舞台『りさ子のガチ恋▽俳優沼』脚本&演出家・松澤くれは氏が明かす、制作のウラ側――「元モー娘。新垣里沙は、バケモノのような女優」<前編>

 昨年8月、『りさ子のガチ恋▽俳優沼』(▽はハートが正式表記。以下同)という斬新なタイトルの舞台が上演され、演劇ファン、俳優ファンに衝撃が走った。

 タイトルにある「ガチ恋」とは、自分の一推しの俳優やアイドルを意味する“推し”に、本気(ガチ)で“恋”しているオタク(ファン)のことを示すオタク用語だ。同様に、「沼」はその対象から抜け出せず、沼のようにどんどん深みにハマっていくことを表す言葉。つまり、この舞台は「俳優に恋をしているオタク」の物語だ。

 主人公・りさ子を演じたのは、元・モーニング娘。の新垣里沙。国民的アイドルだった彼女が“若手俳優オタク”を演じ、俳優とファンの泥沼愛憎劇を繰り広げるということで賛否両論を呼んだが、舞台は大盛況のうちに幕を閉じた。

 そんな本作が、今月20日に小説となって集英社から発売されたということで、編集部では、本作の脚本・演出家を手がけ、このたび小説家デビューを果たした松澤くれは氏を直撃! 今だから話せる舞台の裏側や、公演中に起こった“アノ”騒動、小説のみどころについて、話を伺った。

※以下、作品について多少のネタバレを含みます。ご注意ください。

* * *

■客席は、ある種“カオス”だった

――このたびは、出版おめでとうございます。

松澤くれは氏(以下、松澤) ありがとうございます。

――まずは、この作品が生まれたキッカケについてお聞かせください。

松澤 元々、元モーニング娘。の新垣里沙さんと、2013年と15年に『殺人鬼フジコの衝動』(以下、フジコ)という舞台でご一緒して、「また何か一緒にやりたいね」と話していたんです。

 これまで新垣さんを主役にした書下ろし作品に挑戦したことがなかったので、じゃあ、あらかじめ新垣さんが演じる役を作ってから、物語を作ってみようと思いまして。元々「俳優とガチ恋ファン」という構想が頭にあったので、「元モー娘。のリーダーが地味なファンの子を演じるのを観たい!」とストレートに新垣さんにお伝えしたら、「やってみたい!」と。それから「二人でこういうのやりたいんですけど……」っていうのをSNSに書いたら、『フジコ』のプロデューサーさんが食いついてくださって舞台化が実現しました。

――舞台を終えて半年以上経ちますが、改めてご感想は?

松澤 まずは、無事に終えられてよかった……(笑)。本当にたくさん、予想以上のお客様に見ていただくことができました。

――客席の反応はいかがでしたか?

松澤 同じシーンで泣いている女の子がいれば、笑っているおじ様がいたり、お客様の反応がこんなに分かれる舞台は初めてで、強烈に印象に残っています。笑う人もいれば笑わない人もいるといった反応の違いは今までにもありましたが、同じシーン見ながら、捉え方がここまで真逆になるんだと驚きました。そういった客席のある種の“カオス”現象が、この作品に対する一つの答えなのかなと実感しました。

 お客様一人ひとりの顔を見ることが脚本・演出家としての責任だと勝手に思っていたので、全公演を客席後方で見て、終演後は出口に立ったんですが、「すごく面白かったです」って話しかけてくれる人がいたり、中には「納得いかないから話しませんか?」と、十数分ロビーでお話ししたこともありました。

 あとは、皆さんSNSで感想をものすごい長文で書いてくださって、その観劇レポを読んだレポみたいなものまで生まれていて(笑)。本当にたくさんの方が、自分の感想を自分の言葉で表現してくれた作品でした。

 会場にアンケート用紙を用意しなかったのも、そういった意図からです。この作品に限らず、僕はアンケートを取りません。見た感想を僕ではなく、周りの人にSNS上で広めてほしいんです。良いことも悪いことも、そのまま素直に感じたことを自由に書いて、皆さんで意見交換をしてほしいので、特にこの作品には、そのやり方が合っていたのかなと思っています。

――ブログ等を拝見させていただきましたが、キャスティングが難航したそうですね。

松澤 僕もプロデューサーから聞きました。いや~、断られまくりだったらしいですね(笑)。僕は、脚本・演出なのでキャスティングにはあまり関わりませんが、以前ご一緒した方がキャスティングされていたり、僕が「この人とご一緒してみたい!」と推薦させていただいた方が何名かいらっしゃいます。元々役は用意していましたが、演じる俳優の名前をそれぞれ役名に入れて、本人のキャラに寄せた部分もあります。

――新垣さんファンの反応を見ると、「新しいガキさんが見れた」という声もありました。

松澤 こういう役は、僕しか振らないと思うので(笑)。良い意味で、バケモノのような女優さんなので、もっといろんな彼女を見たいですね。本当に素敵な役者さんです。

――篠戸るる役を演じた階戸瑠季さんも、大変な役柄だったんじゃないかなと感じましたが……。

松澤 それが、階戸さんは、「やりたいです!」と二つ返事で引き受けてくださったんですよ。階戸さんをはじめ、本当に全キャストにメチャクチャ感謝をしています。オファーを受けてくださったということは、僕とプロデューサーがやりたいことをきちんと汲んでくださったわけですから。

■「告知したときが一番、叩かれた」

 

――「ガチ恋」というタイトルにかなり衝撃を受けました。作品を上演するにあたって、さまざまな意見があったかと思いますが、いかがでしたか?

松澤 業界の反応は、「そういうのやったらダメだよ」「何やってんの!?」と(苦笑)。「やっていいことと、悪いことがあるよ」といった目では見られましたね。最初に告知したときが一番、叩かれました。

 公演日程と劇場程度の内容だったんですけど、やはりタイトルのインパクトが強かったようで、「直ちにやめてください」「オタクを茶化すな」と、Twitter のDMで脅迫されたこともありました(苦笑)。僕は、基本、シリアスな作風が多いんですが、それを知らない方々は、コメディー作品だと思ったようで、実際に作品を見てもらうまでは分かってもらえないだろうなと覚悟はしていました。もちろん、「すごく面白い題材」って言ってくださる方もいらっしゃいましたが、告知の段階では、結構ネガティブな意見の方が多かったですね。

――でも、いざ公演が始まると、ネット上で評判がどんどん感想を拡散されて、連日たくさんの方々が当日券を求めて劇場に列を作ったとか。

松澤 そうなんですよ。毎ステージたくさんの方に並んでいただいて、チケットの当選倍率は20倍超えだったと聞きました。皆さんの口コミのおかげでもありますね。それぞれ受け取り方は違うと思いますし、面白いと思う人もいれば、面白くないと思う人がいる中で、見た人には僕がやりたいことは伝わったのかなって。そう思うことができたのは救いでした。

――公演中には、ファンの方が松澤さんに贈ったスタンド花が、誰かの手によって壊されてしまうという悲しい事件もありましたよね。

松澤 あの件は、本当にショックで……。これは自分の中できちんと消化しないといけないなと思いブログを書いたら、たくさんの反響をいただきました。でも、「自分で壊して話題性を狙ったんでしょ?」なんて言われてしまって。ただ、僕のことを元々ネガティヴに捉えている人は、当然そうなるよなと。そう思った時に、言葉を尽くせば伝わるっていうのは、欺瞞だなって思ったんです。こっちが心を尽くして話した言葉でも、どう受け取るかは相手の自由ですから。

 そういう意味では、精神的なダメージは結構大きかったんですが、そこから色々考えることもできましたし、現場はすごく楽しかったです。役者さんとみんなで和気あいあいとしていました。

■「現実」と「リアリティ」はイコールではない

 

――今作で、松澤さんが一番こだわった部分は何ですか?

松澤 「語彙」です。俳優の言葉づかいと、ファンの方たちの言葉づかいを意識しました。Twitterにおける「本アカ」と「愚痴アカ」の語彙の使い分けには特に気をつけましたね。小説版では、舞台とは違った小説ならではのある“仕掛け”があるので、読んでくださった方は、皆さん驚かれるかと思います!

――「松澤さん、よく見ていらっしゃるな~」と、投稿内容の一つひとつにリアリティを感じました(笑)。

松澤 でも、あまり具体的な出来事などは追わないようにしたんです。とはいえ、勝手に入ってくる情報もあるので、自分からは調べずに、なるべく情報を入れすぎないようにしましたね。よくある“匂わせツイートをしてカノバレ”騒動も作中に出てきますが、完全に妄想なので、もし現実にああいうことが起きていても、偶然被っているだけなんです。

――りさ子のオタク友達には遠征組の子がいたり、原作厨がいたり、「こういう服装の人、劇場でよく見るな」というファッションだったりと、登場人物のキャラクター設定にも“あるある”要素が詰め込まれているなと感じました。

松澤 具体的なモデルはいません。でも、僕自身オタクなので、ジャンルは違えどもある程度の知識はありますし、衣装のブランドとか、細部までこだわってしまうことはよくあります(笑)。「分かる~!」って共感していただくだけでも、楽しんでいただけるかなって。

 俳優達の楽屋でのやりとりは、今回出演していない知り合いの俳優に、雑談の中で色々聞いたりもしましたが、例えば「プレゼントは何を貰ったらうれしい?」など、細かいことは聞きませんでしたね。「スタバカード、ありがとうございます!」みたいなツイートとか、よく見るなぁ、よく貰っている=みんな嬉しいのかな? とかいろいろ考えてたときに、そういう俳優がいても不思議じゃないなと。ただ、現実にいるかどうかは分からない。

「現実」と「リアリティ」は決して同じものではないし、“特定の誰か”を明確にせず、余白を残したほうが面白いと思うんです。

――確かに、どこまでが実像でどこからが虚像なんだろうって考えるのが楽しかったです! 例えば、公演を見たファンが「あそこがよかった!」って盛り上がっていても、実際、俳優たちの手ごたえとしては、「微妙だったな」って温度差があったり……(笑)。

松澤 正直、それはありますね(笑)。毎回必ずベストを目指しますが、人間なので、むしろ変わらないことはできませんし、試行錯誤を積み重ねた結果、微妙な出来になってしまったり、うまくいかずに「悔しいな」って思っていた時に、お客様から、「今日が一番よかった」って言われることはもちろんあるし、その逆もあり得るので(笑)。

――そう考えると、ファンって、俳優たちのことを分かっているようで分かっていないんですよね(笑)。

松澤 そうなんですよね(笑)。“知りたい”と思う一方、“でも他人のことは、その本人にしか分からない”っていうのが、この作品の根幹にあります。

――松澤さんは、「俳優」と「ファン」は、どういう関係性だと思われますか?

松澤 まさに、そこは、小説を読んでいただきたいです! ラストの翔太の言葉を、僕の考えとして受け取ってもらえたらうれしいですね。

■“容姿と表情”“役者の演技”を、いかに自分の言葉で伝えるか

 

――小説の出版の話は、いつ頃からあったんですか?

松澤 担当編集さんが舞台を観に来てくださって、僕も「小説にしたい」という気持ちがあったので、すぐに打ち合わせをして「じゃあ、2カ月で第一稿を書いて、年明けには形にしましょう」と、ものすごいスピードで話が進みました。去年の秋はずっと原稿を書いていましたね。

 役者さんが演じていると、もうパッと見で伝わるじゃないですか。でも小説では、今どんな顔をしていてどんな服を着て……というのを、細かく書かないと伝わらない。舞台では役者さんの演技に委ねる部分も、すべて自分の言葉で表現しなければならないので、“容姿と表情をいかに伝えるか”に気をつけました。

――小説は、舞台版とは異なる結末を迎えますよね。

松澤 舞台は、絶対に劇場でしかできないことをやったので、小説なら小説でしかできない終わり方にしたかったんです。最後に“あの一文”がくるっていうのが、小説の結末だなって思ったので、思い切って変更しました。

 演劇の良さと小説の良さっていうのを最大限引き出したいなと思いながら、両方とも作りました。舞台版はDVDで、役者さんの“演技そのもの”を見ていただきたいですし、小説版は、りさ子の心情の移り変わりを追体験してほしい。また、小説は舞台版と比べると俳優サイドがすごく詳しく描かれているので、りさ子ではない、もう一人の主人公に注目していただだければ。

――最後には、「劇団雌猫」さんによる解説もありますが、どういったつながりで?

松澤 ちょうど『りさ子』の稽古している時に、『浪費図鑑』(小学館)という面白い本が出たらしいと聞いて、影響を受けたくなかったので、そのときは読まなかったんです。それで、後日読んだでみたらすごく面白くて、お会いした事もないのに、勝手に“同志”だとシンパシーを感じて(笑)。「ぜひ解説を書いてほしい」と出版社を通して僕からオファーをさせていただきました。本当に良い解説を書いていただきましたね。

――劇中作品の『政権☆伝説』の特設サイトも公開されていますが、凝ったつくりになっていますよね。

松澤 実は、『政権☆伝説』に一番力を入れたといっても過言ではありません(笑)。イラストはプロのイラストレーターさんに、サイトデザインやロゴは全部デザイナーさんに発注しているんです。キャラクターデザインが上がってきたときは、あまりの完成度の高さに思わず笑ってしまうくらい、力を注いでくださって。スタッフさん全員の気合の入れ方が半端じゃなかったです。スピンオフも色々やっていけたらいいなぁ……!

*  * *

 後編では、創り手からみた「ガチ恋ファン」や、脚本・演出家としてのルーツについて、松澤氏に引き続き話を伺っていく。
(取材・文=編集部)

●松澤くれは
1986年富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット「火遊び」代表。舞台脚本家・演出家として、オリジナル作品をはじめ人気小説の舞台化を数多く手がける。『りさ子のガチ恋▽俳優沼』で小説家デビュー。

■集英社文庫『りさ子のガチ恋▽俳優沼』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/risako

☆作中作品『政権☆伝説』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/seiken_stage

■舞台版『りさ子のガチ恋▽俳優沼』公式サイト
http://www.finepromotion.co.jp/gachi/

■松澤くれは 脚本・演出舞台
オフィス上の空プロデュース 火遊びpray.08
「焔の命──女優の卵がテロリストになった理由」
日程:2018年5月9日(水)~13日(日)
会場:東京都 恵比寿・エコー劇場
出演:福永マリカ / 辻響平、伊藤亜斗武、榊菜津美、野村龍一、真嶋一歌、田中健介、石澤希代子 / 石井玲歌、佐々木なふみ、菅井育美、高木薫、瀧啓祐、富田喜助、三木万侑加 / 黒沢佳奈、佑木つぐみ
https://uwanosora-hiasobipray08.jimdo.com

舞台『りさ子のガチ恋▽俳優沼』脚本&演出家・松澤くれは氏が明かす、制作のウラ側――「元モー娘。新垣里沙は、バケモノのような女優」<前編>

 昨年8月、『りさ子のガチ恋▽俳優沼』(▽はハートが正式表記。以下同)という斬新なタイトルの舞台が上演され、演劇ファン、俳優ファンに衝撃が走った。

 タイトルにある「ガチ恋」とは、自分の一推しの俳優やアイドルを意味する“推し”に、本気(ガチ)で“恋”しているオタク(ファン)のことを示すオタク用語だ。同様に、「沼」はその対象から抜け出せず、沼のようにどんどん深みにハマっていくことを表す言葉。つまり、この舞台は「俳優に恋をしているオタク」の物語だ。

 主人公・りさ子を演じたのは、元・モーニング娘。の新垣里沙。国民的アイドルだった彼女が“若手俳優オタク”を演じ、俳優とファンの泥沼愛憎劇を繰り広げるということで賛否両論を呼んだが、舞台は大盛況のうちに幕を閉じた。

 そんな本作が、今月20日に小説となって集英社から発売されたということで、編集部では、本作の脚本・演出家を手がけ、このたび小説家デビューを果たした松澤くれは氏を直撃! 今だから話せる舞台の裏側や、公演中に起こった“アノ”騒動、小説のみどころについて、話を伺った。

※以下、作品について多少のネタバレを含みます。ご注意ください。

* * *

■客席は、ある種“カオス”だった

――このたびは、出版おめでとうございます。

松澤くれは氏(以下、松澤) ありがとうございます。

――まずは、この作品が生まれたキッカケについてお聞かせください。

松澤 元々、元モーニング娘。の新垣里沙さんと、2013年と15年に『殺人鬼フジコの衝動』(以下、フジコ)という舞台でご一緒して、「また何か一緒にやりたいね」と話していたんです。

 これまで新垣さんを主役にした書下ろし作品に挑戦したことがなかったので、じゃあ、あらかじめ新垣さんが演じる役を作ってから、物語を作ってみようと思いまして。元々「俳優とガチ恋ファン」という構想が頭にあったので、「元モー娘。のリーダーが地味なファンの子を演じるのを観たい!」とストレートに新垣さんにお伝えしたら、「やってみたい!」と。それから「二人でこういうのやりたいんですけど……」っていうのをSNSに書いたら、『フジコ』のプロデューサーさんが食いついてくださって舞台化が実現しました。

――舞台を終えて半年以上経ちますが、改めてご感想は?

松澤 まずは、無事に終えられてよかった……(笑)。本当にたくさん、予想以上のお客様に見ていただくことができました。

――客席の反応はいかがでしたか?

松澤 同じシーンで泣いている女の子がいれば、笑っているおじ様がいたり、お客様の反応がこんなに分かれる舞台は初めてで、強烈に印象に残っています。笑う人もいれば笑わない人もいるといった反応の違いは今までにもありましたが、同じシーン見ながら、捉え方がここまで真逆になるんだと驚きました。そういった客席のある種の“カオス”現象が、この作品に対する一つの答えなのかなと実感しました。

 お客様一人ひとりの顔を見ることが脚本・演出家としての責任だと勝手に思っていたので、全公演を客席後方で見て、終演後は出口に立ったんですが、「すごく面白かったです」って話しかけてくれる人がいたり、中には「納得いかないから話しませんか?」と、十数分ロビーでお話ししたこともありました。

 あとは、皆さんSNSで感想をものすごい長文で書いてくださって、その観劇レポを読んだレポみたいなものまで生まれていて(笑)。本当にたくさんの方が、自分の感想を自分の言葉で表現してくれた作品でした。

 会場にアンケート用紙を用意しなかったのも、そういった意図からです。この作品に限らず、僕はアンケートを取りません。見た感想を僕ではなく、周りの人にSNS上で広めてほしいんです。良いことも悪いことも、そのまま素直に感じたことを自由に書いて、皆さんで意見交換をしてほしいので、特にこの作品には、そのやり方が合っていたのかなと思っています。

――ブログ等を拝見させていただきましたが、キャスティングが難航したそうですね。

松澤 僕もプロデューサーから聞きました。いや~、断られまくりだったらしいですね(笑)。僕は、脚本・演出なのでキャスティングにはあまり関わりませんが、以前ご一緒した方がキャスティングされていたり、僕が「この人とご一緒してみたい!」と推薦させていただいた方が何名かいらっしゃいます。元々役は用意していましたが、演じる俳優の名前をそれぞれ役名に入れて、本人のキャラに寄せた部分もあります。

――新垣さんファンの反応を見ると、「新しいガキさんが見れた」という声もありました。

松澤 こういう役は、僕しか振らないと思うので(笑)。良い意味で、バケモノのような女優さんなので、もっといろんな彼女を見たいですね。本当に素敵な役者さんです。

――篠戸るる役を演じた階戸瑠季さんも、大変な役柄だったんじゃないかなと感じましたが……。

松澤 それが、階戸さんは、「やりたいです!」と二つ返事で引き受けてくださったんですよ。階戸さんをはじめ、本当に全キャストにメチャクチャ感謝をしています。オファーを受けてくださったということは、僕とプロデューサーがやりたいことをきちんと汲んでくださったわけですから。

■「告知したときが一番、叩かれた」

 

――「ガチ恋」というタイトルにかなり衝撃を受けました。作品を上演するにあたって、さまざまな意見があったかと思いますが、いかがでしたか?

松澤 業界の反応は、「そういうのやったらダメだよ」「何やってんの!?」と(苦笑)。「やっていいことと、悪いことがあるよ」といった目では見られましたね。最初に告知したときが一番、叩かれました。

 公演日程と劇場程度の内容だったんですけど、やはりタイトルのインパクトが強かったようで、「直ちにやめてください」「オタクを茶化すな」と、Twitter のDMで脅迫されたこともありました(苦笑)。僕は、基本、シリアスな作風が多いんですが、それを知らない方々は、コメディー作品だと思ったようで、実際に作品を見てもらうまでは分かってもらえないだろうなと覚悟はしていました。もちろん、「すごく面白い題材」って言ってくださる方もいらっしゃいましたが、告知の段階では、結構ネガティブな意見の方が多かったですね。

――でも、いざ公演が始まると、ネット上で評判がどんどん感想を拡散されて、連日たくさんの方々が当日券を求めて劇場に列を作ったとか。

松澤 そうなんですよ。毎ステージたくさんの方に並んでいただいて、チケットの当選倍率は20倍超えだったと聞きました。皆さんの口コミのおかげでもありますね。それぞれ受け取り方は違うと思いますし、面白いと思う人もいれば、面白くないと思う人がいる中で、見た人には僕がやりたいことは伝わったのかなって。そう思うことができたのは救いでした。

――公演中には、ファンの方が松澤さんに贈ったスタンド花が、誰かの手によって壊されてしまうという悲しい事件もありましたよね。

松澤 あの件は、本当にショックで……。これは自分の中できちんと消化しないといけないなと思いブログを書いたら、たくさんの反響をいただきました。でも、「自分で壊して話題性を狙ったんでしょ?」なんて言われてしまって。ただ、僕のことを元々ネガティヴに捉えている人は、当然そうなるよなと。そう思った時に、言葉を尽くせば伝わるっていうのは、欺瞞だなって思ったんです。こっちが心を尽くして話した言葉でも、どう受け取るかは相手の自由ですから。

 そういう意味では、精神的なダメージは結構大きかったんですが、そこから色々考えることもできましたし、現場はすごく楽しかったです。役者さんとみんなで和気あいあいとしていました。

■「現実」と「リアリティ」はイコールではない

 

――今作で、松澤さんが一番こだわった部分は何ですか?

松澤 「語彙」です。俳優の言葉づかいと、ファンの方たちの言葉づかいを意識しました。Twitterにおける「本アカ」と「愚痴アカ」の語彙の使い分けには特に気をつけましたね。小説版では、舞台とは違った小説ならではのある“仕掛け”があるので、読んでくださった方は、皆さん驚かれるかと思います!

――「松澤さん、よく見ていらっしゃるな~」と、投稿内容の一つひとつにリアリティを感じました(笑)。

松澤 でも、あまり具体的な出来事などは追わないようにしたんです。とはいえ、勝手に入ってくる情報もあるので、自分からは調べずに、なるべく情報を入れすぎないようにしましたね。よくある“匂わせツイートをしてカノバレ”騒動も作中に出てきますが、完全に妄想なので、もし現実にああいうことが起きていても、偶然被っているだけなんです。

――りさ子のオタク友達には遠征組の子がいたり、原作厨がいたり、「こういう服装の人、劇場でよく見るな」というファッションだったりと、登場人物のキャラクター設定にも“あるある”要素が詰め込まれているなと感じました。

松澤 具体的なモデルはいません。でも、僕自身オタクなので、ジャンルは違えどもある程度の知識はありますし、衣装のブランドとか、細部までこだわってしまうことはよくあります(笑)。「分かる~!」って共感していただくだけでも、楽しんでいただけるかなって。

 俳優達の楽屋でのやりとりは、今回出演していない知り合いの俳優に、雑談の中で色々聞いたりもしましたが、例えば「プレゼントは何を貰ったらうれしい?」など、細かいことは聞きませんでしたね。「スタバカード、ありがとうございます!」みたいなツイートとか、よく見るなぁ、よく貰っている=みんな嬉しいのかな? とかいろいろ考えてたときに、そういう俳優がいても不思議じゃないなと。ただ、現実にいるかどうかは分からない。

「現実」と「リアリティ」は決して同じものではないし、“特定の誰か”を明確にせず、余白を残したほうが面白いと思うんです。

――確かに、どこまでが実像でどこからが虚像なんだろうって考えるのが楽しかったです! 例えば、公演を見たファンが「あそこがよかった!」って盛り上がっていても、実際、俳優たちの手ごたえとしては、「微妙だったな」って温度差があったり……(笑)。

松澤 正直、それはありますね(笑)。毎回必ずベストを目指しますが、人間なので、むしろ変わらないことはできませんし、試行錯誤を積み重ねた結果、微妙な出来になってしまったり、うまくいかずに「悔しいな」って思っていた時に、お客様から、「今日が一番よかった」って言われることはもちろんあるし、その逆もあり得るので(笑)。

――そう考えると、ファンって、俳優たちのことを分かっているようで分かっていないんですよね(笑)。

松澤 そうなんですよね(笑)。“知りたい”と思う一方、“でも他人のことは、その本人にしか分からない”っていうのが、この作品の根幹にあります。

――松澤さんは、「俳優」と「ファン」は、どういう関係性だと思われますか?

松澤 まさに、そこは、小説を読んでいただきたいです! ラストの翔太の言葉を、僕の考えとして受け取ってもらえたらうれしいですね。

■“容姿と表情”“役者の演技”を、いかに自分の言葉で伝えるか

 

――小説の出版の話は、いつ頃からあったんですか?

松澤 担当編集さんが舞台を観に来てくださって、僕も「小説にしたい」という気持ちがあったので、すぐに打ち合わせをして「じゃあ、2カ月で第一稿を書いて、年明けには形にしましょう」と、ものすごいスピードで話が進みました。去年の秋はずっと原稿を書いていましたね。

 役者さんが演じていると、もうパッと見で伝わるじゃないですか。でも小説では、今どんな顔をしていてどんな服を着て……というのを、細かく書かないと伝わらない。舞台では役者さんの演技に委ねる部分も、すべて自分の言葉で表現しなければならないので、“容姿と表情をいかに伝えるか”に気をつけました。

――小説は、舞台版とは異なる結末を迎えますよね。

松澤 舞台は、絶対に劇場でしかできないことをやったので、小説なら小説でしかできない終わり方にしたかったんです。最後に“あの一文”がくるっていうのが、小説の結末だなって思ったので、思い切って変更しました。

 演劇の良さと小説の良さっていうのを最大限引き出したいなと思いながら、両方とも作りました。舞台版はDVDで、役者さんの“演技そのもの”を見ていただきたいですし、小説版は、りさ子の心情の移り変わりを追体験してほしい。また、小説は舞台版と比べると俳優サイドがすごく詳しく描かれているので、りさ子ではない、もう一人の主人公に注目していただだければ。

――最後には、「劇団雌猫」さんによる解説もありますが、どういったつながりで?

松澤 ちょうど『りさ子』の稽古している時に、『浪費図鑑』(小学館)という面白い本が出たらしいと聞いて、影響を受けたくなかったので、そのときは読まなかったんです。それで、後日読んだでみたらすごく面白くて、お会いした事もないのに、勝手に“同志”だとシンパシーを感じて(笑)。「ぜひ解説を書いてほしい」と出版社を通して僕からオファーをさせていただきました。本当に良い解説を書いていただきましたね。

――劇中作品の『政権☆伝説』の特設サイトも公開されていますが、凝ったつくりになっていますよね。

松澤 実は、『政権☆伝説』に一番力を入れたといっても過言ではありません(笑)。イラストはプロのイラストレーターさんに、サイトデザインやロゴは全部デザイナーさんに発注しているんです。キャラクターデザインが上がってきたときは、あまりの完成度の高さに思わず笑ってしまうくらい、力を注いでくださって。スタッフさん全員の気合の入れ方が半端じゃなかったです。スピンオフも色々やっていけたらいいなぁ……!

*  * *

 後編では、創り手からみた「ガチ恋ファン」や、脚本・演出家としてのルーツについて、松澤氏に引き続き話を伺っていく。
(取材・文=編集部)

●松澤くれは
1986年富山県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇映像専修卒業。演劇ユニット「火遊び」代表。舞台脚本家・演出家として、オリジナル作品をはじめ人気小説の舞台化を数多く手がける。『りさ子のガチ恋▽俳優沼』で小説家デビュー。

■集英社文庫『りさ子のガチ恋▽俳優沼』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/risako

☆作中作品『政権☆伝説』特設サイト
http://bunko.shueisha.co.jp/seiken_stage

■舞台版『りさ子のガチ恋▽俳優沼』公式サイト
http://www.finepromotion.co.jp/gachi/

■松澤くれは 脚本・演出舞台
オフィス上の空プロデュース 火遊びpray.08
「焔の命──女優の卵がテロリストになった理由」
日程:2018年5月9日(水)~13日(日)
会場:東京都 恵比寿・エコー劇場
出演:福永マリカ / 辻響平、伊藤亜斗武、榊菜津美、野村龍一、真嶋一歌、田中健介、石澤希代子 / 石井玲歌、佐々木なふみ、菅井育美、高木薫、瀧啓祐、富田喜助、三木万侑加 / 黒沢佳奈、佑木つぐみ
https://uwanosora-hiasobipray08.jimdo.com

虐待児だったオレを救ってくれたのは、右翼の先輩たちだった

――虐待を受けた「わたしたち」に残ったものとは? よじれてしまった家族への想いを胸に、果たして、そこに再生の道はあるのだろうか。元・被虐待児=サバイバーである筆者が、自身の体験やサバイバーたちへの取材を元に「児童虐待のリアル」を内側からレポートする。

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 これまで、女性のサバイバーたちに会って話を聞いてきた。ずっと疑問に思っていたのは、同じ虐待でも「男の子が背負うもの」は、また違うのではないかということ。「男子たるもの強くあるべし」という信仰は薄れてきたにせよ、理不尽なかたちで屈服させられることへの抵抗感は大きいのではないだろうか。

 そんな疑問に応えてくれたのが、65歳のトラック運転手「マサやん」(仮名)だった。“YAZAWAのデコトラ”に乗り込み、全国どこへでも颯爽と走る。日焼けした肌に鋭い眼光、スチールブラシのようにビシっと生えそろったグレーの短髪と髭が、いかめしさに拍車をかけている。曲がったことが大嫌いな性格。最近はじめたSNSの使い方にしても、「はじめに挨拶もなしに、いきなり内容を投稿するなんて礼儀がなっとらんよね。『おはようございます』『こんにちは』は、人として基本でしょ?」と、憤慨する。

 規律に厳しい一方で、愛犬にはめっぽう弱い。去年から保護犬として柴犬を迎え入れ、溺愛の結果、「ほんともう、ぶくぶく太っていくだけだよー」と苦笑いをする。マサやんとはこの連載をきっかけに知り合った。読んだ感想をフェイスブックに投稿してくれたのだ。

中2のとき、継母の頭をゲタで叩き割った

 マサやんの左手の中指は、指先が平たくつぶれている。

「3歳ごろに、母親が『泣き声がうるさい』って石でつぶしたんだって。自分の指が何でこんなに変な形なのかずっと疑問で、ばあちゃんにしつこく聞いて教えてもらったのね」

 生まれは大分県の片田舎。高度経済成長の前夜で、町にはまだこれといった産業がなく、父親は「木こり」として生計を立てていた。マサやんが産まれてすぐに両親は離婚。彼を引き取った父は3年後、子連れの女性と再婚した。中指をつぶしたのは、この継母である。父や祖母に隠れてマサやんの食事だけを極端に減らすなど、自分の子と差別し続けたという。

「買ってもらえるおもちゃにも差があってね。弟たちが立派なプラモデルだとしたら、オレはお菓子のおまけみたいなちゃっちいやつ。子どものうちは、ただただ悲しかった」

 父親の暴力が始まったのは、中学に上がってから。そのころ父は、木こりからミシンの訪問販売に転職し、ストレスが溜まっているようだった。しかし、実家が裕福だった後妻のおかげで母屋の建て直しができたこともあって、そちらには頭が上がらない。連れ子にも気を遣っていたため、ストレス発散の矛先はマサやん一人に向いた。

 1960年代といえば、東京オリンピックや新幹線開通、車・クーラー・カラーテレビの普及、ミニスカートブームなど、庶民の生活習慣が目覚ましく変化した時期。しかし地方では、その急激な社会変化についていけない人たちがいて、そのしわ寄せが家庭生活にも現れていたのではないだろうか。

 それまで何とか耐えていたマサやんの糸が切れてしまったのは、中2の冬のこと。

「朝いきなり父親にたたき起こされて、真っ裸で納屋の柱に荒縄でくくられて、氷が張っているドラム缶の水をバシャバシャぶっかけられたんよ。庭には霜柱がびっしり張ってて、寒い日だった。やめてーって叫びよったと思うけど、身体が冷たくなって意識が薄れて、『あぁ、死ぬのかな』って思ったよ。裸で恥ずかしいとか、それどころじゃなかった」

 その数日後、マサやんは継母との言い争いから、とっさに近くにあったゲタで頭を殴ってしまう。母は血まみれになり、すぐに救急車と児童相談所の職員が来たという。頭蓋骨は割れていた。

「実はオレが柱に縛られてたとき、近くで見ていた母親がオレを見てニカッと笑ったんだよね。殴ったときは頭が真っ白でよく覚えてないけど、もしかしたらその笑顔が浮かんだのかもなぁ」

 現在でも、家庭内暴力のニュースは後を絶たない。「ゲームのやり過ぎを注意されて母を刺す」「成績不振をなじられて両親を殺害」などの事件が、「キレる子どもの恐ろしさ」として紹介されることが多いが、果たしてそれだけが理由だろうか? 引き金となるのは些細なことでも、背後にはマサやんのような深い哀しみと屈辱の歴史が広がっているのかもしれない。

とにかくチカラが欲しかった、運送も取り立ても何でもやった

「お前のためにも、県外へ出ろ」。すべての事情を知っていた担任のすすめで、中学卒業後は静岡県浜松市の鉄工所に就職した。家で虐げられていたため学校にもほどんど通えていなかったが、担任が集団就職の一環で押し込んでくれたのだ。

「あんときは、『オレみたいなもんは世の中にいらんのかな?』と思ってたから、社会に出てからは、強い男になろうと努力したよ」

 三島由紀夫の存在を知り、文武両道かつ堂々とした姿に憧れ傾倒した。三島が結成した学生組織『楯の会』に入ることを目標に定時制の高校に入るが、1970年、三島の割腹自殺により断念。失意のあまり鉄工所も高校も辞め、路頭に迷っていたときに拾ってくれたのが、姫路に拠点を持つ右翼団体だ。総裁が、マサやんの生い立ちやデコトラに憧れていることを知り、運送職員として雇ってくれたのだった。

 はじめて居場所を得た少年は、スポンジが水を吸うように先輩の教えを吸収していく。

「事務所に住み込んで、挨拶の仕方から靴のそろえ方まですべて教わったよね。お客さんの靴は、身なりが悪くても年下でも平等にそろえる。あのころの経験は、今でも財産だよ。借金の取り立て仕事は、返済額の半額が報酬になることもあって、割りのいい仕事だった。ケンカもたくさんして派手に遊んだし、たくさんの人も泣かせたね」

 自分の存在意義を疑う少年たちに、チカラを得る方法や義理人情の絆を示してくれる。彼らの活動の是非はここで問わないとして、暴力団や政治集団がサバイバーの受け皿を担っている部分はあるんじゃないだろうか。

 28歳で結婚。息子も生まれた。

「でも、『あなたには何か大事なものが足りない』と言われて4年で別れたんよね。自分でもそれはわかるけど、何が欠けてるかはわからなかった」

 故郷を捨てケンカに明け暮れ、強さは手に入れたはずなのに、なぜ? しかし、心に空洞があるかのような欠落感は、サバイバーが多かれ少なかれ持っている感覚である。それが他人への信頼感なのか、自己肯定感なのか、生きたいという欲求なのかは人それぞれだが、時には親を憎んだり自分を責めたりして、ピースが欠けたままのパズルに取り組むしかないのだ。

 だが、33歳で新しい「親父」ができ、マサやんのパズルに新しいピースが加わる。

「同じ思想を持つトラックの集まりで出会った人でさ。相手は年下だったけど『お前オレの子になれ』っていうのよ。お互いかたぎの人間ではあるけど、盃を交わして親子の関係になった」

 一つの盃で酒を飲みかわし、器はマサやんが半紙に包み大切に保管している。「親父」は、いつも独り身のマサやんを気づかってくれた。

「オレが誕生日を祝ってもらったことがないって知ったら、次の誕生日に家に呼んでお祝いしてくれてね。奥さんが大きくて立派な鯛を焼いてくれてさ……」

 マサやんの声が詰まる。思えば、家族からこんなに優しくされたことはなかった。その後の付き合いは、「親父」が亡くなるまでの30年間続いたそうだ。実父が亡くなったときは涙も出なかったが、「親父」のときは1週間以上「目から汗が止まらなかった」という。

 足りない、欠けていると思っていた「何か」は、人から与えられたときに初めて気づけるものなのかもしれない。それは人を屈服させるチカラとは別の温かいものだった。

65歳にしてやっと普通の家庭が持てた

 そして17年、マサやんには新しい家族が一気に5人も増えた。奥さんと4人の連れ子たちだ。親父とトラックの集会に参加していたころの顔見知りと、30年ぶりに再開したのだ。「親父が引き合わせてくれたのかな」と、同棲することに。一番下の子が中学生。微妙な時期なんで、まだ籍は入れてないんだけど、みんな慕ってくれる。

 マサやんは、一回り以上年下の奥さんを「オンナ」と呼ぶ。「犬と同じように太っちゃってさ。もうトドだよ、トド」と笑いながらも、喜びは隠しきれない。

「オレは晩成型って言われてきたけど、65歳にしてやっと普通の家庭が持てた。これが家族かってしみじみ。オレは身体を洗うときに亀の子だわしを使うんだけど、唯一届かない背中の真ん中を、オンナが丁寧にかいてくれるのね。そのとき『、あーーーーー気持ちいい!』って心から思うんだ。いまだにトラックで仮眠していると、昔のことを思い出してハッと目が覚めることもある。でも憎いという想いは消えてきている。今、目の前に守りたいものができて、過去にかまうヒマがなくなったのかも」

 一枚だけ残っているという、マサやんが幼いころの家族写真を見せてもらった。モノクロームの写真に、日の当たる縁側の前で親戚一同がそろっている。真っ先に目にはいるのは、マジックで黒く塗りつぶされた父親と継母の顔だ。髪の毛一本の形跡も許さないというような広い範囲で、四角く塗りつぶされている。かっぽう着姿の継母の膝の上には、ぎこちなく抱きかかえられて、うつむき気味な幼いマサやんの姿があった。

 あのとき知らなかったものが、今は手元にある。もう少し先には、笑顔が満開のカラフルな新しい家族写真を見せてもらえるのだろう。

(文/帆南ふうこ)

帆南ふうこ(ほなみ・ふうこ)
1980年生まれ、ライター。4歳ごろから高校生まで実母から身体的・精神的な暴力を受けて育つ。13年間にも及ぶ反抗期を経た後、結婚を機に母親と和解。ここ数年は元・被虐待児である「サバイバー」たちのオフ会を開いたり、取材を通じてサバイバー仲間との親交を深めている。趣味はお酒と田舎暮らし。

嵐・二宮は相葉ベッタリ、WEST・神山は中華鍋メドレーで上機嫌!? ジャニーズ笑顔の源

◎B美:28歳 人生の半分以上をジャニーズに捧げている、ジャニオタ歴20年超の芸能ライター。今一番気になるアイドルはKis-My-Ft2・北山宏光。
◎C子:36歳 デビュー組からジャニーズJr.に降りたばかりの月刊誌編集者。好きなアイドルは若い子。

B美 嵐・二宮和也と伊藤綾子の続報が出ちゃったね。もう嵐ファン、大荒れじゃん。

C子 その騒動も落ち着かないうちに、今度は関ジャニ∞・渋谷すばるの脱退報道だからね……。「フライデー」(講談社、4月27日号)によると、アーティスト志向のすばるは、関ジャニ∞らしい「コミカル要素の強い曲」に抵抗があったみたいだけど(笑)。

B美 その記事見て、バリバリのコミカル路線を引き継いでるジャニーズWESTは大丈夫かな? って、心配になっちゃったよ。

C子 わかる~。ジャニーズWESTといえば、「J-GENERATION」(鹿砦社)2018年5月号見た? ちょうどそれで、濵田崇裕や藤井流星がメイド服を着たり、桐山照史がハゲカツラかぶってコントをやってる写真を見たところだったの。傍目には楽しそうにコントをやってるように見えても、将来的に脱退者が出たりするのかな、ってちょっと考えちゃったよ。

B美 どれどれ、どんな感じだったの? なるほど、これは結構おふざけ要素が強いね(笑)。この5ページなんて、1枚の写真の中に、ピンクのメイド服を着てる濱ちゃんと流星、ハゲカツラの照史、変顔で見切れる神山智洋が収まってるじゃん。「笑わせるで!」って、気持ちが散らかってる(笑)。

C子 神ちゃん、4ページの写真も変なの。気持ちを込めて歌ってるシーンなんだろうけど、半目でさ。「Myojo」(集英社)では見られないレア写真ともいえるけど(笑)。コント衣装はアレでも、全員おそろいのパンツにサスペンダーの衣装を着て、水玉模様の傘を持ってる写真は王道のジャニーズ感あって好きだな。……あれ? なんか中間淳太、ステージから微妙に足が浮いて“空中散歩”みたいになってない?

B美 これはジャンプシーンの写真だね。メンバーがみんな跳んでる中、神ちゃんのジャンプ力が飛び抜けてることが確認できる。残念ながら、照史はガタイがしっかりしているだけあって、あんまり跳べてない感じ(笑)。

C子 『JOHNNYS' 2020 WORLD 』のプロデューサー役でフライングしたとき、「トドみたい」ってファンに揶揄されてたこと思い出す(笑)。6~7ページはユニット曲の写真なんだ。重岡大毅がピアノ、照史が三線(さんしん)を演奏してるって書いてある。

B美 照史、ものスゴく三線が似合う(笑)! 確か、照史って沖縄好きだったから、現地で刺激受けたのかな。体格といい、色黒さといい、ホントに沖縄の人が演奏してるって言われても違和感ないわ。

C子 今にでもBEGINのバックで演奏できそうなくらい仕上がってるよね(笑)。一方、7ページの小瀧望、流星、お淳太はベッドを使った演出が一気にエロく攻めてきてる。白いシャツ、はだけた胸元……ファンが好きそうなシーンだ。

B美 小瀧のうつむき加減がいい! ちょっとだけ胸元が開いててさ。デビュー当時の印象だと、重岡が一番人気でセンターだったのに、いつしか小瀧の人気がグーンと上がったよね。嵐・大野智と共演したドラマ『世界一難しい恋』と、Hey!Say!JUMP・山田涼介主演『もみ消して冬 ~わが家の問題なかったことに~』(いずれも日本テレビ系)に出演したり、俳優仕事で世間に“見つかった感”はあったもんなぁ。

C子 ひょっとしたら、今だとグループナンバーワンじゃない? 「ツインタワー」こと高身長の流星と小瀧の2人がWESTを引っ張ってるイメージ。え!? というか、このお淳太の靴、GUCCHIのファースリッポンじゃん! サラッとセレブ感出してきたね~。

B美 8ページは、神ちゃんがK-POPアイドルがよくやる“指ハート”をしてるよ。丸メガネと化粧の感じも少しK-POPっぽいな。

C子 K-POPの「Block B」っていうグループのZICOに、神ちゃんはちょっと似てるんだよ。横顔とか特に。多分、寄せていってるんじゃない? 対照的に9ページの神ちゃん見てよ。中華鍋片手に、いい笑顔してる~!! これは何をしてるシーンなのかな(笑)?

B美 なにこれ(笑)!? 文章を読むと、「中華鍋とおたまを手に、賑やかに登場! 『PARA! PARA!チャーハン』から『ホルモン~関西に伝わりしダイアモンド~』『アカンLOVE~純情愛やで~』とおなじみパラパラナンバーで盛り上がります!」と書いてある。グルメ縛りのメドレー?

C子 WEST、いろいろやってんだ……。「おなじみ」なんだね、勉強しよ。神ちゃんのほかに、「趣味はダイエット、特技はリバウンド」で有名な照史の写真が大きく使われてるのもツボなんだよね~。

B美 照史といえば、タッキー&翼・今井翼の代役で6月から舞台『マリウス』に出演するんだよね。ネット上ではフラメンコのシーンは引き継ぐのか、照史になったらなくなるんじゃないかって、話題になってたの。そしたら、フラメンコの練習も始めたらしいね。

C子 照史、フラメンコやるんだ!! 緊急事態だけに仕方ないけど、通常の仕事に加えて、舞台の稽古、フラメンコのレッスンって、だいぶハードスケジュールじゃない? 木曜は生放送の『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)と、同日深夜にはラジオ『ジャニーズWEST桐山照史・中間淳太のレコメン!』(文化放送)の生出演もあるし。

B美 照史って、2008年のドラマ『ごくせん』(日本テレビ系)が終わった後に疲労とかが原因で気管支炎になったり、右耳が難聴だったと告白してたよね。プレッシャーや精神的なもので、耳元でヘリコプターが飛んでるような音が聞こえたり、体中の血が流れてる音が聞こえたり……って。それは一時的な話で、今は治ってるみたいだけど。

C子 丈夫そうに見えてメンタル面が繊細だったり、意外と体調崩しがちだよね。代役の重圧と、ハードスケジュールで悪化しなきゃいいけど……。それこそ、照史は俳優業も盛んだし、いつかグループでの活動がキャパオーバーになって、三線片手に沖縄へ旅立ったりして……。

B美 事務所には照史のサポートを頑張ってほしいわ! って、真面目に話してても、満面の笑みで中華鍋を持つ神ちゃんが視界に入って……笑えてきちゃう(笑)。中華料理屋の店員が鍋振りながら「いらっしゃいませ~!」と声をかけた瞬間にも見えるし、この表情、面白すぎてズルくない?

C子 神ちゃん、ほんとにこのパラパラメドレーが好きなんだろうな、って伝わるよね。中国雑技団みたいなお揃い衣装も似合ってるし。一方で10ページ見てよ。お淳太が六本木にいる胡散臭い人の典型みたいな衣装着てた(笑)。あ、16ページにも大きな写真が載ってる。オネエ? タイのニューハーフ(笑)?

B美 ピンクの派手なファーとサングラスを頭に乗せてる感じが、パリピっぽい! 17ページの白シャツ姿はセクシーなのに……。

C子 ほら、23~24ページは神ちゃんのソロページだよ! こっちの写真もスゴく弾けてて、元気をもらえる。もう一度言うけど、こんな楽しそうに中華鍋振るジャニーズ、いる!? 今回の「Jジェネ」で、神ちゃんのことかなり好きになりそう。意外と表情が豊かなんだな~って。同じダンス担当でも、A.B.C-Z・五関晃一の表情固定とはえらい違い(笑)。

B美 神ちゃんのためにも、パラパラメドレーは歌い継ぐべきだね。ただ、15ページを見ると、鍋をただの小道具として手にする小瀧がいるよ。鍋を振るより、ファンを見ることが優先って感じ。

C子 12ページの重岡に至っては、かなりダルそうだよ……。神ちゃんみたいに、おたまを持ちつつ、鍋を振ったりしてないから。はあ……数年後、かっこいい路線で攻めたい誰かが「コンサートで鍋使うの、もうやめよう」とか言い出さないか心配。

B美 全然テイストは変わるけど、26ページからは二宮&相葉雅紀の“にのあい”コンビの特集が組まれてる。まぁ、この2人はプライベートでも遊んだり、普通に仲良しでかわいい。よく相葉ちゃんがほかの人と楽しそうに話してる時に、横で二宮がスゴイ鋭い目つきで話し相手を見てる場面とかがTwitterにアップされてるよね。

C子 にのあいは、いつでもファンが盛り上がっている定番コンビなのよ。嵐のファンも、「二宮が相葉のトップオタ」って認めてるし。元ファンの私から見ても、二宮は相葉といる時が一番いい笑顔してると思う。まぁ、もちろん相葉ちゃんは伊藤綾子に会ってるんだろうけどさ……。

B美 おぉ……。二宮ファンじゃない私でもメンタルえぐられるわ……。女性関係のうわさが出ると、コンビのプライベートエピソードにも女のことがチラつくから萎えるんだよね。

C子 そこだよね、実際問題! ほら、35ページに今年のお正月エピソードが書いてある。相葉ちゃんが家でのんびりしてたら、ニノから連絡があって、自宅にお邪魔したと。“2人”で「たこ焼き作って食べた」とか、ブルドッグの骨を取るオモチャや、かるたで遊んだみたい。

B美 「(かるたは)取る人と読む人しかいない。俺読みながら取ったんだけどだいたいどこにあるかわかってるから強かった」(相葉)と話してたそうだけど、どうせ綾子がアナウンサーボイスで読み上げたんでしょ? 「ニノちゃんが車で迎えに来てくれて」って書いてあるのも、「女性セブン」(小学館)に出てたニノの愛車だろうな……って連想しちゃうわ。でも、この34~35ページの『嵐のワクワク学校』の写真は、小学生の男子2人が遊んでいるみたいでキュンとするわ!

C子 29ページで、相葉が二宮を追いかけ回してるのもかわいいよね。ここに引用されてる、二宮から相葉へのコメントもツンデレでいいのよ! 「思い返しても何も浮かんできません。隣にいつもいてくれましたね。でも何もありません。真っ白な15年間をありがとう」。二宮の天の邪鬼が詰まってて最高の文章。しかし、この2人のうちのどちらが先に結婚するのかなぁ……。

B美 にのあい見てると、暗い気持ちになってくるから別のページ読もうっと(笑)。76~91ページはジャニーズJr.内ユニット・Love-tuneの未公開フォトギャラリーだって。ちょっと! 84ページの森田美勇人、カッコよすぎじゃない? 虚ろな表情でベースを弾く姿が、背景のスモークも含めて、なんていうか、神々しい。“美”の名前通りのベストショットだよ!

C子 ホントだ~スタイルもいいから、絵になる1枚だね。美勇人って“謎選抜”だったのに、ここまでよくのし上がったと思わない? 13年にHey!Say!JUMP・山田涼介の「ミステリーヴァージン」でバックダンサーを務めてた、安井謙太郎、深澤辰哉、岩本照、諸星翔希、萩谷慧悟の無所属6人が、いまや人気ユニット入りだもんね。

B美 88ページの阿部顕嵐も匹敵するかっこよさだよ。冷めた目つきと、首筋のホクロが色っぽい。ねえ、「Jジェネ」見てあらためて思ったけど、Love-tuneってほとんどの人が切れ長系の目。偶然かな? 78ページの安井くんは、デコルテがめっちゃキレイじゃん。ニキビや赤みの1つもない。

C子 ホント、顕嵐ちゃんも素敵!! これならお金貢ぎたくもなるわ(笑)。安井は背が小さめなのかな? 77ページでメンバーが横並びになってる写真とか、隣に長身の長妻怜央がいることもあって、真ん中にいる安井のコンパクトさが際立ってる。

B美 安井くん、尊敬する先輩が少年隊の錦織一清ってところは好感度高いよね。最近でも「duet」18年5月号(ホーム社)で、周りが山下智久とか木村拓哉を挙げてる中で、大先輩のニッキを挙げているんだよ。何年も前から名前出してるみたいだし、周りに流されない感じがいいわ~!!

C子 しかも、よく事務所の“トップ”として名前が出てくる近藤真彦や東山紀之じゃないってのもシブいよね。80ページの真田佑馬もカッコよくない? ギター弾いてる時の表情が楽しそうだし。

B美 真田はLove-tuneに入って、人気が盛り返した印象だな。「いいとも青年隊」ことnoon boyzとして元相方だった野澤祐樹も最近のNEWSのツアーについてるみたいだし、活動は別々になっても、それぞれ頑張ってくれててよかった。きっとタモリも喜んでるよ!

『民謡魂 ふるさとの唄』にTOKIO城島茂が登場! 4月30日(月)ジャニーズアイドル出演情報

――翌日にジャニーズアイドルが出演予定の番組情報をお届けします。見逃さないように、録画予約をお忘れなく!

※一部を除き、首都圏の放送情報を元に構成しています。
※番組編成、及び放送日時は変更になることがあります。最新情報は番組公式サイト等をご確認ください。

●TOKIO

8:00~ 9:55 『白熱ライブビビット』(TBS系) 国分太一
11:25~11:30 『国分太一のおさんぽジャパン』(フジテレビ系) 国分太一
15:05~15:50 『民謡魂 ふるさとの唄』(NHK総合) 城島茂

●嵐

23:00~24:09 『NEWS ZERO』(日本テレビ系) 櫻井翔

●タッキー&翼

19:00~20:00 『有吉ゼミ』(日本テレビ系) 滝沢秀明

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内田有紀は「整形してるよ!」と言っていた? 語り継がれる“整形宣言”をラジオから検証

 タレントや役者などに整形疑惑がつきまとうのは今に始まったことではないが、一部のバラエティアイドルや中年の女性タレントなどは「埋没法で二重にした」「ほうれい線にヒアルロン酸を打ってる」などの美容施術を告白することもある。しかし一線で活躍する女優で美容医療についてコメントするケースは非常に稀だ。美容医療をおすすめしまくる雑誌『美STORY』(光文社)の表紙を飾り雑誌インタビューに応じても、女優は「私は毎月これだけ××してますよ」とは言わない。10代~20代の若い女優ならなおさら、天然であると言い張る以外にない。しかし1人だけ「カミングアウトしたよね」と言われている女優がいる。内田有紀(42)だ。

 内田有紀はショートカットがトレードマークだった10代の頃にアイドル女優として大ブレイク。くっきりした目鼻立ちの美人だが、まさに人気絶頂のアイドル女優だった頃に、ラジオ番組で「整形してるよ」と告白したとの話がネット上では浸透している。この話を信じている人も少なくないのではないだろうか。ためしにgoogleの検索窓に「内田有紀 整形」と打ち込んでみると、彼女がラジオ番組で自ら「整形してるに決まってるじゃん」と告白したとの記述を含むページが上位にずらっと表示される。

 しかし、にわかには信じがたい。現在よりもずっとアイドルや女優が身近でない、遠い雲の上の女神のような存在だった時代に、そのような自由な発言をする女優がいたというのだろうか。内田有紀はその当時、パーソナリティを務めていたラジオ番組『内田有紀 夜空にYOU KISS!』(ニッポン放送)の内容をまとめた書籍(タイトルは番組名と同じ、版元は扶桑社)をリリースしていた。そこに答えが書いてあるだろうか。検証してみたい。

月に一回、女の子の何かが来るような感じであたしの顔も変わっていくんだよね。
 内田有紀といえばショートヘアの似合う爽やかで健康的な美人だった。また、芸能界のドンと恐れられる人物が取り仕切るバーニングプロダクションの所属であり、もし仮にラジオでぽろりと「整形してるよ」などと発言しても、書籍に収録するわけがない。というかラジオでもそのような発言は当然カットするだろうと考えていた。しかし『内田有紀 夜空にYOU KISS!』は、想像よりもずっと赤裸々で、驚いた。

 なにしろプロローグの文章が「鼻毛」の話である。「あたしだって人間だから鼻毛が生えてるわけよ。だから鼻毛を切るわけ」。すごい。このプロローグのシメの文章は「ハハハハハハハハハ 鼻毛ビロ~ン!」だ。

 そして第一章の一発めで、整形トーク。ページタイトルも直球に「整形女」とある。リスナーのお便りに内田有紀が応じるというラジオの流れがそのまま書き起こされた内容だが、このリスナーは「整形したって本当ですか? クラスの9割がこの話を信じ込んでいます」と投げ込んでおり、よくこれを採用したなと思う。

 この整形質問に内田有紀がどう答えているかというと、こうだ。

<……アナタ! なに言ってるんですか!(怒りの顔マーク)
してるに決まってるでしょう! 有紀は芸能人だよ!
みんな整形してるんだからっ!
ハハハハ……ヤバイヤバイ。違うって! あたしは整形していません。こんなに早くバラすつもりはなかった(舌をぺろりと出すマーク)んだけど。
うーん、まだ当分整形してると思わせておきたかった(舌をぺろりと出すマーク)んだけどな。
でも、自分でもびっくりするぐらい『そのときハートは盗まれた』のドラマの頃から今にいたるまで、かなり、顔変わってるんだよね。
だからヘタすれば、月に一回、女の子の何かが来るような感じであたしの顔も変わっていくんだよね。
やせたんだよね、なんていうのかな……、つまり、やせちゃって顔が変わっちゃったのが正解!>

 次のページでも別のリスナーからのお便りで「内田有紀の目の下のふくらみはシリコン注入で人工的に作られているという噂、本当ですか?」という質問。これにも内田有紀は<本当だよ!>と言った後で<って、オイオイ! ホントじゃないぞお、これはぁ!>と否定。涙袋はコンプレックスだと話し、シリコンを入れるなら胸にするとも言っている。

 その流れで今度は「豊胸してるんですか?」というリスナーのお便りを紹介。これに内田有紀は最後までノリノリで否定せず<まあとにかく、シリコン入れてるからデカイのよ>ととばしまくる。<もめばもっとデカくなるんだけどサ、ひとりでもむのもちょっと寂しいし……誰かもんでくれる人いないかなあ……。>とまで。自由だ。

 このようにギャグ全開でお送りしていた内田有紀のラジオ。あくまでもすべて「ひとりボケツッコミ」であり、最終的には“整形神話”をすべて否定していた。つまり、内田有紀が「整形していると告白した」という話は、事実ではない。

 そのほか、同書からは内田有紀が「キスが好き」「ファーストキスは中2のとき」「付き合ったらベタベタする」等、プライベートの恋愛についてもラジオで自由に発言しているように見える。しかも最終章ではまた毛の話ばかりしている。水着撮影なのにワキ毛処理を怠っていたとか、<自分はさ、毛が背中に生えてんのよ。>とか。さらに<この前>(18歳当時)のドラマの打ち上げで「18歳なんだからもう飲めるんでしょう」とスタッフに勧められて<向こうも酔ってるし怒られそうだから、怖いから>ちょっとだけ酒を飲んだという、何かと鈍感だった時代の空気を感じる話も収録されている。

 ともかく内田有紀は、整形を公言してはいなかった。いくら訂正しようとも、一度拡散されたデマがなかなか消えないことは承知しているが、彼女自身は「していない」と否定していたというのが事実だ。

NHKが苦肉の策! 視聴率急降下の大河ドラマ『西郷どん』を“史上初”の深夜に再放送

 NHK大河ドラマ『西郷どん』(鈴木亮平主演/日曜午後8時~)の視聴率が急降下する中、同局が苦肉の策ともいえる手に打って出た。22日に放送された第15話の再放送を、深夜枠でオンエアしたのだ。

 その再放送が流されたのは、26日の『NET BUZZ』(午後11時55分~)の枠。同番組は、ネット上で大きな反響のあった(バズった)番組をアンコール放送するもの。

 同話「殿の死」は、薩摩軍を率いて京を目指す上洛計画を始動させた島津斉彬(渡辺謙)が、突然倒れて死亡するという衝撃のエンディングとなったが、「そのシーンがネット上で話題になった」ため、『NET BUZZ』で放送されるに至ったという。大河が深夜にオンエアされるのは史上初の事態だ。

「大河ドラマは毎週土曜午後1時5分から再放送しています。これは大河の“格”を考慮してのものです。ただ土曜昼間では、在宅率が低く、それを見ている視聴者は多くはないでしょう。一般的に視聴者のライフスタイルも変わり、深夜にテレビを見る層は少なくありません。NHKも、それを承知しているから、連ドラや、『ブラタモリ』『鶴瓶の家族に乾杯』といった人気番組の再放送を深夜に流しているのです。ただ、大河は“格”の問題もあったので、それはやってきませんでしたが、視聴率が急降下して、もう背に腹は代えられないということでしょう。この回をできるだけ多くの視聴者に見てもらって、第16話以降につなげたいのだと思われます」(テレビ誌関係者)

『西郷どん』は初回15.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で、史上ワースト2位の発進となったものの、第2話以降は、14~15%台をキープ。極端に高い回こそないものの、安定した数字をキープしていた。ところが、1日に特別編を放送。本編の放送を休んだことで、“いい流れ”が止まってしまい、2週ぶり放送の第13話(8日)は13.0%まで落ち込んで自己最低を記録。続く第14話(15日)は11.9%まで下げてしまった。第15話は13.4%まで持ち直したものの、ここ3回は低視聴率が続いている。

「1日に特別編を放送するため、本編を休止し、その後の視聴率急落につながりました。これは、明らかな編成上のミスです。第15話は斉彬が亡くなる重要な回。従って、できるだけ多くの視聴者に見てもらう必要があったのです。そのため、『NET BUZZ』で緊急再放送することになったのでしょうね」(同)

 昨年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』(柴咲コウ主演)は全話平均12.8%で、史上ワースト3位の低視聴率に終わっており、NHKとしては、2年連続の不振は避けたいところ。第16話(29日)からは、回想シーンを除き、主演・鈴木の強力なサポート役だった渡辺が出演しないとあって、ここが正念場。このままズルズルと低視聴率に沈むわけにもいかないだけに、NHKもなりふり構わぬ姿勢に出たようだ。
(文=田中七男)

NHKが苦肉の策! 視聴率急降下の大河ドラマ『西郷どん』を“史上初”の深夜に再放送

 NHK大河ドラマ『西郷どん』(鈴木亮平主演/日曜午後8時~)の視聴率が急降下する中、同局が苦肉の策ともいえる手に打って出た。22日に放送された第15話の再放送を、深夜枠でオンエアしたのだ。

 その再放送が流されたのは、26日の『NET BUZZ』(午後11時55分~)の枠。同番組は、ネット上で大きな反響のあった(バズった)番組をアンコール放送するもの。

 同話「殿の死」は、薩摩軍を率いて京を目指す上洛計画を始動させた島津斉彬(渡辺謙)が、突然倒れて死亡するという衝撃のエンディングとなったが、「そのシーンがネット上で話題になった」ため、『NET BUZZ』で放送されるに至ったという。大河が深夜にオンエアされるのは史上初の事態だ。

「大河ドラマは毎週土曜午後1時5分から再放送しています。これは大河の“格”を考慮してのものです。ただ土曜昼間では、在宅率が低く、それを見ている視聴者は多くはないでしょう。一般的に視聴者のライフスタイルも変わり、深夜にテレビを見る層は少なくありません。NHKも、それを承知しているから、連ドラや、『ブラタモリ』『鶴瓶の家族に乾杯』といった人気番組の再放送を深夜に流しているのです。ただ、大河は“格”の問題もあったので、それはやってきませんでしたが、視聴率が急降下して、もう背に腹は代えられないということでしょう。この回をできるだけ多くの視聴者に見てもらって、第16話以降につなげたいのだと思われます」(テレビ誌関係者)

『西郷どん』は初回15.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で、史上ワースト2位の発進となったものの、第2話以降は、14~15%台をキープ。極端に高い回こそないものの、安定した数字をキープしていた。ところが、1日に特別編を放送。本編の放送を休んだことで、“いい流れ”が止まってしまい、2週ぶり放送の第13話(8日)は13.0%まで落ち込んで自己最低を記録。続く第14話(15日)は11.9%まで下げてしまった。第15話は13.4%まで持ち直したものの、ここ3回は低視聴率が続いている。

「1日に特別編を放送するため、本編を休止し、その後の視聴率急落につながりました。これは、明らかな編成上のミスです。第15話は斉彬が亡くなる重要な回。従って、できるだけ多くの視聴者に見てもらう必要があったのです。そのため、『NET BUZZ』で緊急再放送することになったのでしょうね」(同)

 昨年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』(柴咲コウ主演)は全話平均12.8%で、史上ワースト3位の低視聴率に終わっており、NHKとしては、2年連続の不振は避けたいところ。第16話(29日)からは、回想シーンを除き、主演・鈴木の強力なサポート役だった渡辺が出演しないとあって、ここが正念場。このままズルズルと低視聴率に沈むわけにもいかないだけに、NHKもなりふり構わぬ姿勢に出たようだ。
(文=田中七男)

「連絡帳の自作」を保護者に指示――“時代錯誤”な小学校と“よき母になりたい”親はなぜすれ違う?

 先日、小学1年生の子どもを持つという、とあるTwitterユーザーが、学校から「指定のノート全ページに、赤ペンでラインを引いて連絡帳を作ってください」といった指示を受けたという内容のツイートを投稿し、ネット上を騒がせた。連絡帳とは一般的に、児童が翌日の持ち物や予定などを書き記すノートで、文房具店には専用のノートも販売されており、誰もが小学生時代に一度は使用したことがあるだろうメジャーなもの。しかしそれを、保護者が自作しなければならないという話は「初めて聞いた」と驚く人が多く、「なぜ保護者にこんな苦行を」「市販の連絡帳を買えばいいのに」「この文具メーカーと癒着しているのではないか」と、批判の声がネット上を渦巻いている状況だ。

 投稿者は、埼玉県さいたま市在住とみられる。周辺の学校でも同様の指示がされているそうだが、同じさいたま市の小学校に子どもを通わせている別の人物からは、「うちの地域ではない」との声も少なくない。つまり、この保護者による連絡帳づくりは、さいたま市のごく一部の小学校で行われているものとみられ、ネット上には、「さいたま市教育委員会は把握しているのか?」といった疑問も出ている。

 そこで、幼児教育、小学校教育、中学校教育、国際教育等にかかわる事業を行っている同市教育委員会の「学校教育部指導1課」に問い合わせたところ、「(連絡帳についてそのような指示を出している小学校については)把握していません」とのこと。学校が独自に行っている指示のようだが、“児童の持ち物に名前を記入する”のと同様に、「子どもを育んでいくために、学校からご家庭に協力を依頼するものの1つではないか」という。その依頼内容については、各校の判断に委ねられているそうだ。

 小学校が“子どもを育んでいく”場であるのは、学校側と保護者側の共通認識だろうが、それでも、市販の連絡帳をなぜ使用してはいけないのかという疑問は拭えない。投稿者の子どもは小学1年生のため、まだ文字のサイズやバランスの調節ができず、市販用は使いづらいとも想像できるが、わざわざ保護者がラインを引かなくてはいけない理由には当たらないと感じる人も多いだろう。

 学校からの依頼が、保護者の許容範囲を超えてしまう――それは、今回の連絡帳の一件に限ったことではなく、全国各地で見られる現象のようだ。

 「(連絡帳の話を知って)脱力してしまいましたね。『いつの時代の話かな?』と思って、あらためて確認して、『あ、やっぱり今年の話なんだ』って(笑)」と語るのは、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『PTAがやっぱりコワい人のための本』(ともに太郎次郎社エディタス)などの著者であるジャーナリストの大塚玲子氏。保護者が学校側からの依頼に慌てふためいてしまうという事例を、次のように解説してくれた。

「例えば、算数セットの数え棒(数を数える学習や、図形作り、長さ比べ、立体図形作りなどに用いられる棒。数十本~100本で1セットとなっている)への名前つけ。ものすごく小さな細長い専用のシールがあって、それにペンで名前を書いて一本一本に貼るという作業で、実際に私もやったんですが、途中で『何なんだろう、これは……』と、ぼう然としてしまいました。Twitterなどを見ていると、同じく数え棒への名前つけに苦労されている方をよく見かけますね。もちろん、名前が書いてあった方が、もし失くしても持ち主の元に戻ってきやすいというのはわかるんですが、それにしても数え棒は名前を貼るのに不向きだと思うんです」

 ほかにも、「明日の図工で使うからと、“2Lのペットボトル”や“粘土”“牛乳パック”などを突然持ってきてくださいといわれ、苦労する保護者もいる」そうで、「私も仕事から疲れて帰って来て、夜、泣きながら紙粘土を買いに出たことがあります(笑)」とのこと。

「そのときのお母さんは、『何なの学校!?』『何なの子ども!?』という心境なのでは。学校は、2~3日前に伝えていたのに、子どもが忘れていた場合もあるかもしれませんしね。正直、低学年だったら、ちゃんと親に伝えられない場合もあるので、『1週間前までにはにお便りで教えてもらわないと対応できない』という保護者は多いような気がします。あと、平日日中に保護者会や参観日が設定され、『仕事が休めない!』と困り果てる保護者も多いのではないでしょうか」

 共働きの家庭が増えている中、確かに、“ちょっとしたこと”でも、それが積み重なると保護者にとって多大な負担になることはあるだろう。では、なぜ学校側の“これくらいはお願いしても大丈夫”という認識と、保護者の許容範囲に大きなズレが生じてしまうのだろうか。

「まず先生たちの思考停止状態があると思います。『もし自分が保護者側だったらどう思うのかな?』と、ちょっと想像したら、『すぐ変えなければ』と感じるはずなんですが。きつい言い方ですが、『学校は、“考えないことが大事”とされ、“言われたことをやるのが最優先”の世界なのでは』と思ってしまいます。学校の先生が多忙すぎるとよくいわれるのも、頭を使って考えれば、改善される部分もあるのではないかと。PTAでもそうなんですが、その場では『前年通りにやる』のが、一番話がスムーズで、何か変えるとなるとさまざまな調整が必要となるんです。忙しい中だと特に、“前年通り”“言われた通りにやる”方に流されてしまうのではないかと感じます。そうやって、横着してきた結果、保護者への負担も大きくなってしまったのではないでしょうか」

 負担を減らすために何かを変えようとすると、逆に手がかかりすぎて大変。そんな背景が学校にはあるのだろうか。しかし一方で大塚氏は、保護者側にも責任があるという。

「保護者も、学校側に要望を“伝えてこなかった”んです。確かに、忙しそうにしている先生に言いづらいのはわかります。特に子どもが入学したばかりだと、学校側の指示をこなすのにいっぱいいっぱいで、とても言う暇がない。お母さんたちって、基本的に、“いいお母さんにならなきゃプレッシャー”をものすごく受けていて、ノートにラインを引くとか、数え棒への名前つけだとかでも、子どものためにやらなきゃいけないといわれると、断れない。『おかしい』という感情を殺してしまうんですね。でも、その『おかしい』という気持ちを、学校側に言わないことには、何も変わらないですから」

 今の保護者たちは、学校側から「モンスターペアレンツ」と見られてしまうことをとても恐れている傾向があり、一方、学校側もモンスターペアレンツに目をつけられないように気を使っている面があるという。そういった背景から、保護者も先生も、お互い「こういった点が負担になっているから、改善しましょう」と言いづらい空気が出来上がっているようだ。

「保護者と先生が、“お互いに負担を減らして、楽になる方法”を考えられるようになるといいですね。例えば、数え棒の名前つけにしても、もっとほかにやり方があるはず。数え棒ってたいてい、小1でしか使わないので、例えば、1人1セットではなく、みんなで共有のものにして、数本なくなったら、次の年に買い足せばいいと思います。学校側は、『子どもが数え棒をなくしたときに、保護者から苦情がくる』という理由で、名前つけを指示していると思うのですが、であれば、『子どもが数え棒をなくしても、学校に文句言いません』と保護者のコンセンサスを取ってもいいかもしれません。それに、自作の連絡帳だって、最初からそういうノートを買えばいいし、そもそもさいたま市の一部の小学校以外の子は、普通に連絡ノートを使っていますよね」

 古くから、努力は美徳であるとされる日本。特に学校では、その考えが深く浸透している気もするが、保護者の不必要な負担が減ることは、「何より子どものためになります。ノートにラインを引いたり、名前つけの作業がなくなれば、その分子どもと遊べますもんね」と大塚氏は言う。冷静に考えて、子どものために何をすべきか――それを考えることが、保護者と学校双方にとって、思考停止状態から脱却する突破口となるのかもしれない。

「連絡帳の自作」を保護者に指示――“時代錯誤”な小学校と“よき母になりたい”親はなぜすれ違う?

 先日、小学1年生の子どもを持つという、とあるTwitterユーザーが、学校から「指定のノート全ページに、赤ペンでラインを引いて連絡帳を作ってください」といった指示を受けたという内容のツイートを投稿し、ネット上を騒がせた。連絡帳とは一般的に、児童が翌日の持ち物や予定などを書き記すノートで、文房具店には専用のノートも販売されており、誰もが小学生時代に一度は使用したことがあるだろうメジャーなもの。しかしそれを、保護者が自作しなければならないという話は「初めて聞いた」と驚く人が多く、「なぜ保護者にこんな苦行を」「市販の連絡帳を買えばいいのに」「この文具メーカーと癒着しているのではないか」と、批判の声がネット上を渦巻いている状況だ。

 投稿者は、埼玉県さいたま市在住とみられる。周辺の学校でも同様の指示がされているそうだが、同じさいたま市の小学校に子どもを通わせている別の人物からは、「うちの地域ではない」との声も少なくない。つまり、この保護者による連絡帳づくりは、さいたま市のごく一部の小学校で行われているものとみられ、ネット上には、「さいたま市教育委員会は把握しているのか?」といった疑問も出ている。

 そこで、幼児教育、小学校教育、中学校教育、国際教育等にかかわる事業を行っている同市教育委員会の「学校教育部指導1課」に問い合わせたところ、「(連絡帳についてそのような指示を出している小学校については)把握していません」とのこと。学校が独自に行っている指示のようだが、“児童の持ち物に名前を記入する”のと同様に、「子どもを育んでいくために、学校からご家庭に協力を依頼するものの1つではないか」という。その依頼内容については、各校の判断に委ねられているそうだ。

 小学校が“子どもを育んでいく”場であるのは、学校側と保護者側の共通認識だろうが、それでも、市販の連絡帳をなぜ使用してはいけないのかという疑問は拭えない。投稿者の子どもは小学1年生のため、まだ文字のサイズやバランスの調節ができず、市販用は使いづらいとも想像できるが、わざわざ保護者がラインを引かなくてはいけない理由には当たらないと感じる人も多いだろう。

 学校からの依頼が、保護者の許容範囲を超えてしまう――それは、今回の連絡帳の一件に限ったことではなく、全国各地で見られる現象のようだ。

 「(連絡帳の話を知って)脱力してしまいましたね。『いつの時代の話かな?』と思って、あらためて確認して、『あ、やっぱり今年の話なんだ』って(笑)」と語るのは、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『PTAがやっぱりコワい人のための本』(ともに太郎次郎社エディタス)などの著者であるジャーナリストの大塚玲子氏。保護者が学校側からの依頼に慌てふためいてしまうという事例を、次のように解説してくれた。

「例えば、算数セットの数え棒(数を数える学習や、図形作り、長さ比べ、立体図形作りなどに用いられる棒。数十本~100本で1セットとなっている)への名前つけ。ものすごく小さな細長い専用のシールがあって、それにペンで名前を書いて一本一本に貼るという作業で、実際に私もやったんですが、途中で『何なんだろう、これは……』と、ぼう然としてしまいました。Twitterなどを見ていると、同じく数え棒への名前つけに苦労されている方をよく見かけますね。もちろん、名前が書いてあった方が、もし失くしても持ち主の元に戻ってきやすいというのはわかるんですが、それにしても数え棒は名前を貼るのに不向きだと思うんです」

 ほかにも、「明日の図工で使うからと、“2Lのペットボトル”や“粘土”“牛乳パック”などを突然持ってきてくださいといわれ、苦労する保護者もいる」そうで、「私も仕事から疲れて帰って来て、夜、泣きながら紙粘土を買いに出たことがあります(笑)」とのこと。

「そのときのお母さんは、『何なの学校!?』『何なの子ども!?』という心境なのでは。学校は、2~3日前に伝えていたのに、子どもが忘れていた場合もあるかもしれませんしね。正直、低学年だったら、ちゃんと親に伝えられない場合もあるので、『1週間前までにはにお便りで教えてもらわないと対応できない』という保護者は多いような気がします。あと、平日日中に保護者会や参観日が設定され、『仕事が休めない!』と困り果てる保護者も多いのではないでしょうか」

 共働きの家庭が増えている中、確かに、“ちょっとしたこと”でも、それが積み重なると保護者にとって多大な負担になることはあるだろう。では、なぜ学校側の“これくらいはお願いしても大丈夫”という認識と、保護者の許容範囲に大きなズレが生じてしまうのだろうか。

「まず先生たちの思考停止状態があると思います。『もし自分が保護者側だったらどう思うのかな?』と、ちょっと想像したら、『すぐ変えなければ』と感じるはずなんですが。きつい言い方ですが、『学校は、“考えないことが大事”とされ、“言われたことをやるのが最優先”の世界なのでは』と思ってしまいます。学校の先生が多忙すぎるとよくいわれるのも、頭を使って考えれば、改善される部分もあるのではないかと。PTAでもそうなんですが、その場では『前年通りにやる』のが、一番話がスムーズで、何か変えるとなるとさまざまな調整が必要となるんです。忙しい中だと特に、“前年通り”“言われた通りにやる”方に流されてしまうのではないかと感じます。そうやって、横着してきた結果、保護者への負担も大きくなってしまったのではないでしょうか」

 負担を減らすために何かを変えようとすると、逆に手がかかりすぎて大変。そんな背景が学校にはあるのだろうか。しかし一方で大塚氏は、保護者側にも責任があるという。

「保護者も、学校側に要望を“伝えてこなかった”んです。確かに、忙しそうにしている先生に言いづらいのはわかります。特に子どもが入学したばかりだと、学校側の指示をこなすのにいっぱいいっぱいで、とても言う暇がない。お母さんたちって、基本的に、“いいお母さんにならなきゃプレッシャー”をものすごく受けていて、ノートにラインを引くとか、数え棒への名前つけだとかでも、子どものためにやらなきゃいけないといわれると、断れない。『おかしい』という感情を殺してしまうんですね。でも、その『おかしい』という気持ちを、学校側に言わないことには、何も変わらないですから」

 今の保護者たちは、学校側から「モンスターペアレンツ」と見られてしまうことをとても恐れている傾向があり、一方、学校側もモンスターペアレンツに目をつけられないように気を使っている面があるという。そういった背景から、保護者も先生も、お互い「こういった点が負担になっているから、改善しましょう」と言いづらい空気が出来上がっているようだ。

「保護者と先生が、“お互いに負担を減らして、楽になる方法”を考えられるようになるといいですね。例えば、数え棒の名前つけにしても、もっとほかにやり方があるはず。数え棒ってたいてい、小1でしか使わないので、例えば、1人1セットではなく、みんなで共有のものにして、数本なくなったら、次の年に買い足せばいいと思います。学校側は、『子どもが数え棒をなくしたときに、保護者から苦情がくる』という理由で、名前つけを指示していると思うのですが、であれば、『子どもが数え棒をなくしても、学校に文句言いません』と保護者のコンセンサスを取ってもいいかもしれません。それに、自作の連絡帳だって、最初からそういうノートを買えばいいし、そもそもさいたま市の一部の小学校以外の子は、普通に連絡ノートを使っていますよね」

 古くから、努力は美徳であるとされる日本。特に学校では、その考えが深く浸透している気もするが、保護者の不必要な負担が減ることは、「何より子どものためになります。ノートにラインを引いたり、名前つけの作業がなくなれば、その分子どもと遊べますもんね」と大塚氏は言う。冷静に考えて、子どものために何をすべきか――それを考えることが、保護者と学校双方にとって、思考停止状態から脱却する突破口となるのかもしれない。