いま、Twitterで47万フォロワーという絶大な人気を誇るニャン(@radran10)というアカウントをご存じだろうか? 『「小さい事」でも一緒に喜べる人と居るのが一番楽しい。友達も恋人も』(5万いいね)、『好きな人からラインが来ない夜って長すぎるから、返ってこない日は最初から「今日は返しません」って教えてくれる機能が欲しい』(2万9,000いいね)など、シャレてるようで普通なひとことをつぶやくだけで、たちまち1万いいねがつくという驚異的な支持を集めている。ツイッタラーにしては珍しく顔出しもしており、そのイケメンっぷりにも関心が高まっているTwitter界のプリンス「ニャン」に、突撃取材してみた。
■「モテるためにTwitterを始めた」という大学生が人気者になるまで
若い女子のハートを射抜くツイートを連発して、着実にフォロワーを増やし続けているニャンさん。そのツイートには『「本当に好きなら『その人の過去』も受け止めなきゃいけねえ」「『好きすぎる』ってのも罪だな。余計に苦しい」「寝る前にする好きな人との電話を『日課』にしたい」など、絶頂期のキムタクが言うならギリ許されるレベルの甘い文言が並ぶ。こうした恋愛中のセンチメンタルを直球で表現するツイートの数々で、いまやフォロワー数は47万人超え。実際に筆者もフォローしてみたのだが、まるで少女マンガに出てくるキラキライケメンが、突如自分のタイムラインに舞い降り、自分にだけ甘い言葉を語りかけてくれてるんじゃないかと錯覚するほどの、胸のときめきさえ覚えてしまう。
まさかこんな見ず知らずの誰かのツイートで、心を潤す羽目になるとは思わなかったが、これはぜひ本人がどんな人物なのか会って確かめたい! 湧き上がる好奇心の勢いに任せ、すぐさまアポをとり、ニャンさんに話を聞きに行くことになった。
ニャンさんは、待ち合わせ場所である渋谷のカフェにさっそうと、爽やかな笑顔で登場した。その笑顔には、まだあどけなさが残り、思っていたよりもずっと若い。それもそのはず、現役大学生だという。迷彩柄のジャケットを羽織っており、少しやんちゃな香りもするが、イケメンには間違いない。しかし、その物腰は意外に柔らかく、深々とお辞儀をしてあいさつする姿には好感が持てた。
とはいえ、少し冷静になってくると、どこからどう見ても普通の大学生にしか見えない。
「こういうツイートをしようと思ったのは、モテたかったからです(笑)。それに、絶対にこれで有名になってやろうという思いもありましたね」
見た目も爽やかで、コミュニケーションもソツがない……どこをとってもリア充感を漂わせているニャンさんだが、自身はコンプレックスの塊だと話す。
「親友がイケメンで超モテる奴で、僕は話の盛り上げ役ってポジションだったんです。いつもおいしいとこは親友が持っていく……その劣等感を覆したくて、最初はいい感じに盛れた自撮り画像とかを上げてたんですよ。でもツイッターの世界でも僕よりイケメンはいっぱいいるし、勝てないなと思った。だったら違うところで勝負しようと、恋愛系のツイートをつぶやき始めたんです。姉2人と妹2人に挟まれてるんで、日常的に女性を観察してきてるし、女友達も多いんで、恋愛系のネタには困らないんですよね」
ツイートは自分の話だけでなく、周りの女性の声を拾ったものも多いという。自身は恋愛には疎いほうで、女慣れしてるように思えるが、あまり恋愛経験はないのだそう。
コンプレックスをはね返すために、Twitterという手段を選んだニャンさん。どうすれば人気が出るかを考えて、著名なツイッタラーを分析し、初期の頃はブスをディスるツイートで人気を獲得したという。しかしフォロワー数が増えていくにつれ、ブスという言葉は減り、現在の爽やかで甘いつぶやき路線に転じていく。去年の8月頃から恋愛系ツイートに特化し、そこからわずか半年で、フォロワー数は30万人を超えた。
「どんな人でも人気が出てくると、どんどん当たり前のことしかつぶやかなくなるんですよ」とニャンさんは分析する。
「40万人に囲まれてたら、もう言いたいこととか言えないっスよ(笑)。人気が出るにつれて、アンチも増えます。いまではネタで『ブス』って言っただけで、批判がすごいですね。『お前の顔で言うな』とか、毎日リプやDMで『死ね』って言ってくるやつもいるし、昔の個人的なつぶやきとか掘り返されたこともあります。Twitterって基本匿名だから、アンチの勢いもすごい。怖い世界ですよね」
フォロワーが1万人を超えると、そのアカウントは「アルファツイッタラー」と呼ばれる人気ツイッタラーの仲間入りを果たす。しかしニャンさんが語るように、Twitter上で人気が出れば出るほど、過激なアンチも増加し、多くの人はそこでつぶやくことをやめてしまうか、当たり障りのないことしか発言できなくなるのだという。それでもニャンさんはつぶやくことをやめず、Twitterが常に中心にある生活を送っているようだ。
「呟かない日は作らないって決めてて、去年の12月ぐらいまで毎日10回はツイートしてました。見てくれてる人からの『いいね』が心の安定なんで、『いいね』が少ない投稿は恥ずかしくてこっそり消してます。『7,000いいね』じゃ物足りない。『1万いいね』超えれば安心って感じ」
なんだか常にTwitterを気にして、精神衛生上よくない気もするが……。ただ、Twitterを続けてよかったこともあるようだ。当初の目標だった「モテ」を達成できたのである。
「Twitterで有名になるだけで、周りの目はびっくりするくらい変わりました。僕自身は変わってないんだけど。わかりやすいくらいにモテるようになりました(笑)。モデルの女の子から連絡が来るなんて、少し前までは考えられないようなことが起きたり、ある程度の知名度がある人と対等な立場で友人になれる。Twitterやっててよかったーと思う瞬間です」
今後の目標を聞くと、なんと今夏に初の著書の発表を控えているそう。
「今は原稿を書くのが楽しいです。僕のツイートは、コンプレックスとか、自信のなさとか、成就しない片想いとか、そういう順風満帆じゃない自分自身がいたからこそ、つぶやける言葉だと思います。それでたくさんの人が応援してくれたり、共感してくれて、Twitterという誇れるものが1つできました。だから僕みたいなやつでも、頑張って努力したら、何か変わるって思ってもらえるような存在になれたらうれしいです。これから、ユーチューバーとかにも挑戦してみたいと思ってるんですけど、顔出しするとすぐに叩かれるんで、それが怖くてなかなかできません(笑)」
40万人のフォロワーを抱える、ツイッター界のプリンス。その正体は、良くも悪くも、普通の大学生という印象だ。こうした「普通」が加工されることなく発信され、それをなんの疑いもなく受け取っていくというのが、SNSが蔓延したいまの世の中なのかもしれない。それを「なんだかなー」と思うのか、「そんなもんだ」と流していくのかはそれぞれの自由だが、私の“ときめき”は、どこの誰に向けたものだったんだろうか……。
(藤野ゆり/清談社)