『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』40原が語る“パンツ愛”そして、これから

 それは誰もが、はたと足を止める魅力を放っていた。

 10月初頭の夕刻、秋葉原の雑踏。ふと、手に入れたい本があるのを思い出して、秋葉原駅に降りた。電気街口の改札を抜ける。買い物に訪れた観光客の笑顔。待ち人の元へと逸る足音。メイド喫茶の客引きの乙女の甲高い声。それらをかき分けて目指したのは、同人ショップ・とらのあな秋葉原店A。ひとまず、新刊の並んだ1階をぐるりと一周眺めてみる。それから、エレベーターの前に立つ。ちょうど扉は閉まって、上へ上がっていく。間の悪さに、ふっとため息をついて、横にある階段を眺める。雑居ビル前とした、狭っ苦しい階段。目指す7階までは、遙か摩天楼の上のよう。

 一度7階まで昇った後に、再び降りてくるエレベーターを待つべきか。いや、そんな無為な時間を過ごすのはイヤだ。第一、一度目の前で扉が開いたエレベーターは、地下1階へと降りていくに違いない。

 短い人生に、待ちの時間はもったいない。階段に足をかけ、少し早足で上へ上へ。こんな時には、何も考えないのが正解。無心にならなければ、途中で荒い息を吐き出して、気分も逆立ってしまうもの。18禁の揃ったフロアで荒い息をしているのは、センスがない。途中、乱れたネクタイを直しながら、2階、3階。

 まだまだ、半分も登ってない。

 でも、ようやくたどり着いた4階フロア。そこで、片手を手すりについたまま、ふっと足が止まる。もう、体力が尽きたのではない。そこの陳列に、瞬時に心を奪われたのだ。

『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』

 そんな文字と、文字そのままに、女のコたちが嫌な顔をしながら、パンツを見せているイラスト。そして、写真。

 ああ、そうだ。これは、全年齢向けなのだ。当たり前だ。描かれているのは、パンツを見せている姿だけ。セックスはもちろん、キスだって描かれてはない。

 こんなにも売れているのか。

 フロアの入口を埋め尽くすように、縦と横とに積まれた同人誌と写真集の山。イラスト集が3つ。マンガが1つに、写真集が1つ。それに、コラボしたエロライトノベル。店が全力で売りたいと励む作品。そして、売れると判断した作品。多くの人が欲しがる作品。その迫力を見て、思う。

「もう一度、明日のインタビューを練り直さなくてはいけないな……」

 いきなり足を止めたためか。息はずっと荒かった。

 どうにも会ってみたくなる作品と作者との出会いは、いつも偶然。『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』も、やっぱりそう。昨年の夏のコミックマーケット。いつもの買い物を終えて、何かないかと漫然と会場の人混みに揉まれていた。そんな時、目に飛び込んできたのが、シリーズの第2作。巫女さんが、こちらに背中を向けながら、嫌な顔してパンツを見せている作品。

「ちょっと見せて下さい」

 一言断って、ページをパラパラとめくる。すぐに、ポケットから千円札を取り出した。

 これは、買うべき本である。

 それが、今回インタビューすることになった40原(しまはら)の<現在の>代表作である『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』との出会いである。

 すぐに千円札を取り出した理由は、極めて単純。ハッとしたのは、ページの構成だ。単にパンツを見せているイラストだけではない。嫌な顔のイラストを描いているだけでもない。右ページに、書名通りのイラストを配置。そして、左ページには、描かれた女のコたちの日常っぽい顔。職業などのプロフィール。そして、パンツを見せている時の台詞。それらが、一つの塊となって目に飛び込んでくる。M男向けだろうか。いや、そんなに単純ではない。単なるM男向けという要素を超えている。左ページの日常風景のような表情。そんな顔を見せているであろう日常は、プロフィールによって、さらに想像力を喚起する。見開きのページが、妄想スイッチを全開にして、見ているだけでどんどんと、ワクワク感が募ってくる。

 単なる性的な興奮ではない。もっと複雑で、楽しい何か。自宅に帰って、パラパラとめくるたびに、その独特の楽しさを何度も味わえる。楽しめるエロティシズム。直接的な「実用」とは違う、独特の満足感。以来、この同人誌は、ずっと本棚の中でも「保存する用」を分類している一角に刺さっている。

 夏には3冊目も発行され、その安定感のある作画とキャラクター設定に、また興奮した。グッズや、フィギュア化などの情報も見てはいた。でも、ぐっと作者に会って話を聞きたい<ひっかかり>ができたのは、写真集の発売である。タイトルは、やっぱり『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい写真集』(一迅社)。1日に一度はチェックしているニュースサイト・アキバブログで、その表紙を見て瞬時に<ひっかかり>ができた。写真集のカメラマンは青山裕企。フェテッシュな能の痺れを生む『スクールガール・コンプレックス』『絶対領域』で知られる人物。カメラマンの腕か、モデルの力量か。とにかく、ルーティンでやっている雰囲気ではない、まさにイラストの世界が三次元になったらこうなるという姿がそこにはあった。

 そこまで、カメラマンやモデルを本気にさせる作品力。それが、同人誌で発売された3冊のイラスト集。そして、1冊のマンガにはあるのだと、確信させる。そんなことに気づけば、インタビューをせずにはいられない。

 どんな人が描いてるのだろう。

 どうやって、このテーマにたどり着いたのか。

 どんなパンツが好きなのか。

 こんなに人気を得ていることを、どう思っているのか。

 これまでどんな人生を送ってきたのか。

 聞いてみたいことは次々と浮かぶ。何よりも、イラストを見た時に改めて感じる燃えるようなもの。フィギュアやグッズ、写真集へと、次々と燃え広がっていく、熱いものの根源を見たいと思ってやまなかったのだ。

 午前中。前日に、とらのあなで見た、圧倒的な話題作であることを、ひと目で理解させる陳列を思い出しつつ、質問項目を整理する。整理しながら、改めてイラストを見る。そして、マンガも。

「こんな、グッと引き込まれてしまう世界を生み出せる人がいるのか」

 いったい、どんな人がこれを描いているのだろう。その好奇心は止まるところを知らない。

 あまりに、やる気があったのか。

 待ち合わせが2時なのに、1時間も早く到着してしまった都内某所の珈琲店。インタビューの相手に、都合のよい待ち合わせ場所を聞いて、池袋を指定される。必ず使うのは、だいたい、この店になる。入口の間口の狭さに反して、地下に広がるフロアは広い。混雑しているはずなのに、だいたいいつも、待たずに案内される。喫茶店で待ち合わせる時には、30分前と決めている。でも、1時間前は、さすがに早すぎだ。

 20代前半くらいの、笑顔がチャーミングなショートヘアのウエイトレスに案内されて席につく。アイスコーヒーを注文し、じっと待つことにする。机の上には、付箋をつけた同人誌。レコーダー。ボールペンとノート。レコーダーの電池を確認した後は、何もしないでじっと待つ。突然、相手が後ろから来るかもしれないから、スマホを弄るのも厳禁。

 存外に早く来たような気もしたが、ノートにメモした質問項目を改めて見ていると、すぐに時間は経っていく。

 時計を見ると14時。それから5分ほどして、電話が鳴る。

「いま、入口にいるのですが、どちらにいらっしゃいますか?」

 礼儀正しい電話の声。席を立って、通路に出ると、清廉な雰囲気の青年の姿を見つけた。

 席に座って、互いに名刺交換をしていると、ウェイトレスが注文を取りに来る。40原は、少し考えてからアイスティーを注文する。

「お待ちくださいませ」

 うわべだけではない、心のこもった丁寧なしぐさ。でも、ふっとテーブルの上に目をやって「しまった」と、心の中で呟く。テーブルに置かれた『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』。シリーズ1冊目の表紙に描かれている嫌な顔をした女のコはメイド。デザインが異なるとはいえ、この珈琲店のウェイトレスの制服は、レトロなメイド風味。自ずと少しばつが悪い顔をしてしまう瞬間。その空気を変える40原の一言。

「ボクも、この店を打ち合わせでよく使ってるんです。フィギュアのサンプルとかも広げたりしてますしね」

 裏表のない笑顔が、場の空気を一瞬で穏やかなものに変える。刹那、あたりを見回す。隣のテーブルには、出張らしき気の張ったサラリーマンが2人。あとは、かしましい老女たちのグループに、老人たち。賑やかな店の中で、このテーブルは、とりわけ和んだ雰囲気があった。

 それは、40原の立ち振る舞い。口から出る言葉や態度は、もう10も20も年齢を重ねているかのように落ち着いている。同人誌は合計4タイトルで7万部以上売れている。商業出版になった写真集も話題沸騰。ときどき新作イラストがアップされるTwitterのフォロワー数は10万人に届こうとしている。ありきたりだが、若くして実力を認められて、名声も収入も得ている……という表現が、もっともしっくりくる。

 だが、数字で具体的に示される評価を前にしても、彼は極めて謙虚だ。自分の仕事の面白さと情熱を語る言葉は膨大。でも、自分の誇ろうとする天狗の鼻は片鱗も見えない。

「こんなに売れると生活が変わったりするんじゃありませんか?」

「それが、この本の売り上げは、ほとんどテをつけていないのです。同人誌の印刷費と、アシスタントしてくれた友人とかに支払っているだけです。売上は、活動を支援してくれるためのものだと思っています。だから、贅沢する……もっといい部屋に住むとか、贅沢な旅行に行くとかはないんですよね。このお金を使って、新しいことをやりたい。ほら、お金を使わないとできないこともあるじゃないですか、人の力を借りなければいけないプロジェクトを立ち上げるとか……」

 イラストレーターの仕事の合間の、自分のやりたかったことを試してみたら、たまたま大きくなっただけ。ならば、もっと喜んでもらえるものを考えていきたい。パンツをきっかけに、40原は、そんなことを考えるようになった。この成功も、たまたま思いつきで当たったわけではない。そこへ至る紆余曲折。そして今も、続く次はどんな嫌な顔でパンツを見せてもらうのかの試行錯誤は、止まることを許されない前進だ。そこに、40原は無限の喜びを感じている。

 同人誌を通じて、一躍名を轟かせる40原。けれども、最初にパンツ本を頒布した2015年の冬コミまで、コミックマーケットには出展したことがなかった。コミックマーケットへの出展は「嫌な顔されながらおパンツを見せて欲しい」という新ジャンルの誕生と共に生まれた、新たなチャレンジ。

 40原のpixivを見てみると、パンツ以前と以後は、まるで別人。pixivに「嫌な顔されながらメイドさんにおパンツ見せてもらいたい」が投稿されたのは、15年6月7日。それ以前のイラストも、二次創作やオリジナルまで膨大だ。精緻に描かれたイラストの美麗さはいうまでもない。けれども、そこにはパンツに見られるような、ぐっと引き込まれるような要素はない。無礼を承知でいえば、ただの上手で綺麗なイラスト……。

 その壁が、40原をパンツへと導いたものだった。友人の誘いでオリジナル作品のみの同人誌即売会であるコミティアを知り、出展したのは13年の秋。その頃、既にpixivでイラストを発表していた40原は、美麗なイラストを描けることで、少しずつファンを得ていた。pixivではランキング上位の常連となり、仕事の依頼も舞い込むようになっていた。ならばと思い、最初は100部も売れればいいなと思って刷ったのは同人画集。「最初に行った時に、ゆったりしていて好きだな」と思ったコミティアで、同人誌は着実に売上を伸ばしていった。pixivの閲覧数も同様。それと共に、舞い込む仕事の数も増えてきた。自ずと生活は安定する。

「でも……」

 ある日、40原は気づいた。このまま知名度が上がっていくのだろうか。よしんば、知名度が上がっていったとして、40歳になり、50歳になった時、自分は同じようなクオリティの作品を描いて、人気を保つことができているのだろうか。

「この綺麗なのをずっとやっていても、たぶん、ボクって、このままいってもなんにもなんないな……」

 pixivでは、日々ランキングが更新される。デイリー、ウィークリー、マンスリー。上位にランクインするのは心地よい。新しい作品をアップロードするたびに、しばらくすると通知欄に、何位にランクインしたかが通知されるのも当たり前になった。新しく自分をフォローしてくれる人も増えていく。評価点もブックマーク(pixivアカウントの所持者が自分のお気に入り作品を保存する機能)の数もうなぎ登りで増えていく。だが、その興奮もやがて薄れて、次第に冷静になっていく。

「今は……」

 そんな言葉が、頭をよぎり始める。今は、新しい作品を公開するたびにpixivのランキング上位に入ることができる。でも、pixivだけでも、描き手はどんどんと出てくる。海外に目を向けると、自分より上手いヤツはいくらでもいる。

「勝てない」

 そう思った時、40原に新たな挑戦の意志が生まれた。

「もっと、自分の好きなこと、面白いこと。ちょっと自分の我を出してもいいのかなと思ったんです。綺麗なイラストばかりだったので、馬鹿なことをしてみたいな……と。息抜き程度で」

 自分の我を出そうと考えた時に、40原の頭に浮かんだのは「ドMが喜びそうなもの」。確かに自分はドMである。だから、ドMが喜びそうなイラストを描くことはできる。でも、ただ女のコにいじめられるだけだでは、どうしようもない。ハードなプレイのイラストを描けば、ドMの人には受けるかもしれない。でも、それは、ニッチな閉じた世界。ドMじゃない人に、ドMの感覚を伝えることにはならない。その前に、パッとみて「自分の趣味じゃないな」と、ブラウザの画面を、そっと閉じられるだけ。そうではなく、自分の「ドMって面白いな」というメッセージを伝える方法はなにか。ああでもない、こうでもないと考えて、たどり着いたのがパンツだった。「なんかパンツってキャッチーで面白いな」と。

 時代は変われど、男性が成長する過程で最初に性を意識するもの。それがパンツである。「少年ジャンプ」「コロコロコミック」「コミックボンボン」。そうしたマンガ雑誌に、手を変え品を変えてお色気要素として描かれるのがパンツ。年齢と経験を重ねて、ざまざまな性の嗜好が分岐しても、誰もが必ずといってよいほど、男性の多くが必ず興味を持つアイテム。それに、ドM要素を追加すれば、多くの人にわかってもらえるのではないか。

 そして「嫌な顔をしながら」という要素。ここには、40原の独自の哲学がある。

「今の萌えアニメとか萌え絵って、笑顔、愛想を振りまいているのが基本ですよね。それだけっていうのは、何かウソのような気がしていたんです。美少女って、もっといろんな表情を絶対にするじゃないですか。ずっと笑顔で愛想を振りまいているだけの女のコよりも、もっとパーソナルな部分が見えてくるのではないかと考えたんです」

 そうして出来上がった、最初の作品。前述のメイドさんのイラストをTwitterにアップロードしたのは、15年5月。反応は、40原の予想を、斜め上から裏切った。それまで、1,000人程度だったフォロワーが、アップロードした、その日のうちに2,000人あまり増えた。

「何これ! みんな面白いと思ってくれているんだ」

 反応が熱烈であれば、それに応えようと、創作意欲が燃え上がるのが、描き手というものである。描き手が熱をこめた作品は、ただ見るだけの人をも燃え上がらせる。燎原の火のごとき勢いは止まらない。新しい作品をひとつアップロードするたびに、フォロワーが2,000人増えるようになった。当然、スマートフォンでは通知音が鳴り続ける。音をオフにしても、バイブレーションは止まらない。通知を切って、時々チェックするようにしてみたが「え、通知ってこんな数になるんだ」と、見たこともない数字がいつも表示されるようになった。

 それだけ、40原の作品が幅広く受け入れられた理由。そのもっとも重要なことに、決して18禁にはしないという縛りをかけていたことがある。18禁のイラストを描くことには、抵抗がない。でも、18禁にすれば途端にイラストを楽しむ層が絞られてしまうのではないかと考えたのだ。

「18禁にしてしまうと、当然、18歳以下には見られなくなってしまいます。でも、そういうコたちに届けたい……性癖をこじらせてあげたいという思いがあるです。ほら、ボクが小学校の時とか中学生の時に見た、あのドキドキ感。桂正和先生の『I”s』を読んだ時に感じた<なんだ、このパンツのクオリティは!>という驚き。あの感覚を演出したかったんです。それは、新しい扉を開かせるじゃないですか」

 単にドM嗜好なのではない。少年の時、パンツで感じたドキドキ感を今も味わいたい。それが、40原の作品のベースになっている。そして、ドMとパンツという組み合わせが図に当たっても、忘れることのない謙虚さ。

「ボクは、人を喜ばせることを怠っていたと思うんです」

 単に、当たったことがうれしいのではない。自分が本当に好きなものを、楽しんで描き、それを見た人が喜んでくれている。そこに、とてつもない喜びを感じているのだ。だから、情熱はさらに右肩上がりになっていく。夏にコミックマーケットで頒布した3冊目のイラスト集では「おパンツデータ」というページもつくった。それぞれの女のコが履いているパンツのサイズや素材。当て布の有り無しやデザインなどを、見開きページにまとめているのだ。

「イラストのもとになるパンツは、Amazonなどで買って調べているんです。それで、タグとか見ていたら、こういうのが載っていると妄想が広がると思ったんです」

 このアイデアは、見事に成功している。40原の作品には、ほんのりとパンツを履いている女のコの匂いというものがある。ところが、そのデータは、そのパンツが決して架空のものではないことを読者に提示する。その瞬間、フッと読者は鼻で息を吸い込む。そう、広がる妄想が、女のコがはいているパンツ。クロッチの中からから染み出る、生々しい匂いが、あたかも目の前にあるように錯覚させる。

 40原のパンツへの愛が、とりわけ色濃くでるのが、ポージングだ。下から煽るとか、正面からとか、ありきたりなポーズに拠ることはない。

「ボクの趣味が色濃く出ていると思うんですけど、ポージングフィギュアを机に置いて眺めています。それで妄想が膨らむじゃないですか。どういう角度で、どうパンツを見せてもらおうかな……。いろいろとフィギュアを動かして、こうじゃないな、腕の角度とかこうしたほうがいいとか考えています。フィギュアは、可動域が決まってるから、描くときはこうしようととか考えます。それから、基本のポージングはこうで、お尻はこうがいいなとか、書き起こして、絵的なウソへと修整していくわけです」

 この「絵的なウソ」という言葉に、40原のパンツへのこだわりが込められている。絵心のある人ならば、作品をみればハッと気づく。どのイラストも、焦点の中心にはパンツがある。嫌な顔とパンツが融合した作品だが、まずはパンツありきだ。要は、見せてもらっている側=読者の視点では、こんな物語がある。

 パンツが見たくて見たくてたまらない。そして、ついに意中の女のコに「パンツを見せて欲しい」と懇願してしまう。そして、驚き、呆れて、嫌な顔をしつつ、女のコはパンツを見せる。昨年末のコミックマーケットで頒布された『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい漫画』では、その内面的が順を追って、濃厚に描写されている。

 そこでは、女のコとの関係性。募っていく、パンツを見たいという想い、葛藤。いよいよ、パンツを見せて欲しいといわれた時の、女のコの戸惑いと呆れ。そして、いよいよ嫌な顔をされながら見せてもらえるパンツ。わずか12ページの中に、とてつもない濃いドラマが詰まっている。

 そうしたドラマは、1枚のイラストで描かれた場合にも、必ず構築されている。イラスト集の場合は、左ページにまとめられているプロフィールや、嫌な顔をした時に吐く言葉。それらを、40原は絵を描きながら暖めていく。

 最初に考えるのは、大まかなプロフィール。歯科助手、保母さんといった部分。それを考えた上で、描くキャラクターには、一つの方針ようなものがある。

「ボクは、普段はMのような王道の可愛いコたちにパンツを見せてもらいたいと思っているんです。みんなが可愛いと思う女のコたちに嫌な顔される、罵倒されるから気持ちいいと思うんですよ」

 元からSの要素を持っているようなタイプではない。恋愛ギャルゲーの王道ヒロイン的な女のコが、嫌な顔をしながらパンツを見せる。そして、罵倒の言葉を投げかける。そのギャップを演出に重きが置かれている。

 だから、表情を考える時の流れも特徴的だ。イラスト集の左ページでは、描かれている女のコたちが、日常で見せている表情がいくつか描かれる。日常の顔を描いてから、時間軸に沿って、嫌な顔を描いているのかと思いきや、これは逆。

「可愛いコからつくると、嫌な顔をさせにくくなるんですよね。自分でつくったキャラクターなので、嫌な顔の度合いが弱くなってしまうんです」

 イラストが出来上がり、女のコの表情も描いてから、詳細なプロフィールとセリフを考える。

 これは、イラストと同じく重要な部分。例えば、3冊目のイラスト集に描かれた歯科助手さんの場合、こうなっている。

 歯科医院で働く20代のお姉さん。
 マイペースな性格で甘い物が大好き。
 学生の頃から大きな胸がコンプレックス。
 気にするあまり逆に強調してしまうことも。

「歯の治療よりも人格を直した方がいいんじゃないですか?」

 極めて簡潔な文章。「文章が多いとノイズになっちゃう」。あまり文章が多いと、飽きるし脳内で楽しむ部分が削がれていくというのが、40原のこだわり。

「言葉が長いと、ボク自体が萎えちゃうんですよね。妄想で補完する部分があっていいと思ってます」

 だから、目指すのは、できるだけ少ない情報で最大限の表現をすること。

「イラストを描いている間に、ぼやっとイメージはあります。でも、なかなか文章にするのが下手くそで、言葉にアウトプットに時間がかかっています。で、作業を手伝ってくれる<友人>がいるんです。彼は、ぜんぜんオタクじゃなくて、サブカル寄りのキャラなんですが、ボクがばーっと言ってるのを書き留めて、アウトプットしてくれるんです」

 手伝ってくれる友人とは、中学生の時からの付き合い。肉体関係でもありそうなほど、濃密な時間を共に過ごして来た仲。だから、40原の、なかなか言葉にできない情熱的なイメージを、的確に言葉にしてくれる。

 そうして生まれる作品。でも、女のコの名前だとか年齢、どういう経緯で、パンツを見せる見せないの話になったかは、バッサリと省かれている。それも、40原の考えがあってのこと。今、とりわけ商業でリリースされている作品は、どんなジャンルも説明を語りすぎているのではないかと見ているから。

「長く売れている作品というのは、謎が多かったり、妄想で補完したり、あるいは友達と議論できる要素が多いと思うんです。そうやって語ることも、作品としての醍醐味の一つだと思うんですよね」

 現在、40原は30歳。「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」にたどり着くまでの道程には、さまざまな希望と偶然とが交錯している。

 生まれ育ったのは、三多摩の西武線沿線。ごくごく平凡に育った中で、唯一違っていたのは、父親がレンタルビデオ屋通いを、ほぼ日課にしていたこと。

「父親が、映画が大好きでTSUTAYAによく行ってたんです」

 記憶にあるのは、まだ6歳。幼稚園だった時のこと。父親に、何か好きなものを借りていいと言われた。店内を回って、アニメコーナーへ。ふと、見つけたのが『機動警察パトレイバー』。

「パトカーがロボットになってる!」

 まだ6歳の40原に『機動警察パトレイバー』が、どんな作品なのか知るよしもなかった。でも、ジャケットに描かれたパトカーと合体したかに見えるロボットは、少年ならではの、好奇心に火をつけた。凡庸な家庭なら「それは、大人のアニメだよ」などと、もっと子ども向けの作品を薦めるもの。でも、そうではなかったのが、40原の幸運だった。

 家に帰って、ワクワクしながら観た『機動警察パトレイバー』。思っていたのとは違って、あまりロボットは出てこない。でも、40原は、6歳にして何かに魅入られたように、この作品にハマった。旧OVA版から、テレビ版。新OVA版に、劇場版。

 出会ったのは、ちょうど劇場版2が公開される1年ほど前。劇場版2のレンタルが始まった時も、父親に借りてもらおうと楽しみにTSUTAYAに向かった。でも、何度出かけても、すべて貸し出し中。その焦燥感は、少年の胸の中に、期待値をどんどん貯め込んでいった。

「あんなの、6歳くらいの子どもが見るようなものじゃないですよね。でも、レンタルできてからは、何度も見ました。ラストのバトルだけ何回も見たりだとか……」

 今でも、押井守は大好きだという40原。

 振り返って見た結果といってしまえば、それまでだけれども、もう少年の進むべき人生は、ある程度決まっていたのだと思う。都心のターミナルへつながる最寄り駅の周囲は、少しばかりのチェーン店と古ぼけた商店街。その周囲に、ずっと広がるのは団地と住宅地。三多摩地域の風景は、23区とはまったく違う。都会とも地方都市ともつかない街で、友人たちとつるみながら少年は成長していった。

 とりわけ、40原の記憶にあるのは中学生の時に5人ばかりの友人とつくった「プラモデル部」。集まって、ただひらすらにプラモデルを作り続ける、勝手に立ち上げた部活動。高校に進み、水彩画に熱中するようになってからも、やはり集まる仲間は、何か創作をすることに喜びを感じるヤツが多かった。漠然としていた将来の進路も、次第に固まってくる。

「進路を決める時期になって、何人かがアートの専門学校にいく。だったら自分もそうしようと手を挙げたんです」

 池袋にある創形美術学校で、3年の学びを終えて、40原が職を得たのはアニメ制作会社だった。まだ20代になって間もない40原がなりたかったのは、イラストレーターであなく、アニメーターだった。だからといって、単に業界の片隅に席を置くことができれば満足なんて、矮小な気持ちはなかった。

 自分の力で、アニメーションでひとつの作品をつくりたい。そのための技術が欲しかった。作りたい作品の方向性は、当時の流行からは、かけ離れていた。

「『ロボットカーニバル』とか『迷宮物語』とか。大友克洋とか今敏の作品が、ものすごく好きだったんです」

 でも、その第一歩となる動画マンとしての仕事で、彼は早くも挫折した。いや「挫折」ではなく、自分が向いてないと気づいたのだ。まず、動画から原画になるまで1年か2年。そこまでは、下積みの日々。原画も、動画検査があって、二原があって、ようやくたどり着くところ。そこから、キャラクターデザインとか、演出へと進む。自分の作品をつくることができる可能性のあるところまで、たどり着くのは40歳半ば。「長いな。これは飽きちゃう気がするな」。40原の望みは、作品を作ること。おまけに初任給も5万円。コンビニでバイトしたほうがいい金額なのに、先輩からは怒られる。こんな安い給料は、おかしいはずなのに、みんな妙に納得していて、おかしいとすら思わない。

「向いてない。向いてないから……辞めよう」

 決断は早かった。

 でも、これからどうすればいいのか。

 とりえあえず、バイト暮らしの日々が始まった。最初は、個人営業のビデオレンタル店。やたらとアダルトビデオコーナーの大きい店では、興味を惹かれる人間模様が渦巻いていた。毎週1回、必ずアダルトビデオを10本借りていく客。週末になると、仲むつまじげに来ているカップル。その男性のほうが、平日にこっそりとアダルトビデオをレンタルする。家族連れで訪れる父親も、やっぱり一人で来た時には、アダルトコーナーに直行する。そこには、秘め事を覗き見ているような楽しさがあった。

 地域では、アダルトビデオの品揃えでは、どこにも負けていなかったその店も、時代の流れと大手チェーンには抗しきれず、あえなく閉店。次に始めたのは、イタリアンが売りのファミレスの厨房。

「1年くらいピザを捏ねていたんですけど、そうすると、次第に責任ができてきて……」

 ピザを捏ねるだけなら、楽なアルバイト。でも、バイトでも古株になっていくと、必然的にやるべき仕事は増えていく。釜から出された熱々のピザを素手で皿に載せて、見栄えよく飾り付けする。パスタやら何やらと、どっちを向いても熱くてつらい。フライパンの中で飛び跳ねる油は、時給には見合わない。

 これは、やっていられない。

 意を決した40原は、就職が決まったとか、なんだかんだ理由をつけて辞めることにした。店長や同僚たちに「おめでとう」と見送られ、むずかゆい思いもしたけど、とにかく脱出には成功した。

 次はどうしようと考えて見つけたのは、大型スーパーの品出しだった。深夜の店内で、配送されてきた食品や雑貨を陳列する仕事。深夜のアルバイトで働く同僚には、一風変わった人が多かった。今まで出会ったことのない人々との交流に、少し興味がわきながらバイトしている頃に、震災があった。

「これから、経済も悪くなるから、うちで就職しなよ」

 社員の気持ちはうれしかったが、そうしてしまうと、もう絵を仕事にすることができないような気がした。また、なんだかんだ理由をつくって辞めた。

 文字通り、浮き草のような時間。「要は、挫折しちゃっていた」と、40原は思い出す。絵を描きたいという思いはあった。だから、絵は描いていた。イラストなのか落書きなのか、自分でもよくわからないものを描いていた。

 ただ、幸運にもスキルアップする機会があった。卒業した専門学校からのつながりで、アートプロジェクトを運営する会社でアルバイトをすることになった。

 仕事は、所属アーティストのアシスタント。仕事の合間に、自分も絵を描いているといえば、当然、見せる話になる。持参したいくつかの作品を見てもらった。どんな評価を下されるのか、心臓が昂ぶる沈黙の時間。すっと顔をあげたアーティストは、こう言った。

「上手いけど、パソコンの使い方をわかっていないから、教えてあげるよ」

 すでに多くの作品で世界的な評価を得ているアーティストにマンツーマンで教わる、CGアートの基礎。それまでは、半ば見よう見まねの自己流だった描き方は、技術を得て、みるみるうちに上達していった。

 それでも、まだ浮き草は、根を下ろさなかった。

「これから、どういう風に生きていこうか」

 そんな時、作業の合間にネットサーフィンをしていて、ふと一つの取材記事にたどり着いた。それは、マンガ家・西原理恵子が自身の上京してからの青春期を語っているインタビュー記事だった。

 美大の門を開いたら、自分が最下位。この世界で勝負するのは無理だっていう、そのくらいの客観性は持ってましたね。

 イラストレーターは無理。イラストレーターはもっといい雑誌で絵を描くでしょ。だから、イラストじゃなくてカット描きをやろうと思った。

 ミニスカパブでバイトしていると歌舞伎町のスゴイ現実もたくさん目にする。お金がなくて、ああなったらどうしようという気持ちは、後ろからエイリアンが追いかけてくるようなものだから、とりあえず、何も考えずに、「売り込みしかねぇぇぇー」と、ただ焦っていたわけです。

 絵の仕事で月30万稼ぐことが目標だった。

 それが大学の3年の時にできた。ほんとにうれしかったですね。これで東京でやっていける。もうミニスカパブに行かなくていいんだって。

 当時は、1カット600円ぐらいから始まって、次第に1枚3000円ぐらいになった。それを月に100枚描くと30万円。
(nikkei BPnet こうして逆境を越えた
西原理恵子:エロ本のカット描きから始まった仕事。プライド捨てて「売り込みしかない」http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090526/155497/?P=1

 一度最後まで読んで。もう一度頭から読み直して。そして、同じところだけを何度も読んだ。

 専門学校を卒業してから、数年間の自分のやってきたことを思い出した。

「ボクは、こんなんじゃダメだ。考え方が間違っている」

 自分のふがいなさを嘆いていたのではない。感動していたのだ。アニメーターをやっていた時の自分には、西原のような考え方はなかった。1枚動画を描けば200円。それを月に1,000枚描けば……なんて、考えたこともなかった。何も根拠もないままに「自分の限界はここだ」と心の中で線を引いて、その外へと挑戦していこうとする気概もなかった。

「自分のやりたいことで、食べていこうなんて思うのは間違っている」

 自分のやりたいことで食べていくんじゃない。まずは、絵でお金をもらって食べていく。そのことを感がなくてはいけないと思った。

 にわかに自信が湧いてきた。「自分と西原さんを比べた時にはどうだろう」。描いている絵のスキルだけで比べたならば、自分のほうがスキルがある。自分のほうが、綺麗で上手な絵を描いているのは間違いない。「西原さんは、自分よりもスキルがないのに、のし上がっている」。だったら……。

「自分は、どうにか食べていく道があるはずだ」

 西原が、食べるためにと必死に描いていたのは、エロ雑誌のカット描き。なら、現代にそれに匹敵するものはなんなのだろう。西原は、イラストレーターではなく、カット描きだといっている。そうなのだ。自分には、その視点が描けていた。アルバイトの合間に描いている絵も、作家性のようなものを重視していて、流行の絵がどんなものかなんて、考えたことがなかった。「西原さんが、やったように、今、もっとも使ってもらいやすそうな絵柄とジャンルを探そう」。それは、すぐに見つかった。

 40原が、西原の人生に感動をしていた、その頃。すなわち12年頃、急激に市場を拡大させていたのがソーシャルゲーム業界であった。この年の1月に矢野経済研究所が発表した資料では、11年の市場規模は、前年度比1.8倍の2,570億円。さらに、この年には3,429億円まで拡大すると試算されていた。しかも、この金額は広告収入を除いた金額である。拡大する、新興の開拓地であるソーシャルゲーム業界には、次々と資本が投じられ、新しいゲームが開発されていた。一部のゲームでの射幸心を煽るシステムは批判され「廃課金」などといった言葉がネットで見られるようになっていた。批判が殺到するのは、市場が急激に拡大し、誰もが無視できない存在になっていることとコインの裏表だった。

 そんなゲームに欠かせないのが、キャラクターの描かれたカード。その描き手がまったく足りず、常に「誰かいないか」という状態。ちょとでも可愛い女のコが描けるならば、瞬く間に引っ張りだこになることができる、まさに「バブル」。そして、このバブルは、企業・エンジニア・イラストレーターなどなど、さまざまな人々が、雲を掴み駆け上がることのできる、またとない機会を与えていた。

「ソーシャルゲームでは、可愛い女のコの絵が足りていない。だったら、それをやろうと思ったんです」

 もちろん、自分が可愛い女のコを描くことができるという自信などなかった。むしろ、さまざまなイラストを見ると、自分よりも可愛い女のコを描くことができる人は山のようにいた。でも……。

「この人たちよりも、自分は背景を上手く描くことができるじゃないか」

 だから、全体のクオリティでは、可愛い女のコを描くことができる。それを、自分の売りにしよう。

 2年余りの間、水面を漂っていた浮き草が、少しずつ根を下ろしていった。

 数時間続いたインタビューの中で、40原はずっと楽しそうだった。

 自分も大好きなパンツをきっかけに、世界が無限に広がっていっている。大勢の人から寄せられる感想。それをきっかけに、自分では気づかなかった視点を知ることができる。そんな日が続くのが、楽しくて仕方がないようだった。もちろん、普通に絵を楽しんでくれるのもよい。でも、読者一人一人が、違った楽しみ方をしてくれることに、俄然、興味が沸いてくるのだ。

 本来、作品はドM向きにつくったつもりである。ところが、ある自分はドSだという人は「女のコは、脅されて嫌々見せているという想像をして楽しんでいる」という感想をくれた。そういう、自分の気づかない楽しみ方をしてくれているのが、とにかくうれしかった。

「いろんな楽しみ方ができるじゃないですか、そういうので妄想して楽しんで欲しい。<今回は、こういう妄想で楽しみました>とか感想がくると、すごくうれしいんです」

 自身の作品であるイラストを超えて、フィギュアや、エロライトノベル、写真集と世界は膨張を止めない。自分の作品をあれこれと、他人に使われることに嫌な気持ちなどない。それは、とてもうれしいこと。そして、もしも自分よりも優れた作品「原作よりもよかった」と感想が舞う作品になっても、嫉妬は微塵もない。

「そのほうがコラボした甲斐があるじゃないですか。1+1が2になるんじゃなくて、どんどん大きくしていきたいんです。ラノベは、パラレルワールドと考えて、元ネタにして自由にやってもらいました。こんなコラボを、もっとやりたい」

 自分がパイオニアとして、頂点に立とうという欲望などは微塵もない。その世界で、大勢の人が自由に遊んでくれる未来が、40原の目には映っているのだ。やりたいことは、無限に広がる。さまざまな描き手による「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」をテーマにしたイラストやマンガ。このテーマだけの同人誌即売会など、アイデアの泉は枯れることを知らない。

「冬コミでは、いろんな作家さんとコラボして合同本を出す予定です」

 その目的は、このテーマの「布教」だけではない。「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」をきっかけに、さまざまな描き手がいることを知って欲しいのだ。

「ボクの同人誌を買った人は、初めて同人誌を買ったという人もたくさんいます。その中には、普段、同人誌を買わない人が、SNSで知って買っているのも多いんです。同人誌ショップには行くけど、普段は同人誌は買わないという人も買ってるから7万部までいってるのだと思う。そういう人たちに対して、ボクの同人誌だけで満足しないで欲しいんです。いろんな作家さんがいていろんな世界がある。で、同人沼にハマって欲しいと思っています」

 さまざま、人生に紆余曲折はあったけれども、自分の原点は、偶然手に取った『機動警察パトレイバー』。少年の頃の自分のように「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」を、手に取った人が、それをきっかけに、どんなに面白い作品を生み出してくれるのだろう。未来への期待が、40原に更なる創作へとかき立てている。7万部を超えた同人誌の売上は、もっと大勢の人に楽しいものを伝える機会を提供してくれている。

 もちろん、一度は「挫折」した、アニメーションへの意欲も、決して忘れてはいない。

 40原は、この上なく瞳を輝かせて言う。

「アニメも、やりたくて仕方がないんです……」
(取材・文=昼間たかし)

 

『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』40原が語る“パンツ愛”そして、これから

 それは誰もが、はたと足を止める魅力を放っていた。

 10月初頭の夕刻、秋葉原の雑踏。ふと、手に入れたい本があるのを思い出して、秋葉原駅に降りた。電気街口の改札を抜ける。買い物に訪れた観光客の笑顔。待ち人の元へと逸る足音。メイド喫茶の客引きの乙女の甲高い声。それらをかき分けて目指したのは、同人ショップ・とらのあな秋葉原店A。ひとまず、新刊の並んだ1階をぐるりと一周眺めてみる。それから、エレベーターの前に立つ。ちょうど扉は閉まって、上へ上がっていく。間の悪さに、ふっとため息をついて、横にある階段を眺める。雑居ビル前とした、狭っ苦しい階段。目指す7階までは、遙か摩天楼の上のよう。

 一度7階まで昇った後に、再び降りてくるエレベーターを待つべきか。いや、そんな無為な時間を過ごすのはイヤだ。第一、一度目の前で扉が開いたエレベーターは、地下1階へと降りていくに違いない。

 短い人生に、待ちの時間はもったいない。階段に足をかけ、少し早足で上へ上へ。こんな時には、何も考えないのが正解。無心にならなければ、途中で荒い息を吐き出して、気分も逆立ってしまうもの。18禁の揃ったフロアで荒い息をしているのは、センスがない。途中、乱れたネクタイを直しながら、2階、3階。

 まだまだ、半分も登ってない。

 でも、ようやくたどり着いた4階フロア。そこで、片手を手すりについたまま、ふっと足が止まる。もう、体力が尽きたのではない。そこの陳列に、瞬時に心を奪われたのだ。

『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』

 そんな文字と、文字そのままに、女のコたちが嫌な顔をしながら、パンツを見せているイラスト。そして、写真。

 ああ、そうだ。これは、全年齢向けなのだ。当たり前だ。描かれているのは、パンツを見せている姿だけ。セックスはもちろん、キスだって描かれてはない。

 こんなにも売れているのか。

 フロアの入口を埋め尽くすように、縦と横とに積まれた同人誌と写真集の山。イラスト集が3つ。マンガが1つに、写真集が1つ。それに、コラボしたエロライトノベル。店が全力で売りたいと励む作品。そして、売れると判断した作品。多くの人が欲しがる作品。その迫力を見て、思う。

「もう一度、明日のインタビューを練り直さなくてはいけないな……」

 いきなり足を止めたためか。息はずっと荒かった。

 どうにも会ってみたくなる作品と作者との出会いは、いつも偶然。『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』も、やっぱりそう。昨年の夏のコミックマーケット。いつもの買い物を終えて、何かないかと漫然と会場の人混みに揉まれていた。そんな時、目に飛び込んできたのが、シリーズの第2作。巫女さんが、こちらに背中を向けながら、嫌な顔してパンツを見せている作品。

「ちょっと見せて下さい」

 一言断って、ページをパラパラとめくる。すぐに、ポケットから千円札を取り出した。

 これは、買うべき本である。

 それが、今回インタビューすることになった40原(しまはら)の<現在の>代表作である『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』との出会いである。

 すぐに千円札を取り出した理由は、極めて単純。ハッとしたのは、ページの構成だ。単にパンツを見せているイラストだけではない。嫌な顔のイラストを描いているだけでもない。右ページに、書名通りのイラストを配置。そして、左ページには、描かれた女のコたちの日常っぽい顔。職業などのプロフィール。そして、パンツを見せている時の台詞。それらが、一つの塊となって目に飛び込んでくる。M男向けだろうか。いや、そんなに単純ではない。単なるM男向けという要素を超えている。左ページの日常風景のような表情。そんな顔を見せているであろう日常は、プロフィールによって、さらに想像力を喚起する。見開きのページが、妄想スイッチを全開にして、見ているだけでどんどんと、ワクワク感が募ってくる。

 単なる性的な興奮ではない。もっと複雑で、楽しい何か。自宅に帰って、パラパラとめくるたびに、その独特の楽しさを何度も味わえる。楽しめるエロティシズム。直接的な「実用」とは違う、独特の満足感。以来、この同人誌は、ずっと本棚の中でも「保存する用」を分類している一角に刺さっている。

 夏には3冊目も発行され、その安定感のある作画とキャラクター設定に、また興奮した。グッズや、フィギュア化などの情報も見てはいた。でも、ぐっと作者に会って話を聞きたい<ひっかかり>ができたのは、写真集の発売である。タイトルは、やっぱり『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい写真集』(一迅社)。1日に一度はチェックしているニュースサイト・アキバブログで、その表紙を見て瞬時に<ひっかかり>ができた。写真集のカメラマンは青山裕企。フェテッシュな能の痺れを生む『スクールガール・コンプレックス』『絶対領域』で知られる人物。カメラマンの腕か、モデルの力量か。とにかく、ルーティンでやっている雰囲気ではない、まさにイラストの世界が三次元になったらこうなるという姿がそこにはあった。

 そこまで、カメラマンやモデルを本気にさせる作品力。それが、同人誌で発売された3冊のイラスト集。そして、1冊のマンガにはあるのだと、確信させる。そんなことに気づけば、インタビューをせずにはいられない。

 どんな人が描いてるのだろう。

 どうやって、このテーマにたどり着いたのか。

 どんなパンツが好きなのか。

 こんなに人気を得ていることを、どう思っているのか。

 これまでどんな人生を送ってきたのか。

 聞いてみたいことは次々と浮かぶ。何よりも、イラストを見た時に改めて感じる燃えるようなもの。フィギュアやグッズ、写真集へと、次々と燃え広がっていく、熱いものの根源を見たいと思ってやまなかったのだ。

 午前中。前日に、とらのあなで見た、圧倒的な話題作であることを、ひと目で理解させる陳列を思い出しつつ、質問項目を整理する。整理しながら、改めてイラストを見る。そして、マンガも。

「こんな、グッと引き込まれてしまう世界を生み出せる人がいるのか」

 いったい、どんな人がこれを描いているのだろう。その好奇心は止まるところを知らない。

 あまりに、やる気があったのか。

 待ち合わせが2時なのに、1時間も早く到着してしまった都内某所の珈琲店。インタビューの相手に、都合のよい待ち合わせ場所を聞いて、池袋を指定される。必ず使うのは、だいたい、この店になる。入口の間口の狭さに反して、地下に広がるフロアは広い。混雑しているはずなのに、だいたいいつも、待たずに案内される。喫茶店で待ち合わせる時には、30分前と決めている。でも、1時間前は、さすがに早すぎだ。

 20代前半くらいの、笑顔がチャーミングなショートヘアのウエイトレスに案内されて席につく。アイスコーヒーを注文し、じっと待つことにする。机の上には、付箋をつけた同人誌。レコーダー。ボールペンとノート。レコーダーの電池を確認した後は、何もしないでじっと待つ。突然、相手が後ろから来るかもしれないから、スマホを弄るのも厳禁。

 存外に早く来たような気もしたが、ノートにメモした質問項目を改めて見ていると、すぐに時間は経っていく。

 時計を見ると14時。それから5分ほどして、電話が鳴る。

「いま、入口にいるのですが、どちらにいらっしゃいますか?」

 礼儀正しい電話の声。席を立って、通路に出ると、清廉な雰囲気の青年の姿を見つけた。

 席に座って、互いに名刺交換をしていると、ウェイトレスが注文を取りに来る。40原は、少し考えてからアイスティーを注文する。

「お待ちくださいませ」

 うわべだけではない、心のこもった丁寧なしぐさ。でも、ふっとテーブルの上に目をやって「しまった」と、心の中で呟く。テーブルに置かれた『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』。シリーズ1冊目の表紙に描かれている嫌な顔をした女のコはメイド。デザインが異なるとはいえ、この珈琲店のウェイトレスの制服は、レトロなメイド風味。自ずと少しばつが悪い顔をしてしまう瞬間。その空気を変える40原の一言。

「ボクも、この店を打ち合わせでよく使ってるんです。フィギュアのサンプルとかも広げたりしてますしね」

 裏表のない笑顔が、場の空気を一瞬で穏やかなものに変える。刹那、あたりを見回す。隣のテーブルには、出張らしき気の張ったサラリーマンが2人。あとは、かしましい老女たちのグループに、老人たち。賑やかな店の中で、このテーブルは、とりわけ和んだ雰囲気があった。

 それは、40原の立ち振る舞い。口から出る言葉や態度は、もう10も20も年齢を重ねているかのように落ち着いている。同人誌は合計4タイトルで7万部以上売れている。商業出版になった写真集も話題沸騰。ときどき新作イラストがアップされるTwitterのフォロワー数は10万人に届こうとしている。ありきたりだが、若くして実力を認められて、名声も収入も得ている……という表現が、もっともしっくりくる。

 だが、数字で具体的に示される評価を前にしても、彼は極めて謙虚だ。自分の仕事の面白さと情熱を語る言葉は膨大。でも、自分の誇ろうとする天狗の鼻は片鱗も見えない。

「こんなに売れると生活が変わったりするんじゃありませんか?」

「それが、この本の売り上げは、ほとんどテをつけていないのです。同人誌の印刷費と、アシスタントしてくれた友人とかに支払っているだけです。売上は、活動を支援してくれるためのものだと思っています。だから、贅沢する……もっといい部屋に住むとか、贅沢な旅行に行くとかはないんですよね。このお金を使って、新しいことをやりたい。ほら、お金を使わないとできないこともあるじゃないですか、人の力を借りなければいけないプロジェクトを立ち上げるとか……」

 イラストレーターの仕事の合間の、自分のやりたかったことを試してみたら、たまたま大きくなっただけ。ならば、もっと喜んでもらえるものを考えていきたい。パンツをきっかけに、40原は、そんなことを考えるようになった。この成功も、たまたま思いつきで当たったわけではない。そこへ至る紆余曲折。そして今も、続く次はどんな嫌な顔でパンツを見せてもらうのかの試行錯誤は、止まることを許されない前進だ。そこに、40原は無限の喜びを感じている。

 同人誌を通じて、一躍名を轟かせる40原。けれども、最初にパンツ本を頒布した2015年の冬コミまで、コミックマーケットには出展したことがなかった。コミックマーケットへの出展は「嫌な顔されながらおパンツを見せて欲しい」という新ジャンルの誕生と共に生まれた、新たなチャレンジ。

 40原のpixivを見てみると、パンツ以前と以後は、まるで別人。pixivに「嫌な顔されながらメイドさんにおパンツ見せてもらいたい」が投稿されたのは、15年6月7日。それ以前のイラストも、二次創作やオリジナルまで膨大だ。精緻に描かれたイラストの美麗さはいうまでもない。けれども、そこにはパンツに見られるような、ぐっと引き込まれるような要素はない。無礼を承知でいえば、ただの上手で綺麗なイラスト……。

 その壁が、40原をパンツへと導いたものだった。友人の誘いでオリジナル作品のみの同人誌即売会であるコミティアを知り、出展したのは13年の秋。その頃、既にpixivでイラストを発表していた40原は、美麗なイラストを描けることで、少しずつファンを得ていた。pixivではランキング上位の常連となり、仕事の依頼も舞い込むようになっていた。ならばと思い、最初は100部も売れればいいなと思って刷ったのは同人画集。「最初に行った時に、ゆったりしていて好きだな」と思ったコミティアで、同人誌は着実に売上を伸ばしていった。pixivの閲覧数も同様。それと共に、舞い込む仕事の数も増えてきた。自ずと生活は安定する。

「でも……」

 ある日、40原は気づいた。このまま知名度が上がっていくのだろうか。よしんば、知名度が上がっていったとして、40歳になり、50歳になった時、自分は同じようなクオリティの作品を描いて、人気を保つことができているのだろうか。

「この綺麗なのをずっとやっていても、たぶん、ボクって、このままいってもなんにもなんないな……」

 pixivでは、日々ランキングが更新される。デイリー、ウィークリー、マンスリー。上位にランクインするのは心地よい。新しい作品をアップロードするたびに、しばらくすると通知欄に、何位にランクインしたかが通知されるのも当たり前になった。新しく自分をフォローしてくれる人も増えていく。評価点もブックマーク(pixivアカウントの所持者が自分のお気に入り作品を保存する機能)の数もうなぎ登りで増えていく。だが、その興奮もやがて薄れて、次第に冷静になっていく。

「今は……」

 そんな言葉が、頭をよぎり始める。今は、新しい作品を公開するたびにpixivのランキング上位に入ることができる。でも、pixivだけでも、描き手はどんどんと出てくる。海外に目を向けると、自分より上手いヤツはいくらでもいる。

「勝てない」

 そう思った時、40原に新たな挑戦の意志が生まれた。

「もっと、自分の好きなこと、面白いこと。ちょっと自分の我を出してもいいのかなと思ったんです。綺麗なイラストばかりだったので、馬鹿なことをしてみたいな……と。息抜き程度で」

 自分の我を出そうと考えた時に、40原の頭に浮かんだのは「ドMが喜びそうなもの」。確かに自分はドMである。だから、ドMが喜びそうなイラストを描くことはできる。でも、ただ女のコにいじめられるだけだでは、どうしようもない。ハードなプレイのイラストを描けば、ドMの人には受けるかもしれない。でも、それは、ニッチな閉じた世界。ドMじゃない人に、ドMの感覚を伝えることにはならない。その前に、パッとみて「自分の趣味じゃないな」と、ブラウザの画面を、そっと閉じられるだけ。そうではなく、自分の「ドMって面白いな」というメッセージを伝える方法はなにか。ああでもない、こうでもないと考えて、たどり着いたのがパンツだった。「なんかパンツってキャッチーで面白いな」と。

 時代は変われど、男性が成長する過程で最初に性を意識するもの。それがパンツである。「少年ジャンプ」「コロコロコミック」「コミックボンボン」。そうしたマンガ雑誌に、手を変え品を変えてお色気要素として描かれるのがパンツ。年齢と経験を重ねて、ざまざまな性の嗜好が分岐しても、誰もが必ずといってよいほど、男性の多くが必ず興味を持つアイテム。それに、ドM要素を追加すれば、多くの人にわかってもらえるのではないか。

 そして「嫌な顔をしながら」という要素。ここには、40原の独自の哲学がある。

「今の萌えアニメとか萌え絵って、笑顔、愛想を振りまいているのが基本ですよね。それだけっていうのは、何かウソのような気がしていたんです。美少女って、もっといろんな表情を絶対にするじゃないですか。ずっと笑顔で愛想を振りまいているだけの女のコよりも、もっとパーソナルな部分が見えてくるのではないかと考えたんです」

 そうして出来上がった、最初の作品。前述のメイドさんのイラストをTwitterにアップロードしたのは、15年5月。反応は、40原の予想を、斜め上から裏切った。それまで、1,000人程度だったフォロワーが、アップロードした、その日のうちに2,000人あまり増えた。

「何これ! みんな面白いと思ってくれているんだ」

 反応が熱烈であれば、それに応えようと、創作意欲が燃え上がるのが、描き手というものである。描き手が熱をこめた作品は、ただ見るだけの人をも燃え上がらせる。燎原の火のごとき勢いは止まらない。新しい作品をひとつアップロードするたびに、フォロワーが2,000人増えるようになった。当然、スマートフォンでは通知音が鳴り続ける。音をオフにしても、バイブレーションは止まらない。通知を切って、時々チェックするようにしてみたが「え、通知ってこんな数になるんだ」と、見たこともない数字がいつも表示されるようになった。

 それだけ、40原の作品が幅広く受け入れられた理由。そのもっとも重要なことに、決して18禁にはしないという縛りをかけていたことがある。18禁のイラストを描くことには、抵抗がない。でも、18禁にすれば途端にイラストを楽しむ層が絞られてしまうのではないかと考えたのだ。

「18禁にしてしまうと、当然、18歳以下には見られなくなってしまいます。でも、そういうコたちに届けたい……性癖をこじらせてあげたいという思いがあるです。ほら、ボクが小学校の時とか中学生の時に見た、あのドキドキ感。桂正和先生の『I”s』を読んだ時に感じた<なんだ、このパンツのクオリティは!>という驚き。あの感覚を演出したかったんです。それは、新しい扉を開かせるじゃないですか」

 単にドM嗜好なのではない。少年の時、パンツで感じたドキドキ感を今も味わいたい。それが、40原の作品のベースになっている。そして、ドMとパンツという組み合わせが図に当たっても、忘れることのない謙虚さ。

「ボクは、人を喜ばせることを怠っていたと思うんです」

 単に、当たったことがうれしいのではない。自分が本当に好きなものを、楽しんで描き、それを見た人が喜んでくれている。そこに、とてつもない喜びを感じているのだ。だから、情熱はさらに右肩上がりになっていく。夏にコミックマーケットで頒布した3冊目のイラスト集では「おパンツデータ」というページもつくった。それぞれの女のコが履いているパンツのサイズや素材。当て布の有り無しやデザインなどを、見開きページにまとめているのだ。

「イラストのもとになるパンツは、Amazonなどで買って調べているんです。それで、タグとか見ていたら、こういうのが載っていると妄想が広がると思ったんです」

 このアイデアは、見事に成功している。40原の作品には、ほんのりとパンツを履いている女のコの匂いというものがある。ところが、そのデータは、そのパンツが決して架空のものではないことを読者に提示する。その瞬間、フッと読者は鼻で息を吸い込む。そう、広がる妄想が、女のコがはいているパンツ。クロッチの中からから染み出る、生々しい匂いが、あたかも目の前にあるように錯覚させる。

 40原のパンツへの愛が、とりわけ色濃くでるのが、ポージングだ。下から煽るとか、正面からとか、ありきたりなポーズに拠ることはない。

「ボクの趣味が色濃く出ていると思うんですけど、ポージングフィギュアを机に置いて眺めています。それで妄想が膨らむじゃないですか。どういう角度で、どうパンツを見せてもらおうかな……。いろいろとフィギュアを動かして、こうじゃないな、腕の角度とかこうしたほうがいいとか考えています。フィギュアは、可動域が決まってるから、描くときはこうしようととか考えます。それから、基本のポージングはこうで、お尻はこうがいいなとか、書き起こして、絵的なウソへと修整していくわけです」

 この「絵的なウソ」という言葉に、40原のパンツへのこだわりが込められている。絵心のある人ならば、作品をみればハッと気づく。どのイラストも、焦点の中心にはパンツがある。嫌な顔とパンツが融合した作品だが、まずはパンツありきだ。要は、見せてもらっている側=読者の視点では、こんな物語がある。

 パンツが見たくて見たくてたまらない。そして、ついに意中の女のコに「パンツを見せて欲しい」と懇願してしまう。そして、驚き、呆れて、嫌な顔をしつつ、女のコはパンツを見せる。昨年末のコミックマーケットで頒布された『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい漫画』では、その内面的が順を追って、濃厚に描写されている。

 そこでは、女のコとの関係性。募っていく、パンツを見たいという想い、葛藤。いよいよ、パンツを見せて欲しいといわれた時の、女のコの戸惑いと呆れ。そして、いよいよ嫌な顔をされながら見せてもらえるパンツ。わずか12ページの中に、とてつもない濃いドラマが詰まっている。

 そうしたドラマは、1枚のイラストで描かれた場合にも、必ず構築されている。イラスト集の場合は、左ページにまとめられているプロフィールや、嫌な顔をした時に吐く言葉。それらを、40原は絵を描きながら暖めていく。

 最初に考えるのは、大まかなプロフィール。歯科助手、保母さんといった部分。それを考えた上で、描くキャラクターには、一つの方針ようなものがある。

「ボクは、普段はMのような王道の可愛いコたちにパンツを見せてもらいたいと思っているんです。みんなが可愛いと思う女のコたちに嫌な顔される、罵倒されるから気持ちいいと思うんですよ」

 元からSの要素を持っているようなタイプではない。恋愛ギャルゲーの王道ヒロイン的な女のコが、嫌な顔をしながらパンツを見せる。そして、罵倒の言葉を投げかける。そのギャップを演出に重きが置かれている。

 だから、表情を考える時の流れも特徴的だ。イラスト集の左ページでは、描かれている女のコたちが、日常で見せている表情がいくつか描かれる。日常の顔を描いてから、時間軸に沿って、嫌な顔を描いているのかと思いきや、これは逆。

「可愛いコからつくると、嫌な顔をさせにくくなるんですよね。自分でつくったキャラクターなので、嫌な顔の度合いが弱くなってしまうんです」

 イラストが出来上がり、女のコの表情も描いてから、詳細なプロフィールとセリフを考える。

 これは、イラストと同じく重要な部分。例えば、3冊目のイラスト集に描かれた歯科助手さんの場合、こうなっている。

 歯科医院で働く20代のお姉さん。
 マイペースな性格で甘い物が大好き。
 学生の頃から大きな胸がコンプレックス。
 気にするあまり逆に強調してしまうことも。

「歯の治療よりも人格を直した方がいいんじゃないですか?」

 極めて簡潔な文章。「文章が多いとノイズになっちゃう」。あまり文章が多いと、飽きるし脳内で楽しむ部分が削がれていくというのが、40原のこだわり。

「言葉が長いと、ボク自体が萎えちゃうんですよね。妄想で補完する部分があっていいと思ってます」

 だから、目指すのは、できるだけ少ない情報で最大限の表現をすること。

「イラストを描いている間に、ぼやっとイメージはあります。でも、なかなか文章にするのが下手くそで、言葉にアウトプットに時間がかかっています。で、作業を手伝ってくれる<友人>がいるんです。彼は、ぜんぜんオタクじゃなくて、サブカル寄りのキャラなんですが、ボクがばーっと言ってるのを書き留めて、アウトプットしてくれるんです」

 手伝ってくれる友人とは、中学生の時からの付き合い。肉体関係でもありそうなほど、濃密な時間を共に過ごして来た仲。だから、40原の、なかなか言葉にできない情熱的なイメージを、的確に言葉にしてくれる。

 そうして生まれる作品。でも、女のコの名前だとか年齢、どういう経緯で、パンツを見せる見せないの話になったかは、バッサリと省かれている。それも、40原の考えがあってのこと。今、とりわけ商業でリリースされている作品は、どんなジャンルも説明を語りすぎているのではないかと見ているから。

「長く売れている作品というのは、謎が多かったり、妄想で補完したり、あるいは友達と議論できる要素が多いと思うんです。そうやって語ることも、作品としての醍醐味の一つだと思うんですよね」

 現在、40原は30歳。「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」にたどり着くまでの道程には、さまざまな希望と偶然とが交錯している。

 生まれ育ったのは、三多摩の西武線沿線。ごくごく平凡に育った中で、唯一違っていたのは、父親がレンタルビデオ屋通いを、ほぼ日課にしていたこと。

「父親が、映画が大好きでTSUTAYAによく行ってたんです」

 記憶にあるのは、まだ6歳。幼稚園だった時のこと。父親に、何か好きなものを借りていいと言われた。店内を回って、アニメコーナーへ。ふと、見つけたのが『機動警察パトレイバー』。

「パトカーがロボットになってる!」

 まだ6歳の40原に『機動警察パトレイバー』が、どんな作品なのか知るよしもなかった。でも、ジャケットに描かれたパトカーと合体したかに見えるロボットは、少年ならではの、好奇心に火をつけた。凡庸な家庭なら「それは、大人のアニメだよ」などと、もっと子ども向けの作品を薦めるもの。でも、そうではなかったのが、40原の幸運だった。

 家に帰って、ワクワクしながら観た『機動警察パトレイバー』。思っていたのとは違って、あまりロボットは出てこない。でも、40原は、6歳にして何かに魅入られたように、この作品にハマった。旧OVA版から、テレビ版。新OVA版に、劇場版。

 出会ったのは、ちょうど劇場版2が公開される1年ほど前。劇場版2のレンタルが始まった時も、父親に借りてもらおうと楽しみにTSUTAYAに向かった。でも、何度出かけても、すべて貸し出し中。その焦燥感は、少年の胸の中に、期待値をどんどん貯め込んでいった。

「あんなの、6歳くらいの子どもが見るようなものじゃないですよね。でも、レンタルできてからは、何度も見ました。ラストのバトルだけ何回も見たりだとか……」

 今でも、押井守は大好きだという40原。

 振り返って見た結果といってしまえば、それまでだけれども、もう少年の進むべき人生は、ある程度決まっていたのだと思う。都心のターミナルへつながる最寄り駅の周囲は、少しばかりのチェーン店と古ぼけた商店街。その周囲に、ずっと広がるのは団地と住宅地。三多摩地域の風景は、23区とはまったく違う。都会とも地方都市ともつかない街で、友人たちとつるみながら少年は成長していった。

 とりわけ、40原の記憶にあるのは中学生の時に5人ばかりの友人とつくった「プラモデル部」。集まって、ただひらすらにプラモデルを作り続ける、勝手に立ち上げた部活動。高校に進み、水彩画に熱中するようになってからも、やはり集まる仲間は、何か創作をすることに喜びを感じるヤツが多かった。漠然としていた将来の進路も、次第に固まってくる。

「進路を決める時期になって、何人かがアートの専門学校にいく。だったら自分もそうしようと手を挙げたんです」

 池袋にある創形美術学校で、3年の学びを終えて、40原が職を得たのはアニメ制作会社だった。まだ20代になって間もない40原がなりたかったのは、イラストレーターであなく、アニメーターだった。だからといって、単に業界の片隅に席を置くことができれば満足なんて、矮小な気持ちはなかった。

 自分の力で、アニメーションでひとつの作品をつくりたい。そのための技術が欲しかった。作りたい作品の方向性は、当時の流行からは、かけ離れていた。

「『ロボットカーニバル』とか『迷宮物語』とか。大友克洋とか今敏の作品が、ものすごく好きだったんです」

 でも、その第一歩となる動画マンとしての仕事で、彼は早くも挫折した。いや「挫折」ではなく、自分が向いてないと気づいたのだ。まず、動画から原画になるまで1年か2年。そこまでは、下積みの日々。原画も、動画検査があって、二原があって、ようやくたどり着くところ。そこから、キャラクターデザインとか、演出へと進む。自分の作品をつくることができる可能性のあるところまで、たどり着くのは40歳半ば。「長いな。これは飽きちゃう気がするな」。40原の望みは、作品を作ること。おまけに初任給も5万円。コンビニでバイトしたほうがいい金額なのに、先輩からは怒られる。こんな安い給料は、おかしいはずなのに、みんな妙に納得していて、おかしいとすら思わない。

「向いてない。向いてないから……辞めよう」

 決断は早かった。

 でも、これからどうすればいいのか。

 とりえあえず、バイト暮らしの日々が始まった。最初は、個人営業のビデオレンタル店。やたらとアダルトビデオコーナーの大きい店では、興味を惹かれる人間模様が渦巻いていた。毎週1回、必ずアダルトビデオを10本借りていく客。週末になると、仲むつまじげに来ているカップル。その男性のほうが、平日にこっそりとアダルトビデオをレンタルする。家族連れで訪れる父親も、やっぱり一人で来た時には、アダルトコーナーに直行する。そこには、秘め事を覗き見ているような楽しさがあった。

 地域では、アダルトビデオの品揃えでは、どこにも負けていなかったその店も、時代の流れと大手チェーンには抗しきれず、あえなく閉店。次に始めたのは、イタリアンが売りのファミレスの厨房。

「1年くらいピザを捏ねていたんですけど、そうすると、次第に責任ができてきて……」

 ピザを捏ねるだけなら、楽なアルバイト。でも、バイトでも古株になっていくと、必然的にやるべき仕事は増えていく。釜から出された熱々のピザを素手で皿に載せて、見栄えよく飾り付けする。パスタやら何やらと、どっちを向いても熱くてつらい。フライパンの中で飛び跳ねる油は、時給には見合わない。

 これは、やっていられない。

 意を決した40原は、就職が決まったとか、なんだかんだ理由をつけて辞めることにした。店長や同僚たちに「おめでとう」と見送られ、むずかゆい思いもしたけど、とにかく脱出には成功した。

 次はどうしようと考えて見つけたのは、大型スーパーの品出しだった。深夜の店内で、配送されてきた食品や雑貨を陳列する仕事。深夜のアルバイトで働く同僚には、一風変わった人が多かった。今まで出会ったことのない人々との交流に、少し興味がわきながらバイトしている頃に、震災があった。

「これから、経済も悪くなるから、うちで就職しなよ」

 社員の気持ちはうれしかったが、そうしてしまうと、もう絵を仕事にすることができないような気がした。また、なんだかんだ理由をつくって辞めた。

 文字通り、浮き草のような時間。「要は、挫折しちゃっていた」と、40原は思い出す。絵を描きたいという思いはあった。だから、絵は描いていた。イラストなのか落書きなのか、自分でもよくわからないものを描いていた。

 ただ、幸運にもスキルアップする機会があった。卒業した専門学校からのつながりで、アートプロジェクトを運営する会社でアルバイトをすることになった。

 仕事は、所属アーティストのアシスタント。仕事の合間に、自分も絵を描いているといえば、当然、見せる話になる。持参したいくつかの作品を見てもらった。どんな評価を下されるのか、心臓が昂ぶる沈黙の時間。すっと顔をあげたアーティストは、こう言った。

「上手いけど、パソコンの使い方をわかっていないから、教えてあげるよ」

 すでに多くの作品で世界的な評価を得ているアーティストにマンツーマンで教わる、CGアートの基礎。それまでは、半ば見よう見まねの自己流だった描き方は、技術を得て、みるみるうちに上達していった。

 それでも、まだ浮き草は、根を下ろさなかった。

「これから、どういう風に生きていこうか」

 そんな時、作業の合間にネットサーフィンをしていて、ふと一つの取材記事にたどり着いた。それは、マンガ家・西原理恵子が自身の上京してからの青春期を語っているインタビュー記事だった。

 美大の門を開いたら、自分が最下位。この世界で勝負するのは無理だっていう、そのくらいの客観性は持ってましたね。

 イラストレーターは無理。イラストレーターはもっといい雑誌で絵を描くでしょ。だから、イラストじゃなくてカット描きをやろうと思った。

 ミニスカパブでバイトしていると歌舞伎町のスゴイ現実もたくさん目にする。お金がなくて、ああなったらどうしようという気持ちは、後ろからエイリアンが追いかけてくるようなものだから、とりあえず、何も考えずに、「売り込みしかねぇぇぇー」と、ただ焦っていたわけです。

 絵の仕事で月30万稼ぐことが目標だった。

 それが大学の3年の時にできた。ほんとにうれしかったですね。これで東京でやっていける。もうミニスカパブに行かなくていいんだって。

 当時は、1カット600円ぐらいから始まって、次第に1枚3000円ぐらいになった。それを月に100枚描くと30万円。
(nikkei BPnet こうして逆境を越えた
西原理恵子:エロ本のカット描きから始まった仕事。プライド捨てて「売り込みしかない」http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090526/155497/?P=1

 一度最後まで読んで。もう一度頭から読み直して。そして、同じところだけを何度も読んだ。

 専門学校を卒業してから、数年間の自分のやってきたことを思い出した。

「ボクは、こんなんじゃダメだ。考え方が間違っている」

 自分のふがいなさを嘆いていたのではない。感動していたのだ。アニメーターをやっていた時の自分には、西原のような考え方はなかった。1枚動画を描けば200円。それを月に1,000枚描けば……なんて、考えたこともなかった。何も根拠もないままに「自分の限界はここだ」と心の中で線を引いて、その外へと挑戦していこうとする気概もなかった。

「自分のやりたいことで、食べていこうなんて思うのは間違っている」

 自分のやりたいことで食べていくんじゃない。まずは、絵でお金をもらって食べていく。そのことを感がなくてはいけないと思った。

 にわかに自信が湧いてきた。「自分と西原さんを比べた時にはどうだろう」。描いている絵のスキルだけで比べたならば、自分のほうがスキルがある。自分のほうが、綺麗で上手な絵を描いているのは間違いない。「西原さんは、自分よりもスキルがないのに、のし上がっている」。だったら……。

「自分は、どうにか食べていく道があるはずだ」

 西原が、食べるためにと必死に描いていたのは、エロ雑誌のカット描き。なら、現代にそれに匹敵するものはなんなのだろう。西原は、イラストレーターではなく、カット描きだといっている。そうなのだ。自分には、その視点が描けていた。アルバイトの合間に描いている絵も、作家性のようなものを重視していて、流行の絵がどんなものかなんて、考えたことがなかった。「西原さんが、やったように、今、もっとも使ってもらいやすそうな絵柄とジャンルを探そう」。それは、すぐに見つかった。

 40原が、西原の人生に感動をしていた、その頃。すなわち12年頃、急激に市場を拡大させていたのがソーシャルゲーム業界であった。この年の1月に矢野経済研究所が発表した資料では、11年の市場規模は、前年度比1.8倍の2,570億円。さらに、この年には3,429億円まで拡大すると試算されていた。しかも、この金額は広告収入を除いた金額である。拡大する、新興の開拓地であるソーシャルゲーム業界には、次々と資本が投じられ、新しいゲームが開発されていた。一部のゲームでの射幸心を煽るシステムは批判され「廃課金」などといった言葉がネットで見られるようになっていた。批判が殺到するのは、市場が急激に拡大し、誰もが無視できない存在になっていることとコインの裏表だった。

 そんなゲームに欠かせないのが、キャラクターの描かれたカード。その描き手がまったく足りず、常に「誰かいないか」という状態。ちょとでも可愛い女のコが描けるならば、瞬く間に引っ張りだこになることができる、まさに「バブル」。そして、このバブルは、企業・エンジニア・イラストレーターなどなど、さまざまな人々が、雲を掴み駆け上がることのできる、またとない機会を与えていた。

「ソーシャルゲームでは、可愛い女のコの絵が足りていない。だったら、それをやろうと思ったんです」

 もちろん、自分が可愛い女のコを描くことができるという自信などなかった。むしろ、さまざまなイラストを見ると、自分よりも可愛い女のコを描くことができる人は山のようにいた。でも……。

「この人たちよりも、自分は背景を上手く描くことができるじゃないか」

 だから、全体のクオリティでは、可愛い女のコを描くことができる。それを、自分の売りにしよう。

 2年余りの間、水面を漂っていた浮き草が、少しずつ根を下ろしていった。

 数時間続いたインタビューの中で、40原はずっと楽しそうだった。

 自分も大好きなパンツをきっかけに、世界が無限に広がっていっている。大勢の人から寄せられる感想。それをきっかけに、自分では気づかなかった視点を知ることができる。そんな日が続くのが、楽しくて仕方がないようだった。もちろん、普通に絵を楽しんでくれるのもよい。でも、読者一人一人が、違った楽しみ方をしてくれることに、俄然、興味が沸いてくるのだ。

 本来、作品はドM向きにつくったつもりである。ところが、ある自分はドSだという人は「女のコは、脅されて嫌々見せているという想像をして楽しんでいる」という感想をくれた。そういう、自分の気づかない楽しみ方をしてくれているのが、とにかくうれしかった。

「いろんな楽しみ方ができるじゃないですか、そういうので妄想して楽しんで欲しい。<今回は、こういう妄想で楽しみました>とか感想がくると、すごくうれしいんです」

 自身の作品であるイラストを超えて、フィギュアや、エロライトノベル、写真集と世界は膨張を止めない。自分の作品をあれこれと、他人に使われることに嫌な気持ちなどない。それは、とてもうれしいこと。そして、もしも自分よりも優れた作品「原作よりもよかった」と感想が舞う作品になっても、嫉妬は微塵もない。

「そのほうがコラボした甲斐があるじゃないですか。1+1が2になるんじゃなくて、どんどん大きくしていきたいんです。ラノベは、パラレルワールドと考えて、元ネタにして自由にやってもらいました。こんなコラボを、もっとやりたい」

 自分がパイオニアとして、頂点に立とうという欲望などは微塵もない。その世界で、大勢の人が自由に遊んでくれる未来が、40原の目には映っているのだ。やりたいことは、無限に広がる。さまざまな描き手による「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」をテーマにしたイラストやマンガ。このテーマだけの同人誌即売会など、アイデアの泉は枯れることを知らない。

「冬コミでは、いろんな作家さんとコラボして合同本を出す予定です」

 その目的は、このテーマの「布教」だけではない。「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」をきっかけに、さまざまな描き手がいることを知って欲しいのだ。

「ボクの同人誌を買った人は、初めて同人誌を買ったという人もたくさんいます。その中には、普段、同人誌を買わない人が、SNSで知って買っているのも多いんです。同人誌ショップには行くけど、普段は同人誌は買わないという人も買ってるから7万部までいってるのだと思う。そういう人たちに対して、ボクの同人誌だけで満足しないで欲しいんです。いろんな作家さんがいていろんな世界がある。で、同人沼にハマって欲しいと思っています」

 さまざま、人生に紆余曲折はあったけれども、自分の原点は、偶然手に取った『機動警察パトレイバー』。少年の頃の自分のように「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」を、手に取った人が、それをきっかけに、どんなに面白い作品を生み出してくれるのだろう。未来への期待が、40原に更なる創作へとかき立てている。7万部を超えた同人誌の売上は、もっと大勢の人に楽しいものを伝える機会を提供してくれている。

 もちろん、一度は「挫折」した、アニメーションへの意欲も、決して忘れてはいない。

 40原は、この上なく瞳を輝かせて言う。

「アニメも、やりたくて仕方がないんです……」
(取材・文=昼間たかし)

 

『夜ふかし』『サンジャポ』『陸海空』……一度見たらクセになる“番組限定素人スター”の「人間力」

どうしてあのタレントは人気なのか? なぜ、あんなにテレビに出ているのか? その理由を、業界目線でズバッと斬る「ズバッと芸能人」。

 広く知られてこそ獲得できる「スター」という称号。だが最近は、特定の番組だけ出演し、他では見かけない“限定的”なスターも多い。とりわけ、番組が発掘した「素人」は「専属的」に扱われるという。そこで今回は、番組限定「素人スター」の「人間力」を追った。

 

■『夜ふかし』イチ押し!奇跡の「滑舌」女性

『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で人気なのが「フェフ姉さん」だ。「フェス」を「ふぇふ」、「イチジク」を「いつづく」、「白装束」を「しろそうどく」、「滑舌」という言葉すらも「かつぜふ」と聞こえてしまうほどの「聞き取りづらさ」が話題。だが、そんな欠点を卑下することなく明るく笑い飛ばす性格に勇気をもらう視聴者も多いはず。

 さらに最近、いつも隣にいる親友の多田(ただ)さんに高校中退の過去が発覚。そこで、高卒認定を受けたいという彼女の夢に寄り添うという名目で、さらに露出を増やしている。どちらも応援したくなる存在だ。

 

■ナスDに代わる?『陸海空』のニュースター

 10月からプライムタイムに昇格した『陸海空 地球征服するなんて』(テレビ朝日系)。番組の象徴的存在だった全身ナス色のディレクター通称「ナスD」が、11月11日のオンエアで日本に帰ってきてしまった。そんなスター不在の番組で期待されている素人が、小堺マサキさん(36歳)。200カ国以上を旅してきた経験を買われ、世界の謎を解明する「ミステリーアース」のコーディネーター兼出演者として抜擢されたのだが、これがとんでもない逸材だった。

 イギリスに行ったとき、「26歳の女性の霊と交信できた」などと平気でウソをつき、ロケ中にディレクターから叱られたり、2,000人の町民が忽然と姿を消した不可思議なゴーストタウンの朽ち果てた惨状を見て、なぜか実家のボロアパートを思い出し号泣。久しぶりに母親に国際電話をかけ、その声に再び泣き出すなどポンコツぶりを露呈。企画より彼の一挙手一投足に視聴者が熱狂していた。

 現在36歳。12年の彼女いない歴にピリオドを打つべく、新たにスタートした男女6人による恋愛紀行企画『ラブアース』に参加中。とことんクズだが憎めない、新たな番組の顔として期待されている。

 

■『サンジャポ』に8カ月連続出演!「語りの女王」

 日曜朝の『サンデー・ジャポン』(TBS系)に4月から毎週出ずっぱりなのが、タレント・矢部みほ(旧・矢部美穂)の母・文子(ふみこ)さん。2人は東京・池尻大橋でバーを営んでいる。そんな文子ママの代名詞が「ナゾの語り」と「関係のない話」だ。

 番組スタッフがその時々のニュースについて文子ママにコメントを求めるのだが、毎回ほぼ脱線。松居一代と船越英一郎の離婚騒動に関し、なぜか元主人によるDVから逃れようと移り住んだ安アパートに現れた「お化け」に向かって唱えたという祈祷文を長々と聞かせたり。

 子パンダ「シャンシャン」誕生のトピックスから、1972年のパンダ初来日の出来事に触れ、さらにはなぜか同年公開の映画『ゲッタウェイ』のオリジナル(?)の惹句を講談調で語ったり。

 休む理由を張り紙に正直に書くラーメン店の話題に、「私もラーメンを店で出したい」と夢を語り、ラーメンの湯切りのマネをしながら、「わっしょい! わっしょい! どっこい! わっしょいしょい! うー、わっしょい! どっこい! それからどうした! ハァどうしたどうした、どっこい! シュッ、シュ、シュー」という理解不能な掛け声をかけるなど、実にユニークだ。

 

■「うんてい」に命をかけるおじさん

『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)の裏で放送されているのが、オリジナル競技No1を決める『珍種目No.1は誰だ!?ピラミッド・ダービー』(TBS系)。

 ここで最近キテいるのが、62歳の「うんていおじさん」。「自分には“うんてい”しかない」という言葉通り、生きがいは「うんてい」のみ。自宅外に練習用のバーを作り、365日トレーニング。また、何メートルうんていできたかを「うんてい日記」に記録。テレビ欄に「うんてい」の文字を探し続けて約20年、「100mうんていスピード対決」という言葉を見つけて即番組に応募したとか。「うんてい」への異様なまでの執着に、人生とは何かを考えさせられる。

 

■人気を「限定的」にすることで番組の寿命も長持ちさせる

 こうした「番組限定スター」をつくり、自分のところで「囲う」のは、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)のイモトアヤコのように業界ではよくある手法だ。オファーされても別番組に気軽に出演しない約束を、本人や事務所と取り付けてしまうのである。

 代わりにその番組では優遇され、仕事は安泰するというわけだ。もちろん、「タレントの人気の持続」イコール「番組の長寿化」が見込めるので、番組側としても有難い。

 ただ、以上挙げた素人さんと番組が、すべて専属的な契約を結んでいるかは定かではないし、また、別番組に出たら、その魅力が失われてしまうかもしれない。

 最後になるが、彼らは我々と同じ一般人。今後もその番組でしか見られないレアキャラを、生活に支障が出ないことを祈りつつ、温かく見守っていきたいものだ。
(文=都築雄一郎)

◆「ズバッと芸能人」過去記事はこちらから◆

男の“体目当て”をまったく見抜けない!? 「GINGER」アラサー向け片想い企画が「中学生レベル」

 「GINGER」(幻冬舎)12月号の付録は「IENA 大人の秋色ネイル4色セット」です。この秋冬にピッタリな「くすみベージュ」「くすみネイビー」「カーキ」「ボルドー」の大人色はネット上でも好評。さすが実益性という点においては右に出るものはない「GINGER」。こと付録に関しては毎回ハズレなしです! しかし本誌は相変わらず迷走続き……というか、毎号雑誌のコンセプトが変わりすぎて、パッと見では同じ雑誌とは思えません。固定読者がいるのかどうかも不安になってくる今日この頃です。

<トピックス>
◎恋もおしゃれも人生も! 最近、ドキドキしてますか?
◎LINEでドキドキする方法
◎美容資産の蓄え方

■突然のゆるふわフレーズで「ときめき」のリハビリ!?

 「GINGER」12月号のメイン特集は「恋もおしゃれも人生も! 最近、ドキドキしてますか?」。まず冒頭には、「本当に手に入れるべきものは、理屈なしに心が動く」「リップひとつで、女は生まれ変われる」「新しい私を楽しもう」といったふんわりポエムに、視線の定まらない柔らかな表情を浮かべた桐谷美玲の雰囲気写真で繰り広げられる“日常の小さな冒険”がテーマの着回しストーリーが登場しています。これまでの「GINGER」に見られた、文字情報びっしりで、所狭しと具体的なコーディネート写真が配置された、教科書のようなファッションページとは一転、まるでオシャレな写真集のようです。

 続く「大人が恋する冒険アイテム」では、なんと「着回し、コスパ、好感度……気づけば最近、頭で考えるファッションばかりに囚われていませんか? 今一度おしゃれの楽しさを取り戻すためには、ダイレクトに心を刺激する“冒険アイテム”が必要です!」と、これまでのリアル路線を一蹴。「キラキラとフワフワに心ときめく」「愛するモノに囲まれて、毎日満たされた気分に(ハート)」「女子は永遠にKawaiiものが好き(ハート)」といった、ゆるふわフレーズで彩られています。確かに可愛い誌面に気分は高まりますが、一体どうした「GINGER」!?

 さらに、レギュラーモデルの山田優ほか、ファッション通がひと目ボレ商品を紹介する「あの人をトリコにした名品リスト」、前田敦子やAAAの宇野実彩子など「GINGER」世代のタレントが趣味について語る「〇〇マニアなあなたを今、ときめかせているモノって何ですか?」といった企画でも、自分の直観や「好き」という気持ちを大事にしようと言っています。さらに、普段は男っ気ゼロ雑誌のくせに、瑛太、井浦新、菅田将暉、竹内涼真、賀来健人、そして嵐の二宮和也まで、ここぞとばかりに男性芸能人を投入しているのは、恋愛が苦手な「GINGER」女子に、まずは「ときめき」という感情そのものを思い出してもらおうという意図なのかもしれません……って、リハビリかよ!

 最後に見ていくのは「美容資産の蓄え方」です。美容業界で活躍する「年齢不詳のビューティエキスパート」たちが、その「キレイ」の秘密を大公開してくれます。「肌のポテンシャルが落ちても30代ならクリームで戻るし、自分の肌の潜在能力を知る目安にもなる。エイジング対策を考えるなら、クリームを必ず使ってほしい」「肌の調子がよくないときや、バリア機能が乱れる花粉症シーズンには積極的にタンパク質を補給」「お金をかける価値があるとすれば、美容液」などなど超具体的なアドバイスが淡々と語られています。これらの情報は、年齢不詳の美女たち(アラフォーに見えるアラ還女性など!)のお写真で、さらに説得力を増している気がします。

 商品の紹介も細かく、大変充実していて、ついついお勉強モードで読みふけってしまった同企画。「ときめき」要素はまったくないけど、めっちゃためになります。今を楽しむファッションや目の前の男性とのLINEのやりとりよりも、「30年後のお肌のために今できることを頑張ろう!」というストイック企画の方がなんとなく「GINGER」にハマっている気がするのは、筆者だけでしょうか。
(橘まり子)

男の“体目当て”をまったく見抜けない!? 「GINGER」アラサー向け片想い企画が「中学生レベル」

 「GINGER」(幻冬舎)12月号の付録は「IENA 大人の秋色ネイル4色セット」です。この秋冬にピッタリな「くすみベージュ」「くすみネイビー」「カーキ」「ボルドー」の大人色はネット上でも好評。さすが実益性という点においては右に出るものはない「GINGER」。こと付録に関しては毎回ハズレなしです! しかし本誌は相変わらず迷走続き……というか、毎号雑誌のコンセプトが変わりすぎて、パッと見では同じ雑誌とは思えません。固定読者がいるのかどうかも不安になってくる今日この頃です。

<トピックス>
◎恋もおしゃれも人生も! 最近、ドキドキしてますか?
◎LINEでドキドキする方法
◎美容資産の蓄え方

■突然のゆるふわフレーズで「ときめき」のリハビリ!?

 「GINGER」12月号のメイン特集は「恋もおしゃれも人生も! 最近、ドキドキしてますか?」。まず冒頭には、「本当に手に入れるべきものは、理屈なしに心が動く」「リップひとつで、女は生まれ変われる」「新しい私を楽しもう」といったふんわりポエムに、視線の定まらない柔らかな表情を浮かべた桐谷美玲の雰囲気写真で繰り広げられる“日常の小さな冒険”がテーマの着回しストーリーが登場しています。これまでの「GINGER」に見られた、文字情報びっしりで、所狭しと具体的なコーディネート写真が配置された、教科書のようなファッションページとは一転、まるでオシャレな写真集のようです。

 続く「大人が恋する冒険アイテム」では、なんと「着回し、コスパ、好感度……気づけば最近、頭で考えるファッションばかりに囚われていませんか? 今一度おしゃれの楽しさを取り戻すためには、ダイレクトに心を刺激する“冒険アイテム”が必要です!」と、これまでのリアル路線を一蹴。「キラキラとフワフワに心ときめく」「愛するモノに囲まれて、毎日満たされた気分に(ハート)」「女子は永遠にKawaiiものが好き(ハート)」といった、ゆるふわフレーズで彩られています。確かに可愛い誌面に気分は高まりますが、一体どうした「GINGER」!?

 さらに、レギュラーモデルの山田優ほか、ファッション通がひと目ボレ商品を紹介する「あの人をトリコにした名品リスト」、前田敦子やAAAの宇野実彩子など「GINGER」世代のタレントが趣味について語る「〇〇マニアなあなたを今、ときめかせているモノって何ですか?」といった企画でも、自分の直観や「好き」という気持ちを大事にしようと言っています。さらに、普段は男っ気ゼロ雑誌のくせに、瑛太、井浦新、菅田将暉、竹内涼真、賀来健人、そして嵐の二宮和也まで、ここぞとばかりに男性芸能人を投入しているのは、恋愛が苦手な「GINGER」女子に、まずは「ときめき」という感情そのものを思い出してもらおうという意図なのかもしれません……って、リハビリかよ!

 最後に見ていくのは「美容資産の蓄え方」です。美容業界で活躍する「年齢不詳のビューティエキスパート」たちが、その「キレイ」の秘密を大公開してくれます。「肌のポテンシャルが落ちても30代ならクリームで戻るし、自分の肌の潜在能力を知る目安にもなる。エイジング対策を考えるなら、クリームを必ず使ってほしい」「肌の調子がよくないときや、バリア機能が乱れる花粉症シーズンには積極的にタンパク質を補給」「お金をかける価値があるとすれば、美容液」などなど超具体的なアドバイスが淡々と語られています。これらの情報は、年齢不詳の美女たち(アラフォーに見えるアラ還女性など!)のお写真で、さらに説得力を増している気がします。

 商品の紹介も細かく、大変充実していて、ついついお勉強モードで読みふけってしまった同企画。「ときめき」要素はまったくないけど、めっちゃためになります。今を楽しむファッションや目の前の男性とのLINEのやりとりよりも、「30年後のお肌のために今できることを頑張ろう!」というストイック企画の方がなんとなく「GINGER」にハマっている気がするのは、筆者だけでしょうか。
(橘まり子)

爆笑MCから、キリっとしたダンスシーンまで! 『Welcome to Sexy Zone Tour』を徹底フォトレポート!

 さまざまな試練を乗り越え、パワフルに進化したSexy Zone!
 ファン待望の5人体制が完全復活した「Welcome to Sexy Zone Tour」の模様を徹底レポート!
 名古屋公演のわちゃわちゃMCもたっぷりお届け!

・Welcome to Sexy Zone Tour フォトレポートat名古屋
・MCいいとこどり!(2016年3月25日名古屋公演)
・佐藤勝利
・中島健人
・松島聡
・マリウス葉

■立ち読みはこちら

 

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親子問題に悩む人は必見……映画『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』DVDをプレゼント

 第80回アカデミー賞の2部門でノミネートされ、多くの称賛を得た映画『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』。フィリップ・シーモア・ホフマンとローラ・リニーが豪華共演を果たしたということもあり、とても話題になった作品です。また、人生に迷う人々の心に深く刺さるストーリーとも謳われている本作。一体どんな内容となっているのでしょうか。早速、あらすじをご紹介していきます!

 ジョン(フィリップ・シーモア・ホフマン)とウェンディ(ローラ・リニー)の兄妹には、父親から虐待を受けて育ったという過去があった。しかし、現在は2人とも独立し、ニューヨークでそれぞれの生活を営んでいる。そんなある日、疎遠となっていた父親が認知症と診断されたことがきっかけで、2人は彼の面倒を見ることに。長いこと会っていなかった家族が再び集まったことで、親子の心はだんだんと通い始めていく。やがて父が最期を迎えるとき、兄妹は何を思うのか――。

 病に倒れた親とどう接していくか。これは誰でも一度は考えたことがあるテーマなのではないでしょうか。この映画の場合は、父親から虐待を受けていたという、ちょっと特殊な設定ではあるものの、おそらく誰もが共感できる部分がありそうです。

 今回は映画『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』のDVDを3名の方にプレゼント。「いままさに親との関係に悩んでいる……」という方、ぜひ奮ってご応募ください! お待ちしています。

※12月4日〆

ご応募はこちらから
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マーベルが知らぬところで勝手にリメイク?――世界中に溢れるマーベル無許可のスパイダーマンその中身

世界にはマーベルの許可を得ずに作ったであろう、スパイダーマン映画がたくさん存在する……それも、かなり現地の文化を相当反映した形で。こうした映画は一見すると、荒唐無稽なようにも思えるが、実はその国の文化を理解するためのツールになるのかもしれない?

マーベルが知らんところで勝手にリメイク?――トルコでは入浴中の女を絞殺!?マーベル無許可のスパイダーマンの画像1
『スパイダーマン:ホームカミング』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)

 今年は『スパイダーマン:ホームカミング』が公開され、大きな話題となった。前作『アメイジング・スパイダーマン2』を超す大ヒットを記録し、早速シリーズ化が決定したとのことで、再リブートは成功したといえよう。

 さて、本作は1977年にCBSで放送されたテレビ映画から数えると、これまで実写化されたスパイダーマンとして8作目ということになるが、実はもう一作「幻のスパイダーマン」が存在しているのはご存じだろうか?

 そんな幻のスパイダーマンを製作したのはまさかの日本。78年に東映がマーベル・コミック社とキャラクター使用契約を交わし、オリジナル作品を制作していたのだ。だが、その内容は原作コミックとは大きくかけ離れており、“スパイダーマンがレオパルドンという巨大ロボットに乗り込んで戦う”など、もはやスーパー戦隊シリーズのような特撮で「マーベルが激怒して封印された」との噂もあったほど。しかし、原作者のスタン・リーは「世界各国でスパイダーマンが製作されているが、その中でも日本版だけは別格だ。レオパルドンもとてもかっこいいロボットだった」とコメントしており、マーベルや原作者にとって特に黒歴史というわけではないようだ。

 一方、ここで気になるのはリーが発言した「世界各国でスパイダーマンが製作されている」という点。そう、東映は権利を得て制作したが、世界にはマーベルから確実に許可を取らずに、勝手にリメイクされたスパイダーマン映画がゴロゴロあるというのだ。そこで本稿ではスパイダーマン映画の正史からは除外される、世界の「無許可スパイダーマン」を見ていきたい。

エログロ全盛期のトルコではスパイダーマンはマフィア!?

 スパイダーマンが実写化されたのは前述したように、77年のテレビ映画が最初といわれているが、裏面史の立場からするとそれは誤りで、正確には73年にトルコで製作された『3 Dev Adam』【1】が、最初の映像化とされている。

 本来はヒーローとして活躍するスパイダーマン。しかし、トルコではヘマをやらかした部下を食人モルモットに喰わせ、回転する舟のスクリューを顔に押し当てて殺し、入浴中の裸の女性を絞殺するなど、ヴィラン(悪役)も真っ青になるほどの極悪人として登場。さらに、そんなスパイダーマンに立ち向かうのはキャプテン・アメリカと“メキシコの伝説的なマスクマン”エル・サントというハチャメチャな内容で、権利もへったくれもないパクリ具合である。

「当時のトルコには、スパイダーマンの他にも、『スター・ウォーズ』、『E.T.』、『エクソシスト』まで、ハリウッド作品を焼き直したような、パクリ映画がたくさん存在しましたよ」

 そう語るのは、映画ライターのなかざわひでゆき氏。当時のトルコは、経済の急激な高度成長を背景に、最盛期には年間300本以上もの映画が粗製乱造されていたという。しかし、いくらパクリとはいえ、スパイダーマンが容赦なく人を殺していくシーンは、今見てもかなりバイオレンス。どうしてトルコのスパイダーマンは、ここまで残虐になったのだろうか?

「70年代、トルコの大衆映画では、アクションとエロスが最重要視されていました。労働者を癒やすために娯楽的な要素が強く、より過激な内容が好まれ、また男女が公衆の面前で手をつないで歩くことすらご法度だったこともあり、劇中のサービス・ショットは“ズリネタ”として重宝されていたんです。イスラム圏としてはかなり珍しい映画文化ですね」(同)

 容赦ないパクリの揚げ句に、過激な暴力描写とトップレスの女性で彩られたトルコの映画産業。しかし、80年代に入るとテレビ産業が主流となり、フィルムは燃やすと銀が出るということで次々に破棄されて、こうしたエクスプロイテーション的な映画は廃れていった。

インドのボリウッドではスーパーマンと空を飛ぶ!?

 一方、本国アメリカではテレビ映画をきっかけに、ようやくスパイダーマンの映画化が動き出すが、当時の技術ではスパイダーマンをCGで作り出すのはそもそも難しいという問題が発生。また、技術面の問題ばかりでなく、マーベルの権利もはっきりせず、監督や脚本家が製作から次々と降板するなど、なかなか軌道に乗らない。そんな中の88年、今度はインドでスパイダーマンもとい、スパイダーレディが誕生してしまう。

 インド映画といえば、濃い顔の演者、クサすぎるセリフ、明るいシーンとシリアスな展開の極端な緩急、そして脈略なく始まるミュージカルシーンでおなじみだが、スパイダーレディも例外なく、歌い踊っている。

 そんなスパイダーレディが登場するのが『Dariya Dil』【2】というメロドラマ映画。同作では、主人公とヒロインの恋が実った瞬間、突如として場面は切り替わり、スーパーマンの格好をした主人公と、スパイダーレディに扮したヒロインが空を飛び、地上に降り立つと群衆を従えて踊り続けるという必然性のないシーンが始まる。一応、ケンカ程度のアクションシーンはあるものの、あくまでもメロドラマ。なぜ、急に関係のないスパイダーレディのダンスが挿入されたのだろうか? 某キー局の制作会社に勤める、日本育ちのインド人スタッフはこう語る。

「ボリウッドでも漏れなくハリウッド映画や日本映画のパクリはありますし、このシーンで歌われている曲の歌詞のサビは『あなたは私のスーパーマン』ということで、コスプレをしたのでしょうか?(笑) また、インド映画では、カースト制度への逃避として、貧困層も映画の中だけでは仮想現実を楽しもうということで、歌や踊りが組み込まれる構成が多いんです。つまり、歌って踊るのはいわば、『スーパーマリオ』でスターを獲得して無敵状態と化しているような様子を表したいので、急に始まるんですよ」

 日常からの乖離を表現するために、必然性のないように思えるダンスが始まる。とはいえ、陽気で明るいインド映画のミュージカルシーンが、カースト制度という同国の暗部に対するアンチテーゼというのは、なんとも切ない。

映画最後の秘境・アフリカの衝撃リメイク

 話をアメリカに戻そう。2000年代に入るとCG技術の発達と、ようやく権利関係に決着がついたため、正統なるハリウッド版『スパイダーマン』が次々と公開されていく……が、10年にサム・ライミ監督が降板させられたことによって、またゴタつきを見せていた。

 そんなハリウッドの体たらくぶりを見かねたのか、今度は現代映画最後の秘境・アフリカが動き出す。世界中で『アメイジング・スパイダーマン』が公開される前年の11年、ガーナの“クマウッド”では『Ananse 1&2』【3】というタイトルで、暴漢たちに臓器売買か黒魔術の生贄のために虐殺された少女がその黒魔術によって、90年代のアーケードゲームを思わせるようなCGでスパイダーマンに変身し、暴漢たちを殺していくという内容の映画が公開された。

 一応、Rockson Film Productionという、プロダクション製作の本作は、衝撃的なスパイダーマンの造形と、チープなSFXに目を奪われがちだが“スパイダーマンを自国の文化とつなぎ合わせた現象は興味深い”と、北部ナイジェリアで製作された忍者映画を研究する文化人類学者・中村博一文教大学教授は語る。

「この映画のタイトルの“アナンシ”というのは、ガーナに現住するアカン語系民族の神話・伝承における蜘蛛のことです。また、ナイジェリア北部のハウサ語圏ではギゾとも呼ばれ、蜘蛛というのはアフリカ地域にとって“トリックスター”という意味があります。大衆に人気があるヒーローという知名度に加え、蜘蛛という生き物にもともと込められた神出鬼没性という役割も作用しているように思えます」

 黒魔術というアフリカ独自の文化に加え、自国の神話もスパイダーマンに取り入れるというのはローカリゼーションの良い例にも思えるが、「劇中では蜘蛛(アナンシ=スパイダーマン)は暴漢に取り憑くし、それとは別に女の子の霊も取り憑くという展開で、本当にアナンシと関係あるのか、よくわからないですね。私はナイジェリアのプロダクションの映画に関わったことがあるのですが、現地の映画制作には台本があるわけではなく、前日に『こんな感じのセリフを話してよ』と言われましたし、いろんな要素を詰め込みすぎていて、撮っている本人たちですら『作っていてよくわからない』と言うんですよ。まだ、映画産業そのものが成長中ですから。この映画もそんな印象を受けます」(中村教授)と、映画の出来には直結していないようだ。

黒魔術がリアリティー?暗いスパイダーガール

 そんなガーナに続けとばかりに昨年、アフリカ最大の映画産業、ナイジェリアの“ナリウッド”がスパイダーマンを『スパイダーガール』【4】としてリメイクした。

 本作のスパイダーガールは本来の蜘蛛らしくジャングルを飛び回り、ガーナ版に比べてアクションやCGは完成度が高い。中村教授いわく「ナリウッドでは撮影機材は家庭用のホームビデオだけではなく、背景がキレイにボケ感の出るキヤノンのEOSも使っています。また、テレビ局で撮影を学んだスタッフも多く、シナリオライターやプロデューサー的立ち位置も存在する」など、製作体制がきっちり確立している。さらに劇中で使われる銃は「銃口は埋めてありますが、本物じゃないですかね? ニジェールとの国境付近では銃は1万円程度で買えるので、わざわざ偽物をつくるよりも、すでにあるものを使ったほうが早く、もしかしたら、軍からの払い下げなんかを使っているのかも」(同)という代物。そもそもナリウッドの本場、ラゴスには俳優学校があったり、北西部のソッコトにはアクションを学ぶためにカンフーの指導教室が開かれたりと、映画制作には相当こだわりがあるのだ。

 しかし、ナリウッド映画はハッピーエンドが多いといわれている中、本作は『Ananse 1&2』と同様、貧富の差、レイプ、黒魔術、虐殺など、アフリカに根強い社会問題が描写され、内容そのものはかなり暗い。

「2作とも社会的メッセージは明確ですよね。アフリカは貧富の差が激しく“金持ちは貧民から搾り取った金で贅沢をしている”と思い込んでいる人も多いです。そのため、金持ちを懲らしめる復讐の方法としての呪術は珍しいものではなく、映画でもよく描かれているのです。また、ナイジェリアに限っていえば、北部は特に貧富の差が激しく、中間層が生まれつつあるとはいえ、国民のほとんどは貧しいままです。職業としてタクシーの運転手がかなり多いのですが、彼らは毎日働いても、自分の車が買えないほどのわずかな賃金しかもらえず、“アフリカンドリーム”がほとんどない国なんです。そういった現実が映画に反映されているともいえます」(同)

 インドとは違い、映画に実際の社会問題がリアルに映し出されているのは、なんともつらい話だ。

本家に認められる日も?無許可作品たちの未来

 ところ変われば、スパイダーマン変わる――世界の無許可スパイダーマンは荒唐無稽だが、もしかしたら、世界共通のキャラクター・スパイダーマンはその国の文化を理解するための、ひとつのツールになり得るのかもしれない。前出のなかざわ氏は、こう述べる。

「昔は発展途上国に著作権の概念がなく、著作権側からすると、とんでもない話だとは思いますが、スパイダーマンに限らず、こうしたハリウッドのパクリ映画って究極のローカライズじゃないですか。その国の人々の価値観や文化が如実に表れていますよね。しかし、近年のハリウッドによるグローバリゼーションが、こういう映画をすべて破壊したと思うんですよ。まぁ、守るべき伝統なのかは、議論の余地ありですが(笑)」

 確かにマーベルとしてはたまったもんじゃないかもしれないが、今回紹介してきた無許可スパイダーマンを観ることによって、日本に住む我々には理解し難いカースト制度や黒魔術といった問題も知ることができるという側面もあるのだ。

 さて、冒頭で紹介した東映のスパイダーマン。実は数年前にアメリカで発表されたコミック『スパイダーバース』では、並行世界のスパイダーマンのひとりとして30年の時を経て、巨大ロボット・レオパルドンと共に本家デビューを果たしている。

 黒歴史とも「マーベルが激怒」とも評された作品だったが、長い時を経て、スパイダーマンシリーズの重要な作品として認められた。そうなれば、今後はこれまで紹介した国々のスパイダーマンも、いずれ東映版のように本家に認められ、作品に登場する日も来るかもしれない。

(文/小峰克彦)

スパイディ史上初の実写化
【1】卑劣なスパイダーマンに立ち向かうのはキャプテン・アメリカとマスクマン!?

マーベルが知らんところで勝手にリメイク?――トルコでは入浴中の女を絞殺!?マーベル無許可のスパイダーマンの画像2

『3 Dev Adam』(トルコ/73年)
イスタンブールを舞台に、スパイダーマンが「ヘマをやらかした部下をモルモットに喰わせる」「トルコの国宝をアメリカに売り飛ばす」「女性を絞殺して仏像を盗む」「入浴中のカップルを刺殺して高笑い」という、とんでもない悪役として登場。そんな凶悪なスパイダーマン相手に、キャプテン・アメリカとエル・サントが立ち向かうというアクションあり、コメディあり、ストリップシーンありの完全オリジナル作品。『アベンジャーズ』(12年)のような、複数のヒーローが登場するクロスオーバー作品の元祖ともいえよう。どこからも、キャラクターの使用許可は取っていないが……。ちなみに、この映画ではヒーロー同士が戦うといっても、スパイダーマンは蜘蛛の糸を使わず、キャプテン・アメリカもシールドを使わない肉弾戦がメイン。また、スパイダーマンはショッカーと同じシステムなのか複数人いるので、倒しても倒しても、たくさん出てくる。


幸せなダンスと雑な特撮
【2】スーパーマンと歌って踊る!?これがボリウッドの真骨頂!

マーベルが知らんところで勝手にリメイク?――トルコでは入浴中の女を絞殺!?マーベル無許可のスパイダーマンの画像3

『Dariya Dil』(インド/88年)
真夜中のデパートに閉じ込められた主人公とヒロイン。もともと、2人はお互いを憎しみあっており、ヒロインは主人公を警戒して、店内で売られているサーベルを手にするが、刃の部分を掴んでしまったために出血してしまう。それを主人公が応急処置して、2人の距離は急接近。そして、お互いが良い感じになると、急に場面変更。スーパーマンの衣装に身を包んだ主人公と、スパイダーレディに扮したヒロインが、チープなシンセ音に合わせて「あなたは私のスーパーマン 私はあなたの女、女~」と歌い上げながら空中で踊る。空を飛ぶ2人は途中、広場で踊る集団を発見。そこに降り立ち、今度は集団でダンスダンスダンス! そして、何度も口づけを交わす。このほかにも劇中ではミュージカルパートが数回あるが、百歩譲ってスーパーマンに関する曲ということで、スーパーマンの衣装を着たのはわかる。しかし、どうしてスパイダーレディなのかは何度観直しても理解できない。


チープでグロテスクなCG
【3】虐殺された少女の怨念がスパイダーマンに乗り移る!

マーベルが知らんところで勝手にリメイク?――トルコでは入浴中の女を絞殺!?マーベル無許可のスパイダーマンの画像4

『Ananse 1&2』(ガーナ/11年)
『ターミネーター』、『プレデター』、『バットマン』などハリウッド映画の焼き直しを、大量に制作しているRockson Film Productionによるスパイダーマン。スパイダーマンだけでなく、どの作品も初期の『モータル・コンバット』に影響を受けたかのようなチープなCGと、人体破損描写が特徴的。スパイダーマンを、黒魔術によって召喚された神の使いなのか、アナンシのようにトリックスターとして描きたいのかは不明だが、CGのスパイダーマンが登場するとき「うぅぅぅぅ」と、不気味なうめき声のような音が入るのは、もはやホラー。ちなみに、この映画の監督、本作を勝手にYouTubeに違法アップロードされたことに激怒。著作権侵害だから削除するようにコメント欄に書き込んだところ「お前も、そもそもマーベルからなんの許可も取ってないだろう」と、逆に突っ込まれていた。


主演は50万ナイラ(16万円)女優
【4】ナリウッドのスパイダーガールは9時間以上にも及ぶ超大作

マーベルが知らんところで勝手にリメイク?――トルコでは入浴中の女を絞殺!?マーベル無許可のスパイダーマンの画像5

『Spider Girl』(ナイジェリア/16年)
昨年から今年にかけて製作された最新の無許可スパイダーマン。森の中でテロ組織に攻撃された主人公が、蜘蛛に噛まれたことによってスパイダーガールに変身し、弱者を虐げるテロ組織たちに立ち向かうという内容。これまでの無許可スパイダーマン作品とは違い、本作ではようやく糸を使って戦う。糸の力は強く、若者たちを乗せたままコントロールが利かなくなり、暴走するバスを糸で止めることもできる。ナイジェリア国内で評判なのか、正確には把握できていないが、現在までにシーズン10まで作られており、最新作ではなぜかスパイダーガールが2人になっていた。シーズンが続いていくのは、本文にも登場した中村博一教授いわくナイジェリア映画では昔からよくあることらしい。また、ナリウッドでは役者一本で生活できる俳優は少ない中、本作主演のレジーナ・ダニエルズの出演料は50万ナイラ(16万円)と、それなりの額だという。


生理だったせいで夜中に家を追い出された――セフレに恋をしたら、超危ない目に遭った話

振り返ると、わたしの人生は成人迎えて以降、“ヤリマンだった日々”のほうが圧倒的に長い。

男は性欲を捨てるためのゴミ箱。

かつてはそう思っていたこともあった。

わたしと同じ、血が通った人間であるにもかかわらず、セフレという存在を「便利な便器」扱いしていたのだ。

しかし、そうは言っても時にはセフレに恋したこともあった。

だが、そのせいでとっても痛い思いをしたことも……。

セフレに恋したら、便利な便器が凶器に変わり、ハートがズタズタに切り裂かれた懐かしい話を今回はしよう。

デンマークでセフレに恋をした
舞台は数年前の冬のデンマーク。

デンマークは「イケメン大国」とこっそり呼んでいるくらい、美男子が多い国(美女も)。

当時、風俗嬢だったわたしは長期休暇を取り、親友ヨウコとデンマークに滞在していた。その地でわたしはさまざまなイケメンスカンジナビアのセフレを作り、性生活をエンジョイしていた。

デンマークはまさにおとぎの国で、イケメンとセックスし放題の天国であった(失礼!)。

私はこれまでにアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、マカオ、台湾、中国、オーストリアといろんな海外を訪れたが、その国の中で美男子が多いランキング間違いなく一位がデンマークである。

しかしその地で、わたしが恋に落ちたのはデンマーク人ではなくデンマークの専門学校に通うスェーデン人のヨワキム(仮名)だった。

ヨワキムとは、共通の友人を通じて知り合ったのだが、わたしは一目でヨワキムに恋をした。そしてすぐに親密な関係に発展した。

とはいえ、所詮セフレの関係。わたしはヨワキムの同級生数人とも同時にセフレの関係になっていたし、ヨワキムはヨワキムでわたし以外にもセフレらしい女性がいた。

それでも、ヨワキムを見かけるたびにドキドキした。定期的にヨワキムから連絡があり、ヤるだけの関係だったが、ヨワキムから連絡があると飛び跳ねるように喜んだ。

恋だ。これは恋だ。わたしはヨワキムに恋をしている……。 まだ処女だった中学生の頃にしていた片思いような初々しい甘酸っぱい気持ちを抱いていた。

しかし、ヨワキムの同級生でもある友人には

「ヨワキムは性格が悪いからやめといた方がいい」

と言われていた。それでも、自分の気持ちは冷めるどころか膨らむ一方であった。

生理中だけど、好きだから会いに行く
ある日、ヨワキムから誘いのメッセージが。

「今夜空いてる?」

わたしは友人の忠告を無視して、速攻返信をした。「もちろんYES!!」と。 しかし、わたしはこの日生理だった。生理中はセックスはしない主義だったが、それでもヨワキムに会いたい気持ちが勝ったのである。生理はできなくても、キスやフェラチオをしよう。そう決めていた。 (粘膜の接触は基本恋人としかしないわたしだが、ヨワキムは許せるくらい好きだった)

「Cool! 何かしたいことある?」

すぐさまヨワキムから返信が来た。

どうせセックスしたいだけなのは分かりきっていたが、何気に聞かれたことが嬉しかった。たとえセフレ以上恋人未満だったとしても。

「DVD観たい。オススメのDVD持って行くね!」

わたしはそう返信した。

前回会った時は、「何かしたいことある?」なんて聞かれなかった。 もしかしたら、ヨワキムも少しはわたしのことを……? なぁんて、脳内お花畑状態でヨワキムの家に向かった。まるで好きな人とデートに行く時のように心をときめかせて。

口の中で彼のモノが熱くなるほど、冷めていく想い
ヨワキムの家に着くと、「どこか飲みに行こう」と近所のバーへ連れて行ってくれた。ますますデート気分である。

(生理でも会いに来てよかった)

バーでの会話も盛り上がり、ほろ酔いで気分がよくなった頃、ヨワキムの家へ移動。

すぐさま体を求められるかと思いきや、DVD観ようと言ってくれるヨワキム。時は夜の21時。「もしや初のお泊まりコースでは?」と心が踊った。前までは、ヤッたらとっとと帰る「便利なよきセフレ」だったのに。

わたしがヤッたらすぐ帰るのは、セフレに対して普段からかなり塩対応なのが関係している。家にセフレを招いた側からすれば、ヤったらとっとと帰って欲しい。その後にだらだら会話なんてしたくない。だから、自宅にセフレを招いた時、私は早く帰れオーラを出していた。

しかし、ヨワキムは私にとってもうただのセフレではない。

窓際で揺れるキャンドルの炎に照らされて、一緒に寄り添いDVDを観る。まるで恋人のよう。

わたしが持参したのは『きみに読む物語』。最高に純愛で涙なしでは観られない名作である。ヨワキムもまんざらではなさそうに映画に魅入っていた。

だが、物語が終盤にかかった頃、ヨワキムが突然キスしてきて体を求めてきた。

「あの、今日生理なの」

ヨワキムの手がまんこに忍びこみそうだったので即座に言った。

「まじかよ……」

思いっきり落胆した表情のヨワキムに、私もがっかりした。その瞬間、悟らずにはいられなかった。やっぱりわたしはセフレ以上恋人未満だと。

「あ、じゃあシャワー浴びながらやろうよ」

ヨワキムはどうしてもヤリたいようだ。……どれだけヤりたいんだよ?

「生理中はしんどいから無理」と断ると、案の定フェラチオを要求してきた。

そしてイラマチオさながら激しくわたしの口を使っておちんちんを入れたり出したりする。

く、く、苦しい……!!!

ヨワキムのおちんちんがヒートアップすればするほど、わたしのヨワキムへの恋心は冷めていった。

そしてヨワキムが果てたと同時にわたしも疲れ果て、二人そろって眠りについた。 その後、とんでもない事態が待ち受けているとも知らずに……。

夜中に外に放り出され、とんでもない恐怖を体験する
目が覚めると夜中の二時だった。

わたしが目覚めると、隣で丸裸なまま眠っていたヨワキムも起き出した。とはいえ、まだ夜中なので朝まで一緒に寝るものだと思っていた。

しかし、ヨワキムはこう言ったのである。

「マコ、君は今から帰って」

「え?」

一瞬耳を疑った。 「You have to go home」、確かにヨワキムにそう言われた気がしたが、まさかそんなひどいこと……さすがに空耳だよね? ね?

「マコ、君は帰って。僕は明日、朝からバイトだから」

ヨワキムははっきりと言った。わたしの顔も見ずに。

おいおいおい、夜中の二時やぞ? わしは女とちゃうんか? もはやセフレでも女でもない。

夜中の二時に強制的に家を追い出されたわたしは、ヨワキムのマンションの階段で無気力に座りこんでいた。

マンション内は節約のためか真っ暗で怖かったが、こんな夜中に外を歩く方が怖かった。デンマークの夜は静かで街灯も少なく真っ暗闇に近い(場所によるが)。

電車は無人電車が24時間運行していたが、駅まで歩く10分ほどの道のりが怖いのだ。

しかし、冬の寒さの中、外で朝を待つわけにもいかず、意を決して、真っ暗闇の道を駅に向かって歩きだし、最中にタクシーをつかまえることにした。

さらなる恐怖が待っているとも知らずに。

「~~~まで」

タクシーをつかまえ、家までの住所を伝えた。

運転手は巨体な中東系の男性だった。

「タクシー代、いくらくらいかかりますか?」

念のため、確認した。まさかタクシーで帰るとは思っていなかったため財布の中がギリギリだったのだ。

「150クローネくらいだよ」

よかった、余裕で足りる!と安心した瞬間だった。

「君、となりに来てよ」

タクシー運転手が言う。嫌な予感がした。

「君がとなりに来て僕のおちんちんなめてくれたら、タクシー代いらないよ。それどころかお金あげるよ」

ぞぉぉぉっと青ざめる。

真っ暗闇のデンマークの夜。ヤバイタクシーの運転手と車内で二人きり。

「今すぐここから一番近い駅にとめて」

わたしは叫んだ。

「今電車、工事中で走ってないよ」

運転手はそう言ったが

「いいから止めろよ! すぐに止めなさい!」

怒鳴るようにわたしは叫んだ。

恐ろしかったが、「こんなヤツに襲われてたまるか!」という気持ちが勝った。

とにかくタクシーの中で止めろ止めろと叫び倒すわたしにうんざりしたのか、一番近くの駅で降ろしてくれた。

やっと解放され、安心したが、体は恐怖と冬の寒さで震えていた。

電車は普通に動いていた。タクシーの運転手は嘘をついたのだ。

散々な夜だった。

何はともあれ無事でよかったのだが、セフレに恋すると、このように痛い目を見ることがあるのだと、深く学んだ。わたしの場合はかなり特殊な例ではあるが。

ヨワキム性格悪いからやめといた方がいい。

あの時、友人の忠告を聞き入れてヨワキムと会わなければよかった。そうしたらこんなに怖い目に遭わずに済んだのに・・・。

数日後、ヨワキムから「元気? 今度いつ会える?」と、わたしが生理を終えたのを見計らったかのようにメッセージが来た。

もちろんわたしは既読スルー。

セフレから恋人に発展したことも過去にあったが、セフレみんながみんな、体の相性がいい=心の相性までいいとは限らないのである。

ヨワキムにもし恋をしなかったら、生理の時に会いに行くこともなかったし、お気に入りのDVDを持っていくこともなかったし、ただ毎回ヤって、ヤったら即バイバイの潔い関係でいられたかもしれない。

だけどわたしは後悔していない。 いくらセフレとは言え、夜中に帰れというような最低男とは遊びでも付き合いたくない。

セフレに恋をしたことで最悪な目に遭ったが、すぐに最低男と分かったことは不幸中の幸いだったのかもしれない。

『林先生が驚く初耳学!』で、Sexy Zone中島健人ピンチ!? 11月26日(日)ジャニーズアイドル出演情報

――翌日にジャニーズアイドルが出演予定の番組情報をお届けします。見逃さないように、録画予約をお忘れなく!

※一部を除き、首都圏の放送情報を元に構成しています。
※番組編成、及び放送日時は変更になることがあります。最新情報は番組公式サイト等をご確認ください。

●TOKIO

11:25~11:55 『男子ごはん』(テレビ東京) 国分太一

※『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)は放送休止。

●KinKi Kids

13:30~14:00 『KinKi Kidsのブンブブーン』(フジテレビ系)

●V6

19:30~19:55 『みんなの手話』(NHK Eテレ) 三宅健

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