
多くの女性が気にする“ニオイ”。中でも口臭はセルフチェックが難しく、また、周囲に指摘されることもめったにないため、「もしかしたら、自分の口臭はキツいかも……」と、不安に感じている女性は少なくない様子。なかには、マスクが手放せなかったり、人と会うことすらできなくなったりするほど、思い詰めてしまう人もいるという。
自分の口臭をチェックするにはどうしたらいいのか、臭わないためにどんなケアをすればいいのか、女性のための口臭治療専門プライベートデンタルサロン「Fukuda MKM」院長の福田久美子医師に伺った。
■10人に8人は口臭を気にしている
――先生から見て、自身の口臭を気にしている人は多いと思いますか?
福田久美子医師(以下、福田) 多いと思います。男女とも、10人いたら8人くらいは口臭を気にしていて、そのうち1人くらいの割合で、深刻な悩みとして抱えているのではないでしょうか。でも、自分は口臭がきついのではないかと悩んでいる方の中には、実際には臭っていない方もいるんですよ。
ただ、ニオイレベルを数値化できる機器などで計測した結果をお見せしても、「今は臭ってないだけ」など、なかなか受け入れてもらえないことも多いです。口臭は目に見えないし、普段は臭わない人でも日によって臭うことがあるので、一度臭いと思い込んだら、いくら「口臭がない」と伝えても、「この先生は本当のことを言ってくれない」と感じてしまうんですね。口臭治療は、原因を突き止めて改善することももちろんですが、問題がない場合でも、メンタル的なケアが重要になることがあります。
■一番多い口臭の原因はだ液
――そもそも、口臭の原因はどんなことなのでしょうか?
福田 主な原因は3つ。糖尿病や逆流性食道炎、悪性腫瘍など身体的な問題に起因するもの、虫歯や歯周病といった歯科的なもの、あとは、だ液によるものです。一番多い原因はだ液で、量の少なさや質の悪さが臭いにつながっているケース。年齢や男女差は関係ありません。
――だ液が口臭に影響するのですか?
福田 だ液中の酸素には、口臭を起こす菌の活動を抑える働きがあるんです。なので、だ液が多いほど口臭が少なくなります。ただ、だ液が濁っていたり、臭いがあったりする場合は酸素があまり含まれていないので、量が多くても口臭を抑える働きが弱くなります。
――自分で口臭をチェックする方法はありますか?
福田 残念ながらないんです。でも、だ液の質を確認することはできますよ。食後、歯磨きなど普段のケアをして2時間ほどたったら、3分間口を閉じてだ液を溜め、そのだ液の臭いを嗅いでみてください。無臭や、食べ物の臭いであれば大丈夫。生臭ささや金魚鉢の水のような臭いがある場合は、口臭につながっている可能性が高いです。
――「自分の手で覆って息を嗅ぐ方法」ではわからないものですか?
福田 その方法は臭いをダイレクトに感じてしまうため、あまり参考になりません。というのも、向かい合って話している場合、息は相手の上半身くらいの範囲に拡散されて届くので、臭いも希釈されるんです。臭いの強い状態を嗅いで気にしてしまうのは、ちょっとチェックが厳しすぎると思います。あと、長時間着けたマスクの臭いから口臭を疑う方もいますが、息の水分や温かさでバクテリアが繁殖して臭っているので、口臭があるとは限りません。
――口臭を防ぐためには、どんなことに気をつけたらいいですか?
福田 だ液の量は体内の水分量と関係するので、しっかり水分を補給してください。私が推奨し、ているのは、1日に体重の5%ほどの量を摂ること。ただ、食材に含まれる水分(300mlくらい)と、お味噌汁やお茶など、水以外の水分も摂るので、実際に飲む水の量としてはその半分くらいで大丈夫です。就寝中は乾くので、寝る前、寝起きにそれぞれ200ccくらい水を飲み、残りは日中こまめに摂取します。ただ、カフェインはだ液の分泌を抑えるので、摂り過ぎに注意しましょう。
あとは、よく噛んで食べたり、ガムを噛んだり、しゃべったりして、だ液の分泌を促すこと。パンやクッキーはだ液を吸ってしまうので、口内が乾き気味のときは、ごはんなど水分を吸いにくい食事がおすすめですよ。
――自宅でできるセルフケアなどはありますか?
福田 「うがい」です。のどや舌の表面はヒダ状になっていて、隙間に詰まった汚れが臭いの原因になります。実は、歯の汚れによる口臭は1割ほどで、ほとんどがヒダの奥に詰まった汚れによるものなんです。口に含んだ水やうがいの振動で汚れを浮かせて、しっかり洗い流しましょう。舌と上あごの裏は粘膜同士なので、擦り合わせる方法も汚れが浮きやすいですよ。
なお、歯ブラシや舌クリーナーなどで舌の表面を擦るのは、汚れをヒダの隙間に押し込むことになってしまうので、実はかえって口臭を強くしてしまうんです。
■治療すれば口臭は1カ月で治る
――すでに口臭があると感じている場合、どうすれば改善できるのでしょうか?
福田 深刻に悩むほどの臭いなら、専門医でチェックしてもらうのが一番です。きちんと治療すれば1カ月で治りますよ。ただ、前述の通り「思い込み」の場合もありますから、気にしすぎないことも大切です。「口臭のせいで友達や恋人ができない」と言う人もいますが、口臭があっても人に囲まれている人はたくさんいます。つまり、口臭が全てではないということです。口臭が改善しても気持ちが変わらないと意味がないので、そのような場合は、まず心の問題に向き合うことから始めましょう。
――もし周囲に口臭のキツい人がいた場合は、どうすればいいですか?
福田 口臭は治療で治るものなので、伝えてあげてほしいと思います。臭わなくなれば、本人も周りもハッピーですよね。そのとき、ただ指摘するだけではなく、口臭専門医の存在を一言添えるなど、治せることを提示すれば伝えやすいし、指摘された方も、悩むのではなく、解決に向けて行動できると思います。最近はエチケットで口腔ケアをする人も増えているので、「治療はエチケットの延長」くらいのスタンスなら、足を向けやすくなるのではないでしょうか。
――相手を傷つけてしまいそうで言いづらいとの声をよく耳にします。
福田 口臭の指摘は相手の人格ごと否定するような印象がありますもんね。でも、パーフェクトなケアをしていて、口内に何の問題もなくても口臭がある人だっているし、口臭はライフスタイルや治療ですぐに治せるから、本当はそんな意味合いはこもらないものなんですよ。指摘する側が、肩に着いた糸くずを教えてあげるのと同じような感覚で伝えられるくらい、口臭への世の中の意識が変わっていったらいいなと思います。
(取材・文=千葉こころ)
福田久美子(ふくだ・くみこ)
女性のための口臭治療専門プライベートデンタルサロン「Fukuda MKM」院長。同サロンでは、口臭治療と心理セラピーやコーチングの手法を融合させた独自の「Kメソッド」を提供している。
公式サイト
中野瑠美(なかの・るみ)