羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「ゆっくりと、しっかりと、歩んでいきます」ベッキー
(ベッキーインスタグラムより、6月26日)
タレントが恋人の存在を明らかにすると、ファンが減ったり、相手のファンから恨まれたり、スポンサーとの契約に問題が発生したりと、それなりにリスクが伴うが、この人の場合、起死回生の一打となりそうである。
ベッキーに新恋人発覚。相手は、読売巨人軍の片岡治大2軍内野守備走塁コーチである。ベッキーのファンだった片岡コーチがアプローチをかけ、2人は意気投合したという。ベッキーも早々に関係を認め、インスタグラムで「ゆっくりと、しっかりと、歩んでいきます」とコメントを出していた。
ゲスの極み乙女。のボーカル・川谷絵音との不倫を「週刊文春」(文藝春秋社)にすっぱ抜かれたベッキーは、これまで過剰にいい子ウリをしていただけに大バッシングを受けた。人々の記憶からベッキーの不倫は薄れても、以前のように地上波に復帰できていない。しかし、新恋人の存在で、ベッキー的には「いろいろあったけど、もう大丈夫です」というオチがついたので、視聴者は安心してベッキーを見ていられるし、共演者も過去をいじりやすいだろう。
また新恋人が、テレビ的に最高であると筆者は思う。まさに理想の恋人ではないだろうか。例えば、片岡コーチが現役の野球選手であった場合、あまりぺらぺら相手のことをしゃべると問題になるので、バラエティ番組の共演者たちはやりにくい。もし成績が悪ければ、ベッキーが「さげマン」と週刊誌に書き立てられたり、周囲に「あの女とは別れろ」と言われてしまうこともあるだろう。
米メジャーリーグで活躍するレベルの現役選手が恋人だと、相手のことをしゃべれないことに加え、もし結婚ということになった場合、芸能界の仕事を完全にあきらめなければならなくなるだろう。徳間書店の運営するニュースサイト「アサ芸プラス」によると、ベッキーは子役時代から、芸能界で売れた時のイメージダウンを避けるため、水着の写真を撮らせないほど、“売れる”ことに心を砕いてきたそうである。そんなベッキーが、いくら愛する夫のためとはいえ、仕事を捨てて、裏方である“プロ野球選手の妻”になるとは到底思えないのである。
そして、片岡コーチの最高の恋人である所以、それは雇用が不安定なところだ。プロ野球選手は、監督が狙えるクラスのビッグネーム以外、引退後のキャリアが大変だと聞いたことがあるが、片岡コーチもその例外ではないだろう。しかし、だからこそ、ベッキーの良さが生きると思うのだ。
先日放送された『壮絶人生ドキュメント プロ野球選手の妻たち』(TBS系)。日頃目にすることがない、プロ野球選手の妻の日常を追ったものだが、この番組の面白いところは、年棒が億クラスの選手と数百万の選手、それぞれの妻に密着する点である。生涯推定年棒63億円の元メジャーリーガー・松井稼頭央選手の妻で、都内にある3階建ての豪邸に住む元タレント・美緒夫人は、結婚以来、“稼頭央ビュッフェ”と呼ばれる17品の食事を作っているそうだ。夫の成功のために、ひたすら料理を作るというのは日本人好みの話だが、番組側は、私のようなひねくれ者の視聴者に「そりゃ、そんだけ稼いでくるなら、料理くらい作るでしょ」と言わせないため、またリア充嫌いの視聴者のために、“低収入な夫を支える妻”のパターンも用意している。それが読売巨人軍、二軍の増田大輝選手夫妻である。
巨人のキャンプを家族で見に行くほどの野球好きという家庭で育った夫人が、増田選手と知り合った時、彼はとび職だった。しかし、増田選手は野球への思いが捨てきれず、独立リーグに挑戦し、見事合格。次に読売巨人軍の育成選手に合格する。この時の年棒は240万円だったそうだ。
「プロ野球選手の奥さんになりたい」と思っていた夫人の夢をかなえるために、夫妻は結婚。といっても生活が豊かではないので、夫は東京、夫人は実家の徳島で暮らし、夫人が正社員として働き、3歳の子どもを育てている。夫人は第二子妊娠中でありながら、夫のために4時間かけて食事を14品作り、冷凍して夫に送る。夫に関する新聞記事は、必ずスクラップする。夫が巨人軍の育成選手から二軍に昇格し、晴れてプロ野球選手の妻となった時は涙を流して喜んでいた。私には、“夫を使って、自分の夢をかなえようとしている妻”のように見えるが、恐らく多くの人には、“生活が苦しくても明るく、夫のために身を粉にして働く献身妻”に見えて好感度が高かったことだろう。
話をベッキーに戻そう。『プロ野球選手の妻たち』出演者には、夫に意見する妻、もっと言うと「もう限界だから、野球をやめろ」というネガティブな言葉をかける妻はいない。生活が苦しいと文句を言う妻もいない。いつも明るく「もっとやれるよ」とポジティブな言葉をかけ、神仏に祈ったりする。これって、不倫騒動以前のベッキーそのものなのではないだろうか。ベッキーの行動パターンは、ザ・プロ野球選手妻といって、差し支えない気がする。
もし片岡コーチとベッキーが結婚し、子どもが生まれたとする。何らかの理由で野球の道を閉ざされた片岡コーチに番組が密着するとしよう。ベッキーが子どもの背中をとんとんしながら「悔いが残らないようにしてくれれば」「お金のことは考えないで」「私たちは彼の決めたところなら、どこでもついていく」と話すところを想像してほしい。完璧だ。
片岡コーチが女性問題を起こしたとしても、それもご愛敬。バラエティでいじられてもいいし、「うちもいろいろありましたけど」と自虐してもいい。
前回、ベッキーの“いい子体質”は変わっていないと書いたが、無理に封印することはない。“いい子体質”を存分に生かせるのが、引退したプロ野球選手の妻なのだから。最高のオトコと最高のタイミングで巡り合う。やっぱり、ベッキーも売れた芸能人ならではの、引きの強さを持っていると感じずにいられない。