エクソシストと現代人のメンヘルとの関係性は? ドキュメンタリー映画『悪魔祓い、聖なる儀式』

 いたいけな少女の顔が別人のように変わり、男の野太い声で家族や神父を汚い言葉で罵倒し始める。オカルト映画『エクソシスト』(73)を初めて観たときの衝撃が忘れられない。この映画が1949年に実際に起きた「メリーランド悪魔憑き事件」を題材にしていると知り、さらに戦慄を覚えた。そんな『エクソシスト』との遭遇体験がトラウマになっている人にとって、実に興味深いドキュメンタリー映画が現在公開中だ。エクソシストを密着取材し、悪魔祓いの儀式の様子をカメラに収めた『悪魔祓い、聖なる儀式』がそれだ。

 勘違いされることがあるが、エクソシストとは悪魔憑きのことではなく、ヴァチカンが公認しているカトリック系の正式な悪魔祓い師のこと。1200年もの歴史を持つエクソシストだが、映画『エミリー・ローズ』(05)の題材となった「アンネリーゼ・ミシェル事件(悪魔祓いを受けていた女子大生が衰弱死し、家族と司祭が過失致死で起訴された)」が起きた1976年以降は秘密裡に儀式を執り行なうエクソシストの存在は問題視され、欧州での人気は下火となっていた。ところが近年になって教会に悪魔祓いを頼む人々が急増しているという。イタリアの女性監督フェデリカ・ディ・ジャコモは、経験豊かな悪魔祓い師として有名なシチリア島のカタルド神父たちのもとに通い、悪魔祓いの儀式の様子と悪魔祓いを求める人々の素顔に迫っていく。

 初めて公開される悪魔祓いの儀式の様子に、まず目がくぎ付けとなる。本来は取材不可能な秘儀なのだが、その閉鎖性ゆえに映画『エミリー・ローズ』のような不幸な事件が起きてしまった。進歩的な考えの持ち主であるカタルド神父は儀式中にカメラが回ることを許した。朝早くから教会の前には悪魔祓いを求める人々が行列をなしている。悪魔祓いは基本的に個人に対して行うものだが、需要に供給が追いつかないため、この日は集団での儀式が行なわれた。紫色のストーラを首に掛けた神父が祈り始めると、それまで静かだった参列者の中からうめき声が漏れ始め、パンクファッションの若い男性がイスから転げ落ちて床を這いずり回る。「気分が悪い」と、ふらつきながら途中で退席する女性もいる。事前に神父が「誰かに兆候が現われても、祈り続けるように」と説明していたこともあり、参列者たちは騒然となりながらも儀式はそのまま続く。

 

 厳粛な儀式中に一部の参列者がトランス状態に陥ったようにも映るし、動物のように唸りながら床を転がる姿は本当に何かが取り憑いているようにも思える。フェデリカ監督はこういった衝撃映像にナレーションやテロップで説明を加えることなく、ただカメラの前で起きている現象をそのまま観客に伝えるようとする。どう受け取るかは我々の判断に委ねられる。

 カタルド神父は忙しい。集団での悪魔祓いでは足りない人には個別での悪魔祓いを行ない、悪魔憑きと思われる人に手をかざし、聖水を振りまく。教会を訪ねることができない人のために携帯電話での悪魔祓いにも応じている。「彼女から出ていけ、サタン!」と携帯電話に向かって叫び、アーメンと祈りの言葉を捧げる神父。ヴァチカンでは集団での儀式や電話での悪魔祓いは認めていないが、ヴァチカンの偉い人からの回答をのんびり待っていては、教会に救いを求める人たちの切羽詰まった悩みに到底応えることができない。

 悪魔祓いを求める参列者たちの動向もカメラは追っていく。集団儀式の際に床を這っていたパンクファッションの若者は自宅マンションに戻るが、過去にもいろんなトラブルがあったらしく、母親は息子が自宅マンションに入ることを許さない。この若者は居場所がなく、夜の街をさまよい、その結果ドラッグに手を出すことになる。これでは、それこそ悪魔の思うつぼではないか。途中退席した金髪の女性も深刻な状況だった。いくつもの教会を訪ねては儀式に度々参加しているが、症状の回復は一進一退。それ以前には病院でも診てもらい、心療内科に通ったり、脳検査も受けているが、体調が悪化するはっきりした原因は分からないままで、医者からは匙を投げ出されていた。家族からも医学からも見放された彼らにとっての、最後のセーフティネットがエクソシストであるカタルド神父だったのだ。

 

 悪魔祓いを執り行う際には、取り憑かれたと訴えている人が他の病気、特に心理的な病を抱えていないかどうかを見極めることが重要となってくる。明らかに精神病を患っている場合は、向精神薬を用いて医学の力で治療すべきというのが今のカトリック教会の方針だ。時代と共に、宗教の在り方もずいぶんと変わりつつある。悪魔払いの儀式を実際に取材した経験のあるノンフィクション作家・島村菜津の『エクソシスト急募』(メディアファクトリー新書)を読むと、イタリアでエクソシストの需要が急増している社会背景として、精神病院が廃止されていることが挙げられている。非人道的だという理由から、患者を一般社会から隔離する旧来の精神病棟はイタリアではほとんど無くなっているそうだ。また、精神科に通うことでクスリ漬けになってしまうことを嫌い、教会に救いを求める人たちも多い。信仰、家族および生活環境、メンタルヘルスの問題を分離して考えることは難しい。

 カタルド神父は悪魔祓いの儀式のみならず、参列者たちの「夫が職場で浮気しているんじゃないかと心配」「仕事相手がなかなか代金を支払ってくれない」といった日常生活での不平不満にも耳を傾け、ひとりずつ助言を与えてなくてはならない。信者たちに慕われ、祈りの言葉のひとつひとつにありがたみが感じられるカタルド神父は身も心も休まる暇がない。

 カメラは最後に、アンソニー・ホプキンス主演作『ザ・ライト エクソシストの真実』(11)にも登場したヴァチカンにあるレジーナ・アポストロルム大学で行なわれているエクソシスト養成講座の様子を伝える。年に1度開かれるこの講座には、欧州だけでなく、米国からアジアまで世界各地からエクソシストとしての公認資格を得るために神父たちが熱心に集まっている。社会不安に加え、様々なストレスを抱え、心の闇に苦しみ続ける現代人は、悪魔の目には格好の獲物に映ることだろう。そんな現代人たちを悪魔の手から救うため、より多くのエクソシストたちが必要とされている。
(文=長野辰次)

『悪魔祓い、聖なる儀式』

監督/フェデリカ・ディ・ジャコモ
配給/セテラ・インターナショナル
11月18日より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中
C)MIR Cinematografica – Opera Films 2016
http://www.cetera.co.jp/liberami

『パンドラ映画館』電子書籍発売中!

日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』
が電子書籍になりました。
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エクソシストと現代人のメンヘルとの関係性は? ドキュメンタリー映画『悪魔祓い、聖なる儀式』

 いたいけな少女の顔が別人のように変わり、男の野太い声で家族や神父を汚い言葉で罵倒し始める。オカルト映画『エクソシスト』(73)を初めて観たときの衝撃が忘れられない。この映画が1949年に実際に起きた「メリーランド悪魔憑き事件」を題材にしていると知り、さらに戦慄を覚えた。そんな『エクソシスト』との遭遇体験がトラウマになっている人にとって、実に興味深いドキュメンタリー映画が現在公開中だ。エクソシストを密着取材し、悪魔祓いの儀式の様子をカメラに収めた『悪魔祓い、聖なる儀式』がそれだ。

 勘違いされることがあるが、エクソシストとは悪魔憑きのことではなく、ヴァチカンが公認しているカトリック系の正式な悪魔祓い師のこと。1200年もの歴史を持つエクソシストだが、映画『エミリー・ローズ』(05)の題材となった「アンネリーゼ・ミシェル事件(悪魔祓いを受けていた女子大生が衰弱死し、家族と司祭が過失致死で起訴された)」が起きた1976年以降は秘密裡に儀式を執り行なうエクソシストの存在は問題視され、欧州での人気は下火となっていた。ところが近年になって教会に悪魔祓いを頼む人々が急増しているという。イタリアの女性監督フェデリカ・ディ・ジャコモは、経験豊かな悪魔祓い師として有名なシチリア島のカタルド神父たちのもとに通い、悪魔祓いの儀式の様子と悪魔祓いを求める人々の素顔に迫っていく。

 初めて公開される悪魔祓いの儀式の様子に、まず目がくぎ付けとなる。本来は取材不可能な秘儀なのだが、その閉鎖性ゆえに映画『エミリー・ローズ』のような不幸な事件が起きてしまった。進歩的な考えの持ち主であるカタルド神父は儀式中にカメラが回ることを許した。朝早くから教会の前には悪魔祓いを求める人々が行列をなしている。悪魔祓いは基本的に個人に対して行うものだが、需要に供給が追いつかないため、この日は集団での儀式が行なわれた。紫色のストーラを首に掛けた神父が祈り始めると、それまで静かだった参列者の中からうめき声が漏れ始め、パンクファッションの若い男性がイスから転げ落ちて床を這いずり回る。「気分が悪い」と、ふらつきながら途中で退席する女性もいる。事前に神父が「誰かに兆候が現われても、祈り続けるように」と説明していたこともあり、参列者たちは騒然となりながらも儀式はそのまま続く。

 

 厳粛な儀式中に一部の参列者がトランス状態に陥ったようにも映るし、動物のように唸りながら床を転がる姿は本当に何かが取り憑いているようにも思える。フェデリカ監督はこういった衝撃映像にナレーションやテロップで説明を加えることなく、ただカメラの前で起きている現象をそのまま観客に伝えるようとする。どう受け取るかは我々の判断に委ねられる。

 カタルド神父は忙しい。集団での悪魔祓いでは足りない人には個別での悪魔祓いを行ない、悪魔憑きと思われる人に手をかざし、聖水を振りまく。教会を訪ねることができない人のために携帯電話での悪魔祓いにも応じている。「彼女から出ていけ、サタン!」と携帯電話に向かって叫び、アーメンと祈りの言葉を捧げる神父。ヴァチカンでは集団での儀式や電話での悪魔祓いは認めていないが、ヴァチカンの偉い人からの回答をのんびり待っていては、教会に救いを求める人たちの切羽詰まった悩みに到底応えることができない。

 悪魔祓いを求める参列者たちの動向もカメラは追っていく。集団儀式の際に床を這っていたパンクファッションの若者は自宅マンションに戻るが、過去にもいろんなトラブルがあったらしく、母親は息子が自宅マンションに入ることを許さない。この若者は居場所がなく、夜の街をさまよい、その結果ドラッグに手を出すことになる。これでは、それこそ悪魔の思うつぼではないか。途中退席した金髪の女性も深刻な状況だった。いくつもの教会を訪ねては儀式に度々参加しているが、症状の回復は一進一退。それ以前には病院でも診てもらい、心療内科に通ったり、脳検査も受けているが、体調が悪化するはっきりした原因は分からないままで、医者からは匙を投げ出されていた。家族からも医学からも見放された彼らにとっての、最後のセーフティネットがエクソシストであるカタルド神父だったのだ。

 

 悪魔祓いを執り行う際には、取り憑かれたと訴えている人が他の病気、特に心理的な病を抱えていないかどうかを見極めることが重要となってくる。明らかに精神病を患っている場合は、向精神薬を用いて医学の力で治療すべきというのが今のカトリック教会の方針だ。時代と共に、宗教の在り方もずいぶんと変わりつつある。悪魔払いの儀式を実際に取材した経験のあるノンフィクション作家・島村菜津の『エクソシスト急募』(メディアファクトリー新書)を読むと、イタリアでエクソシストの需要が急増している社会背景として、精神病院が廃止されていることが挙げられている。非人道的だという理由から、患者を一般社会から隔離する旧来の精神病棟はイタリアではほとんど無くなっているそうだ。また、精神科に通うことでクスリ漬けになってしまうことを嫌い、教会に救いを求める人たちも多い。信仰、家族および生活環境、メンタルヘルスの問題を分離して考えることは難しい。

 カタルド神父は悪魔祓いの儀式のみならず、参列者たちの「夫が職場で浮気しているんじゃないかと心配」「仕事相手がなかなか代金を支払ってくれない」といった日常生活での不平不満にも耳を傾け、ひとりずつ助言を与えてなくてはならない。信者たちに慕われ、祈りの言葉のひとつひとつにありがたみが感じられるカタルド神父は身も心も休まる暇がない。

 カメラは最後に、アンソニー・ホプキンス主演作『ザ・ライト エクソシストの真実』(11)にも登場したヴァチカンにあるレジーナ・アポストロルム大学で行なわれているエクソシスト養成講座の様子を伝える。年に1度開かれるこの講座には、欧州だけでなく、米国からアジアまで世界各地からエクソシストとしての公認資格を得るために神父たちが熱心に集まっている。社会不安に加え、様々なストレスを抱え、心の闇に苦しみ続ける現代人は、悪魔の目には格好の獲物に映ることだろう。そんな現代人たちを悪魔の手から救うため、より多くのエクソシストたちが必要とされている。
(文=長野辰次)

『悪魔祓い、聖なる儀式』

監督/フェデリカ・ディ・ジャコモ
配給/セテラ・インターナショナル
11月18日より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中
C)MIR Cinematografica – Opera Films 2016
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自称「半端な勘違い野郎」が雌伏2年──“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、新作小説『熱帯夜』への思いを激白!

 2年間の沈黙を破り、入魂の新作をリリース!――“元アウトローのカリスマ”こと作家の瓜田純士(37)がこのほど、2015年以来となる新刊『熱帯夜』(Kindle版)を発表した。新宿署の刑事が、国際指名手配犯の潜伏先と目されるマニラへ飛び、魑魅魍魎をかき分けながら驚愕の真相を知るクライム・フィクションだ。未来に怯え、酒に溺れ、「俺は半端な勘違い野郎」と自覚した瓜田が、再起をかけて臨んだ一作。創作の苦労や、作品の見どころを著者に聞いた。

 

――『熱帯夜』を拝読しましたが、「“本気の瓜田”はこんなにもすごいのか!」と舌を巻きました。これは、新宿で生まれ育った元極道の瓜田さんだからこそ書けた生々しいフィクションと言えるでしょう。歌舞伎町、フィリピン、酒、タバコ、刑事、ヤクザ、犯罪組織……そういった言葉が好きな人であれば、必ずや引き込まれ、最後までワクワクドキドキが止まらない内容だと思います。

瓜田 ありがとうございます。これ、絶対の自信作なんですよ。警察が主人公ではあるけども、警察小説じゃない。「新宿発のエンターテインメント」だと思っています。

――事件や登場人物に、モチーフはありますよね?

瓜田 あったにせよ、明らかに変えています。一個一個、好きなようにアレンジして、別人格として描いている。北野武監督の『アウトレイジ』に対して、「花菱会のモデルは山口組だろ!」と突っ込むのは野暮ってもんでしょ。それと同じです。あくまでもフィクションのエンタメとして楽しんでほしいですね。

――刑事モノにした理由は?

瓜田 ストーリーの設定上、対立構図が必要だっただけで、特に刑事にこだわりがあったわけじゃない。それよりもむしろ、犯罪者にとっての「旬」をなるべく入れることにこだわりました。そのほうが読んでいる人がわかりやすいでしょう。でもそれは物語に引き込むための手法に過ぎない。結局どこが肝なのかというと、東南アジアと日本を股にかけた、追う側と逃げる側の執念のぶつかり合い。そして、ぶつかり合った末のドラマチックなケリの付け方ですね。

――謎解き要素や、掛け合いの妙も素晴らしかった。スタイリッシュなだけじゃなく、実はサービス精神旺盛で、ユーモラスな部分もある瓜田さんの持ち味が、いいバランスで出ていたと思います。

瓜田 ユーモアってことでいうと、俺ね、西村京太郎の十津川警部シリーズが好きなんですよ。十津川警部と亀さんみたいな、どこか息抜きになる会話っていうのかな。切れ者の刑事と、おっちょこちょいな奴のコンビものを書いてみたかったんです。同職同士だとそのままになっちゃうので、本作では刑事とフリーライターを組ませることにしました。

――一昨年の秋に『國殺』が刊行されてからしばらく経った頃、「今は書きたいことが何もない。書きたいことが現れるまで待つしかない」と語っていた瓜田さん。しかし、昨年の秋頃から執筆のために自宅へ篭り始めましたよね。それが今回の『熱帯夜』だったんですか?

瓜田 そうです。江戸川乱歩賞にもともと興味あって、前回(2017年1月末日締め切り)の賞に応募してみよう、ここで一旗上げようと思い立って、去年の10月ぐらいから急ピッチで書き始めました。制作期間は、3カ月程度。物語の構想は以前からうっすらあったのですが、クライマックスを含め、書きながらどんどん軌道修正していった。慣れないパソコンを使って、締め切りから逆算した「1日何枚」というペースを死守しながら、早寝早起きで執筆しました。ちなみにこの作品には酒とタバコがよく出てくるんですが、自分は禁酒禁煙で制作に取り組んだ。俺は根が真面目なので、そういうストイックな生活にも順応できましたが、可哀想なのは急にそんな生活に巻き込まれることになった嫁ですね。去年のクリスマスは彼女のことを、近所のイトーヨーカドーにしか連れて行けなかったですから。

――執筆に取り掛かった直後、「ワープロソフトってなんだ?」とか「バックアップの取り方がわからないから、原稿を少し書き終える度にお袋のパソコンにメールで送っている」とかおっしゃっていたので、大丈夫かなぁ……と心配していたのですが、パソコンには慣れましたか?

瓜田 いや、最後までおっかなびっくりでした。実は「コピーペースト」という機能も最近知った(笑)。もっと早くに知っていれば、あんなに苦労することはなかったのに……。

――結局、江戸川乱歩賞の応募には間に合ったんですか?

瓜田 間に合いましたが、今年の受賞作は1作もありませんでした。自信作だったけど、何かが足りないんだろうと思い、そのあと何度も読み直してテコ入れをしてから、今回の出版にこぎつけました。

――Kindleからの発売となりましたが、電子書籍を選択した理由は?

瓜田 俺の作家活動を振り返ると、自叙伝的な『遺書』(太田出版)が売れて注目を集めて、世相を斬る『國殺』(竹書房)も出すことができた。でも本心を言えば、「30代のうちに作家としての名刺がわりになるようなちゃんとした小説を書きたい」という思いがかねてからあったんです。江戸川乱歩賞への応募は、そのいいきっかけになりましたね。受賞は逃したけど、せっかくなのでこれを友人の作家らの意見も聞きつつブラッシュアップしてから世に出したいと思った。でも、出版社との付き合いもないし、どこかに持って行ってどうこうするエネルギーもなくて。そんな折、Kindleを使えば、自分で書いたものを自分で売り出すことができると知ったんです。

――自力で書籍を出すことに不安はなかったですか?

瓜田 友人の作家に『熱帯夜』を見せたところ、出版社を紹介してくれるという話や、漫画の原作としてどうかとか、あるいは違う公募に出してみたらどうか、などの話が広がりかけたこともあった。だけど、俺の中で決めていたんです。よくわからない奴から「ここをこう直せ」と言われないで済む、登場人物のキャラクターを殺さないで済む方法で出したい、と。あのストーリー、あのキャラのままでいきたいという絶対的な自信がありましたから。

――編集者不在で書籍を出したかったんですか?

瓜田 格好よく聞こえちゃうかもしれないけど、そういうことです。だって、自分が間違いなく面白いと信じている作品を、頭をペコペコ下げながら売り込んだり、トンチンカンな奴に「ここをこう直せ」と言われて、泣く泣く言うことを聞いたり、さんざん文句を言われた末に「やっぱ出せない」と言われたりする悔しさを味わいながら何年も過ごすのなんて、俺には耐えられませんよ(笑)。

――瓜田さんは人一倍せっかちで、人一倍負けず嫌いですからね。

瓜田 それに、コンプライアンスにうるさい昨今、黙って待っていても、自分のような人間に出版の話なんか舞い込んでこない。一応、自分の身分をわかっているつもりなんで。さて、どうしたものかと悩みましたが、「自分が絶対に面白いと思うのなら、出版社を通す必要はなく、全部自分の責任でやればいいじゃないか。だったらKindleだな」という簡単なことに気付いて、気持ちがラクになりました。

――前作を出した直後の瓜田さんは、気性が荒くて危なっかしい印象でした。でも2年経った今は、お酒をやめたせいもあるでしょうが、だいぶ落ち着きましたね。内面の変化や成長が、『熱帯夜』の文体にも表れていたように感じます。

瓜田 あの頃は人間として落ちていた時期で、酒に溺れていましたね。自分が将来どうしていきたいのか、地に足を着けて考えることにビビっていたんですよ。理想ばかりが高くて、現実の自分を直視したくなくて、ずっと酒でごまかしていたんです。起きるトラブルはすべて自分のせいなのに、それを直視できずにヤケクソになっていた。たとえば酒の勢いでケンカになって死んだら、それはそれで構わないと思っていました。それぐらい当時は、生きることに必死じゃなかったんですよ。でも今はちゃんと生きていきたいと思う。ちゃんと生きていくためには、何事にも中途半端だった過去の自分を捨て去るしかない。そう気付かされたんです。

――何によって気付かされたんですか?

瓜田 嫁がじっくり時間をかけて教えてくれました。それまでの自分は、人生のすべてが半端だったし、そしてラッキーだった。ラッキーだったせいで、半端な気持ちのまま半端な少年が半端な青年になり、不良時代の威光で持ち上げられたりして、ある程度のことが通用しちゃっていたんです。だから、そのまま肩で風切って生きていけるんじゃないか、って勘違いしちゃった。人のことをしょっちゅう「この勘違い野郎!」と罵っていたけど、自分が一番の勘違い野郎だったという(笑)。

――(笑)。

瓜田 そうじゃないんだ。誰も彼もが石橋を叩いて一生懸命生きている。それってすごく格好いいな、自分はめちゃくちゃ格好悪いな、ってことに気付いてからは、自分を変えるために生活環境も生き方も改めました。酒とタバコをやめたのも、そういう理由からです。今は誰ともケンカなんかしたくないし、もし何かあっても嫁を守れるように数カ月前から格闘技の道場にも通い始めました。地下格闘技に出ていた時代に通っとけよ、って話ですが(笑)。

――再生の裏には、内助の功があったんですね。

瓜田 ドン底の状態で振り回したのに、振り回されながらついてきてくれた。その恩を返すためにも、半端なことはもうできないです。今回の執筆も、これをやり遂げなかったら、今後の人生、何もかもが中途半端に終わるという覚悟で臨みました。受かる受からない、売れる売れないはさておいて、絶対に最後までやり切ってやるという思いで書いた。正直、途中で何度も心が折れかかりましたよ。だって、掲載が約束されていない長文を書くのって、面倒っちゃ面倒ですもん(笑)。でもこの山を越えないと、今後も面倒から逃げるだろうし、そんな自分がどうしても許せなかったんですよ。

――ひと山越えた感想は?

瓜田 こういうことを死ぬまで続けたいですね。作家活動に限らず、練習中の格闘技や、今やっている石膏ボード運びのバイトも一緒です。誰かに何かを教わったら「ありがとうございます」と感謝しながら、ちゃんと覚えてやり遂げる。今までいろんなことを疎かにした分、何事も近道せずにコツコツと続けていきたい。今回の『熱帯夜』は生まれ変わるための挑戦の一つでしたから、すごくうれしいですよ。発売までたどり着けたのは。

――おめでとうございます。

瓜田 今回の作業を通じて、編集者を介さないメリットもデメリットもよくわかったので、今後の糧にしていきたいです。あと今回、改めて気付きましたが、やっぱ俺、書くのが好きみたいですね。何時間もかけて文章を考えたり直したりする作業が全然苦じゃない。寝るのがもったいないとすら感じちゃう。早く次の作品を書きたいですもん。

――すでに次回作の構想が?

瓜田 シリーズ化も視野に入れつつ、いろいろと構想を練っています。まぁ、楽しみにしていてください。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。
http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

※瓜田純士公式ブログ
http://junshiurita.com

※瓜田純士&麗子Instagram
https://www.instagram.com/junshi.reiko/

自称「半端な勘違い野郎」が雌伏2年──“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、新作小説『熱帯夜』への思いを激白!

 2年間の沈黙を破り、入魂の新作をリリース!――“元アウトローのカリスマ”こと作家の瓜田純士(37)がこのほど、2015年以来となる新刊『熱帯夜』(Kindle版)を発表した。新宿署の刑事が、国際指名手配犯の潜伏先と目されるマニラへ飛び、魑魅魍魎をかき分けながら驚愕の真相を知るクライム・フィクションだ。未来に怯え、酒に溺れ、「俺は半端な勘違い野郎」と自覚した瓜田が、再起をかけて臨んだ一作。創作の苦労や、作品の見どころを著者に聞いた。

 

――『熱帯夜』を拝読しましたが、「“本気の瓜田”はこんなにもすごいのか!」と舌を巻きました。これは、新宿で生まれ育った元極道の瓜田さんだからこそ書けた生々しいフィクションと言えるでしょう。歌舞伎町、フィリピン、酒、タバコ、刑事、ヤクザ、犯罪組織……そういった言葉が好きな人であれば、必ずや引き込まれ、最後までワクワクドキドキが止まらない内容だと思います。

瓜田 ありがとうございます。これ、絶対の自信作なんですよ。警察が主人公ではあるけども、警察小説じゃない。「新宿発のエンターテインメント」だと思っています。

――事件や登場人物に、モチーフはありますよね?

瓜田 あったにせよ、明らかに変えています。一個一個、好きなようにアレンジして、別人格として描いている。北野武監督の『アウトレイジ』に対して、「花菱会のモデルは山口組だろ!」と突っ込むのは野暮ってもんでしょ。それと同じです。あくまでもフィクションのエンタメとして楽しんでほしいですね。

――刑事モノにした理由は?

瓜田 ストーリーの設定上、対立構図が必要だっただけで、特に刑事にこだわりがあったわけじゃない。それよりもむしろ、犯罪者にとっての「旬」をなるべく入れることにこだわりました。そのほうが読んでいる人がわかりやすいでしょう。でもそれは物語に引き込むための手法に過ぎない。結局どこが肝なのかというと、東南アジアと日本を股にかけた、追う側と逃げる側の執念のぶつかり合い。そして、ぶつかり合った末のドラマチックなケリの付け方ですね。

――謎解き要素や、掛け合いの妙も素晴らしかった。スタイリッシュなだけじゃなく、実はサービス精神旺盛で、ユーモラスな部分もある瓜田さんの持ち味が、いいバランスで出ていたと思います。

瓜田 ユーモアってことでいうと、俺ね、西村京太郎の十津川警部シリーズが好きなんですよ。十津川警部と亀さんみたいな、どこか息抜きになる会話っていうのかな。切れ者の刑事と、おっちょこちょいな奴のコンビものを書いてみたかったんです。同職同士だとそのままになっちゃうので、本作では刑事とフリーライターを組ませることにしました。

――一昨年の秋に『國殺』が刊行されてからしばらく経った頃、「今は書きたいことが何もない。書きたいことが現れるまで待つしかない」と語っていた瓜田さん。しかし、昨年の秋頃から執筆のために自宅へ篭り始めましたよね。それが今回の『熱帯夜』だったんですか?

瓜田 そうです。江戸川乱歩賞にもともと興味あって、前回(2017年1月末日締め切り)の賞に応募してみよう、ここで一旗上げようと思い立って、去年の10月ぐらいから急ピッチで書き始めました。制作期間は、3カ月程度。物語の構想は以前からうっすらあったのですが、クライマックスを含め、書きながらどんどん軌道修正していった。慣れないパソコンを使って、締め切りから逆算した「1日何枚」というペースを死守しながら、早寝早起きで執筆しました。ちなみにこの作品には酒とタバコがよく出てくるんですが、自分は禁酒禁煙で制作に取り組んだ。俺は根が真面目なので、そういうストイックな生活にも順応できましたが、可哀想なのは急にそんな生活に巻き込まれることになった嫁ですね。去年のクリスマスは彼女のことを、近所のイトーヨーカドーにしか連れて行けなかったですから。

――執筆に取り掛かった直後、「ワープロソフトってなんだ?」とか「バックアップの取り方がわからないから、原稿を少し書き終える度にお袋のパソコンにメールで送っている」とかおっしゃっていたので、大丈夫かなぁ……と心配していたのですが、パソコンには慣れましたか?

瓜田 いや、最後までおっかなびっくりでした。実は「コピーペースト」という機能も最近知った(笑)。もっと早くに知っていれば、あんなに苦労することはなかったのに……。

――結局、江戸川乱歩賞の応募には間に合ったんですか?

瓜田 間に合いましたが、今年の受賞作は1作もありませんでした。自信作だったけど、何かが足りないんだろうと思い、そのあと何度も読み直してテコ入れをしてから、今回の出版にこぎつけました。

――Kindleからの発売となりましたが、電子書籍を選択した理由は?

瓜田 俺の作家活動を振り返ると、自叙伝的な『遺書』(太田出版)が売れて注目を集めて、世相を斬る『國殺』(竹書房)も出すことができた。でも本心を言えば、「30代のうちに作家としての名刺がわりになるようなちゃんとした小説を書きたい」という思いがかねてからあったんです。江戸川乱歩賞への応募は、そのいいきっかけになりましたね。受賞は逃したけど、せっかくなのでこれを友人の作家らの意見も聞きつつブラッシュアップしてから世に出したいと思った。でも、出版社との付き合いもないし、どこかに持って行ってどうこうするエネルギーもなくて。そんな折、Kindleを使えば、自分で書いたものを自分で売り出すことができると知ったんです。

――自力で書籍を出すことに不安はなかったですか?

瓜田 友人の作家に『熱帯夜』を見せたところ、出版社を紹介してくれるという話や、漫画の原作としてどうかとか、あるいは違う公募に出してみたらどうか、などの話が広がりかけたこともあった。だけど、俺の中で決めていたんです。よくわからない奴から「ここをこう直せ」と言われないで済む、登場人物のキャラクターを殺さないで済む方法で出したい、と。あのストーリー、あのキャラのままでいきたいという絶対的な自信がありましたから。

――編集者不在で書籍を出したかったんですか?

瓜田 格好よく聞こえちゃうかもしれないけど、そういうことです。だって、自分が間違いなく面白いと信じている作品を、頭をペコペコ下げながら売り込んだり、トンチンカンな奴に「ここをこう直せ」と言われて、泣く泣く言うことを聞いたり、さんざん文句を言われた末に「やっぱ出せない」と言われたりする悔しさを味わいながら何年も過ごすのなんて、俺には耐えられませんよ(笑)。

――瓜田さんは人一倍せっかちで、人一倍負けず嫌いですからね。

瓜田 それに、コンプライアンスにうるさい昨今、黙って待っていても、自分のような人間に出版の話なんか舞い込んでこない。一応、自分の身分をわかっているつもりなんで。さて、どうしたものかと悩みましたが、「自分が絶対に面白いと思うのなら、出版社を通す必要はなく、全部自分の責任でやればいいじゃないか。だったらKindleだな」という簡単なことに気付いて、気持ちがラクになりました。

――前作を出した直後の瓜田さんは、気性が荒くて危なっかしい印象でした。でも2年経った今は、お酒をやめたせいもあるでしょうが、だいぶ落ち着きましたね。内面の変化や成長が、『熱帯夜』の文体にも表れていたように感じます。

瓜田 あの頃は人間として落ちていた時期で、酒に溺れていましたね。自分が将来どうしていきたいのか、地に足を着けて考えることにビビっていたんですよ。理想ばかりが高くて、現実の自分を直視したくなくて、ずっと酒でごまかしていたんです。起きるトラブルはすべて自分のせいなのに、それを直視できずにヤケクソになっていた。たとえば酒の勢いでケンカになって死んだら、それはそれで構わないと思っていました。それぐらい当時は、生きることに必死じゃなかったんですよ。でも今はちゃんと生きていきたいと思う。ちゃんと生きていくためには、何事にも中途半端だった過去の自分を捨て去るしかない。そう気付かされたんです。

――何によって気付かされたんですか?

瓜田 嫁がじっくり時間をかけて教えてくれました。それまでの自分は、人生のすべてが半端だったし、そしてラッキーだった。ラッキーだったせいで、半端な気持ちのまま半端な少年が半端な青年になり、不良時代の威光で持ち上げられたりして、ある程度のことが通用しちゃっていたんです。だから、そのまま肩で風切って生きていけるんじゃないか、って勘違いしちゃった。人のことをしょっちゅう「この勘違い野郎!」と罵っていたけど、自分が一番の勘違い野郎だったという(笑)。

――(笑)。

瓜田 そうじゃないんだ。誰も彼もが石橋を叩いて一生懸命生きている。それってすごく格好いいな、自分はめちゃくちゃ格好悪いな、ってことに気付いてからは、自分を変えるために生活環境も生き方も改めました。酒とタバコをやめたのも、そういう理由からです。今は誰ともケンカなんかしたくないし、もし何かあっても嫁を守れるように数カ月前から格闘技の道場にも通い始めました。地下格闘技に出ていた時代に通っとけよ、って話ですが(笑)。

――再生の裏には、内助の功があったんですね。

瓜田 ドン底の状態で振り回したのに、振り回されながらついてきてくれた。その恩を返すためにも、半端なことはもうできないです。今回の執筆も、これをやり遂げなかったら、今後の人生、何もかもが中途半端に終わるという覚悟で臨みました。受かる受からない、売れる売れないはさておいて、絶対に最後までやり切ってやるという思いで書いた。正直、途中で何度も心が折れかかりましたよ。だって、掲載が約束されていない長文を書くのって、面倒っちゃ面倒ですもん(笑)。でもこの山を越えないと、今後も面倒から逃げるだろうし、そんな自分がどうしても許せなかったんですよ。

――ひと山越えた感想は?

瓜田 こういうことを死ぬまで続けたいですね。作家活動に限らず、練習中の格闘技や、今やっている石膏ボード運びのバイトも一緒です。誰かに何かを教わったら「ありがとうございます」と感謝しながら、ちゃんと覚えてやり遂げる。今までいろんなことを疎かにした分、何事も近道せずにコツコツと続けていきたい。今回の『熱帯夜』は生まれ変わるための挑戦の一つでしたから、すごくうれしいですよ。発売までたどり着けたのは。

――おめでとうございます。

瓜田 今回の作業を通じて、編集者を介さないメリットもデメリットもよくわかったので、今後の糧にしていきたいです。あと今回、改めて気付きましたが、やっぱ俺、書くのが好きみたいですね。何時間もかけて文章を考えたり直したりする作業が全然苦じゃない。寝るのがもったいないとすら感じちゃう。早く次の作品を書きたいですもん。

――すでに次回作の構想が?

瓜田 シリーズ化も視野に入れつつ、いろいろと構想を練っています。まぁ、楽しみにしていてください。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

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「東京五輪・メディア施設は新設すべき」ビッグサイト使用計画に、数々の五輪を見た放送関係者からも疑問の声

 この秋、東京のあちこちで2020年東京五輪の開幕に向けた催しやポスターを見かけるようになった。開幕まで1,000日を迎えた10月28日から、都内各所でカウントダウンイベントが始まっているのだ。

 都庁の正面には早々と東京五輪のロゴが掲示され、東京日本橋の繁華街では、大型のバナーを掲示して街をオリンピック一色に染める催しも行われている。

 そうしたお祭りの一方で、いまだに解決しない問題がある。東京ビッグサイトの会場問題だ。東京五輪のメディアセンターが設置される東京ビッグサイト。開催前後の約1年8カ月の間、利用が制限されることになる。

 これによって、さまざまな業界の展示会が中止・縮小を余儀なくされる。これまで国際的なビジネスマッチングの場として積み重ねてきた実績の消滅。什器・調度品やブース内のデコレーションなど、多くの周辺産業が「死活問題である」として、利用制限期間の改善・再考を求めている。けれども、いまだ明確な解決策は提示されていない。

 今年6月と10月には、東京ビッグサイトでの催しが売り上げの多くを占める業者を中心に結成された「展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会」によって、問題の解決を求める都庁一周デモが開催された。

 9月、展示会を主催する企業などで構成される日本展示会協会(日展協)では「日本経済新聞東京版」に意見広告を掲載したが、これも反響を呼ぶには至っていない。ただ、これまでいくつかの新聞・テレビ等の大手メディアの報道によって、会場問題を知る人は増えてはいる。

 日展協では、抜本的な解決策として、ビッグサイトと同規模の仮設会場、あるいは放送施設の新規建設を提案している。特に前者については、ビッグサイトの隣の防災公園を理想的な候補地としている。もし、それが可能になるとしても、決断する猶予は今年の末まで。東京ビッグサイトで開催されるような大型イベントというのは、おおむね3年前までには日程が決定する。数日間の開催であっても、準備には長い時間が必要だからである(そのため、日展協に加盟する主催者も、再考を求めながら代替会場として提示されている青海に建設予定の仮設会場の予約を打診しなくてはならない、苦しい立場にある)。

 都議選・衆院選の最中には「私が問題を解決する」と手を差し伸べてきた政治家も、頼りにはなっていない。むしろ関係者からは、そうした政治家への不信の声も、ますます高まっている。日展協関係者も八方ふさがりになっていることは認めざるを得ない現状。そうした中で、メディア関係者からも東京ビッグサイトをメディアセンターとして利用することに対する疑問の声が上がっている。

 国際メディアサービスシステム研究所代表の廣谷徹氏は、NHKインターナショナル国際協力部長・エグゼクティブプロデューサーなどを歴任。オリンピック・パラリンピックなど、数々の国際イベントでメディア施設に関与してきた第一人者である。そんな人物が、はっきりと「北京・ロンドン・リオの五輪でも、メディア施設は新設されている。東京もそうすべきだ」と訴えているのである。

「五輪においてメディア施設はメインスタジアムに次ぐ、二番目に重要な施設なのです」

 廣谷氏の言葉は、これまで我々が見てきた各国で開催されたオリンピックでも明らかだ。

 北京・ロンドン・リオと、我々はアスリートの鼓動をテレビの画面やモニター、そしてスマートフォンを通じて感じてきた。中には、世界のどこであっても、生の熱気を味わおうと現地を駆けつける者もいる。世界中から、オリンピック開催都市をめざす人の群れは途方もない。でも、それは全体から見ればほんの一握り。多くの人は、メディアを通じてオリンピックを見るのだ。

 だから国際オリンピック委員会(IOC)にとって、入場料収入は微々たるもの。収益の7割以上は放映権料や各種のライセンス料なのである。リオオリンピックの場合、NBCが全国一社独占のアメリカでは約1,200億円、NHKと民放各局で構成するジャパンコンソーシアムが窓口になる日本では、約360億円がIOCに支払われている。

 五輪のメディア施設は、放送の拠点となる国際放送センター(IBC)と、新聞社など主に紙媒体が使用するメインプレスセンター(MPC)の2つからなるが、前者は膨大な収益をあげる最重要施設なのである。それは、ちょっとした地方局数十個分クラスの巨大な放送局のようなものだ。

「メディア施設は、開催都市が場所を決めて電力や通信などのインフラを整備します。その上で、約1年前……リオの場合、半年前になってしまいましたが……IOC参加のオリンピック放送機構(OBS)が内部の設備を設置するという役割分担になっています」(同)

 東京ビッグサイトを使用する場合、まず問題になるのは膨大な熱を発する放送機器への対処だ。既存の冷房設備ではまったく追いつかず、増設は必須。それを、どのように配置するのか。また、電源設備なども新たに増設しなくてはならない。

 廣谷氏の試算では、東京ビッグサイトを使用した場合には、約800億円の費用がかかるとされている。これに対して、成功例とされるロンドン五輪では、建物を新設したにもかかわらず当時の為替レートで447億円から639億円(土地代を除く)。仮設設備を追加するための造作や、耐規模な仮設会場の新設が必要になり、既存施設を使うメリットは、どこにもない。

「ロンドンの場合、五輪後にメディア施設を改修してヨーロッパ最大のメディアセンターとして利用しています。それに比べると、東京五輪は、やっつけでやっていることは否めません。10年後、20年後のレガシーを考えていないんですよ」(同)

 混迷が続く東京五輪。それに対して、次回次々回の開催都市では既に使用する施設も決まり、具体的な準備に入っている。

「2024年のパリ五輪では、ル・ブルジェ見本市会場。2028年のロス五輪ではNBCユニバーサルのスタジオが使用される予定です。とりわけ後者は五輪を利用して、さまざまな文化や技術を宣伝しようとする戦略があります」(同)

 スポーツの祭典という部分ばかりが注目されるが、五輪は文化・技術の宣伝の場としての側面も大きい。とりわけ東京五輪で注目されるのは、今後主流になるであろう4K・8Kでの放送技術だ。

「とりわけIOCは8Kに関心を持っています。競技の動画を最高の素材で保存しておけば、様々な形で転用ができるからです。2020年までに4Kテレビが普及するかどうかは別として、必ず8Kでの記録は行われます。NHKでは既に技術者を死にものぐるいで養成していますし、ソニーやパナソニックなどの企業にとっても自社の製品や技術をPRする格好の場になるでしょう」(同)

 さらに、五輪を文化を宣伝する場として使うならば、なおさら東京ビッグサイトは避けるべきであるとも、廣谷は考えている。

「パリ五輪の場合、ル・ブルジェ見本市会場は、航空ショーが頻繁に開催される空港も近い。そうした五輪関連のイベントも想定しているのでしょう」(同)

 近年の開催都市では、五輪を都市が世界から注目される場とみて、オリンピック競技だけでなく、各種関連イベントを開催するようになっている。そのためにも、メディア施設は新設し、東京ビッグサイトは通常通りに使用するというのが、もっとも効果的なのである。

「1964年の東京五輪は、高速道路や新幹線が建設されて日本が敗戦を克服して近代国家となった姿を見せる場となりました。10年後、20年後を考えるならば、メディアセンターとして利用するために、かなり手を入れなければならない東京ビッグサイトは、発信の場に使ったほうがいいんです。それとは別にメディアセンターの建物の新設するのは難しいことではありません。二階建ての飛行機の格納庫みたいな、簡単な建物でよいのですから」(同)

 場当たり的な計画の積み重ねの結果、東京五輪は開催まで1,000日を切りながらも、まったくお祭りムードを感じさせてくれない。むしろ失敗の恐れのようなもののほうが、色濃いのではないのか。

 会場と選手村などをつなぐ環状2号線も、築地市場の移転が不明確で工事中のままだ。既に完成した橋も、風雨にさらされ、日々悲惨な姿になっていっている。

 新設か、それとも、既存の計画のままで突き進むのか。誰も明確な解決策を打ち出せないまま、タイムリミットだけが迫っている。
(取材・文=昼間たかし)

「東京五輪・メディア施設は新設すべき」ビッグサイト使用計画に、数々の五輪を見た放送関係者からも疑問の声

 この秋、東京のあちこちで2020年東京五輪の開幕に向けた催しやポスターを見かけるようになった。開幕まで1,000日を迎えた10月28日から、都内各所でカウントダウンイベントが始まっているのだ。

 都庁の正面には早々と東京五輪のロゴが掲示され、東京日本橋の繁華街では、大型のバナーを掲示して街をオリンピック一色に染める催しも行われている。

 そうしたお祭りの一方で、いまだに解決しない問題がある。東京ビッグサイトの会場問題だ。東京五輪のメディアセンターが設置される東京ビッグサイト。開催前後の約1年8カ月の間、利用が制限されることになる。

 これによって、さまざまな業界の展示会が中止・縮小を余儀なくされる。これまで国際的なビジネスマッチングの場として積み重ねてきた実績の消滅。什器・調度品やブース内のデコレーションなど、多くの周辺産業が「死活問題である」として、利用制限期間の改善・再考を求めている。けれども、いまだ明確な解決策は提示されていない。

 今年6月と10月には、東京ビッグサイトでの催しが売り上げの多くを占める業者を中心に結成された「展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会」によって、問題の解決を求める都庁一周デモが開催された。

 9月、展示会を主催する企業などで構成される日本展示会協会(日展協)では「日本経済新聞東京版」に意見広告を掲載したが、これも反響を呼ぶには至っていない。ただ、これまでいくつかの新聞・テレビ等の大手メディアの報道によって、会場問題を知る人は増えてはいる。

 日展協では、抜本的な解決策として、ビッグサイトと同規模の仮設会場、あるいは放送施設の新規建設を提案している。特に前者については、ビッグサイトの隣の防災公園を理想的な候補地としている。もし、それが可能になるとしても、決断する猶予は今年の末まで。東京ビッグサイトで開催されるような大型イベントというのは、おおむね3年前までには日程が決定する。数日間の開催であっても、準備には長い時間が必要だからである(そのため、日展協に加盟する主催者も、再考を求めながら代替会場として提示されている青海に建設予定の仮設会場の予約を打診しなくてはならない、苦しい立場にある)。

 都議選・衆院選の最中には「私が問題を解決する」と手を差し伸べてきた政治家も、頼りにはなっていない。むしろ関係者からは、そうした政治家への不信の声も、ますます高まっている。日展協関係者も八方ふさがりになっていることは認めざるを得ない現状。そうした中で、メディア関係者からも東京ビッグサイトをメディアセンターとして利用することに対する疑問の声が上がっている。

 国際メディアサービスシステム研究所代表の廣谷徹氏は、NHKインターナショナル国際協力部長・エグゼクティブプロデューサーなどを歴任。オリンピック・パラリンピックなど、数々の国際イベントでメディア施設に関与してきた第一人者である。そんな人物が、はっきりと「北京・ロンドン・リオの五輪でも、メディア施設は新設されている。東京もそうすべきだ」と訴えているのである。

「五輪においてメディア施設はメインスタジアムに次ぐ、二番目に重要な施設なのです」

 廣谷氏の言葉は、これまで我々が見てきた各国で開催されたオリンピックでも明らかだ。

 北京・ロンドン・リオと、我々はアスリートの鼓動をテレビの画面やモニター、そしてスマートフォンを通じて感じてきた。中には、世界のどこであっても、生の熱気を味わおうと現地を駆けつける者もいる。世界中から、オリンピック開催都市をめざす人の群れは途方もない。でも、それは全体から見ればほんの一握り。多くの人は、メディアを通じてオリンピックを見るのだ。

 だから国際オリンピック委員会(IOC)にとって、入場料収入は微々たるもの。収益の7割以上は放映権料や各種のライセンス料なのである。リオオリンピックの場合、NBCが全国一社独占のアメリカでは約1,200億円、NHKと民放各局で構成するジャパンコンソーシアムが窓口になる日本では、約360億円がIOCに支払われている。

 五輪のメディア施設は、放送の拠点となる国際放送センター(IBC)と、新聞社など主に紙媒体が使用するメインプレスセンター(MPC)の2つからなるが、前者は膨大な収益をあげる最重要施設なのである。それは、ちょっとした地方局数十個分クラスの巨大な放送局のようなものだ。

「メディア施設は、開催都市が場所を決めて電力や通信などのインフラを整備します。その上で、約1年前……リオの場合、半年前になってしまいましたが……IOC参加のオリンピック放送機構(OBS)が内部の設備を設置するという役割分担になっています」(同)

 東京ビッグサイトを使用する場合、まず問題になるのは膨大な熱を発する放送機器への対処だ。既存の冷房設備ではまったく追いつかず、増設は必須。それを、どのように配置するのか。また、電源設備なども新たに増設しなくてはならない。

 廣谷氏の試算では、東京ビッグサイトを使用した場合には、約800億円の費用がかかるとされている。これに対して、成功例とされるロンドン五輪では、建物を新設したにもかかわらず当時の為替レートで447億円から639億円(土地代を除く)。仮設設備を追加するための造作や、耐規模な仮設会場の新設が必要になり、既存施設を使うメリットは、どこにもない。

「ロンドンの場合、五輪後にメディア施設を改修してヨーロッパ最大のメディアセンターとして利用しています。それに比べると、東京五輪は、やっつけでやっていることは否めません。10年後、20年後のレガシーを考えていないんですよ」(同)

 混迷が続く東京五輪。それに対して、次回次々回の開催都市では既に使用する施設も決まり、具体的な準備に入っている。

「2024年のパリ五輪では、ル・ブルジェ見本市会場。2028年のロス五輪ではNBCユニバーサルのスタジオが使用される予定です。とりわけ後者は五輪を利用して、さまざまな文化や技術を宣伝しようとする戦略があります」(同)

 スポーツの祭典という部分ばかりが注目されるが、五輪は文化・技術の宣伝の場としての側面も大きい。とりわけ東京五輪で注目されるのは、今後主流になるであろう4K・8Kでの放送技術だ。

「とりわけIOCは8Kに関心を持っています。競技の動画を最高の素材で保存しておけば、様々な形で転用ができるからです。2020年までに4Kテレビが普及するかどうかは別として、必ず8Kでの記録は行われます。NHKでは既に技術者を死にものぐるいで養成していますし、ソニーやパナソニックなどの企業にとっても自社の製品や技術をPRする格好の場になるでしょう」(同)

 さらに、五輪を文化を宣伝する場として使うならば、なおさら東京ビッグサイトは避けるべきであるとも、廣谷は考えている。

「パリ五輪の場合、ル・ブルジェ見本市会場は、航空ショーが頻繁に開催される空港も近い。そうした五輪関連のイベントも想定しているのでしょう」(同)

 近年の開催都市では、五輪を都市が世界から注目される場とみて、オリンピック競技だけでなく、各種関連イベントを開催するようになっている。そのためにも、メディア施設は新設し、東京ビッグサイトは通常通りに使用するというのが、もっとも効果的なのである。

「1964年の東京五輪は、高速道路や新幹線が建設されて日本が敗戦を克服して近代国家となった姿を見せる場となりました。10年後、20年後を考えるならば、メディアセンターとして利用するために、かなり手を入れなければならない東京ビッグサイトは、発信の場に使ったほうがいいんです。それとは別にメディアセンターの建物の新設するのは難しいことではありません。二階建ての飛行機の格納庫みたいな、簡単な建物でよいのですから」(同)

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KinKi Kids20周年イベント『KinKi Kids Party!』に、ラブラブツーショットまで収録! ファン必見のフォトレポート!

 2017年7月に横浜スタジアムで開催された20周年イベント「KinKi Kids Party!~ありがとう20年~」を完全フォトレポート! 

 ふたりの必見ラブラブツーショット特集も収録!

Contents

KinKi Kids Party!~ありがとう20 年~フォトレポート・・・・・4P~
懐かしフォトが満載! ベストツーショットギャラリー・・・・73P~

■立ち読みはこちら

カテゴリー: 未分類

KinKi Kids20周年イベント『KinKi Kids Party!』に、ラブラブツーショットまで収録! ファン必見のフォトレポート!

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「暴力事件」渦中でも、我が道を貫く貴乃花一家のスピリッツ

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎鋼の心
 過熱報道が続く中、どこに対しても、心も口も全く開こうとせず、我が道を貫く貴乃花親方。不惜身命っ!

 移動のたびにマスコミ陣から一斉に声を掛けられるも、ガン無視の親方。マスコミにしても、そんなのわかった上で形式として声を掛けているワケで。どうせ無視されるなら、「協会と、どんな話をしたんですか?」「貴ノ岩は今どうしてるんですか?」「親方、親方、何か一言!」って通り一遍の質問の中にまぎれて「そのストールはどこで買われたんですか?」「靴は息子さんのなんですか?」「あのサングラスは、どういうつもりで掛けてるんですか?」「そのパーマはどこであてたんですか?」「その際、美容師には何て注文を?」もぶつけてほしい。どうせ無視されるんだからさ。

 そして、このタイミングで、2冊立て続けに本を出す貴乃花の息子。出版イベントも開催予定らしい。あそこの一家、みんなホントにハート強いよね。相撲介さなくても「不都合な真実はないことにする」というスピリッツは、みなまで言うなで共有できてる。不撓不屈!

◎手のひらを太陽に
 「子育てする女性が活躍できる社会になってほしい」と、議会に赤ちゃん連れてきた熊本市議会の女性議員。……うへえ。

 こういう人に対して変に説得すると、悪者にされかねないし。「理不尽」をわかりやすく示すためには、どうすればいいんだろ。

 「じゃあ、私も子ども連れて行こうっと」「ウチだって、寝たきりの目の離せないじいさんがいるんだ。ストレッチャーに乗せて連れて行こう」「ウチにも病気の牛が」「ウチの豚もお産間近だ」「息子が引きこもりで、精神的に不安定なので、家で1人にできない」「だったらウチのプードルのチャッピーちゃんも。お留守番嫌いなのよね」で、「それでは市議会を始めます」「ホンギャーッ!」「嫁がメシを食わせてくれーん!」「モー!」「ブヒー!」「オヤジぶっ殺すぞテメー!」「ワンッ、ワンワン!」。阿鼻叫喚となった議場の惨状を見せたら、どう思うんだろうか。己の愚を知るのだろうか。いや、こういうヒトって「みんなで参加できてよかった(涙)」ってなりかねないからな。……につける薬はねぇ。

◎天災か!?
 三田佳子の息子、再び。いや、再びどころじゃないっつうの。忘れた頃に、ありとあらゆるパターンを見せてくれる、親不孝のデパート。今回は「こづかい1日15万円」報道も出てたし。前より増えてんじゃねーか。

 『過保護のカホコ』(日本テレビ系)出演で、「あえて」な感じを抉って、「もう過去の話です」という顔をしていた三田佳子であるが。過保護のヨシコは進行中。深刻なドキュメンタリーであるな。

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)、近著に『気になる「あそこ」見聞録』(新潮社)がある。

「暴力事件」渦中でも、我が道を貫く貴乃花一家のスピリッツ

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎鋼の心
 過熱報道が続く中、どこに対しても、心も口も全く開こうとせず、我が道を貫く貴乃花親方。不惜身命っ!

 移動のたびにマスコミ陣から一斉に声を掛けられるも、ガン無視の親方。マスコミにしても、そんなのわかった上で形式として声を掛けているワケで。どうせ無視されるなら、「協会と、どんな話をしたんですか?」「貴ノ岩は今どうしてるんですか?」「親方、親方、何か一言!」って通り一遍の質問の中にまぎれて「そのストールはどこで買われたんですか?」「靴は息子さんのなんですか?」「あのサングラスは、どういうつもりで掛けてるんですか?」「そのパーマはどこであてたんですか?」「その際、美容師には何て注文を?」もぶつけてほしい。どうせ無視されるんだからさ。

 そして、このタイミングで、2冊立て続けに本を出す貴乃花の息子。出版イベントも開催予定らしい。あそこの一家、みんなホントにハート強いよね。相撲介さなくても「不都合な真実はないことにする」というスピリッツは、みなまで言うなで共有できてる。不撓不屈!

◎手のひらを太陽に
 「子育てする女性が活躍できる社会になってほしい」と、議会に赤ちゃん連れてきた熊本市議会の女性議員。……うへえ。

 こういう人に対して変に説得すると、悪者にされかねないし。「理不尽」をわかりやすく示すためには、どうすればいいんだろ。

 「じゃあ、私も子ども連れて行こうっと」「ウチだって、寝たきりの目の離せないじいさんがいるんだ。ストレッチャーに乗せて連れて行こう」「ウチにも病気の牛が」「ウチの豚もお産間近だ」「息子が引きこもりで、精神的に不安定なので、家で1人にできない」「だったらウチのプードルのチャッピーちゃんも。お留守番嫌いなのよね」で、「それでは市議会を始めます」「ホンギャーッ!」「嫁がメシを食わせてくれーん!」「モー!」「ブヒー!」「オヤジぶっ殺すぞテメー!」「ワンッ、ワンワン!」。阿鼻叫喚となった議場の惨状を見せたら、どう思うんだろうか。己の愚を知るのだろうか。いや、こういうヒトって「みんなで参加できてよかった(涙)」ってなりかねないからな。……につける薬はねぇ。

◎天災か!?
 三田佳子の息子、再び。いや、再びどころじゃないっつうの。忘れた頃に、ありとあらゆるパターンを見せてくれる、親不孝のデパート。今回は「こづかい1日15万円」報道も出てたし。前より増えてんじゃねーか。

 『過保護のカホコ』(日本テレビ系)出演で、「あえて」な感じを抉って、「もう過去の話です」という顔をしていた三田佳子であるが。過保護のヨシコは進行中。深刻なドキュメンタリーであるな。

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)、近著に『気になる「あそこ」見聞録』(新潮社)がある。