パワースポットの書籍などを手がけ、神社仏閣の知識も豊富なA氏から、素人が行くのは危険な神社を教えてもらう、このシリーズ。第1回は古戦場でもある神社、第2回は祟り神を祀る神社、そして第3回は縁切り神社を紹介したが、今回は少し趣を変えて、「パワースポットとして有名だが、信じていいのか疑わしい神社」を紹介してもらおう。
<第1回:「石を拾った帰りに事故」「夜更けに激痛」素人が“行ってはいけない”パワースポット11>
<第2回:日本史上に残る「恨み」が!? 怒りの魂が眠る、素人が“行ってはいけない”パワスポ>
<第3回:素人が“行ってはいけない”パワースポット3選――強烈な怨嗟と悪念渦巻く神社とは?>
世の中には、パワースポットとして知られる神社がたくさんある。しかし、その神社にパワーがあるとされる理由を調べ、歴史や内実を知ると、決して無邪気には信じられないこともあるのだとか。どういう意味なのか、詳しく教えていただこう。
<危険なパワースポット1:「女性の守り神」の神社、実は…… 危険度★★>
「女性の守り神」として、女性の願い事ならなんでも叶えてくれると有名な神社は各地にある。多くの場合は女神が祀られており、さすがに女性の守り神と思わせられるのだが、ちょっと待ってほしい。なぜなら、女性の守護神社が鎮座する地域の歴史を調べてみると、そばに大きな花街があったことが多いからだ。
花街といえば、遊女たちが客を引き、男たちが一夜の慰めを買う場所。売れっ子遊女は今でいう女優やアイドルのような存在で、茶屋の亭主にも丁重に扱われていたが、器量があまりパッとせず、才覚もない遊女たちは、ひどい扱いをされることもあったようだ。
また、花街で流行した「花柳病」とは、性病のこと。江戸時代には日本にも梅毒が輸入され、命を落とす遊女も少なくなかったという。望まぬ妊娠をする者も多かっただろうし、嫌いな旦那に水揚げされることになり、悲嘆の末に愛する男と心中を選ぶ者もいた。そんな遊女たちは、女神に何を祈ったのだろう。病気平癒を祈る者もあれば、愛する男と結ばれるため、自分を水揚げしようとする男の死を願う遊女さえいたろう。現代の私たちが思うよりずっと、切実で、残酷な願いがかけられる場所だったと想像できる。
何も知らず、そうした「女性の守護神社」に、復活愛を祈りにいったBさんは、ご神木と思われる大樹の下に、自分をジッと見つめる着物の女性を見つけて、ゾッとしたそうだ。京都の神社だったため、着物姿も違和感がなかったそうだが、家に帰って歴史を調べたところ、そのすぐそばに「五条楽園」と呼ばれる大きな花街があったと知って、なんとなく納得したそうだ。
「お金で売られ、苦しい恋に悩む遊女にとって、自分からフッた彼氏とやり直したいなんていう願い事は、身勝手に思われたでしょうね」と、Bさんは反省の表情だった。
<危険なパワースポット2:金儲け主義のきな臭い神社 危険度★★★★>
テレビや雑誌で何度も紹介されるようなパワースポット神社の中にも、首をかしげてしまうようなものもあるようだ。
人形供養の神社として有名で、バラエティ番組にもよく登場する神社が、供養するために預けられた人形を、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションに貸し出した事件は記憶に新しい。この神社は、古くなった人形を有料で預かり、お焚き上げをして供養するという触れ込みだが、そうやって預かった人形を「生き人形の呪い」というお化け屋敷に有料レンタルしたのだ。
事前に了解を取れば、お化け屋敷へのレンタルを許可する奉納者もいるかもしれない。しかし供養の料金を受け取ったうえ、奉納者の了解も得ず、しかも「呪いの人形」として貸し出していたというのだから、不信感が募るのも当然だろう。奉納した人形が、呪い人形として使われているのを発見した崇敬者が告発したことで明らかになったが、もし誰も気づかなければ、供養料もレンタル料も独り占めし、何食わぬ顔をしていたに違いない。
同じように、平安時代の人気陰陽師を祀る神社も、一部では、金儲け主義の神社として有名だ。この神社では、境内を出てすぐにある土産物屋と反目していることでも知られているため、他者が良い思いをするのをよしとしない体質もあるのかもしれない。
「祠の新築に際して、瓦の寄進を募っていたんですが、寄進料は1枚につき1万円でした。通常、瓦1枚なら1,000~5,000円程度が相場ですから、法外な値段だと思いましたよ。それでも、『あなたの名前が半永久的に、あの有名陰陽師と並んで残される』の謳い文句に惹かれて、次々と寄進者が現れたことに驚きです」と、神社の経営事情をよく知るCさんは呆れた顔で教えてくれた。
もちろんそれでも祀られている神様に罪はない。だから、霊験がないわけではないだろうが、純粋な気持ちで参拝するのは、なんとなくためらわれてしまわないだろうか。
<危険なパワースポット3:神社と敷地は立派だが…… 危険度★★★>
日本一初詣参拝客の多い神社といえば、明治神宮だ。しかし、その歴史や祀られている神様を意識している人は、案外少ないのではないだろうか。明治神宮の祭神は明治天皇。つい100年ほど前まで存命だった天皇が神様として祀られているのだ。
日本の神道は、人間は神の一部をもらって生まれてくるので、死ねばみな全て神に戻るという考え方だ。しかも、古来天皇は「現人神(あらひとがみ)」、つまり人間の姿をした神であると信じられていたのだから何も問題はない。しかし、この神社が建立された背景を見ると、少々きな臭いのだ。
もちろん、国民から人気の高かった明治天皇を神として崇拝したいという要望もあったろう。しかしそれだけではない。明治以降の日本は、日清戦争や日露戦争に勝利し、第一次世界大戦でも戦勝国に列するというように、軍事国家として頭角を現していく。そして第二次世界大戦に突入しようとするとき、「日本は神の国だから、ヨーロッパの国々やアメリカにも負けるはずがない」との世論を盛り上げる必要があった。そのため、日清戦争や日露戦争を勝利に導いた明治天皇を祀る立派な神社を建立し、「神の国日本」を演出した面もあるという。
似たような事情で、明治時代から昭和初期にかけて建立された神社は、いずれも立派で、敷地も広い。そのため、何も知らない参拝客が「なんて神聖な場所だろう」と感心してしまうのも当然だろう。しかし、その建立の動機の1つに「戦争」があったことも、頭の片隅に入れておきたい。
明治神宮以外には、橿原神宮や吉野神宮なども、この時期に建立されている。特に橿原神宮建立に際しては、1000年以上の歴史を持つ神社が、橿原神宮を見下ろす位置にあって不敬だからと無理やり移築させるなど、無理なこともしているという。当該神社の宮司は、「移築の際、何人もの人が亡くなった。神の祟りだと思っている」と憤っていた。
このように、その内実を知ると、素直に「パワースポット」とは思えない神社もある。神域であることに違いはなく、神職が代替わりすればするほど神社の雰囲気も変わるだろうが、こういった事情もあることは知っておいた方が、己の身を守ることにつながるかもしれない。