テレビドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で、1998~2011年にかけて、波乱に満ちた人生を歩む女の子・野々下加津ちゃん役を演じていた宇野なおみさん。2017年、「フラッシュ」(光文社)で人生初のグラビアに挑戦し、世間では「あの加津ちゃんが大人になった!!」「子どもの頃のイメージが強かったからビックリ!」などと大きな話題となった。
現在、女優として活躍する傍ら通訳の仕事も行うなど、精力的にどんどん活動の場を広げている宇野さんに、今回は“オンナの野心”をテーマに取材を敢行。グラビアに挑戦した理由、安定志向といわれる若い女性に思うことなど、赤裸々に語っていただいた。
■石井ふく子さんからかけられた感動的な言葉
――宇野さんの人生初グラビア、拝見しました! 世間では「これまでのイメージとは、まったく違う挑戦!」といった声も多かったですが、撮影はいかがでしたか?
宇野なおみさん(以下、宇野) そうですね、ポージングで筋肉痛になりました(笑)。お話をいただいたときは「需要があるのか?」と思いましたけど、もともとグラビアが好きだったこともあり、特に何も考えず挑戦しました(笑)! ただ、「後がないから脱いだ」とか「調子に乗っている」といったバッシングは危惧していたので、たくさんのメディアで前向きに捉えてもらえ、特に女性から好評をいただけたのは、うれしかったです。
――ご両親やご友人の反応はどうでしたか?
宇野 父は「女優だから仕方がない」と言っていましたが、母には「まだスキャンダルもないのに!? 雑誌が出る前にねつ造してもらった方がいいんじゃない?」と爆笑されたんですよ。「それが母親の言うことか!」って返しました(笑)。友達の間では、意外と女性陣の方が好意的に受け取ってくれて、逆に男性は「袋とじ開けちゃったんだけど、よかったのかな……」とか、戸惑っている人が多かったですね。大学時代に所属していた茶道部の後輩から聞いた話では、部内のグループラインにも私の記事が上がっていたそうです(笑)。
――『渡る世間は鬼ばかり』のプロデューサー・石井ふく子さんには、報告されましたか?
宇野 はい、グラビアの話が来たとき許可を取りに伺いました。そのときは“フッ”と微笑まれていて、その後、仕上がりを見せに行ったときには「……大人になったわね」と言っていただけたんです。周囲も自分も“子役”という枠の中で私を見ていたので、石井先生の一言で子役から脱したような、感動的な瞬間でした。
――「グラビアが好き」とのことですが、どんなところに惹かれるんですか?
宇野 スタイルです。私はもともとバレリーナのような体形を目指していたのですが、第二次性徴期に太ってしまい、自分の体形にコンプレックスを持つようになっていました。けれど、グラビアを見たときに「このモデルさんたちみたいな体形になれれば、自分の体が好きになれるかもしれない」と思ったのがきっかけです。
――グラビアアイドルは、まさにあこがれれのボディライン?
宇野 そうですね。私は筋トレを黙々と頑張ってきたのですが、それは誰かに好かれるためじゃなく、自分自身のためなんです。今回のグラビアで、そこを評価していただけたのは、すごくうれしかったです。
――グラビアという新しいジャンルに飛び込んだ宇野さんに、今回は“オンナの野心”をテーマにお話をお聞きしたいです。宇野さんは、ご自身に“野心”があると思いますか?
宇野 私にとっては『渡鬼』の現場でご一緒した大女優さんたちがデフォルトなんです。日本で普通に成長する女の子に芽生えるであろう野心より、遥かにスケールが大きい環境で育ってきたこともあり、今回のような挑戦が“野心”と言われてもあまりピンとこないんですよね(笑)。ただ、女性としてのレベルが高い方々に囲まれ、そのすごさを肌で感じてきたので、常に自分はまだまだだと思っています。いずれは自分もあのくらいのレベルにならないといけないのではないかと感じてしまって……ゴールが遠いんですよ(笑)。
――日本を代表するような大女優さんばかりですもんね。
宇野 そんな方々とご一緒できたことは、私にとって一番の心の財産です。なので、それに対して恥ずかしくない自分でいたいと思いますし、お会いしたとき、胸を張って報告できる活動をしていきたいとも思います。
■そもそも能力を“比較する相手”がいなかった
――宇野さんのもともとの性格はどんな感じなのでしょうか?
宇野 負けず嫌いですね! シスターコンプレックスだったので、「お姉ちゃんと一緒がいい」「お姉ちゃんに負けたくない」との思いが働いて、姉への対抗意識が強かったです。ただ、敵意で張り合うのではなくて、スポーツマンガによくあるような良きライバルとしての感覚が大きいですね。友達に対しても同じで、女性に優しいと思います。
――女同士が対抗心を燃やすと、「相手を蹴落とそうとしている」という穿った見方をされたりもしますよね……。
宇野 そういう感覚はないですね。子役として小さいときから特殊な環境に身を置いていたせいで、そもそも“比較する相手”がいなかったんですよ。学校へ行けば自分だけ違うし、現場で一緒になる子役の方々もそれぞれ状況が違ったし。平たく言えば、“浮いていた”ってことなんでしょうけど(笑)、逆に、常に自分しか向きあう相手がいないことで、できない自分を受け入れられるようになったり、みんな違うということを理解できたりしたので、人と比べてどうこう考えることはなかったです。
――「周りから浮きたくない」という女性も多い中、そんな自分を受け入れられるのは、すごいことだと思います。
宇野 いや、私もネガティブなところがあるので、ナメクジみたいにズルズルしてばかりの時期もあったんですよ(笑)。比較対象がいない分「どうして私だけが」という感情を持ちやすかったんですね。でも、悲劇のヒロインでいても普通にしていても、周りの状況は変わらないことに気づいたんです。だったら好きなことをやった方がいいやって、ある意味開き直れたのが良かったんだと思います。
――そのような経験は、『渡鬼』の膨大なセリフを覚えるなどにも生かされたのでしょうか?
宇野 求められたらやるしかないですからね。「できません」って言ったら次はないっていうだけの話なので。先週の自分ができたことを今週の自分はできるのか? その繰り返しでした。
――最近、20代女性の間では、専業主婦願望を持つ人が少なくないようです。働くことで疲弊したり、他人と比べられたり、結果を求められるのが億劫だったりと、野心を持たなくてもいい安定感を求める気持ちもあるのかな……と。
宇野 まず専業主婦は技能職です。「たまごっち」すら上手に育てられなかった私にしたら、家事をして、旦那さんの世話もしながら子どもを育ててって、すごく大変だと思いますよ。それに、家族って守られているようでいつ何が起こるかわからないし、何があっても逃げられないんですよ! なりたいと思うのは構わないけれど、安定したいから専業主婦というのは、ちょっと違うかなと思います。
右に倣えでしんどくないならいいんですけど、結局専業主婦でも、ママ友問題や旦那の浮気で悩むことはありますよね。そんなとき、外に世界がないと潰れてしまうと思うんですよ。私は1つのコミュニティにどっぷり浸かるタイプではなかったし、学校やドラマの現場、海外など、コミュニティがたくさんあったので、悩んだときも逃げ場があって救われました。なので、1つのところに留まることが安定とは言えないのかなって思います。その点、子どもの頃から浮いていると、筋斗雲をまとったみたいな余裕があっていいですよ(笑)。
――いくつものコミュニティを持ってよかったと感じたことは、ほかにもありますか?
宇野 広い価値観を持てるようになったことです。『渡鬼』の現場では、常に誰かが間違いを直してくれたり、日常では使わない古い日本語に触れられたりして、礼儀作法や正しい言葉遣いを学べました。そう、橋田壽賀子先生は「若い子にも正しい日本語を」という考えから、脚本に若者言葉を使わないんです。おかげで、敬語で苦労したことはありません(笑)。そうやって日本の良さが自然と理解できた中で留学したので、海外での経験もよりグローバルな視点を育めたと思います。
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