長澤まさみ月9『コンフィデンスマンJP』痛恨の9.4%発進! “面白くてもダメ”なフジテレビの末期度

  もう、面白いドラマを作ってもダメということなのか……。

 9日、長澤まさみが主演を務める月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の放送がスタートした。脚本に『リーガル・ハイ』シリーズ(同)などで知られる古沢良太氏を据え、万全を期してのスタートだったが、視聴率は9.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、1ケタに沈んだ。

 前期、月9史上最低の全話平均6.1%を記録した『海月姫』第1話の視聴率こそ0.8ポイント上回ったものの、2017年7月期の『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』から3期連続で1ケタスタートという厳しい結果になった。

「『コンフィデンスマンJP』にかけるフジの期待は、そうとう大きかった。局内は、この結果に真っ青になっていますよ。そもそもフジはこの枠で、『リーガル・ハイ』の第3期を目論んでいたようですが、堺雅人がブッキングできずに断念。それでも、長澤まさみと古沢さんを押さえたことで、『勝負ができる』と踏んだフジテレビは、結果次第では本作のシリーズ化も視野に入れていた。まだ第1話ですが、このまま低空飛行が続くようなら月9枠そのものが空中分解してしまうかもしれません」(制作会社関係者)

 フジテレビは昨年6月に、ドラマ畑出身で『踊る大捜査線』シリーズなどを生んだヒットメーカー・亀山千広氏から、営業や事務方を渡り歩いてきた宮内正喜氏に社長が交代。『みなさんのおかげでした』、『めちゃ×2イケてるッ!』といった長寿バラエティを打ち切り、報道を強化する路線に舵を切ったといわれる。ところがその矢先に、報道路線の象徴と位置付けていた『プライムニュース』でメーンキャスターを務める予定だった元NHKアナウンサーの登坂淳一氏にセクハラ疑惑が報じられ、急きょ降板するなどトラブルが相次ぎ、間もなく丸1年となる宮内政権も、まったく結果を残せていない。

 そんな中、起死回生となるべく始まった『コンフィデンスマンJP』だったわけだが……。

「今回の数字は、局内では、かなり深刻に捉えられているようです。というのも、放送前から主演の長澤さんより脚本の古沢さんを大きくアピールし、“ドラマ好き”の層に強く訴えかけてきたんです。『クオリティが高いですよ』『本物ですよ』と。実際、放送された内容は各方面で絶賛されているようで、満足度もかなり高かったはず。面白いドラマを作ってもダメだということになれば、現場はますます打つ手なしになってしまう。次回以降、数字が上がっていけばまた局面も変わるでしょうけれど、どうなるか」(同)

『リーガル・ハイ』よろしく、終わってみれば視聴率も「やり返す!」といきたいところか。

レスリング・栄和人監督だけじゃない!? 「パワハラ認定」で戦々恐々な“鬼監督”たち……次の標的は?

 女子レスリングで五輪4連覇の偉業を成し遂げた伊調馨がパワハラを受けていると告発があった件で、日本レスリング協会は6日、栄和人監督のパワハラがあったと認定。栄監督は強化本部長を辞任した。国民栄誉賞も受けた英雄がパワハラを受けていたとは大きな驚きだが、実際、スポーツ界ではパワハラまがいの指導を行う者は少なくない。高校バレーを取材した記者が語る。

「とりわけ女子に目立ちますが、高校の強豪校では、人格を完全に否定するような指導をする監督は、いくらでもいます。関東地方の某強豪高校の監督は、生徒を呼ぶ時は『テメー』『お前ら』が基本形。“熱血監督”としてテレビに取り上げられた時は、1人の生徒を徹底的に罵倒し、生徒が号泣しているシーンがなぜか美談として扱われていて、唖然とさせられました。都内の某強豪高校の監督は、不甲斐ない負け方をすると『歩いて帰れ!』が決まり文句でしたね。大きなバックを持ってテクテク歩く姿がスポーツ新聞に載ったこともありました」

 高校野球のPL学園高校やサッカーの国見高校なども猛練習で有名だが、パワハラ寸前の鬼監督が集まっているのは、なぜか女子ばかりだ。スポーツライターが明かす。

「有名なのは、シンクロナイズドスイミングの井村雅代監督でしょう。彼女はとにかく選手を追い込む指導法が特徴で、『寝る時と食べる時、トイレ以外はすべて練習』と言って憚らず、練習時間は1日12時間にも及びます。五輪でメダルを何個も取っており、実績は申し分ありませんが、合宿途中でリタイアしたり、メンバー招集を辞退した選手もおり、シンクロ界はデメリットにも目を向ける必要があるでしょう」

 また、ソフトボール女子日本代表を率いてシドニー・アテネ両五輪でメダルを獲得した宇津木妙子監督も、選手に猛練習を課すことで知られている。

「宇津木監督は、より“パワハラ度”が高かった。彼女の場合、練習中は私語厳禁で、内容の厳しさも半端ありませんでしたが、それに加えて体罰もありました。高校スポーツで体罰問題がトピックになった際、コメンテーターとして出演した番組で、体罰を肯定するようなコメントをして一般視聴者を呆れさせたのは記憶に新しいところです」

 さらに、現役の代表監督にも“鬼監督”として知られる人物がいる。

「女子バレーの中田久美監督でしょう。もともと日本代表として活躍した彼女の有名なエピソードといえば、2004年に出演した『すぽると!』(フジテレビ系)での『てめえらコノヤロー』事件です。これは、アテネ五輪出場を決めた全日本女子代表チームのメンバーが番組に出演した際、浮かれきった選手の態度に、一緒に出演していた中田がブチ切れたものです。中田はCMに入ったと思って怒鳴ったものの、音声がオンエアされてしまい、大変な話題になりました。中田は現在、全日本女子の監督ですが、目つきの鋭さで選手を存分に威嚇しています。東京五輪を前に、スポーツ界は暴力やそれに準ずるパワハラの根絶に必死です。法律的にはパワハラの時効は3年ですが、告発されれば無視することは難しいでしょう。今回の騒動をきっかけに、“告発ブーム”が起こっても不思議ではありません」

 栄監督も熱心な指導で有名だったが、熱血コーチが良しとされる時代は終わりに近づきつつあるようだ。

レスリング・栄和人監督だけじゃない!? 「パワハラ認定」で戦々恐々な“鬼監督”たち……次の標的は?

 女子レスリングで五輪4連覇の偉業を成し遂げた伊調馨がパワハラを受けていると告発があった件で、日本レスリング協会は6日、栄和人監督のパワハラがあったと認定。栄監督は強化本部長を辞任した。国民栄誉賞も受けた英雄がパワハラを受けていたとは大きな驚きだが、実際、スポーツ界ではパワハラまがいの指導を行う者は少なくない。高校バレーを取材した記者が語る。

「とりわけ女子に目立ちますが、高校の強豪校では、人格を完全に否定するような指導をする監督は、いくらでもいます。関東地方の某強豪高校の監督は、生徒を呼ぶ時は『テメー』『お前ら』が基本形。“熱血監督”としてテレビに取り上げられた時は、1人の生徒を徹底的に罵倒し、生徒が号泣しているシーンがなぜか美談として扱われていて、唖然とさせられました。都内の某強豪高校の監督は、不甲斐ない負け方をすると『歩いて帰れ!』が決まり文句でしたね。大きなバックを持ってテクテク歩く姿がスポーツ新聞に載ったこともありました」

 高校野球のPL学園高校やサッカーの国見高校なども猛練習で有名だが、パワハラ寸前の鬼監督が集まっているのは、なぜか女子ばかりだ。スポーツライターが明かす。

「有名なのは、シンクロナイズドスイミングの井村雅代監督でしょう。彼女はとにかく選手を追い込む指導法が特徴で、『寝る時と食べる時、トイレ以外はすべて練習』と言って憚らず、練習時間は1日12時間にも及びます。五輪でメダルを何個も取っており、実績は申し分ありませんが、合宿途中でリタイアしたり、メンバー招集を辞退した選手もおり、シンクロ界はデメリットにも目を向ける必要があるでしょう」

 また、ソフトボール女子日本代表を率いてシドニー・アテネ両五輪でメダルを獲得した宇津木妙子監督も、選手に猛練習を課すことで知られている。

「宇津木監督は、より“パワハラ度”が高かった。彼女の場合、練習中は私語厳禁で、内容の厳しさも半端ありませんでしたが、それに加えて体罰もありました。高校スポーツで体罰問題がトピックになった際、コメンテーターとして出演した番組で、体罰を肯定するようなコメントをして一般視聴者を呆れさせたのは記憶に新しいところです」

 さらに、現役の代表監督にも“鬼監督”として知られる人物がいる。

「女子バレーの中田久美監督でしょう。もともと日本代表として活躍した彼女の有名なエピソードといえば、2004年に出演した『すぽると!』(フジテレビ系)での『てめえらコノヤロー』事件です。これは、アテネ五輪出場を決めた全日本女子代表チームのメンバーが番組に出演した際、浮かれきった選手の態度に、一緒に出演していた中田がブチ切れたものです。中田はCMに入ったと思って怒鳴ったものの、音声がオンエアされてしまい、大変な話題になりました。中田は現在、全日本女子の監督ですが、目つきの鋭さで選手を存分に威嚇しています。東京五輪を前に、スポーツ界は暴力やそれに準ずるパワハラの根絶に必死です。法律的にはパワハラの時効は3年ですが、告発されれば無視することは難しいでしょう。今回の騒動をきっかけに、“告発ブーム”が起こっても不思議ではありません」

 栄監督も熱心な指導で有名だったが、熱血コーチが良しとされる時代は終わりに近づきつつあるようだ。

上戸彩がベッキーを“親友”から“友達”に格下げ!? 微妙な仲良しアピールに疑問の声

 4月9日に放送された『しゃべくり007 ウワサの美女2時間SP』(日本テレビ系)に上戸彩が出演。トーク中にベッキーの名前を出したことが物議を醸している。

 番組では上戸の私生活がミステリアスだという話題になり、MCの上田晋也が「仲が良いのってどなた?」と質問。すると上戸は基本的には地元・練馬の友達と遊んでいることが多いと明かすが、芸能界では「ベッキーは変わらずずっと。あと最近は蒼井優ちゃんとか、城田優とか、山P(山下智久)とかは高校の同級生だから、今でもご飯食べに行ったりすることが」と答えていた。

 この発言にネット上では「ベッキー不倫騒動の時は、全く彼女のことを語らなかったから付き合いを辞めたのかと思ってた」「ベッキー騒ぎが沈着してから言うのがあざとい」「ほとぼり冷めたらまたお友達ごっこ?」といった疑問の声があがっている。

「ベッキーが川谷絵音との不倫騒動によって大バッシングを浴びているとき、かねてから“親友”と言い合っていた上戸へ、ベッキーに関する質問が飛んでいました。しかし上戸は、16年9月に出席したイベントで『ベッキーさんに一言』と言われても無視。また、ベッキーも17年1月に放送された『モシモノふたり』(フジテレビ系)で、休業中に支えてくれたのは“親友の”ハリセンボン・近藤春菜だと紹介していたことが。そのため、上戸とベッキーはすっかり疎遠になったと思われていたようです」(同)

 一方で、17年3月に上戸&HIRO夫婦と城田優などが、ベッキーを呼んで飲み会をしていたと「女性セブン」(小学館)がスクープ。いまだに関わりがあることを匂わせていた。

「とはいえ、上戸とベッキーの距離が遠くなっているのは間違いないでしょう。上戸はHIROと付き合う前からベッキーに相談をしていたそうで、ベッキーは2人の関係を“全部知っています”と明かしていたことがあります。さらにベッキーはTwitterで上戸について『おやすみの日も作品に時間を費やす姿を知っている』とツイートするなど、とにかく仲の良さをアピール。それなのに、上戸は今回の『しゃべくり007』では地元の友達と遊ぶことを強調し、ベッキーを“親友”から“友達”に格下げしていましたからね」(同)

 果たして2人の友情はどうなっているのだろうか。テレビでの共演に期待したい。

上戸彩がベッキーを“親友”から“友達”に格下げ!? 微妙な仲良しアピールに疑問の声

 4月9日に放送された『しゃべくり007 ウワサの美女2時間SP』(日本テレビ系)に上戸彩が出演。トーク中にベッキーの名前を出したことが物議を醸している。

 番組では上戸の私生活がミステリアスだという話題になり、MCの上田晋也が「仲が良いのってどなた?」と質問。すると上戸は基本的には地元・練馬の友達と遊んでいることが多いと明かすが、芸能界では「ベッキーは変わらずずっと。あと最近は蒼井優ちゃんとか、城田優とか、山P(山下智久)とかは高校の同級生だから、今でもご飯食べに行ったりすることが」と答えていた。

 この発言にネット上では「ベッキー不倫騒動の時は、全く彼女のことを語らなかったから付き合いを辞めたのかと思ってた」「ベッキー騒ぎが沈着してから言うのがあざとい」「ほとぼり冷めたらまたお友達ごっこ?」といった疑問の声があがっている。

「ベッキーが川谷絵音との不倫騒動によって大バッシングを浴びているとき、かねてから“親友”と言い合っていた上戸へ、ベッキーに関する質問が飛んでいました。しかし上戸は、16年9月に出席したイベントで『ベッキーさんに一言』と言われても無視。また、ベッキーも17年1月に放送された『モシモノふたり』(フジテレビ系)で、休業中に支えてくれたのは“親友の”ハリセンボン・近藤春菜だと紹介していたことが。そのため、上戸とベッキーはすっかり疎遠になったと思われていたようです」(同)

 一方で、17年3月に上戸&HIRO夫婦と城田優などが、ベッキーを呼んで飲み会をしていたと「女性セブン」(小学館)がスクープ。いまだに関わりがあることを匂わせていた。

「とはいえ、上戸とベッキーの距離が遠くなっているのは間違いないでしょう。上戸はHIROと付き合う前からベッキーに相談をしていたそうで、ベッキーは2人の関係を“全部知っています”と明かしていたことがあります。さらにベッキーはTwitterで上戸について『おやすみの日も作品に時間を費やす姿を知っている』とツイートするなど、とにかく仲の良さをアピール。それなのに、上戸は今回の『しゃべくり007』では地元の友達と遊ぶことを強調し、ベッキーを“親友”から“友達”に格下げしていましたからね」(同)

 果たして2人の友情はどうなっているのだろうか。テレビでの共演に期待したい。

『さんまのお笑い向上委員会』でザブングル・加藤とコロチキ・ナダルが見せた「虚構でしか描けない真実」

 尼神インターの渚は、『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)のことを「でっかい大会」と称し、銀シャリの橋本直は「スケジュール見て『でっかい大会入った』って言ってます」と告白する。(ともに3月17日放送分)

 もちろん、あくまでギャグとして放たれた一言だが、芸人にとって、それくらい無駄にプレッシャーの掛かる番組であることは間違いない。

 爪痕を残そうと奮闘する者、空回りから脱出できず震えが止まらなくなる者、怖気づいたがゆえ、波風立てず無傷であろうとする者。

 明石家さんまが好むのは、当然“爪痕を残そうと奮闘する者”である。「俺らがなんとかフォローしたるさかい!」「空回りしたって笑いになったらええやないか!」、場所を提供する向上長の懐は意外に深いが、そこには「自己責任」の4文字も付いて回る。だからこそ、芸人からは感情の揺れ動きがあからさまに透けて見える。あのスタジオで起こる出来事は、バラエティであり、もはやドキュメンタリーでもある。

 

■見せ場をナダルに横取りされた加藤が立ちすくむ

 

 面白い流れが発生すると夢中になり、バランスの喪失も厭わなくなるさんまの司会術。ひな壇トークはチームプレイだとよく言われるが、前に出ようとする芸人が複数存在すると、途端にチームワークは破綻する。

 同番組の4月7日放送分がすごかった。ケガを恐れ、置きに行く芸人も少なくない中、異常なモチベーションで前に出ていくのはザブングルの加藤歩とコロコロチキチキペッパーズのナダルだ。

 この日、ゲストとして出演した加藤は意気込んでいた。「芸人は芸一筋であるべき!」と主張し、「いろんな特技がある奴は芸人辞めてしまえ!」というクレームを用意して、アート界で活躍する野性爆弾のくっきーや、コメンテーターでもあるカンニング竹山を攻撃するのだ。

 すると、ナダルが「僕も特技ないんです」と、話の流れに割り込み始める。彼は基本的に、チームワーク無視だ。流れを止めておいて、なのに「手押し相撲が特技です」と中途半端なことを言い、不思議な形で流れを着地させてしまった。まさに、インターセプト! すっかり、話の主役は加藤からナダルへと移ってしまう。立ちすくむ加藤は、黙っていられない。

「ナダル! お前、やってくれたなあ。僕もいろいろあったんですよ。いつ言おうかなと思ったら、こいつがやってくれましたわ!」

 見せ場を奪われた加藤とナダルの対立構造が、見事にできあがった。

■本気のネタを見せ、本気で心が折れたナダルに、本気で心配する加藤

 

 ゆりやんレトリィバァは、世界進出を狙っているらしい。番組はチャド・マレーンを呼び、各芸人の“世界に寄せたネタ”を披露させる。

 もちろん、爪痕を残したい加藤とナダルも名乗りを上げた。まずは、ナダルの出番。想像の架空の友だちを紹介するというネタを、チャドの前で行ったのだ。

「チャドさん、紹介します。鹿児島から来た青森君です。2人目は、世界の山ちゃんで働いてる松ちゃんです。3人目は、のっぽ王国から来てくれたチビです」

 いつまで経っても笑いは起きない。次第に、ナダルの表情は引きつり始める。今度は、加藤が割り込んだ。

加藤 なんやねん、今の。スベる前提でやってるやんけ。

ナダル そんなことない、あと5人やったらメチャメチャ爆笑になっとたんや!

加藤 本気のやつやってくれよ!

ナダル わかった、わかった。……座っとってくださいよっ!!

 爪痕を残したいナダルはネタを続行する。

「デジタル帝国から来た手作業です。大自然王国から来たメトロポリスです。……(ふてくされた表情で)おもろいやろ」

 勝手に舞台を降りようとするナダルに、加藤が近付いて行った。

「待てよ。ちょっ、マジで。なんや、芸人辞めるんか?」

 この日一番の爆笑は、ここだ。手練の芸人らの笑い声がスタジオにこだまする。真剣にネタをやり、ガチで心の折れたナダルに、ドンピシャの言葉をかける加藤。心象風景が痛いほどわかる芸人らは、うれしくて仕方がない。身に覚えがあるし、シンパシーを感じるし、バラエティ番組に不相応なガチ展開との温度差に笑いを禁じ得ない。

 ナダルに続いて加藤もネタを披露したが、彼もスベってしまっている。涙を流す加藤と、うなだれるナダルに、さんまは「まだやれるって、明日があんねんから! やまない雨はないもんな!」と言葉を掛けた。芸人の悲哀を見せた2人に、酸いも甘いも知り尽くした大御所が掛けるねぎらいの言葉。素晴らしい大団円だ。

 社会生活を送る上で、人間は生身の感情を出すことに抵抗を感じている。空気を読み、大人の態度を貫いてカモフラージュしがちだ。

「虚構の中でしか描けない真実」というものは、絶対にある。芸人が流れの中で道化を演じ、笑いを起こすために生身をさらけ出すことも厭わない。そこで浮かび上がるのは、人間としての“本気”だ。

 この日の『さんまのお笑い向上委員会』は、「虚構の中でしか描けない真実」を確実にあぶり出していた。日常生活では滅多に目撃できない真実が見れたからこそ、笑いは発生した。すごいものを見たからこそ起こる種類の笑い。

 勇気を持ってまな板の上の鯉になった加藤とナダルにも、拍手を贈りたい。
(文=寺西ジャジューカ)

『さんまのお笑い向上委員会』でザブングル・加藤とコロチキ・ナダルが見せた「虚構でしか描けない真実」

 尼神インターの渚は、『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)のことを「でっかい大会」と称し、銀シャリの橋本直は「スケジュール見て『でっかい大会入った』って言ってます」と告白する。(ともに3月17日放送分)

 もちろん、あくまでギャグとして放たれた一言だが、芸人にとって、それくらい無駄にプレッシャーの掛かる番組であることは間違いない。

 爪痕を残そうと奮闘する者、空回りから脱出できず震えが止まらなくなる者、怖気づいたがゆえ、波風立てず無傷であろうとする者。

 明石家さんまが好むのは、当然“爪痕を残そうと奮闘する者”である。「俺らがなんとかフォローしたるさかい!」「空回りしたって笑いになったらええやないか!」、場所を提供する向上長の懐は意外に深いが、そこには「自己責任」の4文字も付いて回る。だからこそ、芸人からは感情の揺れ動きがあからさまに透けて見える。あのスタジオで起こる出来事は、バラエティであり、もはやドキュメンタリーでもある。

 

■見せ場をナダルに横取りされた加藤が立ちすくむ

 

 面白い流れが発生すると夢中になり、バランスの喪失も厭わなくなるさんまの司会術。ひな壇トークはチームプレイだとよく言われるが、前に出ようとする芸人が複数存在すると、途端にチームワークは破綻する。

 同番組の4月7日放送分がすごかった。ケガを恐れ、置きに行く芸人も少なくない中、異常なモチベーションで前に出ていくのはザブングルの加藤歩とコロコロチキチキペッパーズのナダルだ。

 この日、ゲストとして出演した加藤は意気込んでいた。「芸人は芸一筋であるべき!」と主張し、「いろんな特技がある奴は芸人辞めてしまえ!」というクレームを用意して、アート界で活躍する野性爆弾のくっきーや、コメンテーターでもあるカンニング竹山を攻撃するのだ。

 すると、ナダルが「僕も特技ないんです」と、話の流れに割り込み始める。彼は基本的に、チームワーク無視だ。流れを止めておいて、なのに「手押し相撲が特技です」と中途半端なことを言い、不思議な形で流れを着地させてしまった。まさに、インターセプト! すっかり、話の主役は加藤からナダルへと移ってしまう。立ちすくむ加藤は、黙っていられない。

「ナダル! お前、やってくれたなあ。僕もいろいろあったんですよ。いつ言おうかなと思ったら、こいつがやってくれましたわ!」

 見せ場を奪われた加藤とナダルの対立構造が、見事にできあがった。

■本気のネタを見せ、本気で心が折れたナダルに、本気で心配する加藤

 

 ゆりやんレトリィバァは、世界進出を狙っているらしい。番組はチャド・マレーンを呼び、各芸人の“世界に寄せたネタ”を披露させる。

 もちろん、爪痕を残したい加藤とナダルも名乗りを上げた。まずは、ナダルの出番。想像の架空の友だちを紹介するというネタを、チャドの前で行ったのだ。

「チャドさん、紹介します。鹿児島から来た青森君です。2人目は、世界の山ちゃんで働いてる松ちゃんです。3人目は、のっぽ王国から来てくれたチビです」

 いつまで経っても笑いは起きない。次第に、ナダルの表情は引きつり始める。今度は、加藤が割り込んだ。

加藤 なんやねん、今の。スベる前提でやってるやんけ。

ナダル そんなことない、あと5人やったらメチャメチャ爆笑になっとたんや!

加藤 本気のやつやってくれよ!

ナダル わかった、わかった。……座っとってくださいよっ!!

 爪痕を残したいナダルはネタを続行する。

「デジタル帝国から来た手作業です。大自然王国から来たメトロポリスです。……(ふてくされた表情で)おもろいやろ」

 勝手に舞台を降りようとするナダルに、加藤が近付いて行った。

「待てよ。ちょっ、マジで。なんや、芸人辞めるんか?」

 この日一番の爆笑は、ここだ。手練の芸人らの笑い声がスタジオにこだまする。真剣にネタをやり、ガチで心の折れたナダルに、ドンピシャの言葉をかける加藤。心象風景が痛いほどわかる芸人らは、うれしくて仕方がない。身に覚えがあるし、シンパシーを感じるし、バラエティ番組に不相応なガチ展開との温度差に笑いを禁じ得ない。

 ナダルに続いて加藤もネタを披露したが、彼もスベってしまっている。涙を流す加藤と、うなだれるナダルに、さんまは「まだやれるって、明日があんねんから! やまない雨はないもんな!」と言葉を掛けた。芸人の悲哀を見せた2人に、酸いも甘いも知り尽くした大御所が掛けるねぎらいの言葉。素晴らしい大団円だ。

 社会生活を送る上で、人間は生身の感情を出すことに抵抗を感じている。空気を読み、大人の態度を貫いてカモフラージュしがちだ。

「虚構の中でしか描けない真実」というものは、絶対にある。芸人が流れの中で道化を演じ、笑いを起こすために生身をさらけ出すことも厭わない。そこで浮かび上がるのは、人間としての“本気”だ。

 この日の『さんまのお笑い向上委員会』は、「虚構の中でしか描けない真実」を確実にあぶり出していた。日常生活では滅多に目撃できない真実が見れたからこそ、笑いは発生した。すごいものを見たからこそ起こる種類の笑い。

 勇気を持ってまな板の上の鯉になった加藤とナダルにも、拍手を贈りたい。
(文=寺西ジャジューカ)

【モンペと呼ばないで!】バレエ教室で「娘だけ裸足練習」……これは指導なの、虐待なの?

保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。

 新たなスタートの時期となる4月に、子どもの習い事デビューをさせるママは多い。少子化と叫ばれて久しいが、保育園の待機児童問題と同様に、人気の習い事に子どもたちが集中し、中にはキャンセル待ちとなるところもあるという。特に都心部では、治安や近隣への騒音問題により、公園遊びも気軽にできない風潮があるため、園庭を持たない保育所に通っている園児たちのママは、「運動させよう」と、体操教室や水泳教室に子どもを通わせるようになるのだ。都内で4歳になる男児を育てている30代の朱莉さん(仮名)は、3歳になったのをきっかけに、息子を水泳教室に通わせるようになった。

「実は、水泳教室の定員に空きがなく、半年キャンセル待ちをして通えるようになりました」

 朱莉さんは、息子が通う予定の小学校では、水泳の授業が“泳げる子”と“泳げない子”に分けて行われるというウワサを聞いたそうだ。通っている保育園にはプールがないので、「夏場は水浴びしかできないんです。このまま泳げないで小学校に通うようになると、いじめられるのではないかと心配になり、入会しました」。

 こうして念願の水泳教室に子どもを入れた朱莉さん。しかし、ママ友トラブルの“火種”を目撃し、頭を悩ませるようになったという。

「うちは3歳から習い始めたのですが、中には赤ちゃんの頃から親子スイミングに通っている子もいます。水泳教室の見学室は、そういった長期間通っているママさんがスペースを陣取っている状況なんです。ジムの人から『終わった人は早く退散してください』と言われても、お菓子を広げた状態で、平気な顔で座っているママさんグループもいます」

 土曜クラスの時には、午前と午後の幼児クラスのママたちで見学室が満杯になるという。彼女は一度、水泳教室に「妊娠中のママさんが座れないで立っていたことがある」とクレームを入れたものの、「いろいろな方がいるので難しいですが、改善します」という一言だけ。保育園や幼稚園とは違い、習い事教室にとって、生徒とその保護者は、 完全に“お客様”である。そのため施設のスタッフも、マナー違反のママたちに強く言えない面があるのかもしれない。

 習い事をめぐって、ママたちが不満を爆発させるケースは後を絶たない。小4の女児を持つ専業主婦の真央さん(仮名)は、乳児の頃から娘を水泳教室に通わせている。

「専業主婦だったため、幼稚園に入園する前から親子スイミングに通い始めました。子どもが小学校の高学年になると、親は送迎だけ同行して、見学室に残らないで帰る人も多いですが、私は心配なのでレッスンを見ています」

 真央さんの娘は、タイムは遅いものの、クロールを得意の泳法といえるレベルまでマスターしていたという。しかし、定期的に行われる進級テストで、娘だけが不合格に。見学室からその様子を覗いていた真央さんは、納得がいかなかったそうだ。

「うちの子は、ほかの子よりは遅いですが、泳げていたんです。なのに、同じクラスの子たちが合格して、娘だけが不合格。娘に聞いても、不合格になった理由がわからず、受付を通じてコーチに抗議しました。理由も言わないで不合格にするなんて、明らかにわざとだとしか思えないです」

 この進級テストは、3カ月で1級上がることを目安に作られているという。次のテストでは合格できたらしいが、クロール以外の泳法で不合格となったという。

「そもそも、1クラスに生徒が15人ほどいるので、詳しく教える時間が足りないと思うんです。 合格基準を水泳教室の担当者に聞いたら、『練習が足りないのならクラスを増やしてください』と冷たくあしらわれました」

 習い事でのトラブルは、“辞める”という手段が選べるため、長期化しない傾向がある。もしかしたら、水泳教室内のママたちの入れ替わりは、思いのほか早いのかもしれない。

 女児のママに人気の習い事といえば、情操教育であるピアノやダンスなど。中でも、クラシックバレエは姿勢が良くなり、礼儀正しくなるというプラスのイメージが強い。4歳の女児のママである香織さん(仮名)は、俗に“習い事解禁”といわれる3歳になると、バレエ教室を探し始めた。

「私自身がバレエに興味があったものの習えずじまいだったので、子どもにはぜひって思っていたんです。いくつか教室を見学し、近所にある個人の先生が教えているところに決めました」

 教室見学をした時に、20年以上の歴史ある教室だという説明を聞き、娘を通わせる決心をした香織さん。この教室は、親には練習風景を一切見せないという方針だった。

「娘はまだ1人で着替えたりするのができないので、レッスンのはじめと終わりは教室について行っていました。レッスン中の飲み物は水だけという説明があったのですが、水が苦手な娘には、ジュースの入った水筒を持たせていたんです。なのに、レッスンが終わると、ものすごい勢いで私が持参した飲み物を飲んだりするので、おかしいなと思って娘に聞いてみると、休憩中の飲み物が水しか飲むことが許されなかったため、ずっと飲まずに過ごしていたみたいで……」

 このことがきっかけで、香織さんは教室に猛抗議した。

「子どもが脱水すると、命に関わるじゃないですか。それに、足の裏が汚れているのに、バレエシューズが綺麗なのも気になったので聞いてみると、『足の感覚をつかむため』という理由で、うちの子だけ裸足で踊らされていたみたいなんです。『スタジオの床は冷たいのに、裸足でいさせるって虐待だ』と言いました」

 こうしたトラブルにより、バレエ教室のママたちから浮いてしまったという香織さん。

「バレエ教室では先生が絶対なので、『これくらい当たり前だよ』と言われました。みんな2年に一度開催される発表会で、子どもに良い役をもらいたいらしく、言いづらいようです」

 結局、教室を辞めることを決意したが、前もって納入していたレンタルスタジオの代金や、発表会のための積立金は返してもらえなかったという。

「『そういう契約です』の一点張りでした。最近、生徒が少なくなっているのもあって、1人当たりの設備費などの負担が大きくなっているようです。私みたいな被害者が出ないように、ネットのお稽古事サイトには、口コミを投稿しました」

 天才児と呼ばれる子どもの育成には、習い事をはじめとする早期教育が必要と考える親が多い。その投資には、『これだけ支払ったのだから、言う権利はある』という本心が見え隠れしているようだ。
(池守りぜね)

「取り返しのつかないオナニーをしている」死を見て興奮する“わたし”の苦しさとは

 

 23歳、処女。「泣くまでボコボコにされた」ことで芽生えた初恋――。自身の“被虐趣味”という性癖と、その根底にある“性自認の不一致”を描いたコミックエッセイ「実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。」(新潮社)。

 その著者・ペス山ポピーさんに、自身の“性別への違和感”について伺うと、おのずと浮き彫りになるのは、“女”という性を破壊したい衝動と、それに伴う特殊な性癖について。「殴られて性的興奮を覚える」著者がとった行動とは、どんなものだったのか。前編に続き、話を伺った。

(前編はこちら:「ペニバンを着けたら、自分になれた」――女という性を壊したかった「私」の衝動とは?

――オナニーを覚えたのは、いつですか?

ペス山ポピー(以下、ペス山) だいぶ早くて、それが“オナニーである”と気づいたのは中1くらいでした。オカズにしていたのは、自分が某ゲームの主人公にぼこぼこにされる妄想です。3~4歳頃からネタにしていたけど、はっきりと「わたし、ヤバくない?」と自覚したのも、中1くらいです。それまでは、「自分が殴られているところを想像すると、股間のあたりがムズムズするなあ」くらいの認識でしたが、はっきりと「オナネタだ」と認識した瞬間、「わたし、ヤバイ人じゃん」と。

――ヤバイと思っても、自制できるものではないですもんね。

ペス山 まったく止められなかったですね。

 オカズは、イケメンにただ殴られ蹴られ締められる妄想か、イケメン出演率の高い暴力系ゲイAV。ときには地上波のボクシング生放送を目にしてしまい、「地上波で無修正セックス生中継!!」と股間が反応してしまったことも。そこに愛やセックスは、とことん無用だった。

――妄想やオカズに、女性は登場しなかったんでしょうか。

ペス山 そうですね。妄想の中に女性が入ってくると、なぜか違和感があるんですよ。でも、レズっ気もあって。もしかしてバイセクシャルなのかもしれません。女性のストッキングの脚も、じーっと見ちゃったりするんです。恋愛対象ではないけど、性的対象ではあるというか。

――女性の脚のフェチAVは、M男の性癖にマッチしがちですが、ペス山さんはオカズにしますか?

ペス山 持ってます! ヌケちゃうんですよね! 暴力系ゲイAVの方が、7:3くらいで好きなんですけど。これはものすごく失礼な言い方ですが、暴力AVは“高級フレンチ”で、女性のフェチAVは“ファストフード”といいますか……。てっとり早くヌキたいときは女性モノというか……ああ、ごめんなさい! 心の底から興奮したいときは暴力AVを見て、「今日は良かったなあ」と終え、女性の方は「終わった終わった! すっきり! さあ寝よう!」という感じでしょうか。

 ペス山さんが主食にする“暴力AV”だが、性欲が掻き立てられる一方で、「暴力に心を痛めるし大嫌い なのに股間だけがいうことをきかない」と、健全な倫理観が自分の首を締めた。幼少期から「自分がものすごく気持ち悪い」と、幾度となく自己嫌悪に陥った。あげく、祖母からの「(結婚や恋愛をしないと)人として生まれた意味がない」との言葉が、さらに自罰傾向を加速させた。孤独感がペス山さんの足に、いくつもの囚人鉄球をつけた。

――暴力モノのAVで性的興奮することに関しての、「自分の倫理観と股間で葛藤する」という描写が印象的でした。ポップに描かれていますが、実際はとても苦しんだのではと思います。

ペス山 正直、今でも苦しいですね。だいぶ笑えないAVで興奮するんですよ。引かれると思いますが、ザリガニを踏んだりするフェチモノAVもありまして。グロテスクで可哀相で吐きそうになるのに、興奮してしまったことがあります。「わたしは、取り返しのつかないオナニーをしている」と、生きていてはいけない気持ちになりました。実は、『くらげバンチ』に掲載している作品バナーや、わたしのTwitterアイコンにザリガニがいるのは、それなんです。「わたしの興奮の裏には、必ず犠牲がある。あのザリガニを忘れまい」と、心に刻もうと思ったんです。今後、作品を発表していく上で、その感覚を麻痺させたくないというか。

――そうしたAVには、どうやってたどり着くんですか?

ペス山 そういったジャンルは“クラッシュ系”と呼ばれていて、たいていピンヒールを履いた女性が何かを踏んで壊したりするんです。わたしはたまたま、とあるAVサイトに貼ってあったスニーカーの画像のリンクをポチったら、「あっ! こ、これは……!」と。

――ザリガニなど、小さな生き物を潰して興奮することについて、性癖に理解のない人が聞けば、「酒鬼薔薇聖斗」を連想するかもしれません。

ペス山 実は、『絶歌』(太田出版)を読んで、他人事と思えない部分もあったんです。私がサディストだったら、こっち側だったかもしれない、と思ってしまって……。もちろん酒鬼薔薇の場合、反社会的な人格や、先天的なものや環境的なものも大きく作用していると思いますが、わたしは“ザリガニの死”で興奮できてしまうし、「まったく他人事というわけではない」と思いながら読みました。

――自分もそっち側に転んでしまうかもしれない、と。

ペス山 そういう怖さが、すごくありました。そんな性癖と付き合わなきゃいけないことや、漫画家としてなかなかネームが通らないこと、漫画のアシスタント先でセクハラにあったりで、急激に太ったり痩せたりを繰り返して、精神のバランスを崩し始めたのが、20歳の頃です。

――具体的に、どんな状況だったのでしょうか。

ペス山 漫画を読んでも面白くなくなり、当然描いても面白くないから描けるわけがないし、毎晩涙が出てくるようになりました。そうした症状を鬱病経験者の友人に相談すると、「それは鬱の症状かもしれない。そういうときは、あがかずにじっとしていろ」と言われ、毎晩泣いてじっとする日々が続きました。そうやって、だいぶ沈みきったところで、「もういいや!」と思ったんですね。「殴られよう! 人生、捨てよう!」って。もう人生最後だと思って、妄想は妄想のままにしておかず、体現して楽しんでみるのもいいか、と思ったんです。

 “牢獄”のような孤独さを、オナニーでやり過ごす日々に限界が来たペス山さんは、「あたいだって性生活 楽しみたい」と壁を突き破る。解き放たれるかのように、“倫理VS股間”で、股間が勝者となったのだ。「わたしはボコられたいんだ」という自分の欲望と向き合うべくペス山さんが選んだ手段は、変態が集う出会い系掲示板への投稿だった。「暴力系プレイのパートナーを探しています」と書き込んだ。完全に開き直ったのだ。

ペス山 何人かとチャットでやりとりしたあと、最初に通話したのは、自称・医者の男性でした。すごく色っぽい声で、「殴られると、興奮するの……?」って。エロい声だから、こりゃあいいと思って「殴ってくれるんですか!?」と言うと、「いや……僕はそういうんじゃない……」と言われてしまって。「殴ってくれないなら媚びる必要はない!」と思い、ドライに対応したものの、その男性はいろいろな知識を与えてくれました。「君の理想とするプレイは危険だね。それで病院にかかる人もいる。まず、肝臓、膵臓、脇腹を殴られるのはやめなさい。セーフワードも決めなさい」

――理想のプレイというのは、とにかくボコボコにされたい、というものですか?

ペス山 ボッコボコですね。それまでフィクションを見てきて、血を吐くまで殴られるので興奮していましたが、実際に血を吐くまでとなると、そりゃあヤバイですよね。

――そうして最初に出会ったのが、ボクシング経験者の、声がフリーザのような、通称”フリーザ様”だったんですよね。実践し、理想通りいきましたか?

ペス山 いえ。やっぱりそうはいかないです。それから4~5人と出会いましたが、難しかったですね。

――相手は、”殴る“=SMの前戯的な段階だけど、ペス山さんにとっての“殴る”はそうではない、と。というか、ペス山さんの性癖はSMなんですか?

ペス山 それが、わからないんですよね。SMには同好のコミュニティと、楽しむための“哲学”があるでしょうし、そういう場所に“所属”したら「自分の性癖はこうであるべき」と決められそうで、自分から距離を置いてしまっています。だから、SM界隈の人が、わたしの行為をSMだと思うのかはわかりませんが、わたしは自分をマゾヒストだと思うし、わたしが選ぶ相手はサディストだと思うから、「SMでいいんじゃないか」と思っています。

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 殴られたいが、服を脱ぐことと、体に触れられることは徹底的に拒絶した。なぜか。作中で、ペス山さんは「自分の肉体を、女性として扱われる違和感」があり、「嫌で仕方がない受け入れられない肉体を 暴力で壊す」ために、殴られたいのかもしれないと、自己分析している。

――出会い系で会った相手には、よくイラマチオを要求されていたと描かれていましたね。
ペス山 正直、めんどうだし痛いし吐いてしまうし、「なんでこんなことをしなきゃいけないんだろう」という気持ちもありました。むしろ、わたしに生えていたらしゃぶってほしいわ! と。

――女性として扱われるのは苦痛だけど、フェラチオは受け入れられるんですか?

ペス山 手や口に、性別は関係ないじゃないですか。自分の体に触られなければ。それに、わたしが服を着ているというのが重要で、自分の“女性”の肉体から逃げるために、いつもぶかぶかの服を着て、彼らと出会っていました。

――イラマチオも、苦痛を与えるプレイのひとつです。殴られる時のような興奮は得られないのでしょうか。

ペス山 そうでもないですね。そもそも、「イラマチオをしてくれ」と言う男性の殴り方は甘くて、相手はもう殴り終え、「さあヌイてくれ」状態でも、わたしは「まだまだ殴られ足りない!」状態だから、齟齬が生まれてしまう。これは仕方がないことだと思いますけれど。

――とても初歩的な質問ですが、殴られる=濡れる、ではないんですよね?

ペス山 違いますね。痛くて泣けてきて悲痛な気持ちになると、そこではじめて興奮できるんですが、泣くと心配されてしまう。「いや、違うんだよ! もっと来いよ! ここからなんだから!」と、もどかしかったです。でも、“彼”はそこをやすやすと超えてきたんですよ。最高でした。天才ですよ。本当に死ぬかと思いました。

「彼」とは、ペス山さんが“恋”に落ちた相手。第1話冒頭と、第10話以降登場する「彼」と出会ったのは、いつもの掲示板だった。美しい容姿に可愛らしい雰囲気。「この子が本当に殴れるのか」と不安になった。

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ペス山 それまで、何人もの男性とプレイしてきて辟易していたので、期待はしないようにしていました。いやあ、舐めてました。最初の一撃で、「ちょ! まって!」とか言ってしまいましたもん。そうすると、「待ってじゃねえよ」と、また一撃。すべて容赦しないんです。特に膝蹴りはキツかったです。糸が切れたように、地面に吸い込まれるように倒れこみました。そんなふうに殴られている間、「ああ、これって“好き”ってやつだなあ」と、自分が恋に落ちたことを実感しました。

 2時間のプレイを終えると、2人の距離は縮まり、まるでピロートークのように事後の余韻に浸った。そして「ハグ、しない?」と持ちかけるペス山さん。彼は抱きしめ、言った。「会えてよかった」

――女性でも男性でもない、“ペス山さん”自身が受け入れられたのだということが、読者であるこちらにも伝わってきました。

ペス山 このとき、抱きしめられながら大泣きしました。「うわあ――――! 今までつらかったああああ!」と。わたしは妄想の中で自分のことを、男でも女でもない、某ゲームのモンスターとして登場させているんですが、そんな“私”をそのまま「受け入れられた」気持ちで胸がいっぱいだった。そこが嬉しかったんです。

――彼と出会って以来、性癖や性自認に変化はありましたか?

ペス山 ストライクゾーンが広がりました! 以前はBLの普通のセックス描写に興味はありませんでしたが、「セックスもいいじゃん」と読めるようになったり。すごい進歩です!

――ややこしい事情を抱え、常に死を意識していた中で、「受け入れられた」と思えたことで、自身に希望が持てるようになったのでしょうか。

ペス山 そうですね。「生きていてはいけない」とまで思ったこの性癖は変わりませんが、ゾーンが広がったことで、「生きていちゃいけない、なんてことはないな」と思えるようになったのは大きいですね。私は友人に恵まれたこともあって、いろいろな面で救われたけど、ひとりでは這い上がれなかった。そういったこともひっくるめて、“奇跡”だったと思います。

(文=有山千春)

ペス山ポピー(ぺすやま・ぽぴー)
新潮社のWEBマンガサイト『くらげバンチ』にて
本作『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』を連載中。

草むらで男女が会ったら即退学!? 中国学生の恋愛事情が厳しすぎ!

 中国で「早恋(ザオリエン)」という言葉が流行語となっている。主に学生同士の恋愛を指すこの言葉だが、多くの場合は否定的に使用される。中学校や高校でも、いまだ校則で恋愛禁止を定めているケースが多いが、遼寧省瀋陽市の学校で、あまりにも時代錯誤な校則が発表され、話題となっている。

「網易新聞」(4月5日付)によると、瀋陽市にある瀋陽師範大学付属中高一貫校で今月2日、《学校内における恋愛行為の処罰について》と、題された通知書が学生に配布され、学生と保護者に同意のサインを求める一幕があったという。学校側が配布した通知書には次のような内容が記載されていた。

「校内の学習環境を清らかに保つため、理性的に異性と接しましょう。次の行為を恋愛行為とし、違反者は保護者への報告及び警告が重なった場合は退学となります」

1.校内で異性同士でプレゼントの贈り合い
2.校内の無人の教室、草むら、木の下などで男女が2人で会うこと
3.校内の校庭や廊下などを男女が一緒に肩を並べ歩くこと
4.校内(教室内)で男女が手をつないだり、肩を抱き寄せること、抱き合うこと、接吻など身体の接触があること
5.男女が手紙、メール、SNSなどを使い恋愛に関する話をすること

 こうした通知書に当然、学生や保護者の間からは「厳しすぎる」という声がある一方、「学校に恋愛は不要」という賛同の声もあり、ちょっとした議論となっている。

 メディアで今回の件が大きく報じられると、学校側もメディアの取材に応え、「学生の男女間交流については、これまでも何度も学生には説明している。学校は教育の場であり公共の場でもある。学校に男女交際や恋愛感情は必要ないことを、子どもと保護者に伝えているだけだ」と、自らの立場を説明している。

 中国では、今回の学校同様に、男女交際を厳しく制限するケースが珍しくない。河南省のある高校では、男女が2人だけで会うことを禁じ、男女が集まる際は明るい場所で5人以上でなくてはならないとする校則があるという。また、陝西省神木市の中学では学生同士の恋愛を禁じるため、食堂を男女でエリア分けしている。

 しかし、ここまで厳しく男女の接触を取り締まることでフラストレーションがたまりすぎ、性衝動に任せて暴れだしそうな気もしてしまうが……。
(文=青山大樹)