
(前編はこちら)
■港区女子に告ぐ「ロシア赴任とかになったらどうするの?」
――最近は、オンナの色気をフル活用して戦略的に成り上がろうとする“港区女子”にも注目が集まっています。権力のある男性に見初められていい暮らしをしたり、仕事を与えてもらったりもする、港区界隈に出没する野心にあふれる女性のことを指します。
宇野なおみさん(以下、宇野) “港区女子”を知らなかったので、調べました。私が得意な英語を生かして通訳の仕事をしているように、自分の能力を仕事にするという面では、オンナの色気をスキルとして使うのも、正しいとは思います。ただ、それが自分の実力なのか、未来があるかというのは別物。自分の価値を他人に委ねてしまうのは怖いなぁと思いますね。
だって、オンナの色気だけでステップアップして、ロシア語がわからないのにロシア赴任とかになったらどうするの? そこで「頑張ってロシア語学ぼう」ってなればまだいいけど、相手に称賛されてちやほやされることが自分を肯定できる理由になっていたら、「もしそこにお魚しかいなかったらどうするの?」「お魚に褒めてもらうのかな?」って思いますもん(笑)。
――ちなみに、宇野さんのまわりに“港区女子”のような女性はいますか?
宇野 いませんね。でも、古くは花魁とか、“オンナ”で稼いできた人たちもいるわけだし、港区女子も自分の意思で極めているならいいと思います。芸能界には、可愛さを武器にしている人もいっぱいいますし、彼女たちの努力はプロフェッショナルで、生活できるくらいお金を稼いでいるので、それはすごいことだと感じます。ただ、見た目を磨くことが仕事に直結するわけではない場合、やっぱり「仕事の評価は、見た目ではなく仕事ぶりで判断される」のではないでしょうか。
――華やかなところだけを拾って、勝ち組と認められたい港区女子ワナビーも増えているんです。
宇野 ワナビーなら好きにすればいいと思いますけど、時間だけはみんな有限なんですよ。夜遊びして、オーパスワン空けて、明け方タクシーで帰って~とか、それがいいならいいのですが、私は面倒だしイヤだから、その時間を使って勉強したり寝たりしたいです(笑)。興味あることに時間を使いたいですね。その結果、茶道の上級免状をいただいたり、TOEICで910点取れたりしたので、結局は時間の使い方に集約されると思います。「限られた時間」と言うと、みんな「若いうちに」って言いますけど、若さに限定する必要もないと思うんです。86歳ですからね、オンナの平均寿命。折り返し地点が40歳ですよ! そう思うと長いじゃないですか(笑)。
私はフリーランスで、実家暮らしで、結婚もしていなければ子どももいないと、世間一般からみれば“負け犬役満”かもしれませんが、毎日楽しいし、ストレスも少ないし、なにより自分で納得できています。「人より良ければいい」という考えだと底なし沼に落ちるので、ポジティブな意味での自己満足ができる時間の使い方をすればいいと思います。
――宇野さんが時間の使い方で意識していることはありますか?
宇野 大事なことは後回しにしないこと。私の周りは年配の方が多いので、のんびりしていると置いて行かれちゃう(笑)。先日も、『渡鬼』でご一緒した大好きな俳優さんが60歳で亡くなられたんです。「一緒に舞台に立ちたい」と思っていたので、ものすごく悲しい思いをしました。女優業をもう一度本格的にやりたいと思ったのも、またチャンスを逃してしまうことがないようにとの思いからです。
――『渡鬼』で演じられた野々下加津ちゃんも、向上心あふれる女性だったと思うのですが、宇野さんから見て加津ちゃんはどんな女の子ですか?
宇野 加津ちゃんと私を同一視している方も結構いて、「東大生なのよね」とか「親いないのね」とか言われることもよくありますし、私自身も自分の一部みたいな感じなので、どう思うかと言われるとちょっと困るのですが(笑)、人としてすごい子だなっていう尊敬はずっとありましたね。ためらいない飛び込みで自分の才能を開花させていくところとか、「人と違っても何とかなる」という思いは、加津ちゃんから学んだと思います。
――演じたことで影響を受けたところなどはありましたか?
宇野 あります、あります! 加津ちゃんは私よりデキる子ですから(笑)。一番は、あきらめないことです。加津ちゃんの立場は非常に複雑で、コンプレックスもあったと思うのですが、彼女はそんなバックボーンを跳び箱の踏切板にしていたんですよね。私は高校を中退し、大検で早稲田大学に入りましたが、それは普通に生きていたら思いつかなかったルートだったので、「自分で切り開けば道は常にある」という加津ちゃんの考え方が強く影響していたんだと思います。
あと、私は昔からゴールキーパーにはなれないタイプで、人と人を紹介したら自分が入り込めないほど2人が仲良くなってしまったり、自分が出会いを探しに行った場で、友達にだけ恋人ができたりと、「誰かの1番」にはなれないパサーであることがコンプレックスでした。でも、人の言葉を、自分を介して伝えていく通訳や役者は、パサーじゃないと務まらない。コンプレックスを強みに変えることができたからこそ就けた仕事だと感じています。
――ちなみに、加津ちゃんを演じてきた中で、一番印象に残っているシーンはどこですか?
宇野 1つは、一人芝居をしながら階段を下りていくシーン。「ごはんまだかなぁ。『腹減った、早くメシ!』なんて言える身分になってみたいよ」という一人芝居の様子に、いつもは強い女の子の本音が出ているような気がしました。もう1つは、母親との再会のシーンですね。決して恨み節を投げつけず、母親にも事情があったことを慮ったセリフしかないんですよ。でもそれは、先に泣き出した母を見て、「お母さんは強くない人だ」ということを受け入れられたから、手を差し伸べることができたんだろうなって。人より不幸値の最大値が大きいからこそ、懐が深いというか。加津ちゃんの強さと優しさを感じられたシーンでした。
――今後チャレンジしてみたいジャンルなどはありますか?
宇野 文章を書く仕事をしてみたいです。文章を書くのが好きというのも、橋田寿賀子先生や加津ちゃんから覚えたことですね。これまでも『渡鬼』のホームページで連載したり、ブログを続けたりしてきましたが、自分の不器用な生き方が誰かの役に立つようなことも書いてみたいです。私のように、ずっと人と違って生きてきて、それを「ま、いっか!」と思いながら過ごせている人は今の日本ではレアなので、「私みたいなのもいるんだよ!」というのを知ってもらえれば、自信を持ってもらえるんじゃないかなって。高校を中退した人とか、コンプレックスを抱えている人とか、同じような境遇の人の心に伝わったらいいなと思います。
――最後に、今後の目標を教えてください!
宇野 赤木春恵さんが88歳で認定されたギネス記録「世界最高齢での映画初主演女優」を目指したいと思っています。本当に素晴らしいことだと思うので、できることなら、私もそういう女優になりたいですね。
(取材・文=千葉こころ)
宇野なおみ(うの・なおみ)
1989年生まれ、早稲田大学文化構想学部卒業。96年、『マダム・バタフライ』で初舞台を踏み、98年から『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)に野々下加津役としてレギュラー出演。大学卒業後、カナダ・バンクーバーのカレッジに留学し、「TOEIC」のスコアは990点満点中、910点という語学力を得る。現在は女優以外にも、通訳として活躍している。