出演したAVは1万5,000本。AV業界で初めて「潮吹き」というジャンルを確立し、「ゴールドフィンガー」でその名をはせた、元カリスマAV男優の加藤鷹氏(57歳)。現在は株式会社加藤鷹商店を設立し、講演・セミナー・メディア出演などを行っているが、そんな彼に、ちまたで話題となっているAV出演強要問題について話を聞いてみた。 *** ――鷹さんはこれまで、出演強要されている女優に出会ったことはありますか? 加藤鷹氏(以下、加藤) 強要されていたかどうかはわからないけど、好きでやっていないだろうなぁという女優はたくさんいたよね。「有名になって頑張ろうね」って声をかけると、「3本で辞めるんです」って答えが返ってきたこともあった。大人の事情でやっていたんだろうな。でもさ、この業界、やる気満々の子が売れるとも限らないし、長く続くとも限らない。最初は嫌々やっている子が、のちに大女優になったケースだってあるよ。やっていく中で、人間の思考って変わったりするんだよね。 ――とはいえ、やる気のない子がAV女優をやる――ということ自体、問題があるようにも思えますが……。 加藤 でもさ、そんなこと言ったら、世の中“この仕事、嫌だなあ”と思いながらやっている人って、いっぱいいるわけじゃん。“これ我慢しなきゃ、給料もらえないしなぁ”とか、“こいつ嫌いだけど、付き合っていかなきゃいけないなぁ”とか、そうやってみんな生きている。そりゃ何もしなくてお金になるんだったら、そのほうがいいよ。嫌なこともやるから、お金になるんじゃん。AVだけ特別扱いするのはどうなんだろうな。 ――例えば、違約金を理由に、無理やり出演させられたという被害報告があります。そういったケースについては、どう思われますか? 加藤 日本は法治国家なんだから、被害に遭った女の子は、法に訴えればいいんだよ。辞める方法なんていくらでもあるんだから。某企業の自殺もそうだけど、自殺するぐらいなら辞めちゃえばいいんだと思う。そこで犯人探しが始まるのが、俺としてはいい風潮じゃないと思うな。 ――実際、出演の契約書は結んでいても、裁判で争ったところ、違約金を払わなくて済んだという事例は数多くあります。法で争うとなると、どうしてもAV制作側は分が悪いですね。 加藤 ただ、法と精神の部分は別物だからね。俺は、そういう子に「あなたに落ち度はなかったんですか?」って聞いてみたい。事務所に洗脳されたっていっても、そもそも自分が足を踏み入れないと起こらないことだったはずだから。
――「アイドルになれる」とか、「パーツモデルになれる」といった具合に、偽りの文句で誘われ、足を踏み入れる被害事例も挙がっています。 加藤 でも、途中でAVだってわかるでしょ? もう大人なんだから、AVが嫌だったらすぐに辞めて、それでも違約金と言われるなら訴えればいいんだよ。今は支援団体もあるけど、「助けてほしい」と言ってきた女の子は助けてあげればいいと思う。でも、声を上げていない女の子たちに対して、「助けてあげます」と声をかけるのは余計なお世話だと思うから、もしもそういうことやっているなら、やめてほしいな。 ――「ポルノ被害と性暴力を考える会」(PAPS)などの支援団体の人たちに話を聞くと、すでに対処できないぐらい、相談の電話がかかってきているようです。ただ、お金になると思って、被害に遭っていない女優さんにも声をかけている輩がいるという話は聞いたことがあります。今後、鷹さんとしては、出演強要問題を解決する上で、どうすればいいと思いますか? 加藤 俺が業界に入ったときはね、AVなんていかがわしい世界だと思ったよ。その世界に自分から足を踏み入れて、辞めようなんて言おうものなら、パンチパーマのおっさんが10人ぐらい出てきて「何言っているんだ、てめぇ!」って怒鳴られると思ってた。そのリスクを天秤にかけて、覚悟を決めて入っていったんだよ。 ――実際、昔はヤクザまがいの人たちがたくさんいましたよね。 加藤 そう。でもさ、今はもうAV業界が生まれて36~37年かな? 途中から「AVはクリーンです」みたいな感じで押し出してきたわけじゃん。それがよくなかったんだよ。今の子たちは、警戒心もないし、AVをやる上でのハードルも低くて、抵抗なくやってしまう。AV制作側はもうちょっと「うちの業界、いかがわしいですよ。気をつけてくださいね」っていう雰囲気を出さなきゃいけないんだと思うな。女の子たちが「AVってヤバいんじゃないの?」って心配になるぐらいにね。 ――恵比寿★マスカッツをはじめ、AV女優たちが表に出すぎたのがよくなかったんでしょうか? 小室友里さんをはじめ、往年のAV女優さんに話を聞いてみると、「AVはグレーで、その覚悟がない人はやっちゃいけない」って、はっきり言うんですよね。でも、最近のAV女優さんに話を聞いてみると、芸能感覚で入ってきている子が多い。女優さんの世代によって意識の差は感じます。 加藤 友里ちゃんがそう言っていたの? やっぱり、ちゃんとわかっているよね(笑)。いくらAV業界の人たちがみんな「クリーンです」なんて言っても、いくらでも問題は起こるわけだから。最初から、いかがわしい世界のままでよかったんだよ。覚悟のある人だけでやっていればいいと思うよ。 (取材・文=井川楊枝)



