首都圏を中心に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズの“サブリース家賃不払い問題”が、世間に波紋を呼んでいる。同社は、「頭金なしで投資でき、30年間家賃収入を保証」といった謳い文句で、約800人の会社員などをオーナーに勧誘。現在、数億円規模のローンを組み、物件を購入したオーナーたちは、「返済はどうすればいいんだ」と悲痛な声を上げ、同社と役員、また関連会社などを相手取り、損害賠償を求める訴訟騒動にまで発展しつつある。オーナーに融資をしたスルガ銀行への責任も問われるなど、騒動はいまだ解決の糸口が見えず、今後も“大炎上”が続いていくことだろう。
そもそも家賃不払いが発生した背景には、かぼちゃの馬車の入居率が低かった点が挙げられる。2016年に出版された、同社(当時・スマートライフ)の前代表取締役・大地則幸氏の著書『「家賃0円・空室有」でも儲かる不動産投資――脱・不動産事業の発想から生まれた新ビジネスモデル』(ダイヤモンド社)では、「入居率9割」とされていたものの、実際には4割前後だったとの指摘も。
スマートデイズは、たとえ入居率が低くても、入居者に対して、提携先企業への人材派遣の斡旋を行い、紹介手数料を得るというビジネスモデルを考えていたそうだが、これがうまく回らなかったようだ。ネット上には、各地の「かぼちゃの馬車」の近隣住民から「確かに人がいる気配がしない」「誰も住んでいないのでは?」といった声が飛び交っている状況である。
入居者のことがわからないのはトラブルの元
なぜ「かぼちゃの馬車」には人が集まらないのか――? 実際に女性専用シェアハウスに住む人たちに話を聞くと、その理由の数々が見えてきた。「上京したてであまり貯金がなく、でも職場への交通の便がよいところに住みたくて、都心&駅近の女性専用シェアハウスを選んだ」と語る30代のAさんは、かぼちゃの馬車破たん騒動を知り、ネット上に散見される実際の入居者たちの声を読んで、「私だったら絶対住まない」と思ったそうだ。
「報道でもよくいわれていますが、入居者たちが集う『共有部分』がほとんどないという点が気になりました。私が住んでいるシェアハウスの入居者は5人。広いリビングに集って、会社の愚痴を言い合ったり、恋愛相談をしたり、クリスマスパーティーなんかをするんです。私はこういう“入居者同士のつながり”目的でシェアハウスを選んだわけではないですけど、ほかの入居者と仲良くなり、楽しく生活しています。実際に、交流目的でシェアハウスに住む人も多いから、そういう人にはかぼちゃの馬車は選ばれないですよね」
共用のリビングがないと、「大手シェアハウス専門募集サイト『ひつじ不動産』『東京シェアハウス』の掲載条件を満たせないため、シェアハウスに住みたい人に情報が届かず、結果的に入居率を下げる要因となった」と、報道では盛んに指摘されている。
「入居者のブログやTwitterを読むと、入居者同士、挨拶をしたり、ちょっとした会話はすると書いている人もいました。でもやっぱり、一般的なシェアハウスに比べると、交流は薄そうですよね。『個室のドアの下部分に隙間があるため、ほかの人の生活音に悩まされる』『洗面所に髪の毛が落ちてて嫌だった』といった意見を見て思ったのですが、相手のことをあまり知らないから、イライラするのかなって。うちのシェアハウスも、隣の部屋の子がオナラした音まで聞こえますけど(笑)、仲がいいからそこまで気にならないですよ。“お互い様だよね”と思えます」
同じく、東京23区内の女性向けシェアハウスで暮らす20代のBさんも、かぼちゃの馬車にリビングがないことを問題視し、「誰が住んでるかわからないって怖くないですか?」と声を上げる。
「女性専用シェアハウスって、“廊下に使用済みナプキンが落ちてる事件”がたまに起こるんですよ(笑)。お風呂から部屋に戻る途中で、うっかり落としちゃうんでしょうね。でも、知ってる仲だし、わざとじゃないってわかるから、『落ちてたよー』とみんなに声をかけると、いつの間にか片付けられてる。ただ、よく知らない人の使用済みナプキンが落ちてたらと想像したら、最悪ですよね……」
さらにBさんは、ウェブニュースサイトに掲載されたかぼちゃの馬車内の写真を見て、「うなぎの寝床!?」と驚愕したという。
「個室は四畳くらいとのことで、うちとあんまり変わらないんですが、廊下部分の写真を見て、『狭いなぁ』と思っちゃいました。やっぱり、共有部分が広々としているのは、シェアハウスを選ぶ際に重要視する人が多いのでは。あと、実際にかぼちゃの馬車の間取りを検索して見てみたんですけど、シャワールームしかないんですよね。女子は湯船に入りたい人が多いと思うし、シャワーだけだったら選ばないかな。なんかもう、リビングも湯船もないし、狭いしで、シェアハウスっていうかドヤみたいですよね」
ちなみにかぼちゃの馬車は、5~6人に対して、トイレとシャワーが1~2基といった物件が多いようだが、「それは別に少ないとは思わないかも。うちもそうだから」とBさんは語っていた。
一方で、「出張の多い仕事をしていて、家の管理が面倒くさいので、シェアハウスを選んだ」と語る都内在住の30代Cさんは、「リビングがないというのは、私はそこまで気にならないです。寝られればいいので」という。
「私みたいに家を空けることが多い人にも、シェアハウスは便利なんです。かぼちゃの馬車も週に何回か清掃の人が来てくれるシステムだったみたいですけど、私のところもそうなので、大変助かっています。電球が切れても、すぐに担当者に連絡できるし、シェアハウス内で問題がないか、定期的にチェックにも来てくれます。だから、かぼちゃの馬車の元入居者さんが、『洗濯機の不調で水漏れが起こったのに、スマートライフの対応が遅くて大変だった』とブログに書いてあるのを見て驚きました。それに、今回の破たんによって、清掃の人が来なくなってしまったトラブルもあったそうですね。『一時来なくなったけど、また来てくれるようになった』と報告している入居者も見かけましたけど、今後もそういうことがあるんだったら、私は絶対入居したくない」
またCさんは、「家にあまりいないのに、敷金礼金や高い家賃を払うのは嫌」といった理由も、シェアハウスを選ぶポイントになったという。かぼちゃの馬車も、「各部屋に家具・家電付きで初期費用1万円と家賃だけで住める」と宣伝して、礼金敷金などはかからなかったそうだが……。
「現在、かぼちゃの馬車のサイトは閲覧できない状態になっていますが、賃貸物件サイトを見ると、いまも入居者を募集しているんですよね。管理会社がスマートデイズから別の会社に移って、オーナーさんが家賃を改訂したようで、あるサイトでは、三軒茶屋駅から徒歩12分の物件が賃料管理費込みで9万6,000円、中野坂上駅から徒歩10分の物件が賃料管理費込みで9万5,000円と紹介されていました。光熱費やWi-Fi代などが込みだとしても、この値段なら結構いいワンルームを借りられるよね、と思ってしまいます。ナイトワーク専門賃貸情報サイトに載っていたので、『お金はあるけど入居審査が通らない』って人にはいいかもしれませんけど、いやそれにしたって、シェアハウスとしては高すぎる。これじゃあ人が集まらないのでは」
女性専用シェアハウスに住む人からしても、「魅力を感じない」というかぼちゃの馬車。前出のAさんは、「今回の騒動で、シェアハウスのイメージまで悪くなったような気がして悲しくなりますよ」とため息を吐いていた。かぼちゃの馬車のオーナーの中には、今後自主管理に変更して再建を目指す人もいるだろうが、人を集められるシェアハウスに生まれ変わることはできるのだろうか。