羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「エンタメが好きです」ブルゾンちえみ
『ボクらの時代』(フジテレビ系、12月24日)
2017年、ブルゾンちえみが、キャリアウーマンの「35億」ネタで大ブレークを果たした際、ある週刊誌に「ブルゾンを含んだぽっちゃりオンナ芸人がブレークしているのは、なぜか」についてコメントを求められたことがある(その企画はとん挫したので、コメントを出さずに終わった)。
ブレークの原因は、体形というより、あのメイクとファッションではないかと私は思う。ブルゾンのネタは、“仕事もプライベートも充実しているキャリアウーマン”が、友人のクミちゃんに、海外ドラマ調にアレンジした“恋愛のアドバイス”を語るスタイルを取っている。ブルゾンは、髪をかき上げ、腰をくねらせ、脚を組みかえ、ささやく……といった、いいオンナ感満載でネタに臨むが、当のブルゾンのファッション(黒と白の太いボーダーのシャツ)やメイク(ダークレッドの口紅、下まぶた全体へのアイライン、上まぶたはリキッドで外ハネのライン)はかなり個性的で、日本人男性に受け入れられるとは思えない。日本ではモテなさそうな女がセクシーを装って上から恋愛を語ったり、「オンナに生まれてよかった」と勘違いふうに振る舞うのがおかしさを誘い、また、それを“自由”で良いと感じた女性が多かったのではないだろうか。
ブルゾンと言えば『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)で女優業に挑戦し、高い評価を受けた。その際の共演者である女優・水川あさみ、桐谷美玲と『ボクらの時代』(フジテレビ系)に出演したブルゾンは、自分の肩書について「エンタメが好き」なのであり、「世がタレントと呼ぶならタレントだし、芸人と呼ぶなら芸人でいい」と発言した。友近のように、お笑い芸人も女優業に進出したり、歌を出す時代なので、最初から1つに決めてしまいたくないという意味かもしれないが、見方を変えると、この人、実は何でもいいという意味で不誠実なのではないかとも思えるのである。
ブルゾンは以前、占い師のネタを無断でパクった疑惑を「週刊文春」(文藝春秋社)に報じられ、「パクリというか、インスピレーションというのか、感じ方は人それぞれです」と開き直ったコメントを出していた。事務所が大きいので強気を通したのかもしれないものの、自分がネタを作っているプロの芸人なら、一言一句違わないようなネタで活動される不快感がわかるはずである。
ブルゾンの節操のなさは、『ぐるナイ!新春おもしろ荘』(日本テレビ系、1月1日放送)にも表れていた。
白いノースリーブのワンピースを着たブルゾンが、“素直になれない系女子”として、「男子、これだけは覚えておいてほしい。女のイヤはイヤじゃない」という新ネタを発表。好きな男性に、自分が口をつけたペットボトルの水を飲まれることや、足をくじいた際に優しくされることを、拒否してしまう女性のネタだが、それを「女のイヤはイヤじゃない」と結んでしまうのは、乱暴すぎる。人は自分の都合のいいように情報を解釈するので、例えば、男性が交際を申し込んできた、またはセックスに誘ってきた際、女性側が「イヤ」と言ったとしても、「女のイヤはイヤじゃない」というブルゾン理論を信じた男性が、引き下がらず犯罪沙汰になる可能性も出てくるからだ。
2016年に女優・高畑淳子の息子・祐太が、強姦致傷で逮捕され(不起訴となった)、17年にはジャーナリストの伊藤詩織氏がレイプ事件の逮捕状を握りつぶされたことを訴えた。ハリウッドの大物プロデューサーがセクハラを告発されたことで、世界中の女性がTwitterでセクハラを告発するなど、セクハラや合意のないセックスについて断固拒否をつきつける気運が高まっている今、「女に生まれてよかった」ネタでブレークしたブルゾンが、昭和丸出しの白ワンピで「女のイヤはイヤじゃない」と言い出すのは、理解しがたい。
ブルゾンは『ボクらの時代』で、自分が相手に好意を持っていることを悟られたくない、相手から告白してほしい、またシャイな男性が好みのため、恋愛が成就する確率が非常に低いと語っていた。もしかしたら、自分のその性質を「女のイヤはイヤじゃない」というネタにしたのかもしれない。ブルゾンがセクハラやレイプを認めているとはもちろん思わないが、「悪意を持って眺めたら、このネタはどう解釈されるか」「自分のファン以外の人も見ているテレビで、このネタをやったらどう受け止められるか」を自分で考えることができないのは、芸人としてまずいと言わざるを得ない。
ブルゾンはフリートークがヘタで、会話をふくらませたり、盛り上げることができない。『今夜くらべてみました 元旦から生放送3時間スペシャル』(日本テレビ系)で、渡辺直美邸(港区の家賃130万円のマンション)を訪れた際、「インテリアが完璧だと心の距離ができてしまう」と表現して、微妙に渡辺の機嫌を損ねていたが、恐らく、自分にしか興味がないので、盛り上げ方がわからないのだろう。しかし、テレビで活動していくのなら、売れた今だからこそ、「自分がこう思う」では、芸人として成立しないことに、気づいた方がいいのではないだろうか。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」