
左・関町知弘、右・田所仁(撮影=尾藤能暢)
「なんかの雑誌の優勝予想で、ダントツに最下位でした(関町)」。2016年の「キングオブコント」。前評判を覆し、当時まだテレビの露出もほとんどなかったライスが優勝。しかし、お笑い好きにとって、その結果は意外でもなんでもなかった。シュールかつ毒の効いた世界観は、一度見たらクセになる。地味なんじゃない、ノームコア。キャラ全盛の時代に、控えめ都会派の彼らは、果たしてどう生き残っていくのか――。
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――「キングオブコント2016」優勝後、環境は変わりましたか?
関町 仕事も今までとは全然違う量になりましたし、早く起きる仕事っていうことがそもそもなかったんですよ。
田所 5時、6時起きのね。
関町 朝一の空港とかにいると、仕事してます感あるよね。
田所 ちょっと売れてる気分になる。
――地方の営業も増えて。
田所 増えましたね。でも、だいたい日帰りなんですよ。
関町 この前、北海道に行ったんですけど、普通にとんかつ弁当でしたからね。ぜんぜん楽しめてない。
田所 でもありがたいのは、「キングオブコント」優勝後、お客さんの反応が全然違うっていうことですね。
関町 今まで営業行っても、有名な芸人さんの付き添い的な感じだったから。
田所 もしくは若手セット。
関町 それが最初に「みんな、拍手してくれぃ!」って「キングオブコント」のときのネタで言ったりすると、スゲェ笑ってくれて。
――うれしいですね。
田所 やっぱり影響力はすごいと思う。子どもに「握手してください!」とか、今まで言われたことなかったもんな~。
――ずっと「キングオブコント」を目標にしてきて、いざ優勝を果たしてしまうと、次に何を目指すのか、ちょっと宙ぶらりんになったりしませんか?
田所 そうなんですよね……。
関町 僕ら、ずっと「キングオブコント」に向けて単独ライブをやってきて、そろそろ結果出さないと……っていうときに、一旦単独ライブをやめたんですよ。
田所 それまでは賞レースに向けたネタづくりをしてたんで、4分の間に笑いどころも多くして、設定もわかりやすくして……みたいな。これからは変な話、自由にネタが作れるなと。確かに目標はなくなった感じしますけど、やることは増えた気がします。
関町 単独ライブを定期的にやっていた頃は、特に「キングオブコント」の結果が悪かった(笑)。もう、賞レースに向かないネタばっかりだったから。
田所 そういうネタが、お互い好きだからね。でも、ちょっと我慢しようと。
関町 「キングオブコント」の決勝に出て、いろんな人に見にきてもらえる状態になったら、また単独やろうって決めて……5年かかっちゃった(笑)。
田所 正直、2年くらいかなぁとは思ってた(笑)。
――でも、5年で結果を出したのは、本当にすごいことだと思います。
関町 本当、それまで惜しくもなんともなかったんで。
田所 みんな「あと一歩で決勝だった」みたいな感じなのに、僕らだけまったくでしたから。2015年も、結構序盤で落ちてるし(笑)。
関町 普段漫才しかやってないコンビのほうが成績良かったり。

――それはショックですね(笑)。今までと今回は、何が違ったんでしょう。
関町 今まで「キングオブコント」を意識しすぎて、視野がめちゃめちゃ狭くなってたんですよ。
田所 それこそ、“調整ライブ”みたいなものを何カ月もやったり。
関町 そうするとどうなるかっていうと、「ここまで準備したんだから、絶対落ちるわけにはいかないぞ」っていう、ものすごいプレッシャーがかかってくる。
田所 とにかくプレッシャーに弱いんだ、俺らは。
関町 背負いすぎて、もうカッチカチの状態で予選やってたんだよね。
田所 だから2016年は「あえて気楽にいこう」と。新ネタライブも調整ライブもやらずに、なんなら準決勝の前に芸人仲間と旅行に行ったりして、だいぶゆるい気持ちでやったら優勝できたんですよ。そんなもんなんですね~。
――旅行!?
関町 猪苗代のほうに。飲んで、食って、風呂入って(笑)。
田所 結構周りの芸人から「チャンピオン史上、一番遊んでたんじゃないか」って。
関町 夏フェスも行ったね。
――充実した私生活(笑)。今、テレビでの活動はいかがですか?
関町 テレビは……年末からパパパーっと入れていただいて、年明けて今、落ち着いてきましたけど。
田所 毎月、何本かは出させてもらってますね。ネタの番組とか。
関町 ありがたいです。テレビでいろんなネタできるのは。ただ「次はキングオブコント2016チャンピオンのネタとなります!!」みたいな呼び込みされると……。
田所 それ、本当多いんだよね(笑)。
関町 ちょっと、余計なこと言わないでよって(笑)。
田所 うれしいしけど、そこで一気にハードルが上がっちゃう。同じネタやるわけにはいかないし。
――少しずつまたネタ番組も増えていますが、それでもまだバラエティ番組はトークが主流で、ネタよりキャラが重視されがちですよね。
関町 そこなんですよ。
田所 僕らほんと見た目にも特徴がないんで、自分でも、ただの浪人生なんじゃないかと思うときあります。
関町 髪を緑色とかにしないと、こっち向いてももらえない。イジリようがない。
田所 僕らには、チャンピオンっていう肩書しかないんですよ。
――十分すぎる肩書ですよ! ちなみに、ご家族は、芸人という仕事に対して理解はありますか?
関町 うちの親はちょっとイタイ親というか……方々に「うちの息子芸人やってるんですけど」って、自分から言っちゃう(笑)。「この前優勝したライスって知ってます?」とか。
――グイグイですね(笑)。
関町 そういうのを風のウワサで聞くとマジやめてくれって思いますけど、でもまぁうれしいんでしょうね。芸人始めて13年、何もなかったから、親としては心配じゃないですか。しかも、30くらいまで実家住んでたんで。親からしたら「育て方、間違った~」ってなりますよね。
田所 どうすんだろう? とは思われてたよね。反対はされなかったけど。

――なんというか、生温かい目で見守られている。
田所 「生温かい」って、なんかいいっすね(笑)。
関町 なんかちょっと湿気のあるあったかさ(笑)。僕らの同期にしずるやハリセンボンがいるんですけど、そういう売れてるやつらがうちに遊びに来ると、母親には「いつかこの子も、こういう人たちみたいになれるのかしら……」みたいな夢を見させていた気はします。ただ、あいつらがあまりにも売れすぎてるから「あんたはいつ有名になるの?」ともなる。
田所 だよね(笑)。
関町 そういうこと言われるたびに「チッうっせーな」と。
――中二!!
田所 うちの両親はお笑いが好きで、僕らの単独ライブも毎回欠かさず見に来てて、親戚連れて来たり。それでも、ここ数年は「そろそろ、将来のこと考えなきゃいけないんじゃない?」みたいな感じだったんだけど、優勝してからは「私はわかってたよ。ネタは評価されてたもんね~」みたいなこと言いだした(笑)。
関町 僕らが「キングオブコント」で優勝するまで芸人続けてこられたのは、単純に東京に実家があったからです!
田所 ぬくぬくと芸人ができました。
関町 もっと早く実家出てたら、もっと早く結果出せてたかもしれないけど(笑)。
――お2人は、さまぁ~ずさんと同じ高校ご出身ですよね。お話を伺っていると、さまぁ~ずさんにも通じる「東京っ子」感、あるなぁと。あんまりガツガツせず、周囲が認めてくれるまで待つ、みたいな。
田所 のんびりと待つ(笑)。
関町 東京03の角田さんも、同じ高校なんですよ!
――お笑い名門校!
関町 もしかしたら、あの学校の校風が、こういう人間を作るのかもしれない。
――後輩にアドバイスするとしたらそれですね。
関町 まずは、東海大高輪に入学して……。
田所 そこからは、親のすねをかじり倒しなさい。
関町 さまぁ~ずさん、かじってたかわからないだろ!
田所 かじってるだろ~。
――そのゆとり感が、逆コンプレックスになったりすることはありませんか?
関町 あぁ、特に吉本は、大阪から来てる芸人さんが多いですからね。
田所 でもしょうがないよね、そこに実家があるんだから。
関町 勝手にそっちが大阪から来たんだから。
田所 めちゃくちゃだな(笑)
――単独ライブについて教えてください。5年ぶりということで、楽しみです。
関町 5年ぶりなんで、どうやって単独ってやってたんだろう……というのが本音で。
田所 そんなマイナスからのスタート(笑)。
関町 今回タイトルを「ブラン』にしたんですけど、「白」という意味の。本当にまっさらな気持ちで挑みたいと思ってます。
田所 初心に帰ってってことですね。チャンピオンになって1年目という気持ち。
関町 だからお客さんにも、1年目の芸人の単独を見に来るつもりでお願いしたい。
田所 すげぇハードル下げるな。
関町 生温かい目で。
(取材・文=西澤千央)
●ライス単独ライブ「ブラン」
日時:
7月7日(金)19:30開演
7月8日(土)14:00開演 19:00開演
7月9日(日)13:00開演 17:00開演
会場:CBGKシブゲキ!!
料金:前売5000円 当日5500円