「僕と結婚してほしい。僕は日向(ひなた)の味方だから。今はそんなタイミングじゃないと分かっているけど。いや、やっぱり今のはなしにしよう。どこか夜景の見えるレストランを予約して、指輪も用意して……」
井上真央主演の社会派ミステリー『明日の約束』(フジテレビ系)の第5話。スクールカウンセラーである日向先生(井上真央)が、息子を自殺で失ったセレブ主婦・真紀子(仲間由紀恵)と実の母親である尚子(手塚理美)からW“毒親”攻撃をくらっているのを見かねた恋人の本庄(工藤阿須加)はついにプロポーズの言葉を。いきなり求婚の言葉を口にしながら、「プロポーズはシャレたシチュエーションで婚約指輪をさりげなく渡し、一生の甘い思い出に」という理想像にこだわってすぐに撤回しようとする本庄の慌てんぼうぶりは、日向先生にはちょっと頼りないけど愛らしい存在として映ります。尚子が文鳥のピッピちゃんを飼っているように、日向先生にとっては年下の本庄は図体のでかいペットみたいなものなのかもしれません。
「いいよ、結婚しよう。でも、学校のことが落ち着いてからね」
大学時代からの先輩でもある日向は、常に本庄に対して上から目線で接しています。尚子が少女時代の日向をずっとコントロールし続けたように、日向もまた邪気のない本庄をコントロールする立場に立とうとしているようです、しかも無意識のうちに。プロポーズの返事にドキドキしていた本庄ですが、とりあえず日向の合意をもらえ、ひと安心。その直後の日向とのラブシーンですが、今回もキスはお預けでハグ止まりでした。最高にハッピーなはずのプロポーズシーンながら、結婚後の日向の将来像を感じさせる一抹の怖さがありました。日向は自分が母親になったとき、自分も毒親になるのではないかとかなり苦しむのではないでしょうか。
みなさんお待ちかね、今週の尚子の時間です。前回は“大魔神”に瞬間変身してみせるなど張り切りすぎたため、今回は省エネモードの尚子でした。生徒たちへの聞き取り調査を行った晩、日向が自宅に帰ってくると、尚子は風邪を引いているらしくリビングのソファーで静かに横になっていました。そんな尚子のために、日向はリンゴを擦り下します。日向と尚子との初めての母娘らしい心温まるシーンでした。
毎週楽しみにしていた恐怖の洗脳ノート「明日の約束」は読み上げられませんでしたが、「病気のときだけ、母は優しくしてくれた」と数少ない尚子との幸せだった記憶を日向は懐かしみます。毒親の体調が悪いときだけの束の間の幸せですが、人生とはこんな小さな幸せを噛み締めながら生きていくことなのかもしれませんね。
■盗聴、偽装メールは当たり前!? 毒親という名の家庭内独裁者
第5話はこのまま日向先生の幸せモード全開で逃げ切れるかと思いきや、最凶毒親・真紀子がそれを許してはくれません。「鎌倉からイジメを根絶する会」の顧問弁護士と子どもがイジメの被害にあった不幸そうな母親たちを従え、記者会見を堂々と開きます。「息子・圭吾が自殺したのはバスケ部内のイジメとそれを知りながら不適切な対応しかしなかった高校側の責任」と公的に攻撃を開始したのです。仲間由紀恵の真紀子用メークは真っ白い顔に目のフチだけ赤くなっていて、泣きはらした悲劇の母親にも、目だけ赤く濡れ光っているモンスターのようにも映り、妙に怖いんですよ。
記者会見の場で真紀子は、「圭吾がバスケ部の先輩からタバコを吸うことを強要されていた証拠があります」と圭吾(渡辺健慎)の部屋でバスケ部のキャプテン・長谷部(金子大地)がタバコを吸っていた際の音声データを流します。どよめく記者たち。視聴者もどよめきました。やっぱり真紀子は、息子・圭吾の部屋を盗聴&録音していたのです。しかも、週刊誌記者の小嶋(青柳翔)の情報によれば、圭吾が自殺したのは夜中の2時から朝方の5時の間。つまり、長谷部が登校中に受け取った圭吾からのラストメール「僕は、先輩のせいで死にます」は圭吾本人が送ったものではないことが判明します。真紀子は圭吾の部屋を盗聴していただけでなく、圭吾に成り済まして偽メールも送っていたようです。息子の自殺した責任を、バスケ部や学校側に全部押しつけようという真紀子の恐るべき陰謀が明るみになったのでした。
第5話の衝撃はまだ終わりません。長谷部が校内で暴れていた様子を動画に撮ったのは圭吾と同じクラスだった1年B組の渡辺(堀家一希)だったことが発覚します。バスケ部員たちに取り囲まれた渡辺は「動画は撮ったけど、ネットにはアップしていない。データが盗まれたんだ。多分、翌日の体育の時間に」と素直にゲロします。
体育の授業中に、誰もいない教室に入っても不自然ではないのは、担任教師である霧島先生(及川光博)だけです。なんと、ミッチーが影で騒ぎを操っていた!? 確かに、ただの善意の塊のような教師役に、トリックスターであるミッチーをキャスティングするのは不自然です。映画『僕だけがいない街』(16)でも二面性のある教師役を嬉々として演じていた過去があります。ミステリーとしては意外性のある展開は評価されるものですが、常にトラブルの最前線に立つ霧島先生のことをすっかり信用していただけに、これは日向先生ならずとも視聴者も大ショックです。『相棒13』(テレビ朝日系)の最終回でダークナイトの正体が成宮寛貴だった級の衝撃です。お願いだから、嘘だといってよ、ミッチー!
さらにラスト近く、圭吾が自殺したのは自分のせいではないことが分かってうれし泣きしていた長谷部ですが、いつものように個人練習に励んでいた夜の公園で黒づくめの人物からスタンガンで襲われます。ハロウィンの夜にバスケ部顧問の辻先生(神尾佑)が襲われたのと同じ手口です。この襲撃犯はてっきり圭吾の自殺事件を知った愉快犯、しかも屈強な男性と思っていたのですが、ここに来て視聴者の頭の中の容疑者リストの筆頭に、圭吾の幼なじみだった香澄(佐久間由衣)が急浮上。たしかに佐久間由衣は身長170cmあるので、夜間にもったりした衣服を着ていれば男性にも見えるでしょう。香澄は毒親・真紀子と直接繋がっているとは思えませんが、動画のマスコミへの流失事件も含め、真紀子の思惑どおりにすべての物事が進んでいるではありませんか。
もはや、誰が日向先生の味方で、誰が敵なのか、まるで分からなくなってきた『明日の約束』第5話。視聴率は先週微増した5.8%から再び下降して5.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に。テーマ性のはっきりしたドラマなので途中打ち切りはないと信じたいところですが、5%を切ってしまうと打ち切り説も噴き出しかねない超危険水域となってしまいます。また、今後このような意欲的な社会派ドラマは製作されにくくなるでしょう。視聴率にも見放された感のある『明日の約束』。日向先生の明日はいったいどっちでしょうか?
(文=長野辰次)