毎年6月になるとやってくるもの。それは、梅雨空と冷麺の季節。ラーメン屋の軒先に、「冷し中華始めました~」なんて暖簾が揺れてるのを見ると、やがて訪れる圧力のある“夏”を感じてしまうんですなぁ。
そして、今年もやってきたのが、この冷めたい珍級グルメなのでした。

どど~ん! 冷やしかつ丼。
「ええ~っ、冷たいかつ丼なんて、うまいわけないですや~ん!」
しかも、カレー味です。
冷たいかつ丼も冷たいカレーライスも、旧式日本人にとっては未知の味だが、この味を知ったら、もはや新ニッポン人と称して構わない。
そう、初体験の味なのだ!!

山形の郷土食として有名な冷やしラーメンのように、だし汁には氷が浮かんでいる。そこに半身を浸かっているのは、サックサクに揚げられたロースカツである。
それを背後で見守るのは、トマトにオクラ、ナス、かぼちゃという、チーム夏野菜。見た目も、「トンカツなのに涼しそう!」と思わずにはいられない佇まいではないか!

冷たいトンカツとはいかなる? と、つまみあげてひと口頬張ってみると……
“サクッ、サックサじゅわぁ~~……”
今まで冷水浴していたとは思えないサックサクの衣の食感と、まだ温かい豚肉から湧き出る豚油の風味と柔らかさが、口の中に広がってくるのだ。
「マァジで? なんでこんなにサックサク?」
カレー味のだし汁を吸っているにもかかわらず、不思議な食感に驚くに違いない。
そして、肝心のだし汁はというと、カレー風味ではあるが、もちろんカレーライスのような油はなく、スパイシーな和風だしという感じだ。
だが、けっこう辛い!

どんぶりの底に沈んだ米と一緒にだし汁をレンゲにすくってすすり上げると、鼻から香辛料の風味が抜けていく。さらさらの冷たい米を食べながら感じた既視感は、宮崎の冷汁だった。
なるほど、冷たいだし飯文化は、すでに日本にあったのだ。しかし、2口、3口と食べ進めると、次第に舌がシビレてきた。冷たさではなく辛さだ。

「ヒー、辛~い!」
その時のためにスタンバッテいるのがチーム夏野菜の面々。煮びたしのナスは意外に大きくて、甘辛い汁がたっぷり。オクラも歯ごたえバツグンだった。

食後に予想外の辛さにシビレきった舌を癒すのは、ビールよりデザートがベター。コーヒーゼリーのほろ苦さとバニラアイスの甘さが一段と際立つ瞬間だ。

ちなみに、カレー味でないノーマル冷やしかつ丼はこれ。共に、トンカツは、ロース、ヒレ、特上ヒレがある。トンカツは、食感と暖かさがなくならないうちに食すのがオススメだ。

天井からいくつもぶら下がるまあるい照明が、大きな風鈴に思える季節。夏はもうすぐ。冷やしかつ丼は9月末までだ。

渋谷 かつ吉「冷やしカレーかつ丼」1,600円
SNS映え ☆☆☆
味 ☆☆☆
珍級度 ☆☆☆
(写真・文=よしよし)