新生活スタートの季節である4月を目前に、現在“引っ越しの真っ最中”という人も多いのではないだろうか。生活の基盤となる“物件”を探すのは、手間のかかる行為ではあるが、一方で、「もしここに住んだら、どんな生活が送れるだろう?」と想像が膨らむ楽しい行為でもある。引っ越しや家を買う予定はないものの、ネット上の物件情報を漁るのが好きという人までいるほどだ。
しかし、この世には、「なぜこんなトンチキな物件が……?」などと首を傾げてしまう物件があるのも事実。そんな物件を“クソ物件”と称し、2014年から「クソ物件オブザイヤー」なるアワードを開催している、異色の宅建業者団体がいる。それが、「全宅ツイのグル(@emoyino)」氏率いる「全国宅地建物取引ツイッタラー協会」、通称「全宅ツイ」である。
「クソ物件オブザイヤー」の公式サイトによると、本アワードは、「2008年のリーマンショック以降、混迷する不動産業界にあって、次世代を担うリーダー層が集い、学び、議論し、不動産市場再生のヴィジョンを描くための場が必要であるとの全宅ツイのグルの考えのもと」生まれたとのこと。今回は、全宅ツイのグル氏にメールインタビューを行い、印象に残っている“クソ物件”、また“クソ物件”が生まれる背景などをお聞きした。
「クソ物件オブザイヤー」主催者が選ぶ四天王
「クソ物件オブザイヤー」には、毎年さまざまな物件がノミネートされている。これまで全宅ツイのグル氏が見た“クソ物件”の中で、特に印象的だった物件をピックアップしてもらった。
◎銀座アップルストア
【全宅ツイのグル氏講評】外壁の仕上げに高価な素材を使うか廉価なものを使うかで、その費用は数千万円の単位で違ってきます。ですので、道路から見える部分は高価な素材を使って改修し、見えない部分はそのままにしたり、廉価な仕上げを行うことは不動産の世界ではよくあります。それで通常は問題ないのですが、見えないはずの部分が見えちゃったっていうのが、最近隣のビルが解体された「銀座アップルストア」です。
どうですか? あの立派な道路面の外観からこの側面の昭和なビルそのままの外壁が想像できたでしょうか? たまたま「銀座アップルストア」の近所のHermesも隣のビルが解体されていましたが、こちらは、ご覧のとおりできっちりと側面まで仕上げられています。
皆さんも、イザというときのために、見えないところまでお手入れをしておいた方がいいかもしれません。
◎カーサ桜上水
【全宅ツイのグル氏講評】分譲マンションを分譲したあとに、その敷地を第三者に売却してしまい、その第三者が戸建を建ててしまったという事例。どうですか? 自分の住んでるマンションの敷地に勝手に戸建てが生えてくるの。
※現在では第三者とマンションの管理組合との間で話し合いが行われ、当該戸建てはマンションの管理組合が買い戻すこととなりました。
◎コニファーコート成城学園前II
【全宅ツイのグル氏講評】人様が住んでいるをお家をクソ物件とはよう言わんので、これは私の知る中でもかなり上位の細長いお家ということでご紹介させてください。置いてある自動車よりお家の方が細い。いうたら毎日車中泊。すごい。
◎トイレと暮らす家
【全宅ツイのグル氏講評】これもすごいですね。トイレしてる時に友達来たらどうするんでしょうね。ぼくが彼氏のお家にお呼ばれしてきた彼女だったら、おしっこしたくなるまでしか滞在しませんね。
素人の目からしても、「おかしい」と感じてしまうクソ物件。なぜ、こうしたクソ物件が生まれてしまうのだろうか? 全宅ツイのグル氏が、その背景を解説してくれた。
建物の設備や間取りはさまざまな制約のもとに決定されます。例えば、敷地の広さや形、予算、建物の構造、階数などなど。そしてもっとも大きいのが不動産のオーナー(貸主)の意向です。オーナーがこうしたいという間取りを実現するのは、建築士であったり工務店であったりするわけですが、例えば、貴方が工務店の営業担当だとして、オーナーが自分の好みをゴリ押ししたすごく変な間取りを希望してきた場合、貴方は、それは変だからやめときましょうって断れますか? 大きな金額の工事自体を受注できなくなるリスクを犯して。
不動産のオーナーはその資金力、発注者である立場から、裸の王様になりやすいのです。そして厄介なことに建物を企画する際は誰でも舞い上がってしまう。想像してみてください。自分がオーナーの建物を建てるとき、あなたはあなたの思い入れとロマンをブチ込まずにはいられないはずです。
もう1つ、建物は、企画する人と実際に利用する人が異なることが多いという構造の問題です。注文住宅なら自分が使いやすいようにできるので、使う人の立場に立った設計を考えると思いますが、人に貸すアパートやビルの設計ならどうでしょう? これまで御覧いただいたクソ物件は? クソ物件を作った人がそこに住んでいると思いますか?
このように、クソ物件をご覧になるときは、建物新築に舞い上がった裸の大家さんとずる賢い家来たちが仕様や間取りについて話し合ってるシーンを思い浮かべると、いっそうそのクソ物件の味わいがますかと思います。
(後編につづく)
「全国宅地建物取引ツイッタラー協会」公式サイト
「クソ物件オブザイヤー」公式サイト