今晩、早くも最終回を迎える『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。ラスト前となる11話も、前回が海外編(ソウル)だったとは思えないほどの「いつも」っぷりだった。
第11話「千葉市千葉市の特製ニンニクスープと生鮭のバター焼き」を振り返る。
(前回までのレビューはこちらから)
■カレーの匂いに刺激されたが、カレーは食えず
今回、商談で井之頭五郎(松重豊)が訪れたのは、千葉の西登戸(にしのぶと)。神奈川に登戸(のぼりと)という街があるが、もちろん無関係。
商談先のインド料理屋で、やけに関西弁の上手いインド人っぽい店主(デニス・植野行雄)に軽快なネタ話を披露されながらも、店内に染み付いたスパイスの匂いで食欲を刺激されてしまい、相当に上の空な五郎。
そんなことおかまいなしに「見た目ガイジンなのに関西人丸出し」という、デニス植野のために当て書きされたようなインド人っぽい店主は、おしゃべりエンジン全開。
「僕ねお父さんはインド人やけど、生まれも育ちも大阪の鶴橋ですわ。どっちかといったらね、キムチと焼肉がソウルフードですわ」
なかなかに興味深い内容だが、今の五郎の琴線には一切響かず。もしかしたら苦手なタイプなのかもしれない。
「突発性カレー欲」が収まらず、ついには「ここでカレーを食わせてくれ」と店主に懇願するが、定休日のため食材が一切ないと言われ撃沈。
五郎は、値引きしてくれとすがる店主を振り切り、食事処を探しに店外へ飛び出すが、2階から降りたその1階が洋食屋(味のレストラン えびすや)なのを発見。店探しの時のあのBGMが、イントロクイズ並みの短さで終了し、即決で入店する。
■サービスに流されず、お得なセットになびかない姿勢
店に入るなり、客の食べているオムライスとハンバーグを横目でマーク、そのクオリティを確認。さすが手馴れている。
表紙が剥げかけた年季の入った革張りのメニューなど、古き良き洋食店といった感じだが、個人的には女将さんらしき女性を演じるのが藤田弓子なだけで、もう美味そう。
店内に漂う「特製ニンニクスープ」の匂いに刺激され、1品目はすぐ決定。今日の五郎はやたら嗅覚が鋭い。
しかし周りのテーブルの料理がみな美味そうで、なかなかもう1品が決まらない。
「惑わされるな、胃袋の声を聞け」
「フィッシュorミート」×3
碇シンジのようなテンションで悩みに悩んだ五郎が注文したのは、フィッシュ=「生鮭のバター焼き」。
ニンニクスープと合わせるならと藤田弓子女将にセットメニューを推奨されるも、「カニピラフも頼みたいんで単品でお願いします」と、あっさり拒否。サービスに流されないマイペースぶりがさすが。
■滋養強壮に効く“ガリガリ君”
グラタン皿に入れられ、グツグツと沸き立ちながら運ばれてきた「特製ニンニクスープ」。中で生卵が今まさに半熟となりかけてる、あのズルいやつ。
まずはニンニクの大きな欠片をサルベージしながら、胃袋に風味が広がるのを楽しむ。
続いて女将に言われた通り、卵を溶いて粗く混ぜ合わせる。
「最強の滋養強壮スープ」とのことで、疲れてる時にこれだけ飲みに行きたい。
「こいつは脇役じゃない。メインを張れる逸品だ」と五郎のお墨付きのスープだが、実際この店一番の名物らしい。
そして何やら思いついた五郎はガーリックトーストを追加注文。
それをドブンとスープに浸し、「ガーリックにガーリックで『ガリガリ君』だ」と悪い顔で微笑む。思いついてもやらなそうなことを即行動に移すのがすごい。そして、味の染み込んだパンを貪りながら言った「まるでニンニクの高野豆腐」は秀逸な表現。ここのガーリックトーストはフランスパンでなくロールパンなのが珍しく、万人受けしそうだ。
厨房では白髪のマスターがピラフの入った鍋をリズミカルに振る。一朝一夕にはできない年季の入った腰使い。「調理人の手際が見事すぎる場合、役者でなく本人」というのは『孤独~』あるあるだが、今回もそうだった。
■タルタリスト・五郎復活!
そのカニピラフと生鮭のバター焼きが同時に到着。
どろりとタルタルソースがかかったバター焼きを見て「タルタリストにはサプライズプレゼント」と喜ぶ五郎。
今期第8話(中野区・チキン南蛮)で出た「タルタリスト」の名乗りが、またしても聞けるとは。バターにタルタル、さらにレモン汁を絞ってと、そんなのもう絶対美味に決まってる。
「これはお出かけ、よそ行きの美味しさだ。いつも定食屋でテレビ見ながら食べるシャケとは別物」と五郎は言っていたが、その定食屋のシャケだって、絶対美味しそうに食べてるはずなのに。
付け合わせのニンジンも食べつつ「洋食の付け合わせは、とっても大事。これらの味がいい店はきっと長続きする」と、勝手に太鼓判を押す五郎。確かに、お通しや定食のサラダや漬物が手抜きだと、メインがどんなに美味くても満足度が一気に下がってしまう。そもそも五郎はこの甘いニンジンが「隠れた大好物」とのこと。初耳だ。
そして、カニピラフ。一口食って「これは大好きな味です」と思わず敬語になってしまうほどの美味さ。
マッシュルームやピーマン、もちろん蒲鉾ではない本物らしきカニの身も見え隠れし、やや茶色がかった味の濃そうな色味。
「ちょい焼き飯寄りのピラフ。なんで知ってるんだ? 俺がこうゆうのに弱いの」
完全に浮かれている五郎。
「カニとシャケの豪華共演による洋食シーフード祭り」も、いよいよクライマックス。
「こういうのはどうだ?」と、ガーリックトーストの上にタルタルをたっぷり乗せたシャケの乗っけてかぶりつく。この日、一番食欲を刺激されたシーン。
「おほほーー、いい、いい!」「誰かに教えたい」
残り汁をご飯に絡めたりするアレンジ食いを五郎はよく披露するが、今回は白米を頼んでいないのでガーリックトーストがその役割を担っていた。もはや途中から「ガリトー」と、まるで「ブリトー」のごとく呼んでいた。
最後にガリトー in ニンニクスープ・アゲイン。「気取らないよそ行き味」のラストを“ガリガリ君”で締めくくった。
■最終飯のメニューは?
お会計かと思いきや、女将がセットのデザートとコーヒーをつけるか聞いてくる。これが有料なのかサービスなのか解釈がわかれるところだが、なんにせよ食べっぷりがいいから勧めたくなった気持ちはよくわかる。
女将の手作りプリンとアイスコーヒーで完全にフィニッシュ。
店を出るなり仕事の電話。五郎は明日も仕事が詰まってるようで「疲れたら美味い飯に助けてもらおう」と、ニヤリと店を振り返り、帰路につく。まるで今回が最終回っぽくも見えたが、あと1回のモチベーションがグーンと上がるいい演出。
原作者の久住昌之が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」のコーナーでは、「生ハムのサラダ仕立て」や「カキとキノコのオーブン焼き」のほか、「スペイン風スパイシーおじや」が気になった。「特製ニンニクスープ」のような熱々に加熱された鍋に、香辛料の効いてそうなスープとご飯と生卵が入り煮立っている。
さらに「知ってる人にたまに出す」という「ナスとピーマンの味噌炒め」「ホウレン草のゴマ和え」をサービスで。他にも「切り干し大根」や「ヒジキ煮たやつ」が出たりするらしく、和のお惣菜丸出しで、このフランクさがいい。
ちなみにこの「えびすや」は何店もあり、ここは幸町店とのこと。JRの千葉駅からでも千葉みなと駅からでもがんばれば歩けるくらいの距離なので、行ける方は是非。
さて、いよいよ今晩最終飯。東京の八丁堀でニラ玉ライスとエビチリを食らうらしい。予告動画では「こういう店こそが本当の名店だと思う」と、しみじみ語る五郎の姿が。最後も見ながらみんなでお腹を減らしましょう。
(文=柿田太郎)