面から消えることがわかった。

 小谷アナは2014年3月末から、BSテレビ東京(旧BSジャパン)『BSニュース 日経プラス10』のMCを務めていたが、3月末で降板。後任には、これまで『Mプラス11』『NEWS ZONE』『日経マーケットアイ』『日経朝とく』『日経モーニングプラス』など、テレ東、BSテレ東、日経CNBC(CS放送)の数々の番組でキャスターを務めてきた榎戸教子アナが起用される。

 日本航空のCAだった経歴をもつ小谷アナは、NHKでキャスターデビュー。久米宏がメインキャスターを務めていた『ニュースステーション』(テレビ朝日系)などを担当した後、1998年4月より、『WBS』のMCに就任。以降、16年にわたって同番組を仕切った。持ち前の美貌に加え、経済の知識も豊富なことから、中高年ビジネスマンから熱い支持を受けていた。

 ところが、テレ東のエース女子アナ・大江麻理子が米ニューヨーク赴任を終え帰国すると、その座を大江アナに譲ることになり、14年3月末より、『日経プラス10』に異動していた。

 テレ東によれば、同局が降板させたわけではなく、米国にも拠点を置く小谷アナが「自身のビジネスに力を入れたい」として、自ら身を引いたと説明。

「地上波、BSでトータル21年にわたって、テレ東の経済番組を引っ張ってきた小谷アナの貢献度は大。その存在がなければ、『WBS』も継続できなかったかもしれません。BSに移る際は、ギャラもダウンしますし、じくじたる思いがあったようですが、フリーである以上、局の決定にはあらがえません。ファンにとっては、降板はショックでしょうが、小谷アナは3月でもう54歳。『日経プラス10』を引き継ぐ榎戸アナは、一回り以上年下の41歳。小谷アナとはちょっとタイプの違うエキゾチック系美人で、テレ東系の経済情報番組を見ている人にとっては、おなじみの存在。そろそろ若返りを図る必要もあるでしょう」(女子アナウオッチャー)

 同局によると、小谷アナは今後、特番などに出演する機会があるというが、長年番組を見続けてきたファンにとっては、悲しいお別れの春になりそうだ。
(文=田中七男)

小室佳代さんは日本一の非常識母さん? 巧みに誘導された世論

 秋篠宮家の長女・眞子さま(27)との婚約が延期になっている小室圭さん(27)について、今週も各週刊誌は動向を伝えている。婚約会見が2017年9月。その直後である同年12月から、母親の佳代さん(52)と元婚約者の男性A氏との間の金銭トラブルが週刊誌で報じられた。翌年2月には宮内庁が婚約延期を発表。そこから1年が経った。

 小室さんは秋篠宮さまにこの金銭トラブルについて問われ「借金ではなく贈与と認識しています」とお答えになったといわれている。またA氏は婚約期間中の佳代さんとのメールも公開しているが、そこには「お借りしてもよいでしょうか」との文面があり、佳代さん側には借金との認識があったはずだ、とA氏は主張している。

 贈与か借金か、佳代さんとAさんの主張はどこまでも平行線で、ゆえに週刊誌報道も、お二人の婚約について何かしら決着がつくまで追い続ける。

「前例のない待遇」と「脱税疑惑」に焦点
 今週は小室さんが留学中の米国ニューヨーク・フォーダム大学のロースクールでの動きを「週刊新潮」(新潮社)が報じたが、それによれば小室さんは、米国での司法試験を前倒しで受ける可能性があるのだという。これ自体が異例のことだが、小室さんは留学時点から眞子さまとの婚約をアピールして新入生で一人だけしか選ばれない返済不要の奨学金を受けることになったという。「前例のない」待遇を受けているため、前倒しの可能性もなきにしもあらず、というのだ。

 同大学の司法試験合格率は80パーセントを超えているが、これは試験が簡単ということではなく、一流大学の学生がある程度勉強すれば受かる、というレベルの高いもの。試験に合格すれば米国にそのまま移住するのではないか、と記事にはある。

 一方、「女性セブン」(小学館)では「週刊文春」(文藝春秋)が先立って報じたコムロコインについてページを割いている。これは『フォーダム大ロースクールの2019年同期の友人一同』と名乗る設立者が、仮想コイン『コムロコイン』の出資を募るサイトが立ち上がったという騒動のことだ。ただ、このサイトには日本で報じられているように「佳代さんがA氏に借金をしている」などと英語で明記されているため、現地でも多くの人が小室さんの“正体”を知ることになる……と報じている。

 母・佳代さんについては時折、その動向が伝えられるが「女性自身」(光文社)では先週、佳代さんの脱税疑惑を報じていた。くだんの400万円(同誌は409万円と報じている)が佳代さんのいうように贈与であれば、贈与税の支払い対象となるため、これを行わなければ脱税となる、というのだ。時効は来年3月であり、納税にはまだ十分な時間があるが、この状況を税務署も認識しており近いうちに税務調査が入る可能性もある、という。

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小室サイドの主張が甚だしく非常識であると読めるよう巧みに構成
 各誌、記事の構成が巧みなことが共通している。文中には明記していないが全体を読むと、例えば直前に紹介した「女性自身」の記事であれば“佳代さんは脱税するかもしれない”というマイナスイメージを読者に与えることに成功している。これまでの他誌の報道でも、贈与であると主張している佳代さんサイド、借金であると主張しているA氏、いずれの言い分も盛り込みながら、やはり佳代さんサイドの主張が甚だしく非常識であると読めるように構成されている。

 佳代さんに至っては“失踪”等の報もあり、犯罪を犯したわけでもないのに犯罪者のような扱いだ。ここまでの報道で、皇室に直接直談判しようという動きを見せたり、皇室に出向き「贈与である」ことを主張するなどといった彼女の動向が細かく伝えられており、“失踪”の報道は佳代さんへの怪しいイメージをより増大させることに成功している。

 しかし立ち止まって考えてみれば、佳代さんは何も犯罪を犯しているわけではない。現時点で、皇室に直接直談判したわけでもない。先の記事にもあるように、実際に借金であるならばA氏が佳代さんを相手取り民事訴訟を起こせば良いのである。

[wezzy_blogcard 63200]

 だがA氏はそれをせず、あくまでも週刊誌を利用して世論に訴えかける。宙ぶらりんのままの状態を続けていることで、佳代さんの“怪しさ”寄りの報道は1年以上にわたり続けられ、彼女は一市民であるにもかかわらず、その名誉が大きく損なわれている状態だ。

一般社会では小室家のような家は珍しくはない
 仮に、小室さんのお相手が眞子さまではなく一般女性だと仮定して、この騒動を女性側から見てみると、どうか。「結婚しようと思っていた相手のお母さんが、その元カレとお金でトラブルを起こしている。そのうえ、息子にベッタリで母子密着状態(実際は親子には物理的に距離があるが)」……こんなケースは、かの発言小町では何も珍しくはない。むしろ妊娠中の夫の不倫や婚約相手の経歴詐称など、バラエティに富んだ相談が日々寄せられる発言小町内にこの相談があっても、可愛い方の部類だ。

「姉の婚約者とその母が非常識で困ってます」(妹がトピ主)
「娘の交際相手に口を出すべきでないのか」(母がトピ主)
「婚約者の母親が原因でマリッジブルー」(女性本人がトピ主)

 こんなトピで相談が寄せられてもおかしくない事案ではある。ちなみにこのトピのうち2つは実際に発言小町に存在する。

 コメントでは、こんな書き込みが多くなるだろう。

「お姉さまは少し盲目的になられているようです」
「本気で結婚するというのなら、距離を置いてみては?」
「今嘘をつく人は結婚しても同じですよ?」
「いくら大好きでも結婚はゴールでなく始まりです。結婚生活は大好きだけでは通用しません」

 この騒動は、皇室の問題になってしまったから、ことさらに小室家が非常識扱いされているが、一般社会では小室家のような家は珍しくはない。日本一の非常識お母さんのような報じられ方をしている佳代さんのような女性も、小町ではよく見かける。

 皇室に釣り合うか否か、という論点から見ればもちろんまた別の話になるが、この親子を叩き続ける報道を長期間見続けていると、まるでイジメのようにも見えてきてしまうのであった。

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アンチノミーを抱えたハリウッドの頑固オヤジ! クリント・イーストウッドが贖罪の旅『運び屋』

 ハリウッドが誇る大スターでありながら、名監督でもあり続けるクリント・イーストウッド。誰もが認める唯一無二の存在だ。イーストウッド自身による生前葬を思わせた主演&監督作『グラン・トリノ』(08)の後も、『インビクタス/負けざる者たち』(09)や『アメリカン・スナイパー』(14)などの力作、名作を監督し、精力的に活動を続けている。そんなイーストウッドが10年ぶりに主演&監督したのが、全米大ヒット作『運び屋』(原題『The Mule』)。88歳になるイーストウッドが実在した87歳の麻薬の運び屋を演じ、イーストウッドの映画人生と重なり合うロードムービーとなっている。

「今のハリウッドは若者向けの映画ばかりで、自分に合った作品がない」と『グラン・トリノ』以降は、イーストウッド作品を長年プロデュースしてきたロバート・ロレンツの監督デビュー作『人生の特等席』(12)に出演しただけで俳優業はリタイア状態だった。1930年生まれというイーストウッドの年齢を考えれば、年1本ペースで監督業を続けていることすら驚異だが、久々に俳優として興味を示したのが87歳のおじいちゃんが麻薬の運び屋をやっていたという雑誌記事だった。「この役を演じられるのは俺だ」と久々に主演&監督作を引き受けることになった。

 主人公のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は地方都市で暮らす園芸家。特にデイリリーという手間の掛かる花を育てることに情熱を注いできた。品評会では多くの賞を受賞し、社交的な人柄で人気者だった。だが、外面のよさとは反対に、家庭を省みることはなかった。娘アイリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式すら欠席し、妻のメアリー(ダイアン・ウィースト)とは離縁。さらにはネットビジネスの台頭で、アールは園芸場と家も失い、天涯孤独の身に。そんなとき、アールに怪しい儲け話が持ち掛けられる。

 アールは全米各地の品評会に参加してきたので、車の運転には自信がある。しかも違反ゼロ。そんなアールに目をつけたのがメキシコの麻薬カルテルだった。アールは言われるがまま、年代物のトラックに大きなバッグを載せ、指定された場所へと届ける。「見るな」と言われたバッグの中身は、キロ単位の大量の麻薬だ。警察もまさか80歳過ぎの老人が麻薬の運び屋だとは思わないだろうという麻薬カルテルの狙いだった。

 アールじいさんは朝鮮戦争に従軍した退役軍人なので肝っ玉が据わっている。レストランでのんびり休憩したり、タイヤがパンクして困っている家族を見つけては手助けしたりと、自由気まま。麻薬取締局のコリン捜査官(ブラッドリー・クーパー)が麻薬ルートを一網打尽にしようと網を張っているが、その網にアールはなかなか引っ掛からない。

 運び屋稼業で儲けたギャラで園芸場を取り戻しただけでなく、唯一アールのことを慕ってくれていた孫娘ジニー(タイッサ・ファーミガ)の結婚パーティーの費用を全額負担する。さらには閉鎖が決まっていた退役軍人クラブに大金を寄付するなどの大判振る舞い。義賊ロビンフッドになったような気分だった。男としての自信をすっかり取り戻し、宿泊先にセクシーな風俗嬢を2人も呼ぶほど。麻薬カルテルから派遣された若い監視役に「人生には遊びが必要だ」と説教を垂れるアールじいさんだった。

 旅する園芸家アールには実在のモデルがいるものの、イーストウッド自身の姿とダブッて映る。イーストウッドも映画づくりに情熱を注ぐことを優先して生きてきた。映画の仕事がないときは、趣味の音楽に時間を割いた。その分、家族と過ごす時間は少なく、離婚と再婚を重ねてきた。『アウトロー』(76)から『ダーティハリー4』(83)まで度々共演した女優ソンドラ・ロックとは長年ダブル不倫関係にあり、最後は慰謝料をめぐって泥沼裁判となった。映画人としての名声とは裏腹に、家庭人としてはダメダメな人生を歩んでいる。

 運び屋稼業で生活力を取り戻したアールじいさんは、これまで傷つけてきた別れた妻メアリーや顔を合わせようともしない娘アイリスに詫びを入れる。もちろん、運び屋をやっていることは内緒にして。結婚生活が実質10年しか保たなかった元妻メアリーは、アールに向かって囁く。「あなたは私にとって最愛の人。でも、あなたは私に最大の苦痛も与える」と。憎んでも憎みきれない人。それがアールであり、またイーストウッドでもある。

 イーストウッド監督作は、どれもストーリーは明瞭だが、テーマは深遠なものが多く、簡単には咀嚼することができない。イーストウッド監督作を観ながら思ったことは、この人はアンチノミー(自己矛盾)そのものを描いているのではないかということだ。

 イーストウッドが監督としての作家性を明確に発揮し始めたのは、『ホワイトハンター ブラックハート』(90)からだろう。ハリウッドの巨匠ジョン・ヒューストンをモデルにした主人公は人種差別を嫌うリベラリストでありながら、“地上で最も崇高な生き物”アフリカ象をハンティングすることに異常な執念を燃やす。『ミリオンダラー・ベイビー』(04)ではボクシングに生き甲斐を見い出したヒロインに、死の引導を渡す役割を演じた。

 実質的にイーストウッドが監督した犯罪サスペンス『タイトロープ』(84)も興味深い作品だった。風俗嬢を専門に狙う強姦殺人鬼の足取りを調べるうちに、刑事役のイーストウッドはアブノーマルなSM世界へとハマってしまう。犯罪者を追い詰める刑事の心の中にも、黒い影が蠢いていた。新人監督をクビにしてまで映画づくりにのめり込む父親の姿は、『タイトロープ』で親子共演していた少女時代のアリソン・イーストウッドの目にはどのように映っていたのだろうか。

 与えられ人生を、目の前に続く道を懸命に走れば走るほど、自分の生き方は矛盾をはらんでいることに気づくことになる。多くの人を楽しませるために映画づくりに励んできたイーストウッドだが、気がつけば身近な人たちを傷つけてしまっていた。別れ離れになっていた家族と復縁するためにアールじいさんは、せっせと麻薬を全米各地へとバラまき、多くのジャンキーを生み出すことになる。アールじいさんとイーストウッドは、表裏一体の関係ではないだろうか。

 どうすれば、このアンチノミーを解消することができるのだろうか。多分、この難解な方程式は死ぬまで解くことはできないと思う。それでも、その答えを求めてイーストウッドは旅を続ける。自分が抱え込んだアンチノミーとどう向き合うのか。それが生きるということなのかもしれない。

(文=長野辰次)

アンチノミーを抱えたハリウッドの頑固オヤジ! クリント・イーストウッドが贖罪の旅『運び屋』の画像4

『運び屋』
監督・製作/クリント・イーストウッド 脚本/ニック・シェンク
出演/クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、イグナシオ・セリッチオ、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ
配給/ワーナー・ブラザース映画 3月8日(金)より全国公開
(C)2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
http://wwws.warnerbros.co.jp/hakobiyamovie

アンチノミーを抱えたハリウッドの頑固オヤジ! クリント・イーストウッドが贖罪の旅『運び屋』の画像5『パンドラ映画館』電子書籍発売中!
日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』
が電子書籍になりました。
詳細はこちらから!

 

アンチノミーを抱えたハリウッドの頑固オヤジ! クリント・イーストウッドが贖罪の旅『運び屋』

 ハリウッドが誇る大スターでありながら、名監督でもあり続けるクリント・イーストウッド。誰もが認める唯一無二の存在だ。イーストウッド自身による生前葬を思わせた主演&監督作『グラン・トリノ』(08)の後も、『インビクタス/負けざる者たち』(09)や『アメリカン・スナイパー』(14)などの力作、名作を監督し、精力的に活動を続けている。そんなイーストウッドが10年ぶりに主演&監督したのが、全米大ヒット作『運び屋』(原題『The Mule』)。88歳になるイーストウッドが実在した87歳の麻薬の運び屋を演じ、イーストウッドの映画人生と重なり合うロードムービーとなっている。

「今のハリウッドは若者向けの映画ばかりで、自分に合った作品がない」と『グラン・トリノ』以降は、イーストウッド作品を長年プロデュースしてきたロバート・ロレンツの監督デビュー作『人生の特等席』(12)に出演しただけで俳優業はリタイア状態だった。1930年生まれというイーストウッドの年齢を考えれば、年1本ペースで監督業を続けていることすら驚異だが、久々に俳優として興味を示したのが87歳のおじいちゃんが麻薬の運び屋をやっていたという雑誌記事だった。「この役を演じられるのは俺だ」と久々に主演&監督作を引き受けることになった。

 主人公のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は地方都市で暮らす園芸家。特にデイリリーという手間の掛かる花を育てることに情熱を注いできた。品評会では多くの賞を受賞し、社交的な人柄で人気者だった。だが、外面のよさとは反対に、家庭を省みることはなかった。娘アイリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式すら欠席し、妻のメアリー(ダイアン・ウィースト)とは離縁。さらにはネットビジネスの台頭で、アールは園芸場と家も失い、天涯孤独の身に。そんなとき、アールに怪しい儲け話が持ち掛けられる。

 アールは全米各地の品評会に参加してきたので、車の運転には自信がある。しかも違反ゼロ。そんなアールに目をつけたのがメキシコの麻薬カルテルだった。アールは言われるがまま、年代物のトラックに大きなバッグを載せ、指定された場所へと届ける。「見るな」と言われたバッグの中身は、キロ単位の大量の麻薬だ。警察もまさか80歳過ぎの老人が麻薬の運び屋だとは思わないだろうという麻薬カルテルの狙いだった。

 アールじいさんは朝鮮戦争に従軍した退役軍人なので肝っ玉が据わっている。レストランでのんびり休憩したり、タイヤがパンクして困っている家族を見つけては手助けしたりと、自由気まま。麻薬取締局のコリン捜査官(ブラッドリー・クーパー)が麻薬ルートを一網打尽にしようと網を張っているが、その網にアールはなかなか引っ掛からない。

 運び屋稼業で儲けたギャラで園芸場を取り戻しただけでなく、唯一アールのことを慕ってくれていた孫娘ジニー(タイッサ・ファーミガ)の結婚パーティーの費用を全額負担する。さらには閉鎖が決まっていた退役軍人クラブに大金を寄付するなどの大判振る舞い。義賊ロビンフッドになったような気分だった。男としての自信をすっかり取り戻し、宿泊先にセクシーな風俗嬢を2人も呼ぶほど。麻薬カルテルから派遣された若い監視役に「人生には遊びが必要だ」と説教を垂れるアールじいさんだった。

 旅する園芸家アールには実在のモデルがいるものの、イーストウッド自身の姿とダブッて映る。イーストウッドも映画づくりに情熱を注ぐことを優先して生きてきた。映画の仕事がないときは、趣味の音楽に時間を割いた。その分、家族と過ごす時間は少なく、離婚と再婚を重ねてきた。『アウトロー』(76)から『ダーティハリー4』(83)まで度々共演した女優ソンドラ・ロックとは長年ダブル不倫関係にあり、最後は慰謝料をめぐって泥沼裁判となった。映画人としての名声とは裏腹に、家庭人としてはダメダメな人生を歩んでいる。

 運び屋稼業で生活力を取り戻したアールじいさんは、これまで傷つけてきた別れた妻メアリーや顔を合わせようともしない娘アイリスに詫びを入れる。もちろん、運び屋をやっていることは内緒にして。結婚生活が実質10年しか保たなかった元妻メアリーは、アールに向かって囁く。「あなたは私にとって最愛の人。でも、あなたは私に最大の苦痛も与える」と。憎んでも憎みきれない人。それがアールであり、またイーストウッドでもある。

 イーストウッド監督作は、どれもストーリーは明瞭だが、テーマは深遠なものが多く、簡単には咀嚼することができない。イーストウッド監督作を観ながら思ったことは、この人はアンチノミー(自己矛盾)そのものを描いているのではないかということだ。

 イーストウッドが監督としての作家性を明確に発揮し始めたのは、『ホワイトハンター ブラックハート』(90)からだろう。ハリウッドの巨匠ジョン・ヒューストンをモデルにした主人公は人種差別を嫌うリベラリストでありながら、“地上で最も崇高な生き物”アフリカ象をハンティングすることに異常な執念を燃やす。『ミリオンダラー・ベイビー』(04)ではボクシングに生き甲斐を見い出したヒロインに、死の引導を渡す役割を演じた。

 実質的にイーストウッドが監督した犯罪サスペンス『タイトロープ』(84)も興味深い作品だった。風俗嬢を専門に狙う強姦殺人鬼の足取りを調べるうちに、刑事役のイーストウッドはアブノーマルなSM世界へとハマってしまう。犯罪者を追い詰める刑事の心の中にも、黒い影が蠢いていた。新人監督をクビにしてまで映画づくりにのめり込む父親の姿は、『タイトロープ』で親子共演していた少女時代のアリソン・イーストウッドの目にはどのように映っていたのだろうか。

 与えられ人生を、目の前に続く道を懸命に走れば走るほど、自分の生き方は矛盾をはらんでいることに気づくことになる。多くの人を楽しませるために映画づくりに励んできたイーストウッドだが、気がつけば身近な人たちを傷つけてしまっていた。別れ離れになっていた家族と復縁するためにアールじいさんは、せっせと麻薬を全米各地へとバラまき、多くのジャンキーを生み出すことになる。アールじいさんとイーストウッドは、表裏一体の関係ではないだろうか。

 どうすれば、このアンチノミーを解消することができるのだろうか。多分、この難解な方程式は死ぬまで解くことはできないと思う。それでも、その答えを求めてイーストウッドは旅を続ける。自分が抱え込んだアンチノミーとどう向き合うのか。それが生きるということなのかもしれない。

(文=長野辰次)

アンチノミーを抱えたハリウッドの頑固オヤジ! クリント・イーストウッドが贖罪の旅『運び屋』の画像4

『運び屋』
監督・製作/クリント・イーストウッド 脚本/ニック・シェンク
出演/クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、イグナシオ・セリッチオ、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ
配給/ワーナー・ブラザース映画 3月8日(金)より全国公開
(C)2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
http://wwws.warnerbros.co.jp/hakobiyamovie

アンチノミーを抱えたハリウッドの頑固オヤジ! クリント・イーストウッドが贖罪の旅『運び屋』の画像5『パンドラ映画館』電子書籍発売中!
日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』
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『クリミナル・マインド』『13の理由』『フラーハウス』も!? アメリカで打ち切りが望まれているドラマ7本

 この冬、記録的な大寒波に見舞われたアメリカは、すでに多くの人が春を待ち望んでいる。しかし春はテレビ番組の放送継続/打ち切りが発表される時期のため、視聴率がイマイチだった番組関係者たちは春の到来にヒヤヒヤしていることだろう。

 昨年は、ジェニファー・ロペス主演の『シェイズ オブ ブルー ブルックリン警察』、マーベル・コミックの人気シリーズを原作とした『マーベル イン ヒューマンズ』、プリヤンカー・チョープラー主演の『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』、オタク系天才集団が難事件を解決する『SCORPION/スコーピオン』、ブリート版『X-ファイル』などが打ち切りとなった。架空の警察署を舞台にしたコメディ『ブルックリン・ナイン-ナイン』も放送終了が発表されたが、多くのファンの強い要望により復活。しかし、このようなケースはまれである。

 そんなシビアな米ドラマ業界において、長々と制作が続いている作品がある。視聴率も人気もあるという作品が多いが、中には「終わるタイミングを完全に逃している」「ずるずると放送しているだけで、おもしろくない」と思われている作品も。今回はそんな「アメリカで打ち切りが望まれているドラマ」を紹介したい。(参照:エンタメ情報サイト「FANSIDED」)

『スーパーナチュラル』

 米The CW(旧The WB)局で2005年9月から放送されているホラーサスペンスドラマ。幼少期に悪魔に母親を殺された兄ディーン(ジェンセン・アクレス)と4歳年下の弟サム(ジャレッド・パダレッキ)が、ハンターとして悪霊退治に奮闘する物語。魔王を封印しようと全米各地で悪魔たちと戦い、時には悪魔になり、天使になり、刺客に翻弄され、絶望するという、手に汗握る展開が続く。「悪魔」や「天使」などキリスト教にまつわる存在だけでなく、魔女、吸血鬼、狼男、ゾンビや妖怪などが登場。オカルト好きな視聴者に長年支えられてきた。

 実は番組クリエーターのエリック・クリプキはシーズン3で番組を完結させるつもりだったが、途中でシーズン5まで制作すると変更。プロット(物語)が一巡したシーズン5でエリックは降板した。その後、「主要キャラクターが死に、地獄に堕ちた後に蘇る」というパターンが何度も繰り返されるため、「また?」としらける視聴者が続出。それでもシーズン15の更新が決定したのは、熱狂的なファンのおかげだといわれている。18年のThe CWの高視聴率ドラマランキングでは3位と好位置につけたが、そろそろ幕を引く時機なのかもしれない。

『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』

 米ABC局で2005年3月にスタートした医療恋愛ドラマ。外科インターンとして、シアトル・グレース病院で働くことになったメレディス・グレイ(エレン・ポンピオ)の医師としての成長、胸が締め付けられるような恋、同僚医師たちの恋模様、友情などが描かれている。ヒューマンドラマとしても質が高く、登場するキャラクターは多種多様。ショッキングなエピソードもあり、長年「飽きがこない」と人気を集めていた。

 スピンオフ作品『プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち』(07~13)や『Station 19』(18~)、ウェブシリーズとして配信された『Grey’s Anatomy: B -Team』(18)と、関連作品も好評。売れっ子クリエーターでもある、製作総指揮者ションダ・ライムズの才能が感じられると業界からも高く評価されていた。

 しかし、この番組で名が売れた多くの役者が番組を降板。新しいキャラクターが入ってきたと思ったらすぐ去っていくというパターンが定着すると、キャストの入れ替わりの激さに戸惑う視聴者が続出。物語もどんどん非現実的になっていき、シーズン1からの視聴者も「また波乱?」「ひとつの病院で、これだけのことが起きるなんてあり得ない」「ついていけない」と脱落。視聴率は稼ぐものの、「もうそろそろハッピーエンドで幕を下ろしてほしい」という意見が強くなっている。

『Hawaii Five-0』

 米CBS局で2010年9月に始まった刑事ドラマ。1960年代後半~80年代に大ヒットした『ハワイ5-0』のリメイク版で、常夏の島ハワイを舞台に、同州で発生する犯罪に立ち向かう特別捜査チームの活躍を描く。凶悪犯罪をスピーディに解決していく刑事たちの姿が痛快で、11年に発表された「全米新作番組視聴率」では1位を獲得した。人気ドラマ『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカ、人気セレブのケンダル・ジェンナーや日本の女優・すみれもちょい役で出演するなど、ゲストも多彩でファンを楽しませていた。

 しかし、昨今の「オリジナルに変更を加える」リメイク版ブームにうんざりしている人も多く、本作の人気も低迷。シーズン8で主演のアレックス・オローリンとスコット・カーンの契約が切れたため、このタイミングで終了かと思われたが、結局2人は契約を更新。オリジナルドラマのファンからは、「シーズンを更新するなら、せめてオリジナルに寄せた内容にしてくれ」という要望が上がった。安定した視聴率を維持しているのは、アメリカ本土に住む人にとって憧れのリゾートであるハワイを見たいからだとされ、ドラマ自体は酷評されている。

 米CBS局で、2005年9月より放送されている大ヒット・クライムサスペンスドラマ。残酷極まりないシリアルキラー(連続殺人鬼)の次なる犯行を先回りして防ぐため、プロファイリングで犯人像を推理するFBIの活躍を描く。

 この作品は実際に起こった事件をヒントにしたエピソードがあり、描写もとてもリアル。捜査官自身もシリアルキラーたちのターゲットとなって、危険な目に遭うことが多い。そんな彼らの苦悩が繊細に描かれており、キャラクター目当ての視聴者も獲得した。

 普段は軟派なイケメンながらも、事件になると熱血捜査官に変貌するデレク・モーガン役のシェマー・ムーアはシーズン11で番組を去り、冷静にチームを引っ張ってきたアーロン・ホッチナー役のトーマス・ギブソンはスキャンダルのためシーズン12で降板。「これは人気キャラになるかも!」とファンを期待させたケイト・キャラハン役のジェニファー・ラブ・ヒューイットは、登場したシーズン10の1シーズンだけで降板。メインキャラクターを演じた俳優は降板後に復帰したり、ゲスト出演したりすることもあるが、「ここ数シーズンは昔のような一致団結が見られずにつまらない」との評価が聞かれる。モーガンやホッチナーに代わる人気キャラは出てこないため、「駄作になる前に終わらせた方がいい」とドラマの行く末を懸念するファンは非常に多い。

『モダン・ファミリー』

 米ABC局で2009年9月から放送されている、大ヒットコメディ番組。気難しい会社経営者ジェイの再婚相手は、年の離れたコロンビア出身のセクシー美女グロリア。彼女の連れ子はませた性格で、ジェイとグロリアの間に生まれた息子は愛されキャラ。また、ジェイと前妻との間の長男はゲイで、同性パートナーと迎えた養女の子育てに大わらわ。長女は男勝りな性格で、彼女の夫は性格は良いがどこかマヌケで、3人の子どもたちは「超イマドキ」な性格。そんな3家族が次々に降りかかる災難を家族の絆と愛で乗り越えていく姿が大ウケし、たちまち国民的コメディになった。

 地上波のプライムタイムでLGBTQや中南米移民、アジアからの養子などが普通のこととして描かれているのは、この作品が初ともいわれている。米ドラマ界の最高栄誉である「エミー賞」の常連となり、全米脚本家組合の「史上最高のテレビドラマ101」にも選ばれるなど、業界からも高く評価されている。

 しかし、ここ数年は放送開始時のような「目新しさ」に欠けているとの指摘も。シーズンを重ねるうちに長女夫婦の3人の子どもたちがすっかり成長したため、ドラマの要である彼らのジョークや引き合いに出す固有名詞が「古い」と感じられるようになったのだ。もはやモダンではない『モダン・ファミリー』を、人気のあるうちに終わらせたいと願う視聴者は決して少なくないのである。

(さらに…)

『クリミナル・マインド』『13の理由』『フラーハウス』も!? アメリカで打ち切りが望まれているドラマ7本

 この冬、記録的な大寒波に見舞われたアメリカは、すでに多くの人が春を待ち望んでいる。しかし春はテレビ番組の放送継続/打ち切りが発表される時期のため、視聴率がイマイチだった番組関係者たちは春の到来にヒヤヒヤしていることだろう。

 昨年は、ジェニファー・ロペス主演の『シェイズ オブ ブルー ブルックリン警察』、マーベル・コミックの人気シリーズを原作とした『マーベル イン ヒューマンズ』、プリヤンカー・チョープラー主演の『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』、オタク系天才集団が難事件を解決する『SCORPION/スコーピオン』、ブリート版『X-ファイル』などが打ち切りとなった。架空の警察署を舞台にしたコメディ『ブルックリン・ナイン-ナイン』も放送終了が発表されたが、多くのファンの強い要望により復活。しかし、このようなケースはまれである。

 そんなシビアな米ドラマ業界において、長々と制作が続いている作品がある。視聴率も人気もあるという作品が多いが、中には「終わるタイミングを完全に逃している」「ずるずると放送しているだけで、おもしろくない」と思われている作品も。今回はそんな「アメリカで打ち切りが望まれているドラマ」を紹介したい。(参照:エンタメ情報サイト「FANSIDED」)

『スーパーナチュラル』

 米The CW(旧The WB)局で2005年9月から放送されているホラーサスペンスドラマ。幼少期に悪魔に母親を殺された兄ディーン(ジェンセン・アクレス)と4歳年下の弟サム(ジャレッド・パダレッキ)が、ハンターとして悪霊退治に奮闘する物語。魔王を封印しようと全米各地で悪魔たちと戦い、時には悪魔になり、天使になり、刺客に翻弄され、絶望するという、手に汗握る展開が続く。「悪魔」や「天使」などキリスト教にまつわる存在だけでなく、魔女、吸血鬼、狼男、ゾンビや妖怪などが登場。オカルト好きな視聴者に長年支えられてきた。

 実は番組クリエーターのエリック・クリプキはシーズン3で番組を完結させるつもりだったが、途中でシーズン5まで制作すると変更。プロット(物語)が一巡したシーズン5でエリックは降板した。その後、「主要キャラクターが死に、地獄に堕ちた後に蘇る」というパターンが何度も繰り返されるため、「また?」としらける視聴者が続出。それでもシーズン15の更新が決定したのは、熱狂的なファンのおかげだといわれている。18年のThe CWの高視聴率ドラマランキングでは3位と好位置につけたが、そろそろ幕を引く時機なのかもしれない。

『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』

 米ABC局で2005年3月にスタートした医療恋愛ドラマ。外科インターンとして、シアトル・グレース病院で働くことになったメレディス・グレイ(エレン・ポンピオ)の医師としての成長、胸が締め付けられるような恋、同僚医師たちの恋模様、友情などが描かれている。ヒューマンドラマとしても質が高く、登場するキャラクターは多種多様。ショッキングなエピソードもあり、長年「飽きがこない」と人気を集めていた。

 スピンオフ作品『プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち』(07~13)や『Station 19』(18~)、ウェブシリーズとして配信された『Grey’s Anatomy: B -Team』(18)と、関連作品も好評。売れっ子クリエーターでもある、製作総指揮者ションダ・ライムズの才能が感じられると業界からも高く評価されていた。

 しかし、この番組で名が売れた多くの役者が番組を降板。新しいキャラクターが入ってきたと思ったらすぐ去っていくというパターンが定着すると、キャストの入れ替わりの激さに戸惑う視聴者が続出。物語もどんどん非現実的になっていき、シーズン1からの視聴者も「また波乱?」「ひとつの病院で、これだけのことが起きるなんてあり得ない」「ついていけない」と脱落。視聴率は稼ぐものの、「もうそろそろハッピーエンドで幕を下ろしてほしい」という意見が強くなっている。

『Hawaii Five-0』

 米CBS局で2010年9月に始まった刑事ドラマ。1960年代後半~80年代に大ヒットした『ハワイ5-0』のリメイク版で、常夏の島ハワイを舞台に、同州で発生する犯罪に立ち向かう特別捜査チームの活躍を描く。凶悪犯罪をスピーディに解決していく刑事たちの姿が痛快で、11年に発表された「全米新作番組視聴率」では1位を獲得した。人気ドラマ『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカ、人気セレブのケンダル・ジェンナーや日本の女優・すみれもちょい役で出演するなど、ゲストも多彩でファンを楽しませていた。

 しかし、昨今の「オリジナルに変更を加える」リメイク版ブームにうんざりしている人も多く、本作の人気も低迷。シーズン8で主演のアレックス・オローリンとスコット・カーンの契約が切れたため、このタイミングで終了かと思われたが、結局2人は契約を更新。オリジナルドラマのファンからは、「シーズンを更新するなら、せめてオリジナルに寄せた内容にしてくれ」という要望が上がった。安定した視聴率を維持しているのは、アメリカ本土に住む人にとって憧れのリゾートであるハワイを見たいからだとされ、ドラマ自体は酷評されている。

 米CBS局で、2005年9月より放送されている大ヒット・クライムサスペンスドラマ。残酷極まりないシリアルキラー(連続殺人鬼)の次なる犯行を先回りして防ぐため、プロファイリングで犯人像を推理するFBIの活躍を描く。

 この作品は実際に起こった事件をヒントにしたエピソードがあり、描写もとてもリアル。捜査官自身もシリアルキラーたちのターゲットとなって、危険な目に遭うことが多い。そんな彼らの苦悩が繊細に描かれており、キャラクター目当ての視聴者も獲得した。

 普段は軟派なイケメンながらも、事件になると熱血捜査官に変貌するデレク・モーガン役のシェマー・ムーアはシーズン11で番組を去り、冷静にチームを引っ張ってきたアーロン・ホッチナー役のトーマス・ギブソンはスキャンダルのためシーズン12で降板。「これは人気キャラになるかも!」とファンを期待させたケイト・キャラハン役のジェニファー・ラブ・ヒューイットは、登場したシーズン10の1シーズンだけで降板。メインキャラクターを演じた俳優は降板後に復帰したり、ゲスト出演したりすることもあるが、「ここ数シーズンは昔のような一致団結が見られずにつまらない」との評価が聞かれる。モーガンやホッチナーに代わる人気キャラは出てこないため、「駄作になる前に終わらせた方がいい」とドラマの行く末を懸念するファンは非常に多い。

『モダン・ファミリー』

 米ABC局で2009年9月から放送されている、大ヒットコメディ番組。気難しい会社経営者ジェイの再婚相手は、年の離れたコロンビア出身のセクシー美女グロリア。彼女の連れ子はませた性格で、ジェイとグロリアの間に生まれた息子は愛されキャラ。また、ジェイと前妻との間の長男はゲイで、同性パートナーと迎えた養女の子育てに大わらわ。長女は男勝りな性格で、彼女の夫は性格は良いがどこかマヌケで、3人の子どもたちは「超イマドキ」な性格。そんな3家族が次々に降りかかる災難を家族の絆と愛で乗り越えていく姿が大ウケし、たちまち国民的コメディになった。

 地上波のプライムタイムでLGBTQや中南米移民、アジアからの養子などが普通のこととして描かれているのは、この作品が初ともいわれている。米ドラマ界の最高栄誉である「エミー賞」の常連となり、全米脚本家組合の「史上最高のテレビドラマ101」にも選ばれるなど、業界からも高く評価されている。

 しかし、ここ数年は放送開始時のような「目新しさ」に欠けているとの指摘も。シーズンを重ねるうちに長女夫婦の3人の子どもたちがすっかり成長したため、ドラマの要である彼らのジョークや引き合いに出す固有名詞が「古い」と感じられるようになったのだ。もはやモダンではない『モダン・ファミリー』を、人気のあるうちに終わらせたいと願う視聴者は決して少なくないのである。

(さらに…)