羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「本人たちは絶対に自分の不注意だってわかってるから。。なんでも運営運営っていうのは違うんですよねえ。。」HKT48・指原莉乃
(公式Twitter、4月2日)
昨年の『今夜解禁!ザ・因縁』(TBS系)で、タレント・ダレノガレ明美が、「野球関連の仕事を、稲村亜美に持っていかれた」と訴えていた。ダレノガレは元ソフトボール部で“野球”を芸能活動のウリとしていたが、野球選手と事実無根の熱愛記事が出たことで、「野球選手目当てのオンナ」とみなされ、仕事が激減したそうだ。代わりにグラビアアイドルの稲村亜美に仕事が流れたため、ダレノガレは稲村を恨んでいるという。
はっきり言って、ダレノガレの“言いがかり”だったが、ここでわかるのは「仕事を取るのは、戦い」ということである。芸能界のような人気商売は、実績がある人にオファーが集中する仕組みになっていることから考えると、「他人に1つも仕事をやりたくない」というのが芸能人の本音であり、そういった風潮が、仕事をくれる人、権力を持つ人の言いなりになる構造につながっていく。
その稲村が、先月、日本リトルシニア中学硬式野球協会関東連盟の始球式に参加した。堂々たるピッチングを披露した後に、事件が起きた。稲村を取り囲んでいた中学生たちが、稲村に突進。稲村は人の渦に巻き込まれてたちまち見えなくなった。こんな経験をしても、稲村は「わたしは全く問題なく大丈夫ですよー」とツイートし、マスコミは“神対応”とほめそやした。
“神対応”するに決まっているではないか。なぜなら、ここで文句を言うことは、連盟に盾突くことになり、仕事を失う可能性があるからだ。常識的に考えて、1,000人ともいわれる男子中学生が、自分に向かってきたら、生命の危険を感じるほどの恐怖だろう。あんなにもみくちゃにされて、痴漢行為がなかったとは考えにくい。けれど、それを口にすることは、連盟や指導者の監督不行き届きを指摘することにもなるから、稲村の立場を想像すると、言えるわけがない。
この事件はワイドショーなどでも取り上げられたが、ひどいなと思ったのが『5時に夢中!』(TOKYO MX)の女医タレント・おおたわ史絵である。おおたわは「中学生はたしかに性欲のかたまりかもしれないけど、肝心なポイントは触らないんじゃないかな」とコメントした。
『5時に夢中!』だから、あまり硬いことを言わず、穏便に済まそうと思った可能性はあるが、このコメントの問題は男子中学生によるセクハラだけでなく、パワハラ(仕事をもらっている立場だから、本当のことは言いにくい)も絡んでいるという視点がまるでないことだ(そもそも、肝心な部分を触らなければいいという問題ではない)。
ちなみにその昔、高畑裕太が強姦致傷(不起訴)を起こした時に、同じく女医の西川史子が、被害女性に共感を持っているとは思えない発言をしていたが、彼女たちに共通するのは「頭を下げなくて済む商売の人特有の想像力のなさ」である(患者が医者に頭を下げることはあっても、医者が患者に頭をさげることは稀なのではないか)。患者にとって、医者は一種の権力者だが、西川もおおたわも、自分が弱者になったらという想像力がまるでないのである。
医者は世間知らずの代名詞だが、医学部と病院という閉鎖的な権力空間で育ったので、仕方ないのかもしれない。真に怖いのは「怖さを知っているはずなのに、知らんふりする人」ではないだろうか。
さいたまスーパーアリーナで行われたAKBグループのコンサートで、メンバーが2日連続ケガをした。HKT48の秋吉優花が高さ2.7メートルのステージから落下して足の指を骨折、翌日はAKB48の稲垣香織が、やはり同所からステージ下に落下し後頭部を骨折した。ステージの下にマットなどは敷かれておらず、当然運営側が非難されている中、HKT48・指原莉乃は「本人たちは絶対に自分の不注意だってわかってるから。。なんでも運営運営っていうのは違うんですよねえ。。」とツイートした(現在は削除)。
秋吉、稲垣も運営を責めるような発言はしていないが、当たり前だ。事実上AKBグループのトップといえる指原が、自己責任と言っている以上、そこに逆らったら心象が悪くなるのだから。ちなみに、脳神経外科の医師に話を聞いたところ、一歩間違えば急性硬膜外血種を起こし、命に係わる事故になっていた可能性があるという。
指原は「イヤモニでずっと『落ちないでね!気をつけてね!』と声がけはしてくれてます」と説明し、運営側は責任を果たしていると思っているようだが、万が一落ちた時に、ケガをしないよう策を取ることが安全対策である。これだけ長い間ステージに立っていれば、指原もひやっとした経験があるだろうし、それを運営側に伝えて策を取るのは、キャリアがあってAKBの顔ともいえる指原の仕事ではないだろうか。けれど、実際の指原は、後輩の安全より、運営側に“恩”を売ることを選んだようだ。
女性が権力を持つと、“女帝”と呼ばれたりする。AKBの選抜総選挙で前人未踏の三連覇を達成し、バラエティで活躍する指原は、風格としては完全に“女帝”だろう。けれど、不思議なことに、権力を持つと、“女”ではなく“男”になってしまう女性がいる。メンバーの命に係わるかもしれない大惨事を“不注意”で切り捨ててしまう指原は、私にとっては典型的な「男になってしまった女」だ。
前に出たい少女の“やる気”を理由に、少女の痛みや苦しみを無視して、自分の地位を安泰にする。指原自身もそういう生存競争をくぐりぬけて今があるのかもしれないが、「男になってしまった女」の下では、セクハラもパワハラもより悪質化するような気がするのは、気のせいだろうか。20代半ばで老成もしくは老害と化す指原は、芸能人としては完璧だが、やっぱりちょっとヤな感じである。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」