
新宿の鬼と恐れられた男に、心温まるディズニー映画を見せたらどうなるのか?――“元アウトローのカリスマ”こと瓜田純士(37)が、森羅万象を批評する不定期連載。今回は、大ヒット中の映画『美女と野獣』を観賞してもらったところ、なんと、瓜田自身も魔法のような変身を遂げた!
日本での上半期映画興収ランキングで1位となり、現在も上映が続く『美女と野獣』。1991年にディズニーが製作した同タイトルの大ヒットアニメを現代風にアレンジしつつ3D実写化したファンタジーロマンスで、美しい心を持った女性ベル(エマ・ワトソン)と醜い野獣(ダン・スティーヴンス)の恋の行方が描かれている。
観賞当日は、風が吹き荒れる雨模様。ボロボロになったビニール傘片手にズブ濡れで映画館に現れた瓜田は、開口一番、往時を偲ばせる暴力的な言葉で記者を威嚇した。
「よりによって、こんな悪天候の日に呼び出しやがって。これで映画がつまらなかったら、この傘で突き刺しますからね」
しかし、映画が終わった頃には、外はすっかり雨がやみ、瓜田もすっきり晴れやかな表情になっていた。
凶器として使う予定だった壊れたビニール傘を几帳面にゴミ箱へ捨て終えた瓜田と、同伴者の奥様に、さっそく感想を聞いてみる。
――いかがでしたでしょうか?
瓜田純士(以下/純士) すげえ感動しました。こいつは不朽の名作ですよ。さすがディズニー。世界の一流クリエイターが集まって本気を出すと、ここまで素晴らしい作品に仕上がるんですね。
――奥様、涙目じゃないですか。
瓜田麗子(以下/麗子) 拭いても拭いても涙が止まらへん。ポケットティッシュをほぼすべて使い切ってしまいました。
――瓜田さんがこれまで見た中で、ベストの映画と言えますか?
純士 スタローンのロッキーシリーズには敵いませんし、一点、惜しい部分もあったので、ベストとまではいきませんが、それでもディズニー映画の中ではダントツですね。
――ということは、ディズニー映画をけっこうご覧になっているんですか?
純士 けっこうどころか、ほぼすべて見てますよ。もっぱらDVDですけどね。だから、今回はものすごく楽しみにしてたんです。3Dでディズニー映画を見るのは初めてでしたから。序盤は3Dの字幕に戸惑ってしまい、何が原因で彼が野獣になったのかは正直うろ覚えなんですけど、とにかくいい映画でした。
――具体的に、何がどうよかったですか?
純士 まず、野獣のキャラがよかったです。一見粗暴なんだけど、実は繊細でいい奴だというね。彼のあの繊細な部分。それだけでもうハートをつかまれてしまいました。
麗子 野獣がけがしてしょぼくれて寝込んでるシーンを見て、吹き出しましたよ。これ、純士そのままやん、と。普段は短気で暴れん坊でも、実はへちょくて、すぐ風邪とかで寝込んじゃうところが、ホンマに純士そっくりやったな(笑)。
純士 でも野獣の行動って、なんだかんだでレディーファーストだし、男前なんですよ。ベルに愛を告げようとするけど、あの見た目ゆえ、フラれて傷つくことを恐れるじゃないですか。それでも周囲の家具や食器たちに応援されて、愛を確かめ合うところまでいくけど、「こんな場所に囚われたままで幸せはあるの?」みたいなことを彼女から言われ、この子を解放しなくちゃいけないと気づいて送り出す場面の潔さ。あれ、超カッコよかったです。で、そのあとのシーンが、さらにシビレました。
――どんなシーンですか?
純士 ベルと離れ離れになった野獣が、ひとりで塔の上をグルグルさまよいながら、彼女への思いを歌うシーンがとても素敵で、泣けました。あそこが一番好きな場面ですね。
――前回『ラ・ラ・ランド』を鑑賞時に、「ミュージカルは嫌い」とおっしゃっていたので(
記事参照)、本作もお気に召さないと思ったのですが。

純士 基本、ミュージカルは好きじゃないです。しょうもない奴らのミュージカルを見ると殺意が芽生えるんですけど、同じことをディズニーがやると、どういうわけか感動するし、鳥肌もんになるんですよ。作り手も演じる側も音楽も世界一のメンツが集まって、レベルの違うことをやってくるから、感服するほかないんでしょうね。本作でも、村人たちが歌い踊るシーンなんかは大きな見せ場で、見ててほっこりしましたよ。
――瓜田さんがそこまでディズニー好きだとは知りませんでした。
純士 ディズニーへの見識が浅かったころの俺は、バンドに例えると、花形のボーカルやギターにしか目がいかなかった。ベースとドラムなんか知らねえよと、主役ばっかり追っちゃうところがあったんです。ところが最近はディズニーのおかげで、ポット夫人やチップくんなど、ああいう脇役たちがいかに主役を引き立ててるのかってことや、脇役たちそれぞれにもドラマがあるんだってところにまで目がいくようになった。
――ディズニーのおかげ、とは?
純士 ディズニーってどの作品も、脇役にも感情移入しやすいよう丁寧に作られてるんですよ。だから、主役にも余計に気持ちが入るんです。それがほかの映画にはない魅力だと思います。とにかく無駄がないんですよ。「こいつを生かすために、こいつを殺してしまえ」ってことがない。
麗子 悪者さえも愛すべきキャラにしてしまうようなところがあるねんな。
純士 そう。今回のガストン(ルーク・エヴァンズ)も、いい役だなと思った。ああいう奴を見ると、昔は「コンチクショウ!」と思ったんですけど、今では「これっていい役だな」と。映画では憎まれ役だったけど、エンドロールで顔を出して、最後ニコッとしてね。いい役じゃないですか。ガストンが森に入っていったのは、結婚したいという下心もあったでしょうけど、みんなの前で放っておけないという義侠心も多少はあったんじゃないかな。だけど後半疲れてきて、だんだん悪いほうへ傾いていく心理がよく描かれてて。ガストンにはガストンの物語がある。ああいうタイプの男は、周囲の環境次第で、よくも悪くも転ぶんだろうな、とか思いながら見てました。
――ストーリーはどうでしたか?(以下、ネタバレあり)
純士 ハッピーに終わるじゃないですか。それがよかったんですけど、一箇所だけ惜しいと思ったのは、「イケメンの登場が早すぎる」ということ。できれば、戻らないでほしかったかな。これは原作にケチをつけることになってしまうのかもしれないけど、あのまんまの姿で結ばれて終わったほうが、作品のテーマ的にも正解だったんじゃないでしょうか。
――確かに。
純士 本当に醜くてコンプレックスを持ってる人って世の中に大勢にいるはずなので、あのまんまの姿でハッピーエンドを迎えたほうが、「オーッ!」となるじゃないですか。なのに、イケメンが急に出て来やがって、勝手にイチャコラして終わるという(笑)。「おまえ、ふざけんなよ!」と思った人も中にはいるかもしれません。
――ベルもイケメンを見て、心なしかテンションが上がっていたような。
純士 そう、それが残念。「あのまんまのあなたでいいのよ」ってところがほしかった。戻してもいいけど、戻すタイミングが早いんですよ。ベルの優しい気持ちにうれしくなった魔女が、数年後、あえて時間差で戻してあげるとか。そういうオシャレな展開があれば最高だったんですけどね。ベルが野獣を受け入れると完全に腹をくくった描写をしっかり見せて、見てる人を一度は安心させて欲しかった。じゃないと、『美女と野獣』というのがきれいごとになっちゃう。
――なるほど、納得です。
純士 とはいえ、映像の美しさや、アリアナ・グランデの歌を含め、本当にいい映画でした。「ディズニー映画は子どもの教育上いい」と聞いたことあるけど、その意味がよくわかります。
――どうしてですか?

純士 俺も昔はディズニー映画を完全にバカにしてて、見たことなんてなかったんですが、今の嫁と結婚してから、家でDVDを無理やり見せられるようになりまして(笑)。最初の頃は俺、ブツクサ文句を言いながら見てたんだけど、だんだんそのよさがわかってきたというね。
麗子 この人に愛を教えたくて、私はあえてディズニー作品を見せ続けたんですよ。知り合った頃の純士は人間不信の塊で、自分のことしか考えてないような男でしたから。自分の嫁のことを「下の下の下」としか見てない最低の男やったんですよ。
純士 確かに(笑)。
麗子 きっとこの人は愛を知らへんのやろうな、と思って。せやから嫌がる純士に頼みまくって、愛にあふれたディズニー映画を何本も借りて一緒に見てもらううちに、ちょっとずつ変わってきたんですよ。悪魔が人間になってきたというか。
純士 それまでの俺は『スカーフェイス』とか韓国のヤクザ映画とか、殺し合いに溢れたアンハッピーな映画ばかりを好んでたんですが、あるときから感性が変わったんです。どう変わったのかというと、格好つけのヤクザ映画やバイオレンス映画を幼稚くさいと思うようになったんですよ。
――ディズニーのほうが、幼稚くさくないですか?
純士 いや、逆ですよ。逆だということに気づいたんです。子どもたちにちゃんとした愛を教えようと思って、大人たちが英知を結集して作るディズニー映画は、子どもでも楽しめる内容だから一見幼稚っぽいかもしれないけど、作り手たちは超大人。本当の意味で成熟してる大人たちが真剣に作ってるので、全然幼稚なんかじゃない。逆に、過激な暴力描写がウリの映画を作ってるような人たちは、いいトシこいてワルぶったり、愛を語ることに照れたりしてる半端者と言えますから、そっちのほうがよっぽど幼稚でしょう。
――もはや完全なるディズニー信者ですね。
純士 ええ、そう呼んでもらって構いません。老人から小さな子どもまで楽しめて、みんながハッピーになれる作品を提供する。それが本当の意味で「いい物作りをしてる」ってことなんじゃないでしょうか。世界一ですよ。ディズニーは。
――奥様が、瓜田さんを変えたんですね。
麗子 ディズニー映画を教材にしつつ、4年がかりで夫をここまで変身させました。純士はクーラーの効いた映画館に入ると鼻が詰まる体質で、以前やったら途中で「苦しいから帰ろう」と言うてたはずですけど、今日は口呼吸だけでフンガフンガ言いつつも、ちゃんと最後まで見とった。それだけ映画が面白かったいうことやし、私の教育も成功してるいうことやと思います。
――もう教育は完了しましたか?
麗子 いや、まだまだですね。天候や体調や気分が悪いと、急に昔の姿に戻ることがあるので、油断は禁物です。
* * *
魔法が解けたら厄介だ。瓜田が野獣に戻る前に、記者はそそくさと退散した。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)
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